2017/04/18 のログ
■東雲七生 > コンプレックス、という点からみると他にも理由がある気がする。
例えば、異能。
七生の有する異能は、水に弱い。
血液で何かを創る際に、水に触れると血液が溶け出して制御が届かなくなる。
なので雨の中はまだしも、川や海といった水の中に居るのは、即ち異能の使用が出来ない状態ということ。
「……まあ、その辺も訓練中だけど。
まさか昔はどんな状況でも異能を使えるようにしようなんて思いも──」
ぽつりと呟いてから、はっとした顔で自分の掌を見つめる。
あれほど異能が疎ましかった頃ではなく、今になって気付くなんて、と半ばあきれた様に口元には笑みが浮かんだ。
「……異能が使えなくなるから、俺、水の中好きだったんだな。」
■東雲七生 > ふぅ、と小さく息を吐く。
本当に、本当に今更過ぎる。自分の異能と向き合い、受け入れていくと、もう決めた後だと言うのに。
「……でもまあ、いいか。」
七生は庇の下から一歩踏み出し、降り続ける雨の下にその身を晒した。
時計塔に来た時よりも強まっていた雨は、七生の全身を次第に濡らしていく。
若干の肌寒さを覚えるも、それ以上に自分から何かが洗い落とされていくような気がして、七生は笑った。
傍から見れば少し気が触れている様に見えるかもしれない。
そんな事を考えて、余計に笑いが込み上げ、それを止める事無く笑い続けていた。
■東雲七生 > 「よっし、かーえろ。」
髪も、服の上下も、下着さえすっかりずぶ濡れになった辺りで漸く笑いが止まる。
そして一度止まってしまえば、つい数秒前までの事なのに、何がそんなに面白かったのかさえ分からなくなった。
雨に流されてしまったのだろう。
「……深雪が見たらどんな顔するかな。」
絞ればどれだけ水が出るか分からない程重くなった上着を見て、小さく肩を竦める。
怒られるほどでは無いにせよ、呆れられたりはするかもしれない。
その時は潔く謝ろうかと考えながら、七生は家路についたのだった。
ご案内:「大時計塔」から東雲七生さんが去りました。