2015/08/19 のログ
ご案内:「大時計塔」に渡辺慧さんが現れました。
■渡辺慧 > 馬鹿じゃないか、自分は。
そう、胸中で呟く。
いくら、上の空とはいえ、ここに。
ぼんやりと来るなんて。
――それほど、習慣化してるということだろうか。
講義に出ようとも。気が晴れない。
ずっと抱え続けそうなぐらいなそれ。
「……ふぅ」
一つ息を吐いて。いつもの定位置。
そこに、胡坐をかいて座り込んだ。
■渡辺慧 > 片手に持った缶コーヒーのプルタブを開ける。
なんだか、久々にこうしているような気もするし。
つい最近もこうしていた気がする。
街の、夜景を眺めながら――ふと。
「……ずっりーよ」
どうせなら、自分のそれも消してくれればよかったのにと。
自分勝手な事をつぶやくが、それをぶつける相手はもういない。
■渡辺慧 > 缶コーヒーを煽る。
……ひたすらに、苦い。どうにも苦い。
とても。とても、苦い。
……人と関わるのさえ、どこか。怖くなってしまった。
誰とも話していない。避ける様に、逃げるように。
一日を過ごして。
――いや。元々は、そうだったじゃないか。
それは、去年まで。去年と、ほとんど変わらない生活。
もう一度、浅く息をついた。
■渡辺慧 > いなくなる、というのは。
誰か、いなくなる。友達だった人が、自分のせいでいなくなる。
ひどい孤独感。こんなことなら――。
誰もいない此処。誰もいない時計塔。
ふいに、自らの携帯を取り出して、見つめた。
これを、壊せば、人間関係もリセットされるのかな、なんて。
ひどくくだらない思考。そんなわけはないのだ。
ため息ばかりが尽きない。
ご案内:「大時計塔」に空閑 栞さんが現れました。
■空閑 栞 > 誰も居ない空間に、足音が響く。
夏季休暇が終了し、久しぶりに学校へと来た。
やはり長い休みの後の学校は面倒だったが、嫌いというわけではない。
特に、時計塔の空気は学校で特に好きな場所であった。
「んー……ひっさしぶりの時計塔……には、先客が居たみたいだね」
視線の先には白いパーカーの少年。
随分前に会話して以来、特に会った記憶もない。
しかし、あの猫のような笑みは特徴的で、そう簡単には忘れられるものではなかった。
「えっと、田中ヴォルテックスだっけ……」
そう声をかけながら、少年へと近付いていく。
■渡辺慧 > ――。
雰囲気にそぐわない、よびな。
生憎。……それで笑える気分ではなかった。
誰だったかと記憶をたどり――。
……そういえば、随分前に会った、誰かだ。名前は思い出せない。
振り向くこともせず。ただ、暗い声で。
「……違う」
「だれだっけ」
■空閑 栞 > 「あれ、落ち込んでた感じかな?
空気読めてないみたいでごめんね。
確か公園で寝てた白パーカーくんだよね。
確か……渡辺慧」
前回の会話から考えれば、シシッと笑いだしそうなところだったが、暗い声での返答。
もしかしたら人違いか? いや、間違えてはいないはず。
そんな自問自答をしつつ、質問への返答をする。
「空閑だよ、空閑栞。前会った時は敬語だったかな」
■渡辺慧 > 「……べつにー。夜景を眺めてただけ」
チラ、と。少しだけ振り向き、細目で相手の顔を見遣る。
あぁ――やっぱり。
再び前へ向き直すと。――ガリ、と奥歯をかんだ。
これじゃあ、ひどく。ガキじゃないか、と。
「そーだよ。慧」
「……――空閑ね。顔は覚えてたよ」
「君も夜景でも眺めに……来たのかな」
ゆるり、と。手元にある缶コーヒーを、口元にあて、傾けた。
■空閑 栞 > 「そっか。それにしてはテンション低かったけど。
何か嫌なことでもあったの?」
歩き、近付き、腰を下ろす。
少年の隣に。しかし、間には人が一人座れそうな距離。
これぐらいが、心地いい。
「ん、なら慧って呼ぼうかな。
私はここの空気を味わいに来ただけ。
夜景を見に来たって言った方がロマンチックだったかな」
ポケットからチュッパチャプスを二つ取り出し、片方を口に咥える。
もう片方を慧へと差し出し、いる? という仕草。
■渡辺慧 > 君には関係ないね、とでも言いかけた口。
そっと開かれた口からは、生憎。それを自制するだけの力はあるようだ。
――そして少なくとも。誰かと話す、というのだけでも。
「……夏季休暇が終わったから、とでも言っておくよ」
其の呼び名に対しては、好きにしてくれ、とぼやきながら。
もう一度。深呼吸をするように、深く息をすると。
「……もらっとくよ」
それを受け取りながら。
ほんの、小さく。小さな声で、ありがと、とだけ漏らした。
■空閑 栞 > 「ん、そっか。長い休みが終わると虚しいもんね」
とでも言っておく。の言葉から、本当の理由ではないだろうなと察しつつ、それ以上の追求はしない。
言わないのなら言及されたくないのだろう。
「それにしても、綺麗な空だね」
ふと上を見遣ると、満天の星空。
彼の暗い声とは正反対の、明るい星空。
見ているだけで、少しは気分が晴れていく。
■渡辺慧 > 「……そーかな」
見るものフィルター、とでも言うべきだろうか。
自らの気分が、ひどく落ちに落ちていることは分かる。
そう言った物の目から見た、そのきれいな景色というのは――十二分にそれを発揮できているのだろうか。
つられるまま。空を見上げ。
――こ憎たらしいほどに、自らの気分とは無縁のソレに。
投げやりに入れた、受け取ったそのキャンディの甘さが。
――なんもかわりゃしねーよ。
等という悪態を、抑えてくれたんだろうと願う。
「……そーだね」
――ほん、っと。……とことん、ガキ。
「……ごめん」
■空閑 栞 > 「え? なんで謝ってるの?」
突然の謝罪。
そうかなと言った彼には、恐らくこの空が綺麗に見えていないのだろう。
気分が落ち込んでいるのなら、そういうこともある。
寧ろ、無理な同意で不快な思いをさせていないかが心配になってしまう。
「えっと……ごめんね」
そう思うと、謝罪が口からこぼれていた。
■渡辺慧 > ……。
一応。……それは偶然からなるものだったとしても。
心配をかけ、さらに。それに対して、この態度。
分かっている。
――分かっているのにやめれないから、それに対する謝罪。
それに、謝られたら――。
目が、少しだけ見開かれる。
本調子には、ほど遠いが、喉の奥を鳴らして笑った。
あれから、初めて人と話した感想は。
……やっぱり。……人と関わるのは、やめられないかもしれない。
一人でいない安堵感は、ひどく――。
「…………あんでもねーよ」
そう言って、立ち上がりながら、そう。
ぶっきらぼうな言い方になっているのを自覚して。
「さんきゅ」
■空閑 栞 > 「よくわからないけど、どういたしまして」
お礼を言われるようなことはした覚えがない。
いや、チュッパチャプスの?お礼かな?
そんなことを考えつつ、立ち上がる少年へと笑顔での返事。
先程までよりは、幾分か雰囲気も明るくなったような気がする。
やはり、あの時の少年のようだ。
夜中に、公園のベンチで寝る、大胆不敵な少年。
「っと、少しは元気になったかな?」
同じく立ち上がり、慧の方向を向いた。
■渡辺慧 > 「……どーかね」
生憎。生憎。――生憎。
笑みを浮かべる気分には戻らない。
そちらを見ずに。だから、そちらを見ずに。
少しだけ。口角を上げた。
まだ整理はつかない。――いや、ずっとつかないのかもしれない。
だが。今晩は、恐らく。自らの気分に一種の安堵を与えてはくれたのだろう。だからこその礼。
踵を返す。
片手をあげ。ゆらりとゆらした。
「……じゃーね」
またね、とは。言わずに――。
ご案内:「大時計塔」から渡辺慧さんが去りました。
■空閑 栞 > 「少しはマシに見えるけど」
慧の口角が少し上がる。
笑みとは言い難いが、少し、表情が明るくなったように見えた。
それを見ると、慧がこちらを見ていないのはわかっているが、釣られるように、優しい笑みが浮かぶ。
何があったのかは知らないし、言及するつもりもない。
しかし、少しでも彼の助けになれていたら。
少し、嬉しいかもしれない。
「ん、また、ね」
じゃあねの言葉にまたねと返し、慧に背を向ける。
真似するかのように片手を上げ、ひらひらと手を振る。
離れていく足音を背に、空へと、虚空へと足を踏み出し、時計塔から離れていく。
ご案内:「大時計塔」から空閑 栞さんが去りました。