2017/03/04 のログ
ご案内:「図書館」にセシルさんが現れました。
セシル > 「うーむ…」

昼間。魔術関連の書籍が並ぶ書架。
その隙間で、考え込むように背表紙の列を見つめている、細身の人影。

生身での耐久力のなさを補うため、防御魔術の類を学ぶことを条件に警備課への配属希望を改めて人事を考える部署に伝えたのだ。
「そこまで言うなら」と彼らも納得してくれたが、一方で「そう言うからには来年、初歩の防御魔術の講義くらいは履修するんだよね?」ともプレッシャーをかけられ。

セシルは、今まで学ぼうかとは思いつつも本腰を入れて来なかった魔術理論やら、魔法剣以外の魔術体系やらを春期休業期間に軽く齧っておこうと思って、入門用のテキストを探しに図書館を訪れているのだ。

ご案内:「図書館」にイチゴウさんが現れました。
イチゴウ > 図書館に変わった四足のロボットが入ってくる。
これが警備ロボットであると判断する材料は
背部に背負われた重機関銃しかないだろう。

「ここが学園の図書館か。」

四足ロボットは静かに声を漏らす。
自分はこの島に来てからそんなに経たないし
なによりもこの島自体の知識が少ない。
だがここに来れば何かしら島に関する
資料があるだろう。

「よし。」

イチゴウは書物が並べられている棚を
見上げながら物色を始める。

セシル > 「………これ、からでいいか………?」

セシルが自信無さげに手に取ったのは、中学生くらいの読者を想定して書かれた、魔術学入門。
セシルの年齢を考えれば少々情けない選択だが…理論方面にはそこまで強くないし、何よりこちらの世界の言語に対応するには、少々語彙力が心もとないのだ。
自分の知性を高く見積もって背伸びをしても、そこまで勉強が出来るわけではない自分ではさほど身になることはないだろう…と自分に言い聞かせて、貸出カウンターに持っていくことにする。
…と、

「………。」

変わった四足のロボット。…までは、まだいい。
それが背負う物々しい重機関銃を見て、セシルは思いっきり固まった。

自分も剣を二振り腰に差しているじゃないかとか、その辺をめいっぱい脇において。

イチゴウ > 「む?」

イチゴウが不意に視界をそらすと
目の前に固まっている学生がいた。
性別はどちらともとれるため良くわからない。
まあこんな公共の場でこんな長物を背負ってりゃ
不審に思われるのも仕方が無いか。

「すまんね。ボクは風紀所属でこの辺の
見回りの休憩時間を利用してここに来てるから
装備がそのまんまなんだ。
弾は装填されてないから安心してくれ。」

イチゴウは目の前の学生にそう告げた。
また何か勘違いされて風紀本部から
文句を言われたら面倒な事この上ない。

セシル > 「…そうか…それなら、まあ…」

「弾は装填されていない」と聞いて、胸を撫で下ろすセシル。

「…というか、同僚か。
警邏が重ならないし…貴殿と私の委員会鍛錬が重なることもなさそうだから、知らなくても仕方なかったかもしれんな。
1年、セシル・ラフフェザーだ」

「握手は難しそうだが…まあ、よろしく」と、口を横に開くような、男性的な印象の笑みを浮かべた。
しかし、オフのため地声で話しているので、女性としては低めだが、声からは男性らしさはあまり感じられないだろう。

イチゴウ > 「キミも風紀委員会所属か?
ボクは特別攻撃課所属のイチゴウだ。
まあ風紀委員会に入った経緯が中々特殊でね
所属というより飼われてるって表現の方が
正しいかもしれないが。」

同じ風紀なら所属も詳しく明かして大丈夫だろう
そう判断して目の前の学生に自己紹介をする。

「ところで失礼な話かもしれないが
キミは女なのか?男なのか?」

イチゴウは目の前の学生を見たときに
第一に思った事を尋ねる。
細胞で判断する事も可能だが
今は視覚情報からしか判断できないので
どうしようもない。
声はどちらかというと女性に分類されるが
振る舞いは男性っぽい。

セシル > 「ああ、特別攻撃課か…
…しかし、「飼われてる」とはあまり穏やかな表現ではないな。こうして会話出来るからには貴殿にだってしっかり自我があるのだろうに」

風紀のほこる決戦部隊の一つの名を挙げられれば、その装備の物々しさとあわせて納得した風で頷く。
一方で、彼の表現には、少しばかり渋い顔。

しかし、目の前のロボットに性別を尋ねられれば、人懐っこく表情を崩してみせ。

「いや、構わん。正面切って聞かれる方が話が早いからな。

肉体的には女性の方で間違いない。内面も…多分、男ではないだろう」

「女という自覚も薄いがな」と、鷹揚に笑ってみせた。
「内面は多分男ではない」と言う割には、振る舞いとか、表情の作り方は男性に寄っているように思えなくもないが。

イチゴウ > 「とある理由で風紀と敵対してた事があってね。
まあ結果的に拘束されたけどその時に特別攻撃課の
風紀委員と結構まともにやりあったから
その実力で今風紀に所属してるってわけさ
面倒事起こしたら対戦車ミサイルで
吹き飛ばされるという条件付きでね。
メンテナンスも充実してるし
別に風紀に歯向かおうなんて全く思ってないけどな。」

少々長くなったが「飼われてる」理由を
イチゴウは説明した。事実なのだから
別に隠す事でもない。

「そんな事よりもキミは女だったのか。」

女と言われれば確かに女性だ。
イチゴウは一人で納得していた

「にしても何かと男っぽい振る舞いをしてるな。
まるでそれがしみついてるみたいだ
もしかして長い間男として過ごしたりしたのか?」

性別と振る舞いに何とも言えないギャップがあるのは
気になるところだ。

セシル > 「………なるほど…それは、凄まじい経緯だな」

経緯も、条件もセシルの想像の範囲を軽く飛び越えていて、微妙な顔をするしかなかった。
それで良いのかとも思うが、風紀委員に「力」が求められているのも分かるだけに、複雑だ。
健全な力の行使だけで隅々に行き届けば良いのだが、そうでない現実は確かにあるのだし。

「ああ…学生としての登録の際にも誤解を解くのに少々手間取ったが、肉体的には間違いないぞ」

そう言って軽く笑いながら、学生証を取り出して見せてやる。性別欄は、確かに女性と記されていた。

「男として過ごした…というほどでもないが、私の故郷では、たまにある特殊事情でな。
物心ついたときから男物の装いをして、男の活動に混じってきたのは確かだから、癖みたいなものだ。
男の活動に混じっていたと言っても、最初はともかく続けたのは自分の趣味で、強制されたわけではないから…元々、そこまで女らしい性格もしていないんだろう」

そう言って、朗らかに笑う。
一応、故郷での女性用のマナーも最低限は覚えたのだが、いかんせん女性の装いをほとんどしないので使いどころがない。

イチゴウ > 「風紀委員会が行使するのは健全な力だけじゃない。
相手が相手なら正義の名のもとに破壊的な手段が
下される。」

自分が後者の破壊的な手段に関わっているだけに
風紀にあるのが健全な力だけではないというのは
良く理解できる。

「ん?あぁ悪いね。どれどれ」

目の前の学生はわざわざ学生証を出して
自分に見せてくれた。そこにははっきりと
女性である事が記されていた。
そして彼女の話を聞き

「なるほど。故郷の特殊な事情か・・・」

俗に言うしきたりのようなものだろうか
あいにく自分は機械であるがゆえに
こういった伝統的なものはよくわからない。

「というかその様子じゃ学園内で
男と見間違えられる事もあるんじゃないか?」

割とありそうな事象だ。
正直自分も遠目で見れば男だと言われても
そのままスッと納得してしまいそうだ。

セシル > 「………あまり、威張れたことでもないがな」

淡々と語るイチゴウに返すセシルの声は、苦い。
武官の「分」とでもいうべきものを叩き込まれてきたセシルには、「枠の外」というのはあまり歓迎出来ない存在だった。

「何というか…法体制上の隙間のようなものでな。
多分、こちらでも近い事例は過去にあったのではないかと思うが…」

そう、思案がちに腕を組みながら呟く。腕の組み方は、女性的なそれよりは横に開いている印象だ。
倫理面は故郷に比べると大分ゆるいと感じるものの、男女観そのものにおいては、セシルは故郷とそこまでの乖離はあまり感じていない(だからこそ、性別を間違われるということが起こるのだろうし)。
だから、法体制の歴史次第では、自分に近い存在もあり得たのではないかと思うが…まあ、当然のことながらそういった歴史の勉強までする余裕は、セシルにはないのだった。

「ああ、あまり珍しくもないので慣れたな。
都合が悪い時には積極的に訂正するようにしているが、都合が良い時にはそのままにしている」

そして、性別を間違えられることに関しては、鷹揚に笑って肯定した。

イチゴウ > 言動などから察するに目の前の学生ーー
セシルはまっとうな風紀委員であるようだ。

「汚れてる風紀委員はボクだけでいいさ。
所詮いつでも切れる捨て駒に過ぎないからな。
キミのような風紀委員達にはまっとうな手段で
学園の秩序を保ってくれるのを希望する。」

少し笑ってイチゴウはそう告げる
彼女のような風紀委員こそ風紀委員会に
ふさわしいのだろう。
自分のようなアウトロー紛いのものとは違って。

「法体制上か。」

イチゴウは話を戻す。
法律というのはしっかりしているようで
意外と穴が会ったりするものだ。
というか自分も法律や歴史に関しては
データが少ない。
戦闘ロボットなので仕方がないといえば
仕方がないが。

「都合によって性別を訂正したり
しなかったりするのか。」

こういうのは結構難しいもので
気軽に都合で使い分けてると
矛盾が発生したりするものだ。
しかし間違われる事に慣れた彼女なら
その辺も大丈夫なのだろう。

セシル > 「…ああ、無論そのつもりだ」

硬い声で、頷く。
実は、セシルには特別攻撃課への配属を薦められたことがあるのだ。それを拒んで、今に至るのだが。

「ああ…こちらの世界では「性差別的だ」と批判されるかもしれん体制でな。
他にも、こちらとの違いは色々あるが…まあ、その辺りの話は機会があったらだな」

そう言って、軽く笑う。
自分の育ちの話をあまり重くはしたくなかったし…何より、公共の場で滔々と話すようなことではないのだ。色んな意味で。

「流石に偽証はしていないから安心してくれ。
仮にも風紀委員が、学生証の記載内容を偽ったり、矛盾するようなことを言うわけにはいかないからな」

そう言って、朗らかに笑ってから。

「…と、蔵書探しの邪魔をしてすまない。
貴殿も、良い書との出会いを」

と言って、貸出カウンターの方に向かっていった。

「…いずれ、貴殿も真っ当な道に在れれば良いのだが」

という呟きを、イチゴウの音声センサーは拾うだろうか。

貸出カウンターで手続きをした後、セシルはまっすぐ図書館を後にするだろう。

ご案内:「図書館」からセシルさんが去りました。
イチゴウ > 図書館を後にする彼女を後ろから見送る。
セシルが去り際に言った言葉を
イチゴウはしっかりと拾っていた。

「ボクはあくまで戦闘ロボットであり兵器だ。
ただ言われた戦闘命令をこなす。
それが真っ当なものであったとしても
踏み外れているものであったとしてもな。
ボクは戦いがある限り戦いからは解放されないーー
いや、されてはいけない。」

誰に言う訳でもなく一人そう呟いた
まるで自分で自分を再確認するように。

「・・・少し長居しすぎたか。」

イチゴウが視覚情報にある時刻を見るととっくに
休憩時間を超過している。

「さっさといかないとまた本部に
文句を言われる。」

そう呟くと彼は少し急ぎ気味に
図書館を後にした。

ご案内:「図書館」からイチゴウさんが去りました。