2015/06/19 のログ
クゥティシス > 「ん、貰っとく!」
(差し出された袋を両手で受け取り、嬉しげに胸中へとそっと抱き寄せて笑う)

「それじゃ…クゥ、そろそろ行くね?」
「次会う時までにさ、ネコの鳴きまね…もーちょっと上手くなってるといいね」
「あれじゃ、ネコは寄ってこないからさ」

(くすくす、と出会いがしらの彼の鳴きまねを思い出せば笑みがこぼれた)
(次にあった時、彼は何を持ってきてくれるだろう?)
(次にあった時、彼が教えてくれるのはなんて名前なんだろう?)
(その次に会った時―)

(会う時の楽しみが多ければ多いほど、この時計塔での時間はきっと素敵な時間になるから)
(下界と隔離されたこの天上の庭園での時間だからこそ、ニンゲンとのしがらみを忘れられる)

(口ではニンゲンなんて、と言って一匹狼を気取りながらも)
(根本のところで彼女は寂しがりやなのだ)

「それじゃ、またね」

(袋から鯛焼きを取り出して加えると、彼女は時計塔の階段を駆け下りていく)
(響く足音は来た時よりも軽やかに)

(この島で初めて「居ても良い場所」を見つけられた)
(この島で初めて「居たいと思える場所」を見つけられた)

(そんな喜びに彩られた可愛らしい足音を残し、少女は去っていくのだった)

渡辺慧 > ひらり、ひらり。

片手を振りながら、少年は景色へ向き直った。

猫の鳴きまねを揶揄されたその顔は、まるで憮然としていたが。

「……あぁ。またね」


だけれど。やっぱり声は楽しそうで。

さぁ、脳に焼き付けとけ。次の約束を。
それを、思いながら、景色を眺め。


彼女の足音が聞こえなくなった時。


「…………ニャー」

塔の屋上には、また。
下手くそな猫の鳴きまねが響いた。

ご案内:「大時計塔」から渡辺慧さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」からクゥティシスさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に志葉恭介さんが現れました。
志葉恭介 > 【禁じられているとは言え、鍵が掛かっている訳でもない】
【容易く侵入出来、この島を一望出来る大時計塔】
【鐘楼としても認識されるこの場で外套をはためかせ、風に飛ばないよう学帽を抑える】

……。

【黒ずくめの少年は特に目的があって此処に登った訳ではない】
【ただ、何となく黄昏れたい時だって思春期の少年にはありがちなのであった】

志葉恭介 > しかし……改めて、いやに広い島だな……

【360度をぐるりと見回せば、聳える二つの山以外に視界を隔てるものは少ない】
【青垣山の麓の港湾部に視線を移すと、漁業研究部と海洋水産部の所有する漁船が連れ立って入港する所が見えた】
【こうして遠くから見れば仲睦まじくも見えるものだが、実際の所は部活間で互いに熾烈な漁場争いをするライバル関係である】

【そんな取り留めもない知識を脳裏に浮かべつつ、視線を巡らせる】

ご案内:「大時計塔」にさんが現れました。
> よお、兄弟。
【そんな、ひとり黄昏ている青年の背後に忍び寄ったのは、黄昏色の瞳を持った少年である。
忍び寄ったといっても、背後を切りつけようとした風体ではない。ただ意味もなく驚かせようとした、そんな調子だ。】

志葉恭介 > 【東南東へと視線を視線を移せば落第街。さらにその南方に見えるは異邦人街――当たり前だが、この距離からではみかんの祠も見えようはずもなく――】

うぉぅ。

【そんな風に意識を遠方に飛ばしていたが故に、背後からの気配に思わずといった声が漏れた】
【振り向けば、いつかの少年】

君か。
こんな所で、奇遇なものだね。

> ちゃんと名前で呼んでくれよ。
せっかく立派な名前を頂戴したんだ。

――もう少し驚くと思ったんだけどな。
びっくり仰天して足を踏み外しでもしてくれれば、俺も自分の手を汚さずに済む。
【物騒なことを口にしながらけらけらと明るく笑う。
どこまで本気で言っているのだろうか。】

志葉恭介 > 半ば諧謔で付けた名前なんだけどな。
ま、気に入って頂けたなら重畳。

【手すりに背を預け、仏頂面で笑った顔を見返す】
【冗談とも、本気とも取れる発言には眉を顰めて】

驚いているよ。変な声出ただろ。

> ま、素っ頓狂な悲鳴だったのは確かだが。
【隣に進んで、手すりに身体を預けて下界を見下ろす。
地面が霞がかるほどの高度に、唇は笑ったまま瞳からは笑みが消える。】
しかし本当に高いな。この高さから落ちたら、人間なんかひとたまりも……。

……ないか?
どう思う?

志葉恭介 > あまり驚きが顔に出ない質でね。
損する事も多いが、得も多いのさ。

【隣へと身を進めた少年を警戒する様子もなく。弧を描いたままの唇から発せられた言葉にも、事も無げに返す】
【何処から見ているのかも分からない相手に対し、過剰に警戒などしても無意味であり――】

少なくとも俺は此の高さから落っこちて五体満足で居られる程人間やめてない。
試してみるのは勘弁して頂きたいものだね。

【――そして、この少年は無意味な事をする質でも在るまい。そう踏んだ】

> 人間やめてない、ねえ。
案外そう思ってるのは本人だけかも知れんぜ。
お前、「あれ」何個食べた?
【怖気を振るうような視線が、恭介に投げ掛けられた。
唐突に登場した「あれ」が指すものなど、いくつもありはしないが――。】

志葉恭介 > ……あ?

【思ってもみない疑問符を投げかけられ、思考を巡らせる】
【あれ、とは。みかんと縁のある此の少年の言うこと、思い当たるものなど――】

あ。

【ごそごそと懐を探り、取り出したのは謎めいた柑橘】

ヨモツヘグイとか言うんじゃなかろうな。
何個だなんてもう覚えてないぞ。こう見えて日々の糧に困ってる身なんだ。

> あの世の食い物――か。
いい線ではあるかな、はっはっは。

【場合によっては、恭介の今後を左右する重要な場面である。
あっさり笑い飛ばすのは枳の性情ゆえか、それともそういう緊急性の高い話題ではないということか――。】

まあ、安心しな。
「それ」にはそこまで強力な作用はねえよ。

【後者だったようだ。】

……「それ」にはな。

志葉恭介 > ……冗句にもならん。

【対して恭介は渋い顔である。眼鏡を押し上げ、軽く嘆息】
【まさか退魔師ともあるものが空腹と引き換えに人としての生を売り渡したなど、親はともかく曽祖父に何と説明してよいのか分からない】

安心した。が、まぁそのなんだ。
迂遠な物言いはあまり好む所ではない。

【眼鏡の奥の瞳が横合いに向けられる。幾分低い位置にある視線へと】

もう少し直截的な物言いは出来ないものかね?

> 俺は好きだぜ、回りくどい話。
まあ兄弟がそう言うなら仕方ない、もうちょっと直接的な話にしようか。
……とはいえだ、俺の方から言いたいことはこのあいだほとんど言っちまったからな。どうしたもんか。

【やや緊迫感を増した空気にも、へらへらとした笑顔で返す。
しばし逡巡するように視線をめぐらせたあと――。】

じゃあ、質問してくれていいぜ。
一個だけ兄弟の疑問に答えてやるよ。

【いやに羽振りのいいことを言い始めた。】

志葉恭介 > そこまでやっといて嫌いとか抜かしたらはっ倒す所だ。

【言いたいこと。要は、『みかんの記憶について深入りするな』という忠告であろう】
【――少々荒っぽいが、逆に本気で害するのであれば如何様にも出来る。つまりあれは警告でしかない】
【逆説的にそれは、記憶を紐解いたその後に待ち受ける事態の重大性を示唆するものでもあるが】

質問、ね。

【さて、疑問符は幾らでもある。それは彼女の語った夢――という姿で立ち現れる記憶であったり、彼女があまりにも都合よくその時欲した権能を取り戻す事であったりとか】
【だが、そんな疑問に関しては其れこそ回りくどい話になりそうであるし、素直に答えるという保証も無い】
【故に、欲するのは推理の材料か――或いは】

枳。
君はお姫様が主人公のお伽話の結末は、どのようなものが相応しいと思うかね。

> 【その言葉に、恐らく初めて、枳が驚きに眼を見開いた。
全く予想外の方向から攻め立てられたのだろう。】

……それが質問なのか?
いや――驚いたぜ、まさかここで個人的な見解を求められるとは。

【いつも通りの飄々とした物言いではあるが、歯切れは悪い。
言葉を紡ぎながら質問の回答を作成している、というところか――。】

……そうだな。
「お前の国」の物語だと、ろくでもない結末って結構多いよな。

志葉恭介 > あぁ。
聞き込みもまた必要な捜査だが――相手は選ぶ。

【探偵が嘯く。思いついたのが此れというのも我ながら中々に奇妙なものだと考えながら】
【考えながら語る様子を、仏頂面のままに聞く】

……そうだね。
態々具体的な例を引くまでもなく、悲劇に終わるお姫様のお伽話は多い。

【何故そうなのか、という事に関しては口にすることはない】
【物語を望むのはいつだって聴衆であり、多くの聴衆が求めるのは悲劇である】
【文学史を紐解けば、すぐに分かる事だ】

> 物語として需要があるからそういう傾向がある、というのは事実なんだろーが。
それとは別に、物語には母体になる原型が――この場合は「神話」と言ったほうがいいか?が、あるから、結末も似通う。
そういう考え方もあるわな。

【結局持って回った言い方だが、つまり言わんとしているのは。
「物語のお姫様は、悲劇的な結末を迎えるものだと思うぜ」ということか。
――が、それはつまりただの帰納であり、恭介の質問とは微妙にベクトルが異なる。
だから付け加えた。】

くそくらえだと思うがね。

志葉恭介 > そう。
原型が在り、人がそう望めばそれは悲劇へ収斂される事だって在る訳だが――まぁ、それはいい。
重要なのは、物語の核たる原型、神話から拡散された悲劇もまた遍く存在すると言う事だな。

【我ながら迂遠な物言いで推測を確信に変えようとしている。己の前言を想起し、苦笑いが漏れた】
【つと考えるような枳の素振り。次いだ言葉に、片眉を上げて】

気が合うものだね。
誰かが望んだものにしても、連綿と伝えられる一握の悲劇だとしても。
やり切れんし、くそくらえと俺も思う。

> ……ああそうさ。
どうして「そう」なのかは、もうどうでもいい話だ。
当事者にとって、悲劇はただ悲劇でしかない。
だから――。

【改めて恭介に向き直る。】

「原型」まで遡ることは、ねえんじゃねえか、兄弟。