2015/08/18 のログ
ご案内:「大時計塔」にクゥティシスさんが現れました。
クゥティシス > (夏の夜空に瞬く星々をぼんやりと見上げていた)

(満天の星空を見上げていれば、少しだけ、故郷に帰った気持ちになれる)
(街中から見上げる空と、此処から見上げる空はやはり違うものだ)
(視界を遮る建造物も無く、ただ吸い込まれそうな星々の瞬きだけを瞳に焼き付けることが出来る)

「……きれい、だなー」

(ぽつり、と)
(何ともなしに呟いた)

クゥティシス > (故郷と同じようで、やはりこの空は違うものだ)
(見える星々も故郷の物とは異なっていて)

(朝には日が昇り、夜にはこうして星が煌めく)
(それだけは変わらないのに)

(こうして見上げた夜空の下に、焦がれる故郷は存在しないのだと)
(そう、思い知らされる)

「みんな、どうしてるかな」

(思えば此処に来てから随分と時間が経った)
(もうニンゲンの作り上げた文化や社会にも馴染んでしまった)
(買い物にも慣れたし、学校にも慣れた)
(ニンゲンとの付き合い方も―少しは、上達したとは思う)

ご案内:「大時計塔」に岡部 吹雪さんが現れました。
クゥティシス > (日々の暮らしで戸惑うことも、もう殆ど無い)
(だからこそ)

(こうして故郷を思い出すことがあると、胸が締め付けられる)
(自分からどんどん故郷を遠ざけてしまっているのではないかと、そう思ってしまう)

(ニンゲンの社会の中で生きると決めたのは自分自身なのに)
(ニンゲンの社会に慣れればなれる程、故郷は最早「戻るべき場所」ではなくなってしまうのではないかと)
(そんな想いが彼女の今の悩みでもあった)

「まだ、狩りは…出来るのかな」
「まだ、遠吠えで皆とお話は出来るのかな」
「まだ…クゥはルルフールで…いられるのかな」

(掌を見やり、握り締める)
(やり場のない感情が、彼女の胸中でもやもやと広がり続ける―)

岡部 吹雪 > クゥの視界がぼやけたかと思えば、うっすらと紫煙が揺らぐ。
風上には、両手をポケットに突っ込みつつ咥え煙草の教師の姿。
水気の抜けない風がなびくたび、まだら模様の長髪がはためく。

「よ、不良生徒。
 ガキは立ち入り禁止つってンだろーがよ。
 悪いおじさんたちに捕まっても知らんぞ。」

クゥティシス > 「…その時はフブキが守ってくれるんでしょ?
「だってフブキは、センセイだもんね」

(視線を岡部へと移せば軽口をたたく)
(自分を拾ってくれた彼とは、浅からぬ親交があった)
(日常生活のいろはを教えてくれたり、学園生活の基本を叩きこまれたり)
(そんなこんなしているうちに、自然と彼に対しては態度がやわらかくなっていったのだった)

「センセイはセイトを守るもの…でしょ?」
「フブキが最初に教えてくれたことだよ」

岡部 吹雪 > 「悪いことしてなきゃな。
 悪いことしてる奴はオシオキされても文句は言えねーよ。」

からからと笑いながら地べたに座り込んだ。
日中の熱さは何処へやら。風で冷えたのか、ひんやりとした感触が身体に染み入る。

「あー、夏休みも終わっちまったなー……。
 マジであっという間でしょ。 何か学生らしいことは?」

"学生らしさ"なんて曖昧な概念で、彼女の現代社会への適合を計る。
―――なんてものは建前のようなもので、実のところただ馴染めてるかどうか心配なのだ。
彼女がこの世界に現れてからたいした日数も経っていない。
入学したのなんて、それこそつい最近なのだから。

「そろそろいい男見つけてもおかしくねーよな。」

いた?と視線で質問を投げかける。

クゥティシス > 「んー…夏っぽい、こと」
(眉間に皺を寄せて考え込む)
(この世界の夏らしいこと、が何なのかはイマイチピンと来なかったが―)

「水浴びとかは、いつもより多めにしたかも」
「あ、あとかき氷食べたよ。あれ、夏にしかないんでしょ?」

(指折り数えてみるも、どれもパッとしない)
(ひと夏の思い出、だなんて上等なものはどうやら経験していないらしく)

「いい男…って、言われてもなぁ」
「だって、此処クゥのほかにルルフール居ないじゃん」
「そんなのフブキだって知ってるでしょ?」

(岡部の言葉の意図を測り兼ねて訝し気な顔をする)
(彼が言った「いい男」とは要するに番いになれるような相手だということは分かった)
(だけれども、此処には自分以外には同じ種族の仲間はいない)
(彼女にとって、番いというものは同種族であるべきらしく―)

「あ、でもね」
「一緒に居て楽しいニンゲンなら、いっぱいいるよ」

岡部 吹雪 > 「そりゃあいいや。けどよ、その『ニンゲン』ってのはやめた方がいいぜ。
 俺もお前も、そいつらだって全員『人間』だからよ。
 『人』って言ったほうが、言われた側は引っかからねえからな。
 変な感じするかもしれねーけど、人間関係ってのは変なモンだからな。」

一層深く吸い込んで、夜空に煙を吐き出した。

「で、その楽しいってのは常世島楽しいランキング上位陣の俺より楽しいワケ?
 嘘でしょ。ないない。どんな奴?」

クゥティシス > 「…そんなもんなの?」
「それがこの社会の決まりっていうなら…そうする、けど」
(岡部が教えてくれることは何時だって…いや、割と正しいことが多い)
(今回もきっと間違ったことは言ってないのだろうと、素直にうなずいた)
(けれども、胸の中で渦巻く靄はより一層深くなるばかり)
(岡部がそうしたように。胸の中の煙を夜空に吐き出してしまえれば楽なのに、なんて考えが過る)

「フブキとはね、何か方向性?が違うって感じがするよ」
「フブキはね、「面白い」の」
「ケイはそうじゃなくってー…「楽しい」って感じなんだ」
「此処でよく会うよ。いっつもフード被った男の子なの。知ってる?」

(吐き出せない想いは今は置いておこうと、小さく首を振って意識を切り替える)
(此処でよく出会う人物について思うことを述べるも、どうにも断片的である)
(教師という立場上、岡部であればクゥが零すいくつかのキーワードから思い当たることもあるかもしれないが―)

岡部 吹雪 > 「『慧』?ってーと……ああ、渡辺ね。
 あいつも大概変な奴だからなー……。
 ……いやちょっと待って。あいつが『楽しい』で俺が『面白い』っておかしくない?
 俺どっちかっていうと『素敵』、『魅力的』、『今すぐにでも抱いて欲しい』でしょ。
 どうなってんの?」

口元を尖らせながら不平不満。
軽妙な語り口は、混じりッけなしの冗談100%。
彼女の反応を待たずに、口笛ひと吹きで流れを変えた。

「……まあいいけど。
 それよりもあいつ、まだこの塔に入り浸ってンのか。
 立ち入り禁止っつってんのにどいつもこいつも……。」

深いため息と共に、携帯灰皿に吸殻をねじ付ける。

「……いっそ入場料でも取っちまった方が、財政の助けになるんじゃねーの。
 ついでに自販機とか置いてさ。」

クゥティシス > 「やっぱりフブキは面白いね?」
「そういうの、結構好きだよ」
(岡部の言葉にくすくすと思わず笑みがこぼれた)
(彼の意図するところが察せない程、人の心の機微に疎いわけでもない)
(こうして自分を笑わせてくれる彼は、やっぱり「面白い」人なのだ)

「だってここ、こんなに景色良いんだもん」
「下みたいに騒がしくもないし、落ち着きたい時にはもってこいだよ、ここ」
「此処はこのままがいいなー。余計なものが無い感じがいいんだよ」

岡部 吹雪 > 「シンプルイズベストってね。
 歓楽街で夜遊びしてるアホ共に聞かせてやりてーよ。
 あいつらが成績落とすと俺まで文句言われるんだからな。」

のそりと立ち上がって砂を払う。
目の前で綻ぶ少女の笑顔は、出会ったころよりいくらか"余裕"が生まれていた。
つられるように、口角を上げかすかに笑う。

「んじゃ俺今から一杯やってくるから、また明日な。
 寝坊して遅刻だけはすんなよ。反省文書きたくねーだろ?」

ひらひらと手を翳し、来た道を戻っていく。
やがて二本目の煙草の煙か、滲んだ背景がゆらり空へと吸い込まれていった。

ご案内:「大時計塔」から岡部 吹雪さんが去りました。
クゥティシス > 「だいじょーぶだいじょーぶ」
「そっちこそ、飲み過ぎて寝坊なんてしちゃダメだからね」
「ばいばいフブキ」

(去っていく背中にちらり、と視線だけをやって)
(こうして彼と言葉を交わすのは何度目だろう?)
(最初に比べて成長は出来ている筈だ)
(だけれども)

(やっぱり胸に残る靄は取れなくて)
(空に流れていく紫煙を、何処か羨ましくすら思った)

「クゥは、ルルフール」
「フブキも、ケイも、ニンゲン」
「それを区別するのは…いけないこと?」
「でも、クゥは……ルルフールで、いたい」

(言葉にして尚、気持ちが晴れることはなかった)
(この異世界に於いて)
(種族という絶対のアイデンティティを手放す必要があるのなら)
(もし、本当に手放してしまったのなら)
(故郷への繋がりが消えてしまいそうな気がして、一人掌を強く握りしめるのだった)

ご案内:「大時計塔」からクゥティシスさんが去りました。