2015/06/28 のログ
ご案内:「大時計塔」に綿潟からめさんが現れました。
■綿潟からめ > 明け方の時計塔の屋上に、少女が一人いる。
中学生か高校生か、身長は150cmに届かないくらい。やせっぽちで血色が悪い。
くすんだ茶髪を雑に伸ばして、顔の両脇でリボンでくくっている。
彼女の名前は、綿潟(めんがた)からめ、という。
からめはパーカーとハーフパンツをざっくりと着て、床にペタンと座り、温かい缶コーヒーを飲んでいた。
「――ホゥ」
唇を丸め、コーヒーで暖まった息を吐いてみる。
この時間は多少肌寒いが、冬のように白く見えるわけではない。
それに何らかのポエジーがありそうな気がして――
「ま、どうでもいいや」
言葉にするのを早々に諦める。
もう一口コーヒーを口に含み、空と大地を眺めて、たそがれて、いやかわたれていた。
■綿潟からめ > 一時間半も立てば缶コーヒーはとっくに冷める。
もっとも冷める前に飲みほしたが。
空き缶を持っておもむろに立ち上がる。
屋上の縁に近寄っていって、振りかぶり、
「…………」
そこで躊躇うように動きを止める。
「……迷っちゃったら、こういうのの気持ちよさって全滅だね」
大人しく腕を下げて、ポイ捨てを止める。
元座っていた場所に、かっちり正確に戻って、もう一度座り、そろそろ昼になり始めた世界を眺める。
■綿潟からめ > 「くそったれー、ひとりぼっちじゃー」
一人になるために、明け方こんな場所に来たのだから当然と言えば当然、期待通りと言えば期待通りではある。
ただ少し、ほんの少しだけ、一人になりたいと思ってこんな時間にこういう場所に来るような自分と似た気分の奴がいたら、そいつと会えたりしないかなと思わなくもなかったので。
そんな都合のいいことは起きなかったけれど。
「帰って寝よ」
折角の日曜日を寝て過ごすことになりそうだ、と思いながら綿潟からめは時計塔を去った。
ご案内:「大時計塔」から綿潟からめさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」にクゥティシスさんが現れました。
■クゥティシス > (日が沈み、月が登った夜)
(この街で星々が瞬く夜空に一番近い場所に少女は居た)
(誰も居ない時計塔の屋上で一人、フェンスにもたれかかるようにして夜空を見上げる)
「きれー…だなー」
(誰に言うでもなく呟く)
(頬を撫でる夜風が心地いい。こんな夜は―)
「鯛焼きが、食べたくなるね」
(視線を戻し、手にした紙袋から鯛焼きを取り出した)
■クゥティシス > 「あむ」
(一つ口に頬張れば、仄かな温もりと優しい甘さが口中に広がって思わず頬が綻ぶというものだ)
(こんな夜に、とは言ったが、鯛焼きは何時食べても美味しい)
(それは知っている。けれども―)
「やっぱここ来たら…鯛焼きって感じする」
(あの時出会った不思議な少年との思い出故か)
(鯛焼き=時計塔というイメージが少女の脳裏には焼き付いているのだった)
■クゥティシス > 「は、ふ。むぐ…ん」
(口から白い息を漏らしながら鯛焼きを一つ、食べ終える)
(指先に付いた餡子をぺろりと舐めとり、ため息一つ)
「……星空は、同じなのにね」
(見上げる空に輝く星々は、自分の世界でも変わらず見えていたもの)
(それなのに―)
「遠いなぁ…」
(それ以外のすべてが違う)
(この世界で、人間の社会の中で生きると決めた今でも、故郷に帰りたくないわけではない)
(帰れるものなら帰りたい。けれど、その術はこの手には無くて)
「……ずっと、このままなのかなぁ」
(そんな言葉が口をついて出るのも仕方がないことと言えるだろう)
■クゥティシス > (確かに此処の暮らしもそこまで絶望的なわけでもない)
(食べ物は美味しいし、衣食住が保障されているのだ。これ以上望むべくもないだろう)
(けれど―)
「やっぱりクゥは、ルルフールだもんね」
(種族の―獣の血が、時折騒ぐのだ)
(安寧に身を置くなと)
(身を削ぐかのような狩りの緊張感こそ、ルルフールを強くしてくれるもの)
(それを忘れてしまえば、もはや彼女はルルフールではなくなってしまう)
「たまには、発散しとかないと…ね」
(袋に入った鯛焼きを食べ終えると、その場でぐっと伸びをして)
(足を、背筋を、腕を、肩を解し)
「……人の物じゃなければ、いいよね?」
(誰かに―強いて言うなら己の良心に一つ、確認を取ってから)
(彼女は時計塔のフェンスを乗り越え、遥か眼下に広がる学生区の街中へと飛び降り、姿を消した)
(後日、街中に住んでいた野良犬やネズミの数がずいぶん減った、などと人々の間で噂になったとか)
ご案内:「大時計塔」からクゥティシスさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に渡辺慧さんが現れました。
■渡辺慧 > その、大きな耳と尻尾が特徴的な少女。――クゥが――立ち去って、しばらくすぐ。
その全身と、その衣服。すべてを濡れ鼠のように濡らした少年が、フードを深くかぶり、ゆらり、とわざとらしい鼻歌をしながら時計塔にやってきた。
馬鹿、は馬鹿だろう。あの、海でゆらゆら漂っていたその後から家に帰らず。ずぶ濡れのまま散歩のようにこの街を歩き、そしてその足でここに来たのだから。
その手には、何も持っていない。
■渡辺慧 > 歩くと、雫がポタリと地面を濡らす。
幾分か乾いては来ているが……まぁ、それもそうだ。全身が海にしばらく揺れていたのだ。そうそう乾くものでもない。
生乾き、と言ってもいいほど。
何がしたかったのか。と聞かれると。やっぱり走りたかった。
それだけだ。楽しいことがしたかった。
じゃあ、なんで。と聞かれると。
……引きずっている、そんなことは何一つない。
「ふー……」
疲れた。
充実した疲労感だ。
肌に張り付く、べとべとした感触も、そんなに悪いものでもない。
いつもの、位置。
いつもの、時計塔の屋上。
定位置に胡坐で座り込んだ。
■渡辺慧 > ポケットをあさり、携帯を取り出した。
すっと、それの操作をして。
「おー……」
壊れていない。
(意外に丈夫なもんなんだな)
そこらへんに、放り置く。ずぶ濡れのまま持ってるよりかは、風に当たってでもしたほうがいいだろう。
その携帯は、特に防水ではなかった。
■渡辺慧 > 風に当たる携帯を見てふと思い出す。
そーいや。来なかったな。
電話。連絡。オムカレー。
……ま、特に日を指定したわけじゃないし、自分はこのざまだ。
「そーいうひも、ある」
大きく伸びをして、大の字でその場に寝転がった。
■渡辺慧 > 指折り数える。
檻葉の話、鐵に奢って……あ、零にはもう奢ったっけ? 後、あの獣耳が非常に気になる少女になんか食べ物持ってくのと、オムカレー。……あ、寺T。……漫画の感想も言ってねーや。後、あの美形とは一度決着を……いや、それは別にいい。あ、あと響にお礼を言わないとか。
……なんだか。あまり人に関わらない生活してるはずなんだけど。気づけば。
「……大変だなぁ……」
そんなに。悪いもんじゃないけど。
ご案内:「大時計塔」に松渓 つばめさんが現れました。
■渡辺慧 > 一番、今までで関係性がある、というと家族ぐらいだ。
……それも、もう、自分から希薄にして、随分たつけど。
だけれど――。
すぅ、っと。疲労感から眠気。
肌寒い、上に、体に気持ち悪く張り付く服。
今日もまた、いい日だった、って。
そして、目を閉じた。
■松渓 つばめ > 「10メートル、20メートル、……よしよし行けるじゃないっ」
声は、下から、急速に、高度を上げ。そして
「わ、うわわわわわっとぉ!」
時計台の高さまで来て、止まった。
「やっぱ無茶だったかなー」と言いながら、『危険なところ』をよじ登り、展望台に入ろうとする人間一名。
■渡辺慧 > 「………んむ?」
閉じていた目を開ける。気のせいか。
何やら、聞こえるはずのない場所から、声が聞こえた、気が。
身体を起こし、ポリポリとフードの上から頭をかく。
気のせいじゃなかった。
そしてその姿を見つける。
「……………地縛霊?」
■松渓 つばめ > 「い、痛ぅ……ハナ擦りむいたかな。メンチョになったら最悪じゃん、海行くってのにさ」
少女の筋力では少々不思議にも思える、懸垂運動。柵に掴まった腕に力を込め、一気に身体を引き上げる。
そこから冷たい石に手をつき、身体半分ほど見えるような高さまで上がってきたところで。
「あら」目があった。白いフードにはあまり見覚えはないが、上級生だろうか??
「生ーきてまーすよ、おー!?」
不幸にも、少年の感想に彼女の身体は正直だった。器用にも片手で自分を支え、もう一方の手でツッコミ。が、その反動で滑った。
落ちた。視界から一瞬消えて。
「何やってんのあたし……」
ヘリを危うい所でホールド。懸垂をもう一度実施し、上がってきました。今度は落ちないよう、柵の向こう側に軽く腰かけるようにして。
■渡辺慧 > 「…………うん」
なるほどなるほど。
そういうことか。
眠気に堕ちかけた自分の頭脳の冴えわたりを感じる。
つまりは、こういうことだね?
「芸人さん?」
新しいネタの練習中?
■松渓 つばめ > 「うはぁっ」ズッコケかけた。しかし、本当にズッコケたら天丼になってしまう。
天丼になってしまったら完全に芸人さんじゃないか。私は普通の女生徒ですよーう?
耐え切った。耐え切ってみせた。柵を掴んで抗議を申し立てる。
「いや女子生徒捕まえて芸人さんってあんまりじゃない?この時期に。
シケンベンキョーの一環ですってば」
映像的にはオリの中からウォウウォウ言ってる類人猿ですが。
■渡辺慧 > 「野生のジョシセート……」
至極失礼なことを言っているような気もするが、特に深い意味はない。ない。多分ない。
「うん。まぁとりあえず中はいったら?」
少年の目が、随分面白そうなのを見つけた、そんな目線に変わる。シシシ。変わった笑い声をしながら、その顔はいつもの猫のような笑いを浮かべた。
下から登ってくる。その発想はなかった。