2016/06/04 のログ
■ソラ > 試しに金平糖を差し出してみる。
余計に警戒された。
次にするめを差し出してみる。
ちょっとだけ寄ってきた。
次にクッキーを差し出してみる。
余計に警戒された。
次にたい焼きを差し出してみる。
余計に警戒された。
次にえんどう豆スナックを差し出してみる。
余計に警戒された。
迷った末にチョコレートを差し出してみる。
威嚇された。
ご案内:「大時計塔」にヘルトさんが現れました。
■ヘルト > ズシン、ズシンと大地が揺れた様な振動。
そして重い金属同士が擦れる音が屋上へと近づいてくる。
一歩また一歩と揺れと音が大きくなり、やがてピタリと止まる。
一呼吸置いてドアが勢い良く開くのだった。
「誰かいるのか?」
あまりにも勢い良く開けたのでもしかしたら猫は驚いてしまうかもしれない。
それ以前に振動と音で逃げているかもしれないが。
■ソラ > 大男が扉を開ければ、目に入るのはきょとんとした顔の金髪の少女と、羽交い絞めにされた猫の姿。
結局近寄ってもらえなかったので実力行使に出たらしい。
猫は「ふぎゃー!」などという悲鳴を上げており。
猫を捕まえてやや上機嫌な少女は、大男を見て笑顔で首を傾げた。
捕まえられた猫はかなり不満げだが。
■ヘルト > 「お、おう……?」
見回りをしていたら何なんだこの状況は。少女に羽交い絞めにされた猫。
いやいやいや、ここは立ち入り禁止だぞ?
「あーっと……お譲ちゃん? ここは立ち入り禁止だぜ、危ないぞ?」
怖がらせないように出来るだけ優しく声をかけ、目線を合わせるヘルト。
一応、教師としてやるべきことはやるようだ。
■ソラ > 声をかけられて満面の笑みで首をかしげる。
怖がられてはいないようだが、それ以上に重大な問題がある。
つまり、どう考えても『危ない』などという警告が通じていないのが明らかだ、ということなのだが。
それどころか下手をしたらどこか楽しんでいるような雰囲気さえある。
むしろ少女よりも猫が怯えているようで。
少女に抱えられたままやたらと目の前の男を威嚇している。
それはもう、少女が手を離したら全力で逃げるか噛みつきに来るかしそうなくらいは。
■ヘルト > 「うーむ……意味が分かっていないのか?」
目の前の猫の事はさておくとして、少女をどう促したものか。
解決策を考えつつ猫にちょっかいを出す。
ほれほれ、この指にじゃれておいでと言わんばかりに指を差し出す。
「あーっと……アレだ。一応な、教師としてやらなきゃならんのよ。
というか、俺の言葉分かるか? ん?」
■ソラ > 指を差し出した男に猫を近づけてみる。
やはりというべきかなんというか。
猫は躊躇いなく指に噛みついた。
やせ細っているせいかその力はあまり強くはない。
少女は相変わらずの笑顔で、男の質問に首をかしげる。
「言葉は通じているが質問の意味が分からない」のか。
それとも「そもそも言葉が通じていない」のか。
もしかすると「分かっていてはぐらかしている」のか。
その反応からはおよそ想像がつかない。
……単に何も考えていないだけ、なのかもしれないが。
■ヘルト > 「おうっ。見た目とは裏腹に元気だな。」
こやつめ、ははは。と寛大な態度で猫に接するヘルト。
指の先までガントレットが保護しているので怪我の心配は無いだろう。
「うーむ、それにしても……困ったなあ……。」
目の前の少女を見据えて誰に言うでもなく呟く。
言葉が通じないのか、わざとスルーされているのか分からんが。
今まで立ちあった事の無いタイプの相手に少し混乱している。
■ソラ > 少女は、猫が目の前の男に噛みついているのをどうやらじゃれていると判断したらしい。
ちょっと機嫌よさそうにうなずくと、半ば押し付けるようにして男の手の中に猫を押し込む。
さらに、ついでとばかりに金平糖の大瓶、煮干し、するめ、クッキー、たい焼き、えんどう豆スナック、チョコレートを男の懐にぽんぽん投げ込む。
押し付けるだけ押し付けて満足したのか、まるで猫のような身軽な動きでぽんと後ろに跳ねると
不安定な手すりの上に片足で着地した。
■ヘルト > 「おっ、おい!」
猫を押し付けられるだけではなく次々と押し付けられる食べ物にヘルトはされるがままで。
懐に暴れる猫と食べ物を山ほど持った大男の完成である。
「って、そうじゃねえ、何やってんだ! 危ないだろ!」
手すりへ飛び乗った少女を見て、ヘルトは思わず手を出そうとする。
するのだが、両手に一杯の食べ物と猫で出来なかった。
■ソラ > 少女は満足したようにうなずいて。
いたずらっぽく微笑んで。
躊躇いなく、そのままの姿勢で後ろに倒れこんだ。
支えるものもなく、少女は時計塔の屋上から真っ逆さまに落ちていく。
下をのぞき込んでも、そこには誰の姿もない。
ただ、僅かな光の粒子が漂っている。
■ヘルト > 「ああああ!? 何やってんだ!?」
慌てて手すりへ駆け寄る。そこに責任がどうとか関係ない。
ふと、想定していた最悪のシナリオが頭をよぎる。
「こんなところで、こんなことで死んでどうするってんだ!」
いざ下を確認すると淡い光を放つ粒子が漂うだけで何も無い。
さっきまで会話(できていたかは別として)を交わしていたはずの笑顔を見せていた少女はおらず。
──何も無い。──
さっきまでのやりとりが嘘だったかのように。
『どういう事だ。』と思わず言葉に出してしまった。
確かにあの少女が抱いていた猫はまだこの腕の中で暴れていて、あの食べ物の山も一緒に懐の中。
だのに、彼女だけがすっかりと消えていて。
ご案内:「大時計塔」からソラさんが去りました。
■ヘルト > 「…………あー、どうすっか。」
何が何だか本当に分からず、翻弄されるだけだったがこれも一種の怪異と言うやつなのだろうか。
まあ、どちらにせよ常世学園なら飽きることは無いだろう。
狐につままれたような表情で、とりあえずこの猫と食べ物をどうしたものかと考えつつ屋上を後にした。
ご案内:「大時計塔」からヘルトさんが去りました。