2017/01/30 のログ
ご案内:「大時計塔」に深雪さんが現れました。
深雪 > 冬の冷たい風が吹き抜ける夜の大時計塔。そこから島を見下ろす少女がいた。
静かに息を吐けば,白く色付いた吐息が風に流されていく。

前にここに来たのは,いつだっただろう。確かこの島に来て間もない頃だったはずだ。
蒼穹と話をして……そう,昔のことも,色々と。
昔と比べて,蒼穹はずいぶん変わったと思う。この一年間できっと,もっと変わっているんだろう。

けれど自分は,ずっと同じ。
このリボンで手足を縛られて,力を失っても,
どんなに時間がたっても,何が起きても…

「……変わらないつもりだったのよね。」

…手首にはまだ,酷い火傷の痕が残っている。
もう一度,静かに静かに息を吐いて,深雪は街を見下ろした。

深雪 > 人間たちの街。
取るに足らない街。
踏みつぶしたら楽しそうな街。
そんな気持ちは,今でも残っている。

けれどこのリボンがある限り,そんなことはできるはずがない。
今でも並みの人間の息の根を止めるのは簡単だ。けれど,踏み潰すというほど簡単にはいかない。
それに,苦しみ,泣き叫ぶ人間をゆっくり嬲るのは,あまり楽しいとも思えなかった。

アリの群れをを踏み潰すのは楽しいが,子猫を嬲り殺すのは心が痛む。
そういうものなのだろう。

深雪 > だからもう,人間を嬲るのはやめた。楽しくない。
それに,きっと私がそんなことをすれば,七生が困る。

七生は優しいから,きっと私を怒ったり,嫌ったりしないだろう。
けれどきっと,口に出さないだけ。

「………ずいぶん,変わったわね,私も。」

自分自身の考え方に,思わず,笑ってしまった。
まさか,この私が,自分以外の誰かのことを考えるなんて。

深雪 > ズキリと,手首の火傷が痛んだ。
力を失って,心まで変わってしまった深雪を嗤うように。

「……………ッ……。」

普段感じない苦痛が走り抜け,怒りと憎しみが沸き上がる。
腕を地面に叩きつけようと振り上げて,そのまま止めた。
息をゆっくりと吐き,昂った感情を鎮めていく。

深雪 > こんなにも寒い夜だというのに,深雪はしっとりと汗をかいていた。
夜風が体を冷やし,そして怒りや憎しみを運び去っていく。

「…………………。」

一日も早く,この忌々しい封印から抜け出したい。
今すぐにでもこのリボンを引きちぎってやりたい。

けれど,力が戻ればまた,アリを踏み潰して遊びたくなるだろう。
いや,遊ぶつもりなどなくとも,歩くだけで踏み潰してしまうものだ。

きっと楽しい。
ずっと封じられていた力を,解き放つのは。

深雪 > ……きっと楽しい。全てを終わらせるのは。
けれど,終わってほしくないと思う今の自分も居る。

「……もう,帰らなきゃ。」

小さく呟いて,深雪は立ち上がった。
もう一度,白い吐息を長く長く吐き出して……

ご案内:「大時計塔」から深雪さんが去りました。