2016/12/17 のログ
ご案内:「図書館」にカラスさんが現れました。
黒龍 > 「……すっげぇ面倒だが生徒らしく魔術の講義を受けてみるっつぅのもありか…」

とはいえ、男としてはこちらの世界の魔術の基礎よりも独創式に繋がる個性的な術が欲しい。
実際にその魔術を見れば「解析」は可能だが、あまりアレは使いたくない。
こういうのは、そういう裏技ではなく独自に頭を捻って実践して編み出すものだ。

「……そもそも、やっぱこっち側は何か俺の性には合わねぇしよぉ」

こっち側…学生街を中心としたこの街の中心部。アウトロー気質な男は、矢張り落第街の方がピンと来るものがある。

カラス > 「…お父さんも心配性だよね。フェリアが一緒じゃないと外出ダメって。」

図書館ということもあり、小さな話し声が黒龍の耳に届くだろう。
そちらの本棚に用があるのか、話し声は近付いてきている。同時に、キューイという鳴き声も。

「…あ。」

本棚にもたれ掛かるようにして本を読んでいた黒龍の視界の端に、黒が入る。

それに顔を上げるとするならば、大きな黒い翼を持った弱気そうな少年が目に入るだろう。
ぱっと見たところは翼人かと思うが、白い角や緑の鱗に覆われた足が異様さを放つ。

その傍らには、先日の炎の巨人の際にとある白衣の男の傍に居た、紅い角の白い小龍。

黒龍 > 「……あぁ?」

書架に堂々と寄り掛かったまま、器用に片手で書物を読み続けていれば小さな話声が聞こえた。
胡乱げにサングラス越しに目つきの悪い視線を向ける…と、鳴き声にピクリ、と反応する。

(…あん?この鳴き声っつぅか…気配?覚えがあるな…つい最近…)

と、思い出そうとしながら視線が弱気な少年の姿を捉える。
見た限りは翼の生えた異種族…いや、だが白い角に緑の鱗の足。
…己の世界のドラゴンと比較して見る。類似点は多い…が、判断は早計か。

(……それにあのチビガキ…思い出した、あの炎のデカブツとやり合ってた白衣のヤロウの傍に居たヤツか)

と、そんな事を考えているのだが自然と少年、いや小龍を物凄く凝視してる形になってしまっているかもしれない。

カラス > サングラス越しではあるが顔を上げてものすごく凝視されると、
少年は息を吸い込むような短い悲鳴を上げかけて口を閉じ、
小龍はそちらを睨み返すようにじっと眺めている。いかんせん小さいので迫力はないが。

キューと言う鳴き声を黒龍が識別出来るならば、
『…カラス、怯えないで。私がどうかしましたか。』と、分かる。

凝視していれば、鱗や毛艶からこの小龍は幼龍ではなく成龍だと分かるかもしれない。

「っ………ぁ、あの、その……っ」

睨まれているがこのままという訳にもいかず、かといって逃げる訳にもいかず。
少年は精一杯声を絞り出した。
耳羽と思われる部位を精一杯下に向け、びくびくしながら。

黒龍 > ちなみに、この男は目付きが元からかなり悪く、凝視しているような視線もただ観察しているだけ、という真相。
当然、初対面の少年達にそんな事を察しろというのが無理だろう。
実際、少年が怯えている。男からすれば、(何でこのガキは怯えてんだ?)という考えが浮かぶが。

『……いや、テメェの姿を少し前に路地裏で見掛けたモンでな。記憶違いか確認してた所だ』

と、こちらは鳴き声ではなくテレパシーに近い形で小龍へと正確な思念を返す。
系統や世界は多分違うだろうが、同じドラゴンなら意思の疎通は初対面でも割と何とかなるものだ。
そして、この小龍…チビガキと思っていたが、よくよく観察すればこれで成体らしいと把握して。

(……マジかよ。呪いか魔術で意図的に小さくなってやがるんじゃねぇのか?)

と、思う男の本来の龍の姿はかなりデカい。人間の姿に今は特殊な術式で擬態しているが。
と、そこでやっと小龍から少年へと視線を向ける。

「…あぁ?何をビビッてんだテメェ。別に取って喰いやしねぇよ。男ならシャキッとしろ」

と、如何にもチンピラみたいな荒い口調だが、特に殺伐とした空気は無い。

カラス > 「ご、ごめんなさい…その…そこにある本を取りたく、て……、」

荒い口調だけで少年はびくびくしてしまっているだろう。
視線を向けられただけで肩が跳ねた。

鳴き声として返したならば少年も聞き取れたかもしれないが、
小龍…フェリアに対してのテレパシーとして返ってきた答えに、
その小さな紅い眼が瞬きした。

『……私の言葉が分かる、と……?』

それだけを呟き注意深く黒龍を見ている。
こんなところで戦闘等考える気はないが、万が一なら少年を守らねばならないと。
まるで母龍のように。

「え、ぇ…? フェリアの言葉、分かるの……?」

少年は小龍…フェリアの言葉に反応し、1人?と一匹を交互に見ることだろう。
少年もまた、龍の言葉を理解しているのだ。

―― 己が龍の遺伝子を持っている為に。

黒龍 > 「……あぁ?…どの本だよ?タイトル言ってみろ」

と、口や態度はチンピラそのものだが、少年が探している本を取ってやるつもりなのか書架に寄り掛かっていた背を離し。

『…大した事じゃねぇよ。龍の鳴き声は馴染みがありすぎるからな。
龍の声っつぅのは多少なりとも魔力が混じるか独特の癖がある。それを辿ってテメェに伝わるように思念を届けただけだ』

と、サラリと何でもない事のように小龍へと返す。注意深く観察されても気にもしない。
そもそも、彼らが勝手に警戒しているだけで男は全く敵対意識も何も無い。
……この男の態度や見た目などを考えたら無理も無いかもしれないが。

「…あぁ、まーな。テメェがカラス、そっちのチビはフェリアっつぅのか」

と、そこで少年の名前を言い当てる。小龍の名前は少年自身が口にしただろう。
だが、カラス、という名前は小龍が鳴き声で口にしたに過ぎない。
つまり、龍の言葉が分からなければこの時点で彼の名前を知る筈が無いのだ。

「…で、そっちのカラスはアレか?テメェも龍…いや、混じりモンか?」

緩く首を傾げる。この男が居た世界にはキメラの概念が然程無く、ピンと来ていないようだ。

カラス > 何かとこの島は物騒だ…ということを考えれば、
これほどに弱気な少年は警戒しすぎるぐらいでちょうどいいのだろう。
護衛に小龍がついて回るほどに。

「名前…じゃあやっぱり言葉わかって…
 え、と……そこの、『魔力制御入門』の本、です……」

ちょうど黒龍の右肩後ろにそれは見えることだろう。
魔術関係の本が多いこの棚の中、初心者入門編といったところだろう。

『……マスター以外に私の声を聞き分けれるモノがこの世界に居るとは…。』

と、会話していたが、黒龍が"混じりモン"と発言すれば、
明らかにカラスは狼狽することだろう。


「…っぁ、……その…。」

『カラス、無理に答えなくて良いのですよ。
 混ざりモノかどうかは……貴方の感じたように。
 それに、一方的に知られるのは正直良い気がしない。せめて名乗ってもらいたいですね。』

キメラというにはあまりにお粗末な少年。
フェリアは成体らしく落ち着いてフォローする。

黒龍 > 男は別に弱気や警戒心を悪いとは思わない。それも生き残る知恵の一つだからだ。
ただ、それが少々過敏だと流石に口に出したくもなるものだ。…が、そこをあれこれ口煩く言う趣味も無い。

「…魔力制御入門……ああ、これか。……制御のキモは23ページから45ページの辺りを中心に勉強しとけ。その方が効率が良い」

と、少年が言ったタイトルの本を書架から直ぐに探し当て、抜き出したかと思えばザッと片手で器用に速読。
で、内容を把握すれば、少年にぶっきらぼうにアドバイスしてから投げ渡そう。
…司書が見ていたら確実に怒られる渡し方である。が、地味に彼がキャッチしやすい軌道で。

そして、二人のやり取りを何となく聞いていたが、それに関しては簡潔に済むだろう。

「…黒龍。最近異界から来た龍だ。この姿は俺の世界の術式で人間の姿に擬態してる。
……んで、自己紹介はこんな所でいいかよ?」

名前は偽名であるが、少なくとも常世島ではこの偽名で通すつもりだ。
単純に、真名を知られると名で縛られ隷属させられるという可能性を考慮してのものである。

「あと、混ざりモンだろうが何だろうが…テメェが”自分”というモンをしっかり持ってりゃそんなの些細な事だろうが。
ま、テメェはテメェってこった。この程度の言葉は堂々と受け流せるくらいになっとけ」

カラス > 投げ渡された本に慌ててキャッチし、無意識の反応か背中の翼が羽ばたきかけ…て、
近くに本棚があるのに気付き、翼を畳む。

「あ、ありが、と……?」

まさか速読でこんな的確にアドバイスしているとは思わず、
少年は頭に?を浮かべていた。

自己紹介を受ければ、フェリアはその小さな体躯の頭をゆっくりと下げ礼をする。
漸く見た目の割に対応はしっかりしているのだからと判断したのだろう。

『貴方の妙な魔力量はそれですか…。
 では改めて、私はフェリア。この世界で"孵った"龍です。』

生まれた、とは言わなかった辺りに違和感を覚えたかもしれない。

「………ごめんなさい。
 俺は…カラスって呼ばれてる…。一年生…たくさんの龍と……鴉が混じってる。」

黒龍 > 「別に礼はいらねーよ。ただ、覚えるなら無駄な所をダラダラ読むより要点を的確に覚えた方が早ぇってだけの事だ」

相変らずのチンピラな態度のままでそう口にする。実際、礼を言われる程の事だとは思ってなかった。

「妙な魔力量…チッ、やっぱこっちだとそれなりに勘付かれるんだな…隠蔽の魔術はやっぱ必要か」

と、小龍…フェリアの言葉に苦い顔。とはいえ、小龍の言葉の一部に違和感を覚えた。

「…いや、ちょいと待て。…孵った?どういう事だ?」

その違和感を的確に感じ取ったのか、思わずフェリアにそう問い掛けていた男で。

「ああ、カラスな。ま、シンプルな名前でいーんじゃねぇか?
それに、混じってるってこたぁ、それだけ出来ることが多い…可能性があるってこったろうよ?
…成長次第じゃ結構テメェは大物になるかもしれねぇなぁ」

肩を竦めながらそう口にする。世辞ではなく割と本音だ。そもそも言葉を飾る必要が無い。
実際、色々混じっているという事は弊害もあるだろうが、可能性がそれだけあるという事でもあるのだから。

カラス > 『…同族故に言っておきますが、この世界の魔力感知能力持ちを甘く見てはいけませんよ。
 私には普通に分かりますし、おそらくはカラスにも…。そして、他のモノにも
 身体に見合わないとくれば、まずヒトではないことを疑われる。』

と、カラスの方を小龍が見れば、本を胸に抱いた状態でこくんと頷いた。

「……まぁ、結構…龍の先生とか、生徒とか、いるみたい…だけど。」

カラスはまだ怯えてはいるが、大分どもるような喋りはなくなってきたようだ。
ただ、励ますように聞こえたその言葉には、目線が俯くように下にさがった。



『…どういう事、そのままの意味ですよ。私達は親の龍を知りません。
 貴方ほど聡明ならば予想はつくかもしれませんが。』

つまり、卵の状態でこちらに来た。
それは密漁か、はたまた…

黒龍 > 「……だろうな。正直甘く見てたのは否めねぇ…が、まぁそもそも名前からしてそんな過度に隠してる訳でもねぇしな」

それなのに、表向きは人間ぽくしているのは…単純に、龍族というのは大なり小なり騒動のタネに成り易いからだ。
少なくとも、男が元々居た世界ではそうだった為、そして騒動の当事者でもあった為。
しかし、魔力感知が高いのがゴロゴロ居るとなれば…ある程度の対応は考えないと矢張りマズいだろうか。
面倒だな、という表情と態度で溜息を盛大に吐いた。

「何だ、割と”お仲間”はゴロゴロ居るってのか……そりゃまた賑やかな事で」

カラスの方を眺めるが、怯えは多少マシになってきたようではある。
そして、フェリアの言葉に少しだけ眼を細めて「ああ…」と、納得したように一言。

「ま、俺も最弱の龍から這い上がってきた成り上がりだしな。
そういう訳アリなのはまぁあるだろーよ。それに関してはとやかく言うつもりも深入りするつもりもねーな」

つまり、それ以上尋ねる事はしない。ぶっきらぼうでチンピラだが配慮くらいはするらしい。

カラス > 盛大な溜息を目の前で吐かれると、カラスは首を傾げた。

「黒龍…おにいさん? は、なんでこの世界に?
 それに、隠蔽魔術って言うけど……。」

見た目からしておにいさんと呼ぶ。
一応ここに居るのは一部少し混じっているとはいえ、同族達なのだ。

『どちらかと言えば、私達より貴方の方が訳がアリそうに見えますが……
 ……どうにも隠したい理由があるようにも見えますが、
 同族として事情によっては……騒動を起こす気でなければ、話してみませんか?』

場合に寄っては同族として何か助けになるだろうかと、
フェリアが鳴く。

黒龍 > 「…あぁ?そんな楽しい話でもねぇぞ?元居た世界で同格の龍王とサシで殺し合いして負けた。
…ああ、龍王ってのは称号みたいなもんな?俺を含めて5人居た訳だが。
で、ソイツに禁呪で次元の狭間に落とされてずっと彷徨ってた。
んで、何十年も漂ってる間に『門』を独自に作る魔術を構築して、これを犠牲にして門を開いて脱出して今に至る、と」

これ、という所で左の袖を示す。左腕が丸ごと無いのが一発で分かるそれ。つまり隻腕だ。

「当初は元の世界に戻ってソイツを叩きのめすつもりだったんだがアテが外れてな。
門が繋がった先はこの常世島の世界だったっつぅ訳だ。
んで、現状元の世界に戻るアテもねーから日々テキトーに暮らしてる」

まるで何でも無いかのように淡々と口にするが、多分フェリアは兎も角カラスからすればぶっ飛びすぎた話かもしれない。

カラス > 「龍王、龍の王様?」

【大変容】と呼ばれた世界の異変の後に生まれた彼らには、
そういう世界もある、という理解があり、
それでも王を冠するようなモノが目の前に居るというのは驚きであった。
カラスの耳羽がぴこぴこと興味深そうに動いている。
ぶっ飛んではいるが、嘘を言っているとはこの純粋な少年は思っていない。

「この世界、急に、異世界に繋がったりする、から…
 それで来たヒト達も、いっぱい居るし、先生も、生徒も。」


『……帰る術は私達は知りません。
 ですが…カラス、マスターの連絡先を書いてあげなさい。』

と、少年に告げた。
カラスはいいの? とフェリアに聞き返しながら本を脇腹に挟み、
持っていた鞄からメモ用紙をペンを出した。

黒龍 > 「あーあくまで称号みたいなモンだ。要するに俺の世界の龍族でトップが5人居るんだよ。
で、それぞれ派閥っつぅか軍団…国?みたいなモンを形成してるから龍「王」って呼ばれてるだけだ」

龍の王様、という言葉に皮肉げに笑って首を振る。特に最弱のザコから成り上がってきた男には。
王様というよりも下克上。簒奪者みたいなものだ。それもかなり血塗られてドロドロな。
しかし、龍とそれに連なる連中とはいえ、どうも口が軽すぎたか。
内心でらしくねぇ、とまた溜息。何だかんだ鬱憤が溜まってたのもあり吐き出したかったのだろうか。

「…らしいな。俺の場合は魔術で無理矢理作った門が”誤作動”してこっちに繋がったんだろうさ」

マレビト、というやつなのだろう。無論、例え異世界であろうと己は己だが。
自由気儘が己の信条であるからして、それを曲げる生き方はしない。

「…あん?マスターって…つか、俺みたいなならず者に紹介していいのかよ?」

自分は別に善人…もとい善龍では決して無い訳で。フェリアの判断に訝しげに口にする。
もっとも…まぁ、くれるというなら遠慮なく連絡先とやらは貰っておくが。

カラス > 「呼ばれてるだけでその……すごいと、思う…。」

カラスにとっては素直な感想だ。
製作者から捨てられたこの合成獣は、まだまだ幼い。
黒龍のような己の腕一つでのし上がるような努力が出来るかどうかもまだこれからだ。
少年は彼の話にしばしば耳羽を揺らした。

「えっとね、"お父さん"は、龍にはすごく優しいから、
 えーと………んと、フェリア、普通に書いていいの?。」

フェリアがいいですよ、と鳴けば
カラスがメモ帳の一枚に研究区の場所を書き始めた。

『マスターは龍専門の研究者なんです。
 ……貴方が信用出来ないと言うならばそれまで、
 もしかしたら私達も、貴方をマスターの研究材料として捕縛する目的で紹介するのかもしれない。
 ………どちらにせよ、分からない話でしょう?
 来るか来ないか…貴方の自由です。』

きっと賢い貴方なら地図も読めるだろう、とフェリア。

黒龍 > 「…別に肩書きなんぞ興味ねーんだけどな」

それでも上を目指したのは、ただ単に――…そこで思考を打ち切った。
感傷に浸るのは、思いを馳せるのは嫌いだ。ロクな事を思い出さないから。

「…”お父さん”……ね」

そういえば、フェリアの主ぽかったあの白衣の男が矢張りマスターという人物なのだろう。
と、そんな事を再確認しながらフェリアの言葉に頷いた。

「ハッ、研究対象にされそうなら好都合。遠慮なく潰してやる。それしか能がねぇからな。
…ま、あんまりそっちに面倒は掛けねぇよ。本当に面倒になった時に頼るかもしれねぇが」

基本、あまり過度に頼ったり期待するのも苦手なのだ。連絡先だけは”保険”として受け取るつもりで。
生き方が我ながら殺伐としていたので、どうにも人に己を委ねるのが我慢なら無いのだ。

(とはいえ、龍の専門の研究者、か。こっちじゃ希少だろうから一度会う価値はありそうだな)

カラスが書き上げるのを待ちながらそんな事を考える。

カラス > カラスが書き上げれば、
研究区のとある場所を示したメモを黒龍に差し出す。
絵も書いてはあるが、番地から探したほうが楽な感じがする。

それは区内の大通りから少し外れた場所にあり、
後に地図で見るならば、羽月研究所、と書かれている。規模としては小さそうだ。

「ふぇ、フェリア…あんまり怖いこと言わないで…。えと、はい…」

『何かあれば他の龍たちも含めて対処出来るのだから心配しなくても良いですよ、カラス。
 それに、騒動になれば他のモノも駆けつけるでしょう。
 
 …マスターなら貴方の魔力を隠す何かを作れるか、と思った次第ですよ。
 私達もその恩恵にあやかっていますから…ね。』

フェリアは黒龍を真直に見つめ、そう言った。

黒龍 > カラスからメモを受け取れば、それを繁々と眺める。…まぁ、絵より番地から検索した方が早いだろう。
そこは敢えて口にしない程度の空気を読む力はあるつもりだ。

(羽月研究所…ね。しっかしこの日本語の漢字っつぅのは地味に覚え辛いな…)

ちなみに、文字を読み書きしたり他の異邦人と会話が成立したり出来るのは、翻訳術式があるからだ。
同族に限っては、フェリアに実践しているようにテレパシーじみた会話も出来る。

「騒動は望む所だが、面倒なのは却下だな。暴れるならシンプルにやりてぇし…あぁ、地図あんがとよカラス」

と、一応キチンと礼は少年に言いつつメモはスーツのポケットに折り畳んで突っ込んでおく。
と、フェリアの言葉に眉がピクリと動く。魔力を隠すアイテム…あれば便利ではあるが。

「個人的には、それよりも義手の類が欲しいんだがな…まぁ、いい」

この男の場合、内包してる魔力量もその力も大きいので、抑えていても大抵はバレてしまう。
なので、魔力を隠蔽するアイテムも義手と並んで欲しいのは言うまでも無く。

カラス > 「うぅ…また外に出れなくなるから暴れるのは出来たらやめて…。」

出来たら、と言ってしまう辺りこの少年の性格がよく出ている。

ところでこの会話、図書館故に静かに行われてはいるが、
はたから見ているとフェリアはキューキュー言ってるだけです。

『義手ですか。
 私達から頼むことは出来ませんから…来る覚悟が出来てお逢いしたら、
 マスターに聞いてみたらいかがですか。
 最も、どこまで出来るのか分かりませんけども…。
 
 あぁ、それと……マスターから言われるでしょうけど、もちろん無償ではないです。
 捕縛云々はナシにしても、隠蔽する為ならば貴方の魔力を測らせてもらうでしょうし、
 資金として鱗一枚でもあればありがたいのですけど…ね。』

慈善事業という訳ではない。研究所であり、研究の為の動力が必要だ。
目の前に居るこの一匹と1人も、その研究成果なのだから。

「うん。あ、えっと、本ありがと。
 今日は本借りに来ただけだから、そろそろ…。」

黒龍 > 「安心しろ、俺から暴れたりはしねぇよ…暴れる相手がやってきたら別だけどな?」

ニヤリ、と笑ってみせる。何処まで本気かは分からない。
まぁ、実際にやったら研究所に被害が出て賠償させられかねないのだが。
あと、第三者から見ると滑稽な光景であるが、当人達は何の違和感も無い…龍の談義は得てして奇妙である。

「知ってるよ、タダより高いモンはねぇってな。むしろ無償の方が逆に警戒するってもんだ。
しっかし金か…まぁ、血液とかその辺りになるかもしれねぇが。
龍血もこっちじゃ研究対象にはなりそうだしよ?」

と、肩を竦めて言いながら一息。自分はもう用件は済ませたし、思わぬツテも出来た。
こういう場所に来るのも偶にはいいかもしれない。偶には、だが。

「さぁて、話が纏まった所で俺も引き上げるとするぜ。んじゃ、あばよカラス、フェリア」

と、カラスの言葉にこちらも引き上げる事にしたようで。先に歩き出せば…
そのまま、カラスとフェリアの頭を無造作にポフッと撫でてから歩き去っていくだろう。

カラス > カラスもフェリアもおとなしく撫でられることでしょう。
ちなみに今更ですがフェリアは雌。

「うん。さよなら、黒龍お兄さん。」

『また相まみえたらその時は、良き取引を。』

黒龍の眼光にも多少慣れたらしく、警戒心なくおずおずとした笑みを浮かべれば、
手を振って少し早足にその場を後にする。

遠くの方で羽ばたく音が、聞こえた。

黒龍 > ちなみに、撫でた時に気付いた。

(え、あいつメスかよ!!)

と、そんな余談はさて置き。何だかんだ和やかに終わる一時であった。

ご案内:「図書館」から黒龍さんが去りました。
ご案内:「図書館」からカラスさんが去りました。