2017/05/02 のログ
ご案内:「大時計塔」に黒龍さんが現れました。
■黒龍 > 最近、どうにもこの場所が学園やその近辺ではお気に入りになりつつある。
大時計塔の最上階で、煙草を蒸かしながら何時もの黒いスーツ姿にグラサンの男。
特に何かするでもなく、一服をしながら夜景を眺めているだけ。
「……ゴールデンウィーク…だっけか?こっちの世界にゃよく分からん習慣が多いな」
唐突な独り言。この世界ではそういう連休みたいなのがあるらしい。
道理で、先週末は学生共が何処か浮かれている者が多かった筈だ…一応、この男も学生身分だが。
「……つっても、俺にゃ特に関係ねぇしな」
休みたい時はサボ…休む。自由気侭に、ただ単位とやらは落とさぬ程度に。
その辺りの塩梅は何となく分かってきたつもりだ。平然とサボる選択肢がデフォルトにあるのが男らしいとも言える。
■黒龍 > 「しっかし…まぁ…。」
何かを呟くが、その続きは口から発せられる事が無く、黙りこくって煙草を蒸かす。
何かを考え込んでいるのか、時々ガシガシと頭を掻いて、溜息と共に一度盛大に紫煙を吐き出した。
「……どうにもアレだな、平和ボケしてきてる感じが否めねぇな」
良く言えば丸くなった、悪く言えば弱くなった。…ああ、どのみちこの世界ではどうやら自分は弱体化しているようだが。
(…ま、変に悪目立ちするよりかはマシっていやぁマシか…)
胸中で呟きながら、短くなってきた煙草を懐を漁って取り出した携帯灰皿に放り込む。
そのまま、2本目の煙草を箱から取り出して口に咥えて。ライターで火を点けながら一息。
■黒龍 > しかし、こうして夜景を無心で眺めているのもそれはそれで飽きが少々沸いてくる。
懐をゴソゴソと漁り、取り出したのは…意外にも書物だった。やや古めかしい革の装丁が施されている。
タイトルは表紙が所々汚れたりしてハッキリとは読めない。
「……何処まで読んだっけか」
付箋を挟むのをすっかり忘れていたので記憶を頼りにページを捲る。
ややあって、思い出したのかそのまま近くの壁に背中を預けて読み始める。
元々、夜目が利くのもありこの暗さでも大して読書の妨げとはならない。
■黒龍 > 元々、元の世界に於いても知識の吸収という意味合いで色々と乱読する事はあった。
だが、何時しかまったく読書はしなくなり…どれだけ年月が過ぎたのだろう。
再びこうして読書に興じるようになった切欠は…覚えていない。多分些細な事なのだろう。
こちらの文字に関しては、最初こそ苦戦したが直ぐに覚えた。
日本語、英語などの基本の言語くらいなら読み書きもこなせる程度には上達している。
時々、ページを捲る音だけが時計塔の屋上スペースに響く。如何にもチンピラ、といった風情の男が読書というのもシュールな光景だが。
「………へぇ。」
時々、感心したような呟きを零しながら読み耽る。熱心、という程ではないが流し読みしている訳でもない。
ちなみに、読んでいる書物は『幻想世界』というタイトル。世界各地の伝承やそれに登場する幻想生物の紹介だ。
とはいえ、それも今のこの世界では現実に存在する者も多々居るのだろうが。男としてはある意味でこの書物の連中と似たようなものかもしれない。
■黒龍 > そうして、読み耽っていたがフとページを捲る手が止まる。
…ドラゴンの項目だ。僅かにサングラスの奥の金眼を細める。
「……この世界のドラゴン、か。」
呟いてから内容を読み始める。…実に様々な伝承にドラゴンは登場する。
姿、形、能力、そして――…結局、英雄を始めとした誰かに討伐されるのだ。
「……ハッ、俺もこいつらと似たようなモンかね…」
一度、元の世界から叩き出された身だ。死というより追放。それも同じドラゴンによるものだから皮肉なものだ。
「……もっとも、死は俺にゃ身近すぎるモンだったが…」
黒死の龍王。今思えばこっ恥ずかしい異名だったと思う。死を司るとかただの死神じゃねぇかと。
ご案内:「大時計塔」に黒龍さんが現れました。
■黒龍 > 「…つーか、思い出したらムカついてきたぞ。あの野郎、やっぱ絶対ぶっ殺す…!」
思わず読んでいた本を握り潰しそうになるのはかろうじて堪えつつ。
元の世界で己を追放した同格の龍を思い出して、イラッとした表情で呟く。
が、直ぐに肩の力を抜くように一息。そもそも、元の世界に帰る手段が無い。
「…次元の狭間までなら何とかなるが、元の世界に接続するとなると今の俺じゃ無理だわな…」
現実を正しく見据えよう。今の自分ではどう足掻いても元の世界への帰還は叶わぬ事だと。
パタン、と読んでいた本を閉じて懐へ――あ、また付箋挟むのを忘れた。まぁいい。
■黒龍 > 「…そろそろ引き上げるとすっか。」
呟いてそのまま長い長い階段を降り始める。何時もならそのまま飛び降りて着地するのだが、まぁ気まぐれというものだ。
何時の間にか、ちゃっかりと3本目の煙草を咥えて火を点けながら時計塔を後にする男であった。
ご案内:「大時計塔」から黒龍さんが去りました。