2016/06/18 のログ
ご案内:「大時計塔」にクゥティシスさんが現れました。
クゥティシス > (この街に、この世界に来てからどのぐらい経ったのだろうか?)
(そんなことを考えようとして、月や星の動きでなく、自然とカレンダーを見ようとした自分に気づいて少し、胸が痛んだ)
(身体の中の大事な部分がじわじわと削り取られているような錯覚に襲われ、居てもたってもいられなくなって気づいたら此処に居た)

「…んー…いい、風」

(夜風に吹かれながら一人つぶやく)
(下界と隔離されているかのようなこの天空の庭園に来ると、世界の常識や理と切り離されて「自分」が浮き彫りになる気がする)
(自分は何者なのか)
(クゥティシスとは、どうあるべきなのか)
(幾度も繰り返した自問自答)

(結局答えは出ないのだけれど)
(こうして考えなければ、それこそ自分を見失ってしまいそうで)

「やっぱり、落ち着くな」

(だから、この場所が好きだ)
(この場所が好きだから、此処に来るのか)
(それとも、此処で起きる「何か」に期待しているのか)
(その答えもまた、幾度考えた所で出はしないのだが―)

クゥティシス > 「…こうやって、夜中に一人で居て落ち着くなんて。それこそ、昔じゃ考えられなかったのに、ね」

(自嘲気味に息を漏らせば、さざめく風音もまた、自分をあざ笑っているような気がして)

(日々を過ごす中で、この学園の「生徒」として過ごす自分にどんどん違和感が無くなっていく)
(授業を受け、友人たちと言葉を交わし、帰り道には買い食いをして寝床につく)
(そんな「当たり前」の日常が、時折たまらなく息苦しくなる)

(けれども、その「息苦しさ」は決して捨ててはいけないものだとも思う)
(自分が、自分であるために)

「クゥは、ルルフールだもん」
「ニンゲンには……なれない」

(言葉にして、改めて確認する)
(自分はニンゲンではない。幾らニンゲンの暮らしに、文化に溶け込もうとも)
(自分の中に流れるルルフールの血は、本能だけは捨てたくは無かった)
(それはつまり―)

「……やっぱり、クゥは一人ぼっちだね」

(どこまでいっても)
(自分はこの学園にとっての)
(ニンゲンが築き上げたこの世界にとっての)

(異物でしかない)

クゥティシス > (見下ろす町並みに灯る明かりが目に染みる)
(きっとあの灯り一つ一つに、ニンゲンの営みがあり、笑顔がある筈だ)
(けれども、自分はその中には入れないのだと)
(そう思ってしまって―)

「―ぇ、っく、ぅ、ぁ」

(漏れ出した嗚咽は、夜風に吹かれ消えていく)
(誰に聞かれるでも無い)
(こうして、滴で床を濡らしたところで、誰が気づくわけでもない)
(だからこそ、どうしようもなく孤独感だけが胸中を掻きまわしていく)

(ぐし、と零れる滴を拭い、顔をあげて)

「寂しくなんか、無い」
「クゥは、ルルフールだ」
「ルルフールは……泣いたり、しない…っ」

(まだ、大丈夫)
(まだ、こうしてルルフールの誇りを想い出せる限り)
(自分は立っていられると)
(余りにか細い柱にその心は縋りついていて)
(一緒に立ってくれる誰かを、どうしようもなく求め続けていた)

クゥティシス > 「……帰り、たいなぁ」

(ぼそりと、言葉が漏れ出した)
(ニンゲンの社会の中に溶け込もうとも、拭い去れぬ違和感は月日の中で少女を確実に蝕んでいたのだ)
(他社と己の間に存在する絶対的な「種族」という壁)
(それを超えてしまえば)
(己から一歩を踏み出せば、きっとこの孤独は霧散していくのだろう)

「でも…無理だよ」
「クゥは……みんなのこと、忘れたくなんかないもん」

(父親や母親。集落の仲間たち)
(いくら此処で新たな友人が増えたとて、故郷の皆との絆が無くなってしまうわけではない)

(元来、ルルフールは―狼は群れを作って暮らすもの)
(己と同じ存在と共にあることを良しとするその本能が、彼女を内側から責め立てる)
(彼女はまだ―)
(一匹狼となるには、あまりにも若すぎた)

(満点の星が見下ろす中)
(少女は一人郷愁の想いを募らせるのだった)

ご案内:「大時計塔」からクゥティシスさんが去りました。