2016/09/27 のログ
ご案内:「図書館」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
谷蜂 檻葉 > 9月も終わりに近づき、秋めく夕暮れ。

夏に比べて随分と寒暖の差のある外ではあるが、図書館の内部は同じような気温で保たれている。
季節感のない。といえば情緒も無いが、それなりに委員の人間たちは委員の人間たちで様々な手法で秋を演出する。

ちょっとしたポップづくりも、その一環。
『特に地味』とも言われるが、これを楽しみにしてくれる人もいるのだ。

鼻歌交じりに、カウンターで委員の一人が―――谷蜂檻葉はポップにペンを走らせている。

ご案内:「図書館」に烏丸秀さんが現れました。
烏丸秀 > 図書館に再び来た男。
烏丸はきょろきょろとあたりをみまわし……

「あ、いたいた」

図書委員……檻葉を見つけると、すたすたそちらへ近づき

「や。これ、今回の寄贈リスト」

カウンターの少女へ3ページばかりあるリストを渡そうと。

谷蜂 檻葉 > 「―――烏丸さん。」

応える声は、少しばかり弾んだものだった。

「いつも有難うございます。
 その、返せるものもありませんけれど。」

せめて。という訳ではない。
しかし、その微笑みは心から。 リストを受け取ると小さく一礼をする。

「あ、そうだ。

 この間頂いた本の中で禁書に『移す』事になった本があるんです。
 ……本当に偶然でしたけど。神話生物学の先生、とても喜んでましたよ。

 今度お礼に。とも言ってましたので、顔出してあげて下さいね。」

彼への好感はある種当然でもあった。
なにせ、『寄贈』―――それも他のソレとは数の違うそれを定期的に行う組織
ましてや個人での事は彼以外に聞くことはない。 多少の噂は聞こえても、檻葉は彼を『信用』していた。

烏丸秀 > 「うーん、神話生物学の先生ねぇ。
檻葉ちゃんのお礼だったら、喜んで受けるんだけどなぁ」

くくっと笑いながら、いくつかリストにチェックしていく。
それは正規のルートから仕入れていない、いわゆる『古書』だ。
烏丸は骨董品を収集している関係で、たまに古書を譲り受ける事がある。
が、あまり趣味でもないので、気前よく図書委員会に全部寄付してしまっている。

「それと、また少ないけど。
まぁ、何かの足しにしておいて」

そして寄付。
お金は腐るほどあるし、委員会の信用を買っていると思えば安いもの。
寄付の手続き用の書類を檻葉に渡し。

谷蜂 檻葉 > 「ふふ。お誘いでしたら、後2時間ほど後にしてくださいね。」

クスクスと、彼の「軽口」を流してチェックされるリストを横から少し覗き込むように近づく。
寄贈される本―――学内の審査を通さずに置かれるモノはどの公共施設にも多くはない。

特に『魔』を帯びる事の多い書物に関しては確実に精査を受ける。
……その間、「つまみ食い」をするのは檻葉の習慣である。 無論禁則事項でもある。

そうして、それを置いてスルリと気軽に渡される金銭に、今度は困った顔で押し留める。

「ですから、お金に関しては本部の方から直接お願いしますって言ってるじゃないですか。」

もう。と、作った困り顔で腰に手を当ててため息をつく。

直接的な金銭は、『見えない形』で。
形式的なルールでもあるが、委員会の"生徒"がお金を取り扱う事は避けるようになっている。

色々と、「ある」からこそ。

烏丸秀 > 「んー、そういうとこはお役所だなぁ……
あ、言ったね。そういう事言うと、待つよボクは」

くくっと笑いながら言う。
ちなみにOKならば本気で待つ。

「じゃ、しょうがない。これは本部に……あー、面倒だな。匿名で寄付しちゃうか」

別に売名が目的ではないのでそれでいい。
監査の時の使途不明金の言い訳に使うようなものだから。

「それはそうと……ご機嫌だね?
何か良い事でもあった?」

谷蜂 檻葉 > 「『そういうとこ』……ですからね。」

OKかどうかは述べることはない。
――いや、半分以上冗談。自分がフリーになること以外が冗談なので答えるつもりがない。

「ええ、では寄付用のBOXか受付に宜しくお願いします。」

此方に先生がいらしてたら呼ぶんですけど。と、呟いた。

……今ここには彼女しか委員の人間はいないらしい。


「あ、そう見えます?言うほど良いことがあったわけでもないんですけど……。

最近『抱枕』の良さに気が付きまして。ぎゅってして寝るの、なんか寝付きが良いんですよ。」

もうすぐもっと寒くなるから、ちゃんと布団も掛けなきゃいけませんけどね。
そう笑った。

烏丸秀 > 「ふぅん、抱き枕ねぇ……」

抱き枕。自分には不要なものだ。
寂しくなったり温もりが欲しくなると、即誰か呼ぶか出かけてしまう性分故か。

「いやぁ、檻葉ちゃんに抱かれるなんて、羨ましい抱き枕だねぇ。ボクも次の人生は抱き枕に生まれかわろう」

他愛ない事を言いつつ、観察する。
面白い本を見つけたならともかく、抱き枕。
少しだけ、引っかかる。

谷蜂 檻葉 > 「っふ、くくく……」

―――少しだけ、視線が逸れる。

何を思ったのか。
そのまま口元を抑えて暫く笑いを噛み殺す。

「……は、ふぅ。 すいません。なんか、……変なツボに入っちゃって。」

ごめんなさい。と、改めて謝罪に頭を下げる。


「あ、ちょっと失礼しますね。 ―――貸出ですか?」

その合間、一人の生徒がカウンターで貸出を待っていた。
少しだけ時間を割いて、手早く業務を終える。


今ので、近くにいる生徒もいなくなってしまった。
奥の書架にはいるかもしれないが、入り口から見える空間には二人きり。

烏丸秀 > 「ん……」

さて、今の仕草は何か。
視線を反らしたのは――

(ちょっと、試してみようかな)

少しだけ、檻葉に近づく。
その背後から、囁くように。

「で、その抱き枕って……『誰?』」

ちょっとばかり、カマをかけてみて

谷蜂 檻葉 > 「  ……え?」

瞼が、グッと一瞬開く。
視線が激しくブレ、直ぐに落ち着く。
彼女の体に『力み』が入り、不意に言葉が途切れる。

「誰ってなんですか、もう……」

また、口元を隠す。
笑っているようで―――笑えていない。

「……はぁ。変なこと言うから、ビックリしちゃいました。」

誰に言うわけでもない小さな声で呟くと、視線を大きく外して図書館の誰もいない空間を眺める。

烏丸秀 > この反応。
どうも、カマかけはヒットしたらしい。
――ちょっと面白い。

「教えて欲しいなぁ。その幸運な子が誰なのか」

彼女の髪に顔を近づける。
うん、先ほどの幸せそうな顔を考えるに。
どうも、昨日は『お楽しみ』だったようだ。

「抱き枕って言ってたけど、抱いたのかな、それとも抱かれたのかな?」

谷蜂 檻葉 > 「……いや、だから違いますってば。」

顔を寄せられる動作は、『あの子』で慣れた。
とはいえ異性というのはまた別の恐怖があるけれど。グッと胸元を押すようにして身を躱す。

「静歌とは、そういう関係じゃないですよ。」

彼女の同居人。
異能持ちの自称地味めな少女を出して否定する。

「彼氏とかも、居ませんし。」

先程まで許していた距離には居ない。2歩、距離が離れる。

烏丸秀 > 「うーん、なるほど。
同衾、どころか『そういう関係』ねぇ」

相方というか、バディというか。
その程度の可能性もあったが、今の言葉で消えた。
どうも、かなり深い関係の相手らしい。

「となると……彼女?」

彼氏も居ないとなれば、そういう事になる。
というか、彼氏かそれに相応する相手が居るなら、その名前を出してしまえばいい。
言い寄る男相手には、それが一番効く。

谷蜂 檻葉 > 「……もう、何なんですか本当に。 烏丸さんでも、怒りますよ?

 静歌は、ただの、ルームシェア相手です。」

明確に、苛立った声で牽制する。
これ以上無理に踏み込めば、別の意味で警戒されるだろう。
今までの信用が祟る、という意味でもある。

「烏丸さん、そういう話が好きなんですか……?」

また、口元を隠す。
何かを抑えるように。

烏丸秀 > 「ん、あぁごめんごめん」

軽く笑いながらカウンターにもたれかかる。
ひどく退廃的な雰囲気を漂わせながら、今度は距離を詰めようとはせずに。

「ボクはね、そういう話が大好きだよ。
――下世話な話、って意味じゃないよ。
『本当は誰かに喋ってしまいたいけど、喋れなくて、もどかしく心を蝕む秘密』
が大好きなんだ」

それは歪みだ。
心の、歪み。
秘密は秘密にする事で他人に優位に立つ、もしくは自分の身を守れるからこそ心を傷つけない。
だが、喋りたくなる秘密とは。
『誰かに喋る事によって、心が軽くなりたい秘密』。

彼女はそれを持っている。
それはすなわち。
烏丸の大好物、という事だ。

「ちなみにボクに打ち明ければ誰にも言わないよ。
何せこんな人間だから、誰に喋っても信じてもらえないし」

けらけらと笑いながら。

谷蜂 檻葉 > 「――――………。」

『本当は誰かに喋ってしまいたいけど、喋れなくて、もどかしく心を蝕む秘密』

その言葉に、また檻葉の視線が揺れる。
しかし


「……悪趣味、ですね。」

溜息と共にゆっくりと吐き出された言葉は、否定の意を持って壁を作る。
それは迷いを振り払うような溜めこまれた言葉だった。

「って。そうペラペラ喋るようなものだったら、秘密でも無いですよね?
 その、悪ぶってる人が、『昔こんなヤンチャしてた』……みたいな、そういう。」

言葉を紡ぐごとに、檻葉は冷静な瞳の色を持ち始める。
……どうやら、一度に斬り込むには『個人的な信用』が足りないらしい。

「危ない香りのする人―――なんて、噂は聞いてましたけど、ちょっと意外でした。
 ……想定外、かな?」

まったく……。

呟く呆れたような困り顔は今度は此方も本心から。

烏丸秀 > 「危ない香り、ねぇ。
ボクはただのしがない学生だよ。檻葉ちゃんみたいなかわいい子が大好きな、ね」

やれやれとばかりに首を振る。
――揺さぶってはみたが、意外とガードが固い。
これ以上は無理か。

「あ、それ。悪趣味ってよく言われるんだよねぇ。
ひどいよね、ボクは好きな子に興味が尽きないだけなのに」

くっくっと笑う。
今度はからかう様子でもなく――本心から、面白いとばかりに。

「そう、言うなれば愛情だよ。
愛するから知りたい、愛するから自分のモノにしたい、そして――」

あぁ、この気持ちはほとんど誰にも分からないだろう――
分かるとすれば、そう。
冥ぐらいだろうか。

「愛するから、壊してしまいたい。そういうものなんだよ、ボクにとってはね」

何故だろう。彼女と話していると。
思わずそんな言葉を紡いでしまう。

谷蜂 檻葉 > 「……ハァ。危ない香りの意味、しっかり解りました。 ハッキリと、ね。」

冷たい視線、とは言うけれど。
ヴァイオレットの視線は比喩抜きにでも冷たそうだ。

「その興味、犬猫のとあんまり変わらないんじゃないですか……?」

世間話とは違う、『素』をだす烏丸にまさしく幻滅といった具合に声のトーンが下がる。
相槌も、ハキハキしたものから「はぁ」なんて気が抜けていく。


「愛してるから、壊してしまいたい……」

ただ、結びの言葉を口ずさむ。


「………歪んでますね、烏丸さんって。」

そういう檻葉の口角は、少しだけ上がっていた。
それは変わらぬ呆れの感情か、それとも――――

烏丸秀 > 「あっははははは!
うんうん、いいね、そう、歪んでる。
だからね、ボク、歪んでるもの、大好きなんだよ」

骨董を集めるのもそのせい。
ただの壷やら絵画やらに、人間があれこれ理屈をつけて高値で売買している。
一度その価値が壊れてしまえば、残るのは土くれか紙切れなのに。

「ボクは自分が大好きだからね、歪んでいるものも大好きなのさ。
――もちろん、檻葉ちゃんも大好きだよ」

よかったよかった。
なにやら尊敬されるよりも、こちらの方がよっぽどいい。
社交辞令よりも、軽蔑の方を好む。それがこの男なのだ。

谷蜂 檻葉 > 「―――歪んでいるものが……。

 ……いやそれ、馬鹿にしてます? してますよね? 喧嘩売ってます?」

買いますよ?外で。
なんて、コミカルな怒りを見せて言葉を振り払う。

ちなみに、運動不足で力のない彼女だが―――こと魔術を扱うことにかけては『才』に恵まれている。ついでに言えば、ソレで強化してしまえば力のない一般人は歯牙にもかけない程度の力は出せる。


「あぁー……もう、烏丸さんのイメージ全部壊れちゃいました。」

そういって、少しだけ乱暴に後頭部を指で掻く。