2017/11/07 のログ
神代 理央 > 「…まあ、今は私とクロノしかいない訳だし別に構わないんじゃないか。必要な事なんだろう?此方も言葉が悪かったよ」

胸のエンジンを隠す仕草を見せる彼に、少し苦笑いを浮かべて首を振る。
委員会の同僚には、人間と同じ様に食物を摂取する多脚戦車すらいる此の島で、彼の動力事情に口出しするのは少し配慮が無さ過ぎたかと反省しつつ―

「夜風に当たりたい時には此処を訪れる事が多い。夜なら、他の場所よりも幾分静かだしな。そういうクロノは、良く此処に来るのか?」

彼の問いかけには、淡々と事実のみを告げる様な口調で言葉を返す。彼が気分を害している様子なら言葉遣いを改めるつもりだったが、その様子も無いのでこのまま押し通す事にした。
仮にも教諭相手に失礼な態度である事は理解しているが、此処で慇懃無礼な態度を取っても仕方ない事だし。

――とぼんやり考えながら隣に並ぶ彼に視線を向けた後、同じ様に眼下の風景に視線を戻した。

クロノ > …ん、ありがと。…じゃあ、遠慮なく。
(相手の謝罪に、男の子は嬉しそうに微笑んで胸から腰へと手を移す。両手を腰に当てて少し胸を張り、冷たくも新鮮な夜風をたっぷり吸引してエンジンを元気よく高鳴らせる男の子はとても気持ち良さそうだ。排気筒から吹き上がるガスも、夜風に流れてすぐに宵闇に消えていく。)

… そうだね。校舎の屋上よりちょっと遠いけど、その分、空いてるし。
(だから、時間やエネルギー残量に余裕のあるときはより眺めの良い此方に来るよ、と答えつつ。)

… 昼間は昼間で、夜とはまた違った景色が味わえて好きだなぁ。
(保健室の先生と、学校設備維持補修、そして夜間警備も兼任する男の子は住まいも男子寮か宿直室とあって、敷地内での景勝地探しには余念がない。)

… 理央、この時間にコーヒー飲んで大丈夫?寝れなくならない?
(相手の手元、夜風にすっかり冷えたであろうそれを見つけてはちょっと心配そうに。)

神代 理央 > 「気にするな。別に礼を言われるような事は言っていないからな」

流れていく排気ガスに一瞬視線を向けた後、小さく肩を竦めつつ再び視線を時計塔からの風景に戻して―

「わざわざ風景を眺めに来てるのか?変わった……いや、時計塔なら寧ろそっちがメインなのか。確かに、此処からの眺めは良いものだからな」

景色を眺めるとか、外でのんびり過ごすといった事に無頓着な己としては、彼の言葉には怪訝そうな表情を浮かべてしまう。
だが、直ぐに彼の様に景観を求めて訪れる方が寧ろ正しいのだと思い直せば、納得した様な声色で軽く頷いた。
尤も、時間帯に寄って変わる景色の楽しみ方については、結局曖昧に相槌を打つしかないのだが。

「別に。というか、これミルクも砂糖もたっぷり入ってるからな。寧ろ寝付きが良くなるくらいだよ」

温いを飛び越えて冷たくなってしまった缶コーヒーを再度口に含みつつ、軽く缶を振りながら答える。
残り僅かなコーヒーが、僅かに水音を立てる音が聞こえるだろう。

「本当は睡眠時間なんて取りたくないくらいだが…こればかりは、仕方ないだろうな」

日々の忙しなさを考えれば、1日36時間くらいにならないだろうかと何時も悩むばかり。
そんな溜息混じりの言葉と共に、再度彼に視線を移してその琥珀色の瞳に視線を向けるだろう。

クロノ > (胸いっぱいに新鮮な空気を取り込み、鋼鉄の心臓を元気に回す機械仕掛けの男の子。甲高いエンジン音と小刻みな振動、バッテリーへと蓄えられていくエネルギーを、男の子は少しの間目を閉じて静かに感じていた。)

… っふふふ。景色もそうだけど、こうして新鮮な空気を吸いに来たり、併せて気分転換とか、考え事とか。
(ロボットも、人間相応に色々考えたり、物思いに耽ることもあるらしい。夜の星空を見上げる硝子の琥珀色の眼差しと、おでこで忙しく点滅し続けているインジケータランプ。)

… ? あぁ、そっか。理央、甘いもの好きなんだ。 … じゃあ、良かったら今度、保健室に顔出しなよ。昼休みと放課後にはお茶会やってるからさ。
(珈琲紅茶、そして男の子お手製の日替わりスイーツ。かつて無機的で殺風景でしかなかった保健室は、今ではすっかり男の子の作った飾りつけやマスコット人形、そして毎日作って持ってくるスイーツ…と、すっかり憩いの場へと化している。)

… そうだね。ただ、ゆっくり休んでこころと身体を労わなきゃいけないのは…人間も、他の生き物も…僕たち機械だって、同じだから。
(勿体ないとは思うけど、そうして回復と共にエネルギーを貯めるから、また頑張れるんだよね、と。見つめられる硝子の瞳は優しく微笑んで。此処に来る以前、かつては野良だったり、戦地の野戦病院で勤めた男の子は、少年の見た目の割にはやや大人びた口調でそっと言葉を紡ぐ。)

神代 理央 > 「…考え事、か。てっきり、自己保存の原則に基づいた思考ルーチンかと思っていたが、随分と感傷的なんだな。そういうのは嫌いじゃない」

人間の様に考え、思考し、悩みもあるというのなら、何を持って人間とロボットを区別するのだろうか。
頭の片隅でそんな疑問が擡げるが、それは科学者か哲学者の仕事だろうと思考を切り替える。

「へえ?そいつは興味深いな。是非お邪魔させてもらうとしよう。尤も、私みたいな性格じゃ、その御茶会とやらにそぐわないかも知れないが」

学園では猫をかぶっているとはいえ、基本的に口が悪いのは自覚している。自分から喧嘩を売る事は無いが、彼の安寧の空間を壊してしまわないか少し心配してしまう程度には捻くれているのも自覚していた。
とはいえ、甘味への興味が無い訳では無い。時間を見繕って顔を出してみるかと、頭の片隅にメモを刻んでおく。

「確かに、適度な休息が無ければ人間も機械も十全な能力を発揮出来ないからな。しかしそれでも、休みなく働けるというのは魅力的だよ。立ち止まって休息していては、為すべきことを成し遂げられないことだってあるかもしれないしな」

彼に比べれば、己の人生経験等大した事は無い。だからこそ、より短時間に。より濃密に、結果と成果を己は求めてしまう。
人々を癒やす彼とは違い、争いと硝煙の中に立つ己は、どうしてもそう考えてしまう。
それを、仕方のない事だと言わんばかりの諦観めいた色を浮かべた紅い瞳が、彼の硝子の瞳と交錯するだろう。

クロノ > …ぁははは。そりゃあ確かに人間と比べれば、疑似人格はあくまでもプログラムだし、学習や思考、感情の自由度もずっと狭いけれどね。
(それでも、新しいものを学び、時代の変化についていけなければ機械と言う道具はたちまち陳腐化して捨てられてしまう。機械なりの、生きるための必死さ、といったところか。)

… 風紀委員さんが居てくれたら、皆もきっと安心するよ。楽しみに待ってる。食べたいものとか、何かリクエストがあったら言ってね?
(相手の前向きな返答に、男の子はまた嬉しそうにニコニコ。戦闘用の武骨で重厚な機体と、裏腹に人懐こい童顔の顔と、さらに女子顔負けのスイーツ&可愛いもの好き。)

…休みなく、働く…か。 …善は急げ、とも言うし、残り物には福来る、とも言うし。 … あぁ、でも、あんまり無茶はしないでね?理央の身体もこころも、理央しか持ち得ないものだから。
(相手のその制服と腕章、それらが意味する権力と、責任。まだ年若い相手が早々にその重圧と戦禍に飲まれてしまわないように、男の子はただ願うことしかできないけれど。)

クロノ > (…宵闇と夜風に包まれる塔屋の上、そうしてのんびりと語らう少年の姿、一人と一台。日常の中にあって、しかし非日常的な景観と、冷たくも新鮮な空気。)

(やがて二人が語らいを終えれば、きっとどちらが先ともなくやがてまた、来たときと同じ鉄扉から、いつも通りの日常へと帰って行くのだろう。…そうして、晩秋の夜はゆっくりと、長く更けていく。)

ご案内:「大時計塔」からクロノさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に神代 理央さんが現れました。
神代 理央 > 「とはいっても、プログラム通りに悩み、考えている訳でもあるまい?少しでも自己の意思で思考しているのなら、それは良い事だと思うよ」

小さく肩を竦め、視線は時計塔から彼方への虚空を見つめながら言葉を零す。
慰めや世辞ではなく、ただ己の思う言葉を伝えて―

「だと良いんだが。まあ、それなら近いうちにお邪魔させてもらうよ」

邪気のない笑みを浮かべる彼に、思わず含み笑いを零す。
血と硝煙を纏う己も、その御茶会の中では普通の生徒の様にいられるのだろうかと夢想しつつ―

「…心配してくれて有難う。まあ、程々に頑張ってみせるさ」

彼の言葉に微かに笑みを浮かべつつ、金髪を揺らして頷いてみせる。

そんなやり取りを続ける彼等を見守っていたのは、夜空に浮かぶ星と、静かに佇む時計塔だけ――だったのかもしれない。

ご案内:「大時計塔」から神代 理央さんが去りました。