2016/10/11 のログ
ご案内:「大時計塔」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 > さて――日にちが過ぎた。
特に何も、変わらない日々が過ぎた。
そう、変わらない、変化のない世界。

それこそが――異常だと、だれか気づくだろうか。

「――……」

悠薇はいつも通り、努力をやめず。
頑張り続け、姉を案じ、姉に尽くし――

「……ふふ」

そう、何も変わらない。
変わることを求められていることも知っている。
けれど――

「変える、理由がある?」


――不可能を担う、その役割が決まった

それなのに変化のない”これ”は……?

伊都波 悠薇 >  
努力が、自分のためにはならないが姉のためになるならば別に報われていないわけではない。
ならば、努力をやめる理由にはならない。

姉は確かにうそをついた。だが、その嘘も謝ったし。
何より、自分がいなければいやだという、そんな言葉までもらった。
自分は姉に、ちゃんと恩返しできている。
ならば、姉への接し方を変える必要もない。

元通りに戻すだけ。たとえ”天秤”の効果で自分の都合の良い存在であってもだ。
それでも姉という存在が自分に寄りかかり、自分も寄りかかれるのなら――今はいい。

そして――マネキンのよこした異物。
異物、異物? いいや、同じものだ。
異物なんて思う必要性がない。なにせ――なにせ――

「――……」

妹は笑った。独り。そう、ヒトリの世界。
ずっと変わらない。異物なんて存在しない。
いつだっていつだって――

「く、ふふ……」

だったらそれも――

伊都波 悠薇 >  
「さて――」

妹は髪をかき上げて、世界を見下ろした。
見下ろした――見下した。
眼下に広がる世界を――風景を――……

「天秤は、ただ勝手に揺れるものだろうか」

そうつぶやいて、笑みを深くした
ひとり呟く。誰に投げかけるわけでなく。
ただただ、ひとり

伊都波 悠薇 > 答えはNO。
天秤は、誰かが測るものだ。
だれかが司るものだ――……

では、この天秤。一体だれが?

「勝手に持っていこうとされては困る。持ち主はかんかんだよ、人形」

くすくすと、微笑みながら。
さて、どうしようかと考える。
彼はこれがほしいといった。
でははいどうぞとはいかない。
なにせ、これは、伊都波悠薇が望んだものであり。
罪と罰とを図ってきた、代物だ。

あれが何に使うかは知らないが、まだくれてやるには早すぎる。

「――なぜ天秤を望む?」

天秤の、望むことの異常性をよく知るものは、そうつぶやいて。
次は空を仰ぎ見た。

そしてこぼれ出た、言葉は――

――それしか、自分には価値がないから

誰かの言葉が空に消えて――そのまま見上げ続ける

伊都波 悠薇 > 「天秤が自分自身であると? 何を馬鹿なことを。天秤は道具だ」

誰かが司るものではあるが、誰か自身ではない。
意味をはき違えている可能性もある。
もし、天秤を使って罪と罰と――均等に判断することに価値を見出しているというのならば理解もできる。
だが――

「そうではないように見える。そういう意図ではなく、本当に、その身に宿していることにだけ価値を感じていると?」

理解できない思考だった。
道具を持っているだけで喜びを感じる。
おもちゃをもらったというステータス。
そのような感触であるのなら、幼稚さを通り過ぎて
愚者のように感じる

「あぁ、でも――」

愚者の意味を考えれば――

そう思って妹は笑った。心底おかしそうに――

伊都波 悠薇 >  
そしてひとしきり笑えば――

ゆっくりと時計塔を降りて――……

「こんにちは、みなさん。今後ともよろしく、世界」

立ち止まって、振り返って――告げてから。
妹は階段を下りていく。

かつーんかつーんっと靴の音を鳴らしながら

ご案内:「大時計塔」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に大河さんが現れました。
大河 > 大時計塔、常世島を一望できるほどの巨大な建物は今日も変わらず、生徒達を見守るようにそこに佇んでいる。

常世島で起きた数々の事件、その悉くを凌ぎ、今なお聳えるその時計塔は、一種の神聖さすら漂わせている様。

「…あー、食った食った。」

そんな場所で、コンビニ袋を置き一人食いカスを床に撒き散らしながら
飯を食う罰当たり者が一人。

大河 > 「やっぱ飯食うなら見晴らしのいいところに限るな。」

何とかと煙は高い所が好きという言葉があるが、この男もその例外に漏れず、特に食事時は
高所に上ってとる事が多かった。

「で、下の様子はっと」

食事を終えた男が時計塔から下界を見下ろす。
下はというと、学生街は賑わい、部活棟では運動部の者達がスポーツの練習に励み
歓楽街では怪しげな店が客引きに躍起になっている。

「やーっぱ何もねえか…」

不満そうな様子で、胡坐をかく。
一時期は違反部活が随分活発な事もあったが、今は平和なもので
逆に言えば、荒事を飯の種としている男のような人種としては
食い扶持が減りつつあった。

ご案内:「大時計塔」にヨキさんが現れました。
ヨキ > 階段を上ってくる、大人の男の重みを持つ足音。
何気ない様子で入ってきた白装束の男が、大河の姿に気付く。
どうやら見回りにやって来たらしい。

「あ」

低い声を漏らして立ち止まる。
校則を破った者を厳しく叱り付けたかと思えば、女子と共に菓子を囲む、校内では毀誉褒貶を相半ばする教師だ。
大河の姿を認めると同時、床に散らばったゴミも目に入る。

「……君。ここは立入禁止であるぞ。
 景色が好いのは分かるがな」

眉を下げて肩を落とし、つかつかと大河へ歩み寄ってゆく。

「屋上ではいかんのかね。人気のない方が好みか?」