2016/01/07 のログ
■西永かがり > 「異能の無い時代が無秩序で暗黒かあ。
あはは、逆だろうにねえ。僕達の時代の方がよっぽど無秩序だよ。暗黒とは言わないけど。」
からからと眉尻を下げ、笑い声をあげる。
もしも昔が無秩序だとして、そしたら今が秩序ある世界なのだろうか?自分は全くの逆だと思う。
この島が出来たのは、きっと無秩序極まりない世界を上手く纏める為なのだから。
「うん、僕も、そう思うよ。大変な事は沢山で、――も沢山あるけど、楽しい事だっていっぱいある筈だからね。」
途中、小声になってしまった。それを言うのは何だか――そう言ってしまうと楽しくない気持ちになる。
でも、きっと、楽しい事だってたくさんある。
彼女のともすれば笑い声か分からないような声に、つられて自分も笑う。そう、彼女の言う通り。
この奇妙なる混沌世界は、変で、面白いのだ。
「幸福になりたいと思った事は、無い?
嬉しいとか、楽しいとか、そういう気持ちになりたいと思った事は、無いの?」
きょとんとした顔で素直に疑問をぶつけてみる。
このさっきまでしかめっ面をしていた彼女は、もしかすると普通より感情に乏しいのかな、と思いつつ。
でも、そんな彼女に、自分と友達になれた事は良い事。
そう言って貰えるのは、凄く凄く、嬉しかった。
■蔵田 怡与 > 「……?
うん。大変なこと、たくさん、あるね。でも、それを乗り越えることが、大事。
この学園は、そういう力をつける場所。わたしは、そう思う」
(小声になった相手をいぶかしむように小首をかしげる。が、特に気にした様子もなく、言葉を続ける。
どんなに明るい人間だろうと、話したくないことくらいあるだろう。この島にいる人間に、事情のない者などきっといないのだ)
「嬉しいとか、楽しいとか、思うことは、ある。時々。
でも、それは、幸福ということ?
幸福は、嬉しいこと? 楽しいこと?
わたしは、よくわからない。わからないことだから…そうは、なれない。気がする」
(きょとんと問いかけてきた相手に対し、こちらも疑問を投げかける。
幸福という、考えてみたこともない言葉に、戸惑っているらしい。)
「…あ、もうこんな時間だ。わたし、そろそろ行くね。
今日は、話せてよかった。ありがとう、かがりさん。」
■西永かがり > 「……うん、そうだよね。
そっかー、ちゃんと、乗り越える力、身に付けないとダメだよね。」
相手が何気なく言ったであろう言葉に、心を抉られるような感覚を覚える。
乗り越える力。それを身に着けるために自分は何をしてきただろうか。
いつの間にか、逃げていたのではないか。
そう思うと、途端に自分が情けなくなってくる。
「幸福は――嬉しくて、楽しくて、胸がいっぱいになって、きっと世界で自分が一番で、無敵になった、みたいな事。かもしれない。
分からないとかなれないじゃなくて、満たされたらそれがきっと――
幸福って事なんだ。」
幸福の定義なんて、考えた事も無かった。
ずっとふわふわした雲の様な場所の上で、なんとなくそれを求めていたから、改めて聞かれると此方も戸惑ってしまう。
一応答えてはみたが、はっきり言ってこれが答えだという確証は無い。自信も無い。
分かってはいないが、それでも幸福を求めずにはいられないのだ。
ふと空を見ると、空が黄色みを帯びてきている。夕暮れまでも時間の問題だろう。
「おや、随分話し込んでたみたいだね。
結局訓練は邪魔しちゃったみたいだけど…ごめんね!
僕も、怡与と話せてよかった。こちらこそありがとう。」
そう、微笑んだ。
■蔵田 怡与 > 「うん…じゃあ、またね」
(ややぎこちなく微笑むと、屋上を出る。)
(頭上を飛んでいた飛行機が、空高く舞い上がり、やがてはるか下の方へと滑空していった)
ご案内:「大時計塔」から蔵田 怡与さんが去りました。
■西永かがり > 屋上を出て行く彼女に手を振って。
僕の頭上を待っていたゼロは、空から地面へ滑っていく。
その姿は美しく、そして何よりも力強く。
向こうからは橙の空が迫っている。
ふわぁ、と一つ欠伸をして、
「ああ――そういや、明日のご飯どうしよ。」
なんて呟いて、それからずっと、満足いくまで空を眺めていた。
ご案内:「大時計塔」から西永かがりさんが去りました。