2016/05/26 のログ
東雲七生 > ここ数日の間七生の悩みの種は専らいずれ来る深雪との模擬戦の事だった。
もしかしたら冗談半分で行ったのかもしれないが、心の準備だけはしておかなければならない。
気紛れがいつ本心に変わるか分からないのだから。

「そもそも、あいつがどれだけ強いのかも、俺は知らねえんだけどさぁ。」

そこはお互い様か、と小さな溜息と共に軽く肩を竦める。

東雲七生 > 軽く頭の中でシミュレートしてみる。
真正面から突っ込むのは、きっと押し負けるだろう。
そもそも相手は人間の姿はしていても、その実、人間ではないのだから。

「そもそもいつもの姿で模擬戦するとも思えないし……」

むーん、とより一層深くなる眉間の皺。

東雲七生 > 「不意打ちとかにも強そうだしなあ、よっぽどの奇策でもなきゃあっさり看破されそう。
 あとはまあ……戦う環境を制限するとか、か。」

演習施設での模擬戦なら設定を弄ればどんな状況も実現可能なはずである。
実際に色々試した訳ではないが、大抵の環境なら作れそうな気はする。

「で、問題はそんな状況下ならあいつからイニシアチブ奪えるか、だけど……。」

東雲七生 > 肝心なのは七生自身が不利になっては意味が無いこと。
陸上なら大抵は向こうに軍配が上がりそうだという時点で詰んでいる気がひしひしとしてくるが。

「海とか、川とか……水の中なら。」

抵抗の少ない自分の小さな体なら、あるいは。
試しに軽く脳内でシミュレートし、

「……いやいやいやいや!」

水に濡れて色々際どくなった姿が浮かんできて、慌てて首を振って考えを追い出す。
そんな事になったらとてもじゃないが真っ当に戦える気がしない。水は、なしだ。

東雲七生 > 「じゃあ、えっと……そうだ、視覚を奪われた状況なら。」

暗闇の中ならば。
それでは七生にも不利が働きそうだが、実のところ自身の資格を補う手段はある。
──異能に頼らなければならないが。

「流石にああいう風に真っ暗な中なら深雪だって思うように動けない筈……」

ふふん、と笑みを浮かべて目を瞑り、状況を想定する。
真っ暗闇はつい昨日経験したばかりで、あの時の事を思い出せば──

(……大きかった。)
「……じゃなくてっ!!!」

何やら余計な事まで思い出し、思わず無意識下で動いた右手を近くの壁に叩きつける。
物凄く痛かったが、お陰で煩悩もちょっとどっか行った。ちょっとだけ。

東雲七生 > 「はぁ……深雪と模擬戦の前に、俺は自分の煩悩を倒さなきゃならないんじゃないか……?」

そうは言っても思春期真っ盛り。一朝一夕でどうにか出来るとも思えない。
むしろ変に抑圧する方が、後が怖いのではないだろうか。そんなこと授業でもやってた気がする。

「うー……
 とりあえず、走って、汗かいて、風呂入って、寝る!!」

どうしようもない壁にぶつかった時は、遮二無二突っ走る。
今迄そうやって何とかして来たのだから、と七生は頬を叩いて気合を入れた。

そしてそのまま、かなりじんじんする右手をぐっと握って時計塔を下り始めたのだった。

ご案内:「大時計塔」から東雲七生さんが去りました。