2015/07/29 のログ
四十万 静歌 > 「――♪」

ああ、なんて心地よい伴奏だろう。
私には過ぎたほどに、
勿体無いほどに。

だから私は全てを尽くして――
この曲を歌い上げる。

之ほどまでに振り絞ったのは初めてかもしれない。
之ほどまでに熱をもったのは初めてかもしれない。

――流れる歌に添い遂げる曲。
まさしく最高だ。
最高の――演奏者にして伴奏者。

やがて歌を歌い終えて一礼を。

「――お粗末様でした。」

そして、にっこり笑って――

「素敵な伴奏を、ありがとうございます。」

心よりの礼を。

「では、ちゃんと洗って返しますね。
 あ、でも、会う理由になったとしても、
 速めに返したほうがいいですよね?
 どこにお届けすれば……」

そして、慌て始める。せわしない様子だ。
だが、とても素直な感情が見て取れるだろう。

奇神萱 > 「こちらこそ、どういたしまして。良かったぞ。なかなかだった」
「あまり偉そうなことは言えないが、熱があった。気持ちのいい熱だ。お前の声は誰の耳にも届くだろう」
「だから、謙遜するには及ばない。羨ましいくらいだ」

こちらの歌はたいぶお粗末だからな。
四十万静歌の半分でもひたむきになれれば何か変わるだろうか。

「本当にいつでも構わないんだが。ハンカチに困ってる様には見えないだろ?」

軽口を飛ばして。何やらそわそわしはじめたことに気づく。

「……そろそろ門限か。俺は帰るぞ。寮に部屋がある。途中まで一緒にどうだ?」

ヴァイオリンを片付けて、生徒手帳を開いてみせる。部屋番号が大きく載ってるのが見えるはずだ。

四十万 静歌 > 「あはは、そんなに褒めてくれるなんて、
 嬉しいです。
 その、あ、ありがとうございます。
 これからも精進しますね。」

なんて、真っ赤になって、
照れた笑顔を浮かべて真っ直ぐ見るだろう。
そして、部屋番号を見て、一つ頷き

「私も寮なんですよ。
 それじゃ、一緒に帰りましょう?
 良かった、うれしいです。
 萱さんともっと話したいななんて思ってたんですよ。」

なんていいながらウィンクして、
一緒に帰るだろうか。

奇神萱 > その日は珍しく道連れができた。奇神萱にとっては新しい友人だ。
おかげで時計塔のてっぺんから降りていく間にも話題に事欠かなかった。

思いがけない出会いがそのまま思わぬ収穫になった。
たまにはこんな夜があっていい。彼女がくれた熱がまだ胸の奥に残っていた。

今日はこのまま、満ち足りた気分でぐっすり眠れそうだ。
明日は譜面を探しに行こう。
そんなことを考えながら、二人して帰り道をたどるのだった。

ご案内:「大時計塔」から奇神萱さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」から四十万 静歌さんが去りました。