2015/08/11 のログ
ご案内:「大時計塔」に簾尾菜乃さんが現れました。
■鈴成静佳 > (なぜか。理由は、いくつか考えられる)
(ひとつはやはり、保健委員として生活委員の一員となったこと)
(委員会が「学園のいち組織」である以上、落第街やそこの住人に積極的に関与することは基本的になく、こと生活委員に関してそれは顕著)
(とはいえ、「常世島」という括りではひとつづきなのだ。無視できる、あるいは無視していい存在でもない)
(そして、どういった理由があろうと、そこに住んでる者もまた人間。基本的人権の保護という、共同体が成立する前提から目を逸らしてはならない)
(静佳のようなか弱い一学生に今すぐなにができるというというわけでもないが、それは今探しているところだ)
(もう一つは、『夜の仕事』に就いたこと)
(いくら島の暗部に足を踏み入れないという前提、店側から護ってもらうという前提を得たとはいえ、それでも『夜の世界』に足を踏み入れたことに変わりはない)
(歓楽街からもう少し歩けば、そこは「ただの女子」が居てはいけない世界。そこの間にある壁はもはや、障子紙のように薄く脆い気がする)
(明日の自分が、その壁を破っていないという保証は持てないのだ。確率もまた薄いと思っているが)
(……もう一つの理由。それは、自らの異能)
■簾尾菜乃 > (先客が落第街を見下ろしている頃。重い音を立てて、足を踏み入れる。咥えた煙草の先が風に一際輝いて、煙が風に流れていく)
(少女の背。恐らく教師ではないだろうと踏んで、僅かに安堵したような顔)
(足を踏み出す。少女の隣まで)
……こんにちは。
考え事のジャマ、しちゃったかしら。
(言いながらも、引き返す様子はない)
あたしも考え事しに来たの。
隣、いい?
(煙草を指先に取る。静佳の方へ曖昧に顔を向けて、小さく笑った)
■鈴成静佳 > (扉が開く音に、そちらを振り返る。生徒と思しき人影には、ニコリと親しげな笑みを浮かべ)
……んー? 全然大丈夫ッスよ! アタシの考え事なんてだいたいくだらないことッスから。アハハー。
(気の抜けた笑い声は吹きすさぶ風の中でもよく通る。振り向いたまま柵に腕を預け、歩み寄る女性の姿を確認する。たぶん見たことはない)
(……しかし、その口に咥えられてるものを見ると)
あー! タバコとかいけないッスよ! その歳で!
保健委員としてあまり感心できないッスよ!
(不躾に指をさしながらまくし立てる)
■簾尾菜乃 > (相手から返ってきた軽やかな声に、クスクスと笑う)
(柵に両腕を載せ、片足に重心を預けた格好で凭れ掛かる)
……アハハ!煙草?やだ。
あたしたち、『立ち入り禁止』の時計塔に登ってるのよ?
こんな場所で、今さら違反の一つや二つも変わらないわ。
(愉快そうに、猫が転げ回るような笑い声)
でも『保健委員』なら、きっと校則じゃなくてあたしの肺を心配してくれてるのよね。
そしたら、一本だけ見逃してよ。
(ねえ、と小首を傾げながら)
(煙草の火を消す素振りもなく、眼下の景色を見下ろす)
あたし、ちょっと前にここへ来たばかりなの。
……あなたは今、どの辺を見てたの?
■鈴成静佳 > (『立入禁止』の言葉には、静佳も苦笑いを浮かべるしかない)
……アハ、アハハー。それはそうッスよね。まぁそれに、教室や屋上で吸うくらいなら人気のないココのほうが見つかる確率も少ないしねー。
とりあえず、タバコなんて百害あって一利なしッスからね。自己責任だから止めはしないけど、注意はしたッスからね?
(上目で睨みつけるように首をかがめ、咎めるように指をくいくいと突き出す)
……そっ、アタシは保健委員。鈴成静佳、1年。よろしくね。
(注意が済めば再び静佳は笑顔に戻り、柵の向こうへと視線を戻す)
んー、なるほど、来たばかりかぁ。アタシはもう数ヶ月になるけど、この景色を見るようになったのはつい最近でね。
……今日見てたのは、あっちの方(東を指差し)……いわゆる、「スラム」って言われてるところ。
どんな人がどんな風に住んでいるんだろう、ってね。行ってみたくはないけど。
■簾尾菜乃 > ふふ。おっかしい。
でもありがと。よく心に留めておくわ。
……次からもう少し、軽い銘柄に変えようかしら?なんてね。
(空へ向けて、ふっと煙を吹き出す)
(狼煙にもならず、すぐに掻き消える)
あたし、簾尾菜乃、っていうの。一年よ。17歳。
それなら、同級生ね? 嬉しい。あたしの方こそ宜しくね。
保健室には、たまにお世話になると思うから。
(言って、どこを見るでもなく街を見下ろす)
ふうん……スラム。落第街のそのまた向こう、ね。
……無いことになってる、って聞いたわ。
こんな簡単に入れるところから、こんなに簡単に見下ろせるのに。
あたしたちみたいなのが行ったら、生きて帰っては来られないのかしら。
■鈴成静佳 > 簾尾さんね、よろしく! アタシは16だから、同じ1年だけどアタシが年下ッスね!
(隣を振り向き、歯を見せて笑う)
保健室はいいサボり場で、面白い話し相手になる先生もいるからおすすめッスよ。当然禁煙だけどね!
……んー、そうッスね。落第街の向こう。なんかあまり、その名前好きじゃないんスけどね。
(再び東に目をやる。地図でいうところの落第街全般を指してスラムと呼んだつもりであったのだ)
この島は広いようで狭いからね、時計塔から見れば360度一望ッスよ。海の広さのほうが逆に怖いくらいかも。フフッ。
……行ったらどうなるんスかねぇ、あそこ。
(ぎゅ、と錆びついた手摺を握る)
「怖い所」ということしか知らなくて。それだけで十分、行く気は起きないんだけど。
アタシ、若い内に死ぬのだけは御免ッスからね。簾尾さんも、別に行きたいわけじゃないっしょ?
■簾尾菜乃 > あなたみたいな子が居るなら、元気なときにも保健室へ行きたくなっちゃうわね。
保健の先生は……蓋盛先生、なら知ってるわ。あたしの『担任』なの。
……でもあの人だって、あれで結構吸ってるんでしょう?煙草のニオイ、するもの。
落第街、って名前がニガテ?
あたしも……好き好んで行きたいとは思わないけど。
……でも、『知りたい』とは思うわ。
何であたしたちにとって『怖いところ』なのか、行くと死んじゃうような目に遭うのか。
せっかく、一続きの島なんだもの。
……それにあたしたちだって、『落第』とは地続きなのよ。
(腫れ物に触るような、怖いものを指の隙間から覗くような)
(眉を下げて、スラムを見下ろしたまま笑う)
■鈴成静佳 > あ、担任だったんだー。
(蓋盛先生への言及については、その程度の反応に留める。『たちばな学級』なるものの存在は知っているが……)
(そこに『他者のトラウマを掘り出す』子が居ることは知っている。その子と自分が出会った時に良くないコトが起こるのは明白)
(そう前知識を得ているために、その教室そのものには自分から積極的に関わろうとは考えていない。もちろん、その生徒以外の関係者個人については別の話)
……お、そうなの? あの先生保健室でも吸ってるんスか? だったら今度見かけたら怒らないとなー。
(東の街並みを見下ろす簾尾さんの顔を、横目にちら見しながら、自分も視線を俯瞰に下ろす)
……んー、うん。そりゃまぁ、アタシだって知りたいッスよ。ホントのところを。
落第街、というよりは「落第」っていう言葉が嫌というか。
そりゃアナタの言うとおり、平々凡々なアタシにだって、「落第」の可能性はないわけじゃなくて。さすがに時計塔侵入くらいで落とされちゃ敵わないけどね。
(……その「可能性」は本来、勉学がひと通りできて危険な能力も持たない、平和主義の静佳には無縁の、0%に近いもののはずだった)
(今は、0%とはいえない)
……だからこそ、かな。
「落第」って言ってもさ。何に「落第」するのかな。何に「落第」したら、あんな島の隅っこに追いやられて。
危険と隣り合わせで生きていかなくちゃいけなくなるのかな、って。
だから、「落第」っていう言葉自体が曖昧なものに感じちゃって、あまり使いたくないんだよね。
……きっとそれって、「成績不振」よりも何か、とても重い意味を含んでるような気がして、さ。
(目を伏せる静佳の表情は固い)
■簾尾菜乃 > (静佳の反応に、一瞬だけ探るような眼差し)
(けれどその答えがあっさりしたものであると、そう、と返すのみに留める)
さあ、保健室で吸ってるかどうかは知らない。何となく、そんなニオイがしただけ。
偉いのね、シズカちゃんって。先生相手にも説教出来るんだ?
(柵に載せた腕に、顎を預ける)
(咥え煙草を上下に揺らしながら、ううん、と声を漏らす)
落第、するかも知れないの?シズカちゃん。
真面目に委員やってて、成績も悪くなさそうなのに。
……そうね、授業以外にも単位が取れる、っていうこの学園で、それでも落第しちゃうんだもの。
きっと、『この島に大人しく居ることが出来ない』……『それでいてこの島に居なくちゃならない人たち』、なんじゃないかしら。
異能や魔術……みたいな、ヘンなものが溢れてる、この島で。
常世島っていう場所に、順応は出来ないけれど、それでいて根付いてる、そんな人たち……。
(吸殻を手に取る)
(顔を横に傾けて、突っ伏すように静佳を見る)
■鈴成静佳 > フフッ、そんな、誰にでも説教できるわけじゃないッスよ。蓋盛先生は特別。あの人優しいし、仲もいいからね。
まぁマトモに聞いてくれるかどうかは別としてね。たぶん聞いてくれないッスね。
(にひひ、と苦笑を浮かべる)
(落第の可能性については、少し言葉に詰まる。そもそも異能云々はさておいて、未成年の静佳には『歓楽街の仕事』はかなりグレーのはずで)
……んー、どうッスかねぇ? 誰しも0%じゃないと思うッスけど? どんなアクシデントがあるか分かんないし。
成績優秀でも、真面目でもね。ここは、普通の学校じゃないんスから。
(異能者の集う学校。それゆえの危険は多い……力に溺れる者、力に翻弄される者)
(この簾尾さんはどのような異能者なのだろう? 普段なら気になったら聞いてみるところだが、この子は『たちばな学級』の子)
(異能の制御が効かず危険である可能性があり、それゆえに秘匿したい者も多いであろう。聞き出すようなことは避ける)
……そう。それ。きっと大事なのは『この島に居なくちゃならない人』ってとこ……なのかも。
(振り返り、柵に寄りかかったまま、今度は北の水平線に視線を移す。本土は見えないが、きっとそっちの方角にある)
未だ本土では……いや、世界中では、まだ異能者とか異邦人とかが完全に認められているわけではない。
アタシの故郷はド田舎だったのもあるけど、ここに来るまで、自分以外の異能者も、異邦人については存在自体も、ほとんど知らなかったからね。
そんな中に飛び込んでいくよりも、たとえスラム暮らしに身をやつしても、この島に居たいっていう人々。
きっとそれが、あの街の住人、なんスよね。
あっちよりはきっと、順応できるんだ。「仲間」の集う、この島に……。
……とはいえ、寂しい話ッスね。なんとも。
(フゥ、と深い溜息をつく)
■簾尾菜乃 > 蓋盛先生って、何か軽そうなイメージあるけど。……ふふ、あたしには何とも言えないわね。
(どんなアクシデントがあるか、の言葉に、僅かばかりびくりとして)
(薄手の、白い手袋で覆った自分の手を見る)
(訊かれた訳ではない。けれど、その上澄みをなぞるような居心地の悪さに耐えかねて)
…………。
あたしもね、本当は……異能絡みの『アクシデント』でここに来たの。
素手で触った人の異能や魔術を、増幅……とか、強化……させちゃうって。
この手袋をしてる限りは、何にもないの……ホントよ。
学校のみんなが、みんな優しいのも知ってるの……。
……でも、異能を使うみんなに囲まれてるは……まだ少し、怖いの。
(溜め息を吐く静佳に、小さく笑って)
……だからホントは、あたしもいつスラムの人間になっちゃうのか、判んないのよね。
この学園がどんな風に回っているのか、まだ知らないから。
スラムの人たちがこの島に居たいかどうかさえ、実際のところは判らない。
居たくもないのに……島の中で、不本意な暮らしをせざるを得ない人たち。
そうしたらきっと、あたしたちにとって怖い存在にもなるんだわ。
■鈴成静佳 > 異能の強化、かぁ……。
(抜けるような夏の空を見上げながら、思案する。そのような能力の持ち主はすでに親しい友人に一人いる。佐伯貴子さん……)
(その子は異能のコントロールこそ出来るものの、相当重い過去を持っていることを断片的ながら告白してくれたし、垣間見たりもした)
(「他者強化」。聞こえはよいが、実のところ当人にほとんどメリットがない。そればかりか、力を求める悪人どもに利用されるのが目に見えている)
(ましてや隣にいる少女は、自らの意思でコントロールさえできない。きっとそれは「暴走」に近いのだろう)
(異能者に囲まれること自体にプレッシャーを感じるという心情。過去にどんな「アクシデント」があったか、察する事はできても、理解することは……)
……大丈夫ッスよ、簾尾さん。
(精一杯の笑みを作り、快活な声で励ます)
学園のシステムがまだ分かんないのは、来たばかりだから仕方ない。でもさ、『たちばな学級』があるでしょ?
蓋盛先生とか、その他の先生とか、アナタ達に真摯に向き合ってくれる教師がちゃんと居る。
あの先生は確かに軽いけど、真面目で頼れる先生ッスよ。アタシが師匠と認めたくらいッスから。
だから、不安だと思っても、彼女らを頼ってれば、きっと道は見つけられるッスよ。
それにアタシは保健委員だからね。生徒みんなの味方だから当然、簾尾さんの味方ッスよ。安心して。
だいじょーぶ、アタシの異能は手を震わせるだけの地味な異能だから、ちょっとくらい強化されても振動が強くなるだけッスよ! アハハー。
(気の抜けた笑い声を上げた後、また真顔に戻り)
だから、取りあえずはあの街の事は、気にしないでおこう?
あそこはとりあえず、委員会とか財団に所属した人たちが真面目に考え向き合うべき場所で、普通の生徒には関係ないところ。
そういうことにしておこう、ね?
(ニッコリと笑みを浮かべながら、手袋越しに手を握ろうとする)
■簾尾菜乃 > ………………。
(静佳の言葉を聞きながら、やがてふっと吹き出す)
……ふふ。シズカちゃん。あなたって、ホントに優しいのね。
あなたみたいな人、あたし落第なんかして欲しくないわ。
シズカちゃんの『師匠』なら……きっと、蓋盛先生もいい人、……なのね。
(語尾が曖昧に濁る)
(担任ならずとも、大人について語るときには、みなそのような声になる)
(まだ、どうしても)
――そうね。考えすぎたら、夢にまで見ちゃいそう。
それよりも、眠るときくらいは安らかで居たいもの……。
(差し出された手を見る)
(『手を震わせる異能』を、発する手)
(見下ろして、)
………………。
(掴む)
(息を殺して、触れてはいけないもののように)
(――当然のように、何も起こらない)
(恐る恐る、静佳の顔を見る)
(が、すぐに目を泳がせる……)
(困ったように、笑う)
……あはッ。
バカみたいね、あたし。
こんな……当然のことをするにも、まだ時間が掛かるんだわ。
……ありがと、シズカちゃん。
■鈴成静佳 > (右手を掴まれれば、さらにその上から左手も重ねて軽くシェイク。その左手の平は微かに振動している)
(目を泳がせる簾尾さんを、静佳は澄ました笑顔のまま真っ直ぐ見つめ続ける。くりっと丸い目だ)
ほら、大丈夫じゃないッスか。手袋越しなら大丈夫なんでしょ? なら怖がることはないッスよ。
握手は挨拶、お辞儀の次に基本のコミュニケーションだから、どんどんやっていこう?
その先は……んふふ、まぁ追々ね。
(コミュニケーション。静佳は軽いものから過激なものまで幾つも手段を知ってるし、使っている)
(そして思い出すのは蓋盛先生との【特殊Free】……あの時保健室に先客でいた娘が、かの『トラウマを呼び起こす』異能者だと後日知った時は、さすがに肝を冷やした)
(もしかしてこの子もいずれ……? まぁ、それはそれで)
……蓋盛先生とは仲良くね。あの人、教室ではどうか知らないけど、保健室の中ではホント面白い人だから。フフッ。
(改めて島の南方を眺める。人口のほとんどは、学園地区より南側に集中してると言ってよい)
せっかく異能者が集う「学園の島」なんスから。
周りの人を怖がってるよりは、似た悩みを持ってる「仲間」だって思ったほうがお得ッスよ。
アタシだって自分の異能で悩むことはないわけじゃないし。まだ自分でもよく纏まってない悩みだけどね。
だから、いろんな人と話してみよう? 交流は大事ッスよ。
(そう、島の東側に住んでる人たちだって、きっと同じように異能に悩んだ「仲間」……)
(心のなかで呟くも、とりあえずこの子の思考から落第街の存在は忘れさせたい。口には出さずにおく)
……さぁて、そろそろ休憩も終わりッスね。保健室に戻らなきゃ。
せっかくだから一緒に行って覗いてみる?(握手のまま今度は手を引いて、屋上の入り口に戻ろうとする)
■簾尾菜乃 > (手が包まれる)
(その片手が振動しているのを見るや、肩を強張らせる)
(まるで携帯電話や、機械のような)
(けれど、それだけだ)
(それ以上のことは、何も起こらない)
(緊張を落ち着けるように、ゆっくりと呼吸を繰り返して)
うん。ホントに……ありがと。
大人のひとの言葉より、ずっと綺麗に聞こえるわ。
あたし、周りの人が怖いんじゃない。
……大人が、怖いの。
でも……シズカちゃんや、シズカちゃんが信じる大人の人たちなら……まだ、少しは。……
(自信は持てない。言葉を濁す)
(繋いだ手を見下ろして、ただ笑う)
うん。
一緒に行こ、シズカちゃん。
……ね、こっそり降りましょ。
ここに入ると、怖い顔をする先生が居るのよ。
それにあたし、『一服』もしちゃったから……。
ニオイで嗅ぎ付かれちゃわないように。
(照れ臭そうに、眉を下げて笑いながら歩き出す)
(煙草の吸殻を、粗末な携帯灰皿に押し込めて、また手を繋ぎ直す)
(二人で歩けば、きっとバレない)
……ヨキっていう、美術の先生よ。
この塔に登るときは、彼に見つからない方がいいわよ。
(陽光の下にありながら、隠れるように階段を降りてゆくのだろう)
(保健室の前まで辿り着いて――)
(悪戯っぽく、笑ってみせる)
ご案内:「大時計塔」から簾尾菜乃さんが去りました。
■鈴成静佳 > ヨキ先生……あー、ヨキ先生かぁ!
(『たちばな教室』のもう一人の顧問として名を連ねていたのを見た記憶がある。忘れていた。それに容姿はまだ知らない)
それは怖いッスね……アタシも見つからないようにしないと! アハハー。
(笑いながら、階段を下っていく)
(きっとこの島での「オトナ」と「コドモ」の境界は、本土よりは曖昧なのかもしれない)
(オトナの仕事に足を踏み入れた静佳、たまにコドモみたいに無邪気な雰囲気を纏う蓋盛先生)
(あまり神経質に怖がることはないことに気付いて欲しい、と思う静佳であった)
ご案内:「大時計塔」から鈴成静佳さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」にアーヴィングさんが現れました。
■アーヴィング > (時計塔の最上部、立ち入り禁止の区画にふわり、と人影が舞い降りる
その手には見る物が見れば判るほどの高級なワインが提げられていて
手すりも柵もない、一歩踏み出せば虚空に飲み込まれるふちへと腰掛ける)
■アーヴィング > 20年…か
また、遠いところに行っちまったなあ、陛下
(夜空を見上げ、誰ともなしに語りかける)
この間…陛下に会ったという騎士がこっち来ましたよ
貴方は相変わらずのようで…安心した
(世界の向こう側
それは二度と交わる事のない遠い遠い、空の彼方
それは覚悟をしていたはずで
それは受け入れていたはずで
しかし、20年という…想像出来てしまう彼方へと行ってしまったという事実は
異世界なんていう突拍子の無い事よりも、実感として理解してしまう、理解してしまった)
■アーヴィング > 俺達は…空を取り戻せたんだな
騎士の空を
翼の舞う蒼穹を……
正直…事が終わってすぐに死んじまったもんで実感わかなかったけど
ああして聞かされると、安心した
出来れば陛下に戦勝報告、したかったな
(故郷では次元というものの研究は進んでいた
あくまでも理論として存在したという程度だが
神々が住まうとされた空の彼方、天蓋領域の向こうには無数の世界が広がっていると
だからきっと、星空の違う、孤独な月の昇る空の向こうに言葉を投げれば、届くのでは無いかと)
この空が続く限り尽きぬ忠誠を。たとえジャハンナムの軍勢に攻められようと、私は貴方の元へ戻る
私は貴方が生涯誇れる剣として傍にありたい
(それは誓いの言葉、騎士叙勲を受けた時に口にする、騎士が生涯胸に抱き続ける言葉で)
約束…破っちまいましたね、陛下
(それは異界への転移という事故により守れなくなってしまった
自分はあの時に死んだ、自分は過去の人間で…これはきっと死後の余生で
そう思い定めては見ても、それは抜けないトゲのように胸に残り続ける)
ご案内:「大時計塔」にダナエさんが現れました。
■ダナエ > ──……ゥンゴゥンゴゥンゴゥン
エレベーターのモーターのくぐもった音が止まった後で、しばしの静寂。
少々不審に思えるほどの静寂。
その後、最上階のエレベーターの扉が開いたが、
「む」
中の人間は操作を誤り、また扉は閉まった。
──ゴゥンゴゥンゴゥンゴゥ……
さらに操作を誤り音は下へと遠ざかり、
──……ゥンゴゥンゴゥンゴゥン
また近付いて、止まった。扉が開く。今度は問題なく開く。
──ゴッ……ゴス…… ゴッ……ゴス……
考え事を邪魔してしまいそうな足音でエレベーターから出る。
「……おお! 何と先客がいたのか。邪魔をするぞ」
さも今初めて見かけましたという下手な演技をしてから、
辺りをうろうろし始める。
■アーヴィング > 俺はこっちの世界で、新しい誇りを見つけようと思います
陛下に恥じないように
レガリアの騎士とはこうだと胸を張れるように
まだ…形から入ったばかりですけどね
(太陽を抱く一対の翼
自分が与えられた騎士紋章を鮮やかに縫いこんだ腕章を指で引っ張り、苦笑を浮かべる
この地の治安維持組織、風紀と契約した事に後悔は無い
自分に出来る事は…戦う事と飛ぶ事だけ
ならばそれをどこかの誰かのために使える自分でありたい
騎士の誇りはこの地では通じない、騎士だと名乗ろうが困らせるのが関の山だろう
しかし誇りはこの胸にある
ワインボトルのネックに炎がぐるりと一周すると、そこから溶け落ち
ぐいと一口あおる)
まっじぃ……よくこんなもん美味そうに飲んでたなぁ…陛下
(眉をしかめ、ワインボトルを振る
この島では違法に当たるが、故郷では15で成人とされる
ゆえに酒は飲めたのだが、いつ出撃命令が下ってもいいように酒は一口も飲んだ事はなかった
初めて口にする酒精の味に眉を潜め)
ん?おう、またごつい武装をした奴が来たもんだなオイ…
おう、俺のもんじゃねぇし好きにしな
ちっと野暮用済まさせて貰うからよ
(と、立ち上がると親指でワインの封をして、ちゃぽりと揺らし)
■ダナエ > 「野暮用?」
見ればワインと思しき液体の入ったボトル。
「……このような場所で飲酒か。
あまり飲むと落ちるのではないか?」
ちらりと塔の高さを伺うように、柵の外、地上を見る。
捜し物をするため顔のガードは上げている。
キョロキョロと辺りに視線を落とす。
先日ここで、不用意にも落とし物をしたらしい。
「……すまんが貴公、ここで栞を見かけなかったか?
このくらいの大きさなのだが」
手甲をした指で、10cmほどの長さを示す。
■アーヴィング > なぁに、舐めただけだ、酔いもしねぇや
それに……初めて飲んで見たけど渋くてあんま美味くねぇや
(へっ、とどこか照れたように笑う
彼にとって男らしさというのは豪快に大酒を飲んで笑う、というイメージがあったわけで
自分には無理だったと思うと、少し恥ずかしい)
こいつは…弔い酒さ、俺のな
(事情を知らなければ意味不明な言葉を口にし、ワインのボトルを宙に投げ放つ
この高さから地面に落ちればタダでは済まない事だろう
しかし、素早く胸に炎を燈し、一挙動で大剣を抜き放つ
抜き打ちで切り裂かれたワインのボトルはその衝撃で、飛び散った飛沫はその風圧で巻き上げられ)
天の焔よ!
(呼びかけに応じ、刀身から炎の大瀑布が空に向かいぶちまけられる
一瞬、昼間のように炎が周囲を照らし、ボトルと酒を蒸発させ……)
っし、終わりっと
おう?落とし物か…見かけねぇな
大切なもんか?探してやろうか?
見ての通り灯りは作れるし……俺ぁ、あれだ、風紀だからな
(と、ニッと笑いかけ、真紅の、自作の紋章を刻んだ腕章を指で引っ張る)
■ダナエ > 「ほう、酒は今日が初めてか。
うわばみと言われても頷くような身なりだが、意外だな」
相手の見た目や喋り口調からすると、
むしろ自分としてはいける口のように感じられた。
「祝杯ならご相伴に預かりたいところだ。
……貴公の、弔い?
い、生きているように見えるが……、!?」
そこで宙に放り投げられたボトル。
何をするのだ、と問う間もなく、一閃。
「──ッ!」
咄嗟に割れたガラスをガードしようと大盾に手を伸ばすが、突然の炎の光。反射的に目を瞑る──
次に目を開けた時には、
そこにはワインボトルが存在した痕跡さえ残されていなかった。
ボトルの破片も、ワインも何も。
「………………」
ごくりと息を飲み、
大盾に伸ばし掛けていた手をゆるゆると所在なげに戻す。
「…………貴公、相当の……」
手練れだな、という声はかすれていた。
「…………ふむ。
では頼もう、探しているのは栞だ。
……栞と言っても、溶けて乾いた紙の固まりと呼んだ方が近いか」
やや自嘲気味に。
腕章を見れば、相手の顔と見比べて。
「風紀……?
ああ、この学園の秩序を守っているとかいう、あれか?」
確か教員採用試験の時に、面接官か事務員から聞いた気がする。
「…………秩序を取り仕切る者が、
こんなところで飲酒をしていて良いものなのか?」
果たして本当に風紀委員だろうか、という顔。
■アーヴィング > まあ、あれだ
酒飲んでたら剣先が鈍っからな
俺ぁよ、異世界人っつー奴でよ
死んだんだよ…そう、戦って、戦って、死んだんだ
そうしたら何の拾いもんか、こっちの世界に来ちまってな?
だからまあ……故郷の俺の、弔いさ
(ちょっとセンチメンタリズムすぎただろうか?
初対面の、それも騎士らしき格好をした相手の前でやった事だと後から気付くと、はにかむように笑って)
いや、咄嗟にガード姿勢にうつったあんたもすげーと思うけどな
驚いた癖して動きに遅滞がねぇ
(今度は楽しそうに笑う、ころころと笑顔の質が変わる男だ)
ふぅむ……ま、いいや
こんな時間、こんな場所に探しに来るほど大事なんだろ?
だったら…失くしたら事だ
(と、大剣を光の粒子に分解して収めると、手の平サイズの炎を数個、自分の周囲に浮かべて証明代わりにして)
おう、まあ嘱託委員ってやつだけどな
アレだろ?道に迷ってる老人案内したり、落とし物探しも仕事のうちだろ?
あー……マジで一口舐めただけだから勘弁してくれや
な?
(と、顔の前で手を合わせて、悪びれた様子もなく頭をさげ)
っと、名乗りが遅れたな
アーヴィング・ヴァン・オルブライト、風紀の嘱託委員で、騎士だ
(そう名乗ると、浮かべた炎を動かして周囲を照らしながら
さーてどこにあっかな?と歩き始め)
■ダナエ > 「ほう、異世界から。同じだな。
……しかし随分と、この国に溶け込んでいると見える。
ここに来て長いのか?」
相手の服装をしげしげと眺める。
「死ん……ではいないのではないか」
比喩的な意味だろうかと首を傾げ、考え込む。
「……貴公の世界から貴公が消えて弔い酒、ならば。
この世界に貴公が現れて祝い酒、
というのも対になるのではないか」
「よせ、貴公に誉められるとかえって惨めになる。
……そういうレベルの腕の差だ」
防御は間に合わなかったが、その腕の差が分からないほど未熟でもない。
「ほう……器用なものだな。すまない、助かる」
現れた炎を見上げ、地面を探し出す。
「……私の姫君が手ずから、
私のために作って下さったものなのだ」
俯いて探し続ける。
「……騎士?」
顔を上げてじろじろと。信じられないという表情。
「戦闘能力は申し分ないのだろうが、その……他が……
…………貴公が、騎士?」
自国の騎士とは結びつかない目の前の相手に、もう一度聞いてしまう。
■ダナエ > 「ああ、申し遅れた。私はダナエ、見ての通り重騎士だ」
こほんと咳払いをしながら。
■アーヴィング > んにゃ、月はまだ一巡りしてねぇな
そんな溶け込んでっかな?
(しげしげと眺められてもイマイチ判らず
それが服装を指している事に気付かず不思議そうに自分の姿を見下ろし)
あー、まあ、死を覚悟して…世界から消えた事にはちげーねぇからな
ま、俺のケジメっつーかそんなもんだと思ってくれや
(髪の毛をかき回し、なんと説明したものか…と少し考え
結局思いつかず、軽く笑い飛ばして)
……ま、俺がつえーってのは否定はしねぇけどよ
そう卑下すんじゃねぇよ
胸張って背筋伸ばして、ちっとばかし背伸びの一つもしてみりゃ勝手に格が追いつくもんだぜ、こういうのは
(こういう事に関してはどうも言葉が上手く無い
だから、昔自分がかけられた言葉をそのまま借りて)
そっか、姫さんがね…そいつぁ誉れだ
ならしっかり見つけてやんねぇとな
あ、色とかわかっか?
(と、うっかり炎で炙ったりしないよう、床や壁から距離を離し、なるべく風上に位置して飛び込んだりしないよう気を使い
風の声に耳を澄ませ三次元知覚能力の網を広げ動体走査を並行して行い…)
ああ…あ、こんな格好だけどあんたみたいな鎧もちゃんと持ってるぜ?
つってもアンタ…ああ、ダナエのとこの騎士と俺の言う騎士が一緒とは限らねーか
俺の世界の騎士は…空を往くんだ。誇りを胸に、剣と翼に国の威信を乗せて他国の騎士と決闘を行って
民を脅かす魔獣を討伐して、って感じだな
あ、これが俺の騎士紋章な?
(と、真紅の腕章で金糸で縫いこまれ、装飾を施された太陽を抱く翼の紋章を指差して)