2016/08/19 のログ
美澄 蘭 > 「…分かってるなら、良いんだけど」

相手の目の逸らし方に、何か後ろめたいものを感じてか、少女の表情から笑みが消えて真顔になる。
今のところ、そこまで疑ってはいないようだが。

「首筋なら太い血管通ってるし、そこに冷やしたタオル巻いておくだけでも結構楽になりそうだけど…やっぱり、湿度とかは厳しいのかしら」

思案顔で、首を傾げる少女。
しかし、相手からルーンについて問われれば

「ええ…書き込んだり、空中にルーンを使った魔術式を書いたり…かしら。
術式を書いた何かを1つ作っておくと、魔力を流すだけでその都度発動出来るから便利よ。私は、紙に書いてそのまま持ち歩いてることが多いわ」

そう答えた。

三谷 彰 > 「空中や物に……か」

 少しだけ考えてからノートを手元に持ってくると。

「それってよ、例えばだが、治癒系のルーンとかもあったりするのか?」

 そう聞くと少しだけハハハと笑う。

「見ての通り風紀委員なんだけどな。俺出せる手がかなり少なくてさ、それを何とかしたいんだが……どうにも俺の魔術の方向性じゃ出来る事が少ないらしくて」

 ノートにルーン魔術の欄を作り線を引く。
 少しは真面目な表情をしているかもしれない。

美澄 蘭 > 「ルーンで治癒?
…うーん、私治癒は基本的に生命魔術の系統でやってるから詳しくないのよね…」

「ルーン自体まだまだ勉強中で、生命魔術以上に形が出来てないし」と、困ったように眉を寄せて。
先ほど持ち上げてみせたルーン文字の資料に目をやるが、立ったまま開くのはどうなのかとか、露骨に視線を泳がせながらしばし逡巡した後、

「………近くで、一緒に勉強しても良い?
そこで、私の方が早く何か掴めたらアドバイス出来るかもしれないし」

と、青年に問う。

三谷 彰 > 「あぁ、そういえば勉強に来たって言ってたな。悪い迷惑かけた」

 少し申し訳無さそうにそう返し自分の読んでいた本に視線を傾ける。
 
「ん、ああかまわねぇぞ、むしろ助かる」

 そして文房具の類を集めると「あ、そうだ」と一言呟き。

「代わりといってはなんだけど。あれだ、俺の使ってる術式とか見せようか? ほらさっきあんたも言ったが俺らどうにも得意不得意が逆らしいしな」

 俺だけ情報貰うのは不公平だろ? と言った感じで軽く笑うと鞄から少し年季の入った手帳の様な物が出てくる。
 開くなら魔法に関しての事が色々と書かれているだろう。

美澄 蘭 > 「いいえ…他の人と話すことで理解が深まることもあると思うし。
寧ろ、私の方こそ助かるわ」

「ありがとう」と言って、すぐ隣の席に腰掛ける。
そうして、資料を机に置くと、勉強道具をブリーフケースから出して並べていき…
と、一段落したところで相手からの申し出がある。
意表を突かれたようで、何度か大きく瞬いてみせた後…

「勉強の貸しとか借りとか…私はあんまり気にしないけどね。
魔術の勉強を本格的にやり始めたのはこっちに来てからだから、色々世界が広がると楽しいわ」

「是非お願い」と、どこか楽しげな、十代らしい満面の笑みを青年に見せる。
…と、相手が取り出した手帳の年季の入りように、また驚いたように目を瞬かせて。

「…凄い、勉強頑張ってるのね…
私が教えられるようなこと、あると良いんだけど」

と、少しだけ困ったように笑って、肩をすくめた。
それから、

「えーっと…」

などと呟きながら、真顔に戻ってルーン文字の資料をめくり始める。

動作自体は静かだが、割と速い。文字を追うのに慣れている手つきだった。

三谷 彰 > 「たしかに話すと色々わかるよな。俺もルーン魔法は全くの盲点だったし」

 今までいかに自分の能力を強化するかばかりでそういったことは全くの盲点だったが今回気がつけたのも話したが故なのだろう。
 相手が異世界から来たと聞くとへぇと言って。

「そうなのか、俺はこの世界の生まれなんだが能力とかとは無縁で育ってきてな。こっちに来てから色々覚えたから気持ちはわからないでもないぜ」

 是非の言葉を受け手帳を差し出す。
 褒められると。少しだけ苦笑を浮かべ。

「それだけがんばらなきゃ置いてかれる環境に行きたかっただけ、だから結果的にやるしか無かったって話だ」

 そう答えてから。「それにだと」切り出す

「そういうあんたもかなり見慣れてるって感じじゃんかこういう本。たぶん色々教えてもらう事になると思うぜ」

 そう返しながら自分も自分の持ってきた本へと視線を移す。
 相手の読むペースを見ても間違いなく勉強に慣れているといった感じだと思う。
 でなければこんな風に本を早く読むなど出来ないとは思うからだ。

美澄 蘭 > 「私も、ルーンを使い始めたのは、魔術に詳しい後輩にそういう術式を教わってからだから…
結構最近よ」

と答えたが、誤解が発生してるらしいことに気付いて、「ん?」というような顔をしてから青年の方に向き直り。

「ああ…「こっち」って、この学園のことよ。
私も、生まれと育ちはこの世界の日本。…異邦人の血も、混じってはいるけどね」

最後の血統表明は、少し躊躇いの後だった。
実際、少女の左の瞳はこちらの世界ではほとんど見ないほど淡い色をしていたし…魔力への感受性が高ければ、少女の持つ魔力が純粋なこちらの世界の人間のものからは若干外れているのが分かるだろう。

「そう………やっぱり、風紀委員って大変なのね。
私…この島の危ないところは、まだ、見ないようにしてるから」

青年の必死の勉強の理由について聞くと、どこか重く受け止めたように目を伏せがちにする。
しかし、「まだ」の持つ意味の危うさに、目の前の青年は気付くだろうか。

「…調べものの技術自体は、普通の勉強も魔術もさほど変わらないから。
普通の勉強の蓄積の方が大きいと思うわ、私の場合」

そう言いながら、ぱらぱらと資料をめくり…

「…でも、そうね…治癒に使えそうなのは、ウンジョー、ジェラ………ベルカナあたりも良さそうかしら。
ソウェイルとか、カノとかを補助にして…」

そんなことを呟き、少し考えて…

「………試しに、術式構成してみる?」

青年にそう声をかけた。

三谷 彰 > 「そりゃ最近じゃないなら今勉強なんて言わないわな」

 そりゃそうだと軽く笑ってから相手の話を聞き戸惑いを見せることを言われると。

「あぁ……悪い。こっちでそのあれだ、そういう目見たこと無いからてっきりそうだとばかり」

 少し罰の悪そうな顔をする。
 人によってはそういうのを気にするというのに本人が異邦人に関して全く抵抗が無い為どうしても軽くなってしまうのだろう。
 目に関しては不思議な目だなというイメージはもっているが魔力までを感知は出来ていないようだ。
 

「……風紀委員全員がそうだって訳じゃないぞ? ただ俺の場合やりたいことをするためにどうしても必要でな」

 少しだけ言い難そうにそう返す。
 人によっては戦いたいだけともとられかねない言い分だからだ。
 実態は自分が過去に助けてもらえたように誰かを助けたい。そのためには最前線に出る必要があるわけでその為には目だけでは不足だったという話なのだが。

「てか、まだ見ないようにしてるのは立派だが……行くなら一人で行くなよ。後ちゃんと許可されてる所までだ。これは風紀委員としてしっかり言わせて貰うからな」

 つい最近事件が起きている以上こういうことに関してはハッキリと言う。
 その続きを言おうとして相手が術式を構築といってくると少しだけ目を点にして。

「……不味くないか? ここ図書館だし。ほら風紀委員と保健課員が図書館で魔術暴走させて本を吹っ飛ばしたとか冗談にもならねぇぞ」

 手を口元に当て声が漏れないようにしながらヒソヒソ。

美澄 蘭 > 「まあね」

こちらもくすくすと笑い返す。
…が、相手がばつの悪そうな顔をすると、こちらも申し訳無さそうにした。

「いいえ…こちらこそ、気を遣わせちゃってごめんなさい。
地元ではあんまり良い思いしなかったのと…この島くらいるつぼだとあえて言うこともないから、言いづらくて。

目は…私からなのよね、半分だけなの。親は、両方ともこっちの色だから」

後半の言葉は、自分の左目を指しながら。
風紀委員全員がそうではない、と言われれば、少し納得しきれない表情ながら、

「そうなの…まあ、風紀委員会ほど規模が大きいと部署も色々あるはずだものね。
私は門外漢だから、あんまり詳しくないけど。

………分かってるわ」
(いけない…よりによって風紀委員の前で口を滑らせるなんて)

念押しをされれば、一瞬だけ目を伏せるが、最後には青年の目を見て言いきった。
目をそらしたまま答えれば、「そんな気はない」と捉えられてしまうだろうから。
…まあ、何か思うところがあるのを感じ取るのはそこまで難しくもないだろう。

もっとも、ヒソヒソされればきょとんと目を丸くし、大きく瞬かせ。

「構成するだけよ。魔力を流さなければ発動はしないわ」

そう答えるのだった。割と「何が悪いのか」感すらある。
「制御が苦手」とは言っても、「術式書いたら勝手に発動した」にならない程度の最低限の制御力は備えているからだろうが…。

三谷 彰 > 「まぁ俺は変な印象は全く無いから安心してくれよ。綺麗な色だな程度の印象だ」

 少しだけ言葉を考えるそぶりを見せてからそんな事を言い出す。
 相手が過去にあったということに関して一応目について触れてしまった以上そういっておく。
 フォローになっているかは怪しいが。

「ああ、色々ある。んで俺はあれだ、誰かを助けたかったからな……まぁそういうわけだ。もし危険な場所に行ったとして巻き込まれたらたぶん俺が飛んで来ると思えよ」

 そうニヤリと笑う。
 そして術式を少しだけ考えた後にうんと頷き

「……そういうことなら折角だから試してみるか。基本だけ今できれば後で一人で応用もできるからな」

美澄 蘭 > 「………ありがとう」

「綺麗な色だ」と言われれば、顔と目を伏せがちにしながらもそう返す。
その表情は消えてしまっているが、目の動揺から、「どう処理していいか分からない状態」になっていることは…見る人が見れば分かるかもしれない。

「そう………あなた、強いのね。

………ありがとう。出来るだけ風紀委員の人に迷惑をかけずに済むよう努力はするわ」

「誰かを助けたかった」という言葉に、何か思うように伏し目がちにするが…相手に少し意地悪く笑われて言われた言葉には、相手の方を見て苦笑いを返したのだった。

「…とりあえず、果実のルーンのウンジョーで生命力の充実と、それを促し、包容する成長、母性のベルカナ。
自己を意味するマンナズを入れると対象は自分、他の人に使いたいなら………ああ、ギフトを意味するゲボがよさそうね。
後は指向性と強度で構成が変わるけど…どうする?」

試してみる、という言葉を受けて、文字の意味を軽く説明しながら文字をノート上に書き散らしていく。
無論、青年に見えるようにしながら。

三谷 彰 > 「……」

 あれなんか変なこと言ったかとか少しオロオロとしていたがその後の様子を見て何もなかったとホッとして。

「ああ、頼んだぜ。別に巻き込まれたならいくらでも迷惑かけてこいだけどまきこまれねぇのが1番だから」

 そう笑顔を浮かべ言葉を返すだろう。
 相手の魔法に始めは真面目な顔で聞いていたように傍からは見えたかもしれないだろう。
 だがその事実は。

「…………ええっと。つまり? 自分に使う場合はマンナズで他人の場合はギフトで強度が……」

 とまで言ってから頭に?マークが見えんばかりの表情をする。そしてそれを打ち消すと。

「……応急処置くらいは出来るレベルの強度と指向性で頼む」

 ざっくばらんと無茶な要望になるしかないというなんともな結論だが当人はキリっとした表情をしているだろう。
 

美澄 蘭 > 「まあね…不幸はないのが一番だし」

巻き込まれないのが一番、という相手の言葉には少しだけ笑って同調し。
なお、両者の動揺は全力でなかったことにした模様だ。

「………」

相手の、全力のクエスチョンオーラと、その後のキリッとした表情をしながらも漠然とし過ぎた要望。
目を丸くした真顔で固まること数秒。その後悩ましげにこめかみに指を当てながら…

「………えぇと、普通の怪我がさらっと治れば大丈夫?
一応、自分向けと他人向けでそれぞれ組んでみせるつもりではいるけど」

定義の厳密化を試みて、相手の意思の再確認をすることにした。

三谷 彰 > 「そ、そうそれで十分だ!」

 ありがとう!と言いたげな表情で左手を動かしかけてッツツと少しだけ悶絶するがすぐに戻り。

「どうしても応急処置が欲しくなる場合ってのが前にあったんだが、そういう魔術系統全く覚えてなくて何も出来なくてな……せめてそういうのは覚えておきたかったんだ」

 痛みが治まったのかふぅと一言吐いて。

「欲を言えば重傷も。なんだが……それに関してはまずその最低限の傷を治す魔法を覚えないとどうにもならないだろ? たぶんだけど」

 ポンポンと軽く左手を撫でながらそう繋げた。

美澄 蘭 > 「ええっと、それなら…って、大丈夫?」

相手の要望が確認出来たところで術式構成に移ろうとしたところで、相手が痛みに悶絶する表情を浮かべたので向き直って相手の表情と左腕を伺う。

「…普通の怪我なら、元々覚えてる治癒魔術で多分治せるけど…」

「どうする?」と言わんばかりに、青年の表情を伺った。

「うーん…普通の治癒魔術なら、知識の問題になるから段階踏んで…になるんでしょうけど。
魔術文字の場合は理論とイメージだから、極端な方が術式だけは作りやすいわよ。
もちろん、強力ならその分魔力を使うけどね。

…えぇっと…あなたの魔力容量とか、その辺りの兼ね合いになると思うんだけど…どうする?」

また確認を取ろうとする時に言い淀んだのは、相手の名前を呼べる方がよかったがまだ相手の名前を知らなかったためだ。相手の青年がそれを察するかは定かではないが。
とにかく、首を傾げて問うた。

三谷 彰 > 「大丈夫、もう痛みは引いたから」

 そういい左腕をバシっとしそうになって踏みとどまる。

「あぁ……これ普通の怪我って言えるのかな。一応物理的な傷ではあるが……かなりでかいぞ。具体的には……6m近い熊らしき何かの全力を喰らったくらいだ」

 サラっと言い放つ。
 だが多少でも医学知識があるならかなりの大ダメージなのは理解できるかもしれない。
 
「へぇ魔術文字って便利なんだな。俺の時なんてひたすら段階踏んでったのに。まぁそれならかなり強力なのを書いてみる、量には自信があるからな」

 そういい真似しノートを1枚破くと文字を写す構えをとる。
 とそこまでやってから。

「てかあなたとかじゃ呼びにくいよな。三谷彰だ、好きに呼んでくれてかまわねぇぜ」

 これだけ色々とやっておいてお互いに名前を知らないことを思い出し名乗る。

美澄 蘭 > 「………話を聞くに、相当酷い傷で、そもそも痛みを感じてないか感じないように処置してる時点でやばいような気がするんだけど…」

相手の話を聞いて、痛みに共感を示すかのように眉をひそめる。

「…骨折まで治せる治癒魔術をだいぶ前に覚えはしたんだけど…運がいいことに、今まで実際に試したことはないのよね。
完全には治らなくても、多少マシにはなると思うんだけど…」

やっぱり、相手の意思を問うように、困った表情で彰の顔を伺うのだった。

「まあ、その分勉強内容は理論的だったり抽象的だったりだから、辛い人は辛いんでしょうけどね。
私も、感覚で出来たら楽なのにって思うことあるし」

「特に、獅南先生の講義とか」と、そう言っておどけるように軽く肩をすくめてみせる。
…実際のところ、少女の今回の魔術構成も、割と感覚的ではある。

「…三谷さんね。私は美澄 蘭。2年生よ。
…えーっと、とりあえず強力なのってことならソウェイルと…速効性を出すためにカノも入れて、自分用は…」

そんなことを言いながら、早速魔術文字を並べて書き始める。

自分用は、魔力が循環するような構成で。
他人用は、魔力をまっすぐ飛ばすような形で並べている。

「………こんな感じでどうかしら?」

二つを書き終えると、彰の方に書いたノートを差し出した。

三谷 彰 > 「まぁ、動かさなければある程度はな。ハハハ」

 目を逸らせながら乾き笑いを浮かべる。

「と、といっても傷とかはもうふさがってるんだぞ。後は骨だけでってそんな便利なのあるのか? ……そうだな。それなら頼みたい」

 さっきまでおどけているように見えていたがマシになる可能性があると聞くと真面目な顔に戻る。
 その変化から何かしたいことがあると思うのは容易かもしれない。

「あぁ、たしかにそれは辛いな。抽象的なのは良いんだが理論的なのは……苦手だ」

 少し顔をしかめそう返す。
 だがそういいながらも右手でしっかりと相手に合わせて文字を書き写していきながら会話を出来るのは魔術を専攻で勉強していたからというものなのだろう。

「なんだ。同じ学年だったのか、クラスが合わなかっただけなんだなっと……こんな感じで良いか?」

 そういってその文字を同じように書き写したものを見せる。
 蘭のに比べるとどこか不恰好だが一応形になってはいるだろう。

美澄 蘭 > 「…いや、その状態で下手に動かしたら治りが遅くなってまずいんじゃないの…」

相手の乾いた笑いに、沈痛な表情を浮かべてこめかみを抑えるが…
相手が真面目な顔で頼んでくれば、こちらも表情を引き締めた。

「…この世界の人間ってことならおかしなことにはならないはずだし、今作った術式とは別にちゃんと定番として学ばれてるものだから…大丈夫だと思うわ。
…じゃあ、いくわね」

そう言って、一つ深く深呼吸をしてから、彰の骨折した腕に手を伸ばす。
少女の掌に集まる強力な魔力の気配を、彼は感じ取ることが出来るだろうか。

「かの者の痛みよ、去れ…リカバー」

そうして、少女の治癒魔術が発動する。
外傷に特化し、それなりの魔力を消費する術式だ。特に魔術が効きにくい体質などでなければ、かなり効果があるはずである。

「ああ…じゃあ、ルーン文字は逆に悪くないかもしれないわね。
理論も大事だけど、その細かさよりはイメージの方が大事だから」

相手が顔をしかめて言えば、そう言って柔らかく笑いかける。

「ああ…私、クラスとか特に気にしてなかったから、それで知らなかったのもあるかも」

何か酷い発言が少女から出た。
まあ、この学園は単位制で科目は選択式だし、クラスの影響はそこまで大きくない。
おまけに、少女は中学生時代に「クラス」というものの固定的な人間関係に負のイメージを…特に異性に対して…抱いていたので、仕方ない部分もあるだろう。

何より、少女のカリキュラムは中学を卒業して二年目とは思えない代物になっているし。

「あ、うん…うん、術式の発動には支障はなさそうよ。
もう少しバランスよく書ければ効率は良くなると思うけど」

書き写したものの確認を求められれば、頷きながらそう答えた。

三谷 彰 > 「そうはいってもいきなり今まで使ってたものを使わなくするって難しいんだよ」

 はぁと溜息を着く。
 魔術が入ってくると幾分か和らいだ顔になりそして魔法が終わったのなら恐る恐る腕を動かす。
 さすがに完治とはいかないまでも外傷に関してはほぼ治り内部もほぼ治ったと見て良いだろう。さすがに殴られるなどすれば問題だがそれ以外ならほぼ問題ないはずだ。

「……あんたの魔法すげぇな。ここまで楽になるとは思わなかった」

 素直にそう呟き相手に賞賛を送る。

「……案外付与魔術に近いのかもな。あれも物を媒体にどういう効果を持たせたいかってイメージしてそれを魔力にして送るだけだし」

 自信の得意とする魔法に近いものだと知って少し安心する表情を浮かべる。

「ああ、まぁ基本は単位制だしそりゃ気にしないよな。俺もクラス、てかまぁ同じ授業を良くとってる奴や委員仲間以外ほとんどしらねぇし」

 そんな感じのことをコイツも返すかもしれない。
 そもそもここまで生徒の多い学園で同年齢を全員暗記している奴などまずいないだろうとは思っている。
 まぁ異性に限定して知ってると言うやつなら男女共にいるかもしれないが。

「あぁ……確かに少し汚いもんな。もう少し綺麗に書けるようにしとく」

 自分と相手を見比べて確かに汚いなと判断し少しガクっとする。
 左手で抑える事が出来れば話は別なのかもしれないのでそれは治ってからの話になるだろう。

美澄 蘭 > 「動かさないように固定してるのに、動かしちゃ駄目でしょ」

溜息を吐く彰に、そう言って柔らかい苦笑を返す。
…そして、治癒魔術はきちんと効果を発揮したようだった。安堵の息を零す。
…が、相手から賞賛を送られれば、かえってこちらはびくっとしたように目を丸くし。

「…ううん…三谷さんが楽になったなら、それで良いの…。
あ、でも病院にかかってたなら、念のため治癒を受けた報告はしてね?
生命魔術だし、そこまでおかしなことにはなってないと思うけど…治療のプロセスとか、変わっちゃうはずだから」

「保健課の美澄って言えば伝わると思うし」と、思い出したように付け足した。

「まあ、イメージを適切に表現する文字を選ぶための勉強とか、スムーズに使うなら暗記は必要だけど…
それは私もまだまだだし、一緒に頑張ることになるかしら」

ルーン文字を学ぶ意欲を起こしたらしい彰に対して、そんな風に少しだけ笑って言う。
青年の心が折れなければ良いのだが。

「私、同年代の人で同じ講義を取ってる人、あんまりいないのよ…コゼット先生の元素魔術くらいかしら、多いの。」

「一般教養早回ししてるから仕方ないんでしょうけど」と、少し目を伏せる。
クラスの固定的な人間関係は煩わしいが、孤独に講義を履修するのもそれはそれで寂しい…微妙なお年頃なのだった。

「まあ、もう少しだけ丁寧に書けば問題無さそうだから、あんまり神経質にならなくても良いとは思うけどね。
さっきも言ったけど、発動自体にはそこまで支障無さそうだし。

…それに、左手が使えない分も多少はあるでしょうしね」

「私の治癒魔術で、少しでも治りが早くなってれば良いんだけど」と、改めて左腕の様子を伺う。

三谷 彰 > 「ああ、わかったって……それで通じるって改めて蘭って凄いんだな。俺なんてたぶん風紀委員内でしか通じないぜ?」

 しかもあまりよくない印象でとか付け加えて苦笑いを浮かべるだろう。
 色々と人助け以外は緩い面が目立ち戦闘以外ダメな奴みたいなレッテルを貼られるケースも少なくない。

「暗記かぁ、そうだながんばらねぇと。色々使えたら変わるだろうしさ」

 相手の一緒にという言葉に笑みと共にそう返す。
 
「……同年代でいないとか一般早回しってマジか。蘭って滅茶苦茶頭良いな、今度テストでわからねぇところあったら頼って良いか? 英語やらがどうにも……な」

 アハハといった表現が似合いそうな微妙な笑みでそんな事を呟く。
 風紀委員の制服を纏っているが中身はお世辞にも模範生とは行っていないようだ。
 左腕を見るなら動かしたり位は問題ない程度には見えるだろう。現に今も色々と動いてはいる。

「左手治してもらったしもう少し綺麗に書きたいんだが……悪いそろそろ時間らしい」

 携帯を見せると委員の集合の連絡がそこに書かれている。会議嫌いなんだがなぁとか呟きながら荷物を纏め始める。

「色々世話になったなまた機会が合ったら話そうぜ、色々聞きたいことあるし。ほら俺なんて手帳渡しただけで何も教えてねぇぞ」

 と軽く苦笑を浮かべると、荷物をまとめ軽く手を振って去っていく。

ご案内:「図書館」から三谷 彰さんが去りました。
美澄 蘭 > 「同じようなものよ。保健課と正規の病院は連携取ってるんだから」

「大したことないわ」と、困った笑顔で手を振る。
実際、蘭は最高ランクの認定にはまだまだほど遠かった。

「意味付けしながら覚えれば前向きになれるんだけどね。
…そういう意味では、自分で術式構成考えようとするのもいい「勉強」かもしれないわ」

「ただの暗記って、あんまり面白くないわよね」と言って笑い返す。
…と、相手から一般教養について頼られれば、

「…去年、結構無茶したから。

そうね…英語なら、高校レベルの文法は問題無いと思うけど、それで良ければ力になるわ」

褒められれば微妙に困ったような笑みを浮かべて答えるも、頼られること自体はまんざらではない様子だった。
…と、相手が委員会の仕事があると分かれば、

「そう…ううん、無理しないで。
魔術の勉強は逃げないから、焦らないできちんと積み重ねれば良いと思うし」

そう、気遣わしげに彰に声をかける。

「ええ…講義再開したら、放課後私は図書館に来ることが多いから…また、きっとね」

小さく手を振って、彰を見送る。

それから、しばらく術式の構成をああでもない、こうでもないとやって(防御術式の改良にはめどが立ったが…)、そうしてから帰路に着いたのだった。

ご案内:「図書館」から美澄 蘭さんが去りました。