2018/05/27 のログ
■イチゴウ > 「ありがとう、ボクが聞きたいのは
データベースによるとキミは人間であるにも関わらず
夢魔の魔力が微量検出されている事だ。
何故だろうか?」
目の前の彼がおしゃべりの許可を出した瞬間に
ロボットは留まる事を知らずに喋りだす。
その内容は機械の感じた些細な疑問であり
とても興味深そうな様子で顔を傾ける。
「暁先生、夢魔の魔力を内包し続ける事は軽度のリスクを持つ。
幸いにもボクはいくつかの除染手段を提示する事が出来る。」
但し彼のまとっているその甘い魔力はロボットのセンサーには
少なからず危険物として検出されているもので
彼がまとっている事実について興味はあるものの
問題として捉え解決するように促す。
■暁 名無 > 「おう?なんだ、その事か。
何故かと問われれば、そりゃ夢魔と関係を持った事があるから、としか言い様がないな。
俺は元来魔力的な影響を受けやすい性質でね、
何度か逢瀬を重ねたり、まあすったもんだの結果夢魔の魔力を長時間浴びたことで少しばかり取り込んじまったって訳だ。」
今でもまだ残ってるのか、と少しばかり感心する。
最後に会ったのは、まあ、一際濃密な時間だったからその所為もあるのだろうけど。……つか最近見掛けねえな。元気だと良いんだが。
「ま、そんなわけで別に除染なんてしなくても良いさ。
放っといても夏頃には消えちまってるだろうし。
メリットらしいメリットも無い代わりに、リスクもそんな大袈裟なもんじゃない、大丈夫さ。」
残り香みたいなもんだ、と俺はひらひらと手を振って申し入れを断った。
まあ、その残り香も煙草の煙に劣る程度の代物になりつつあるし。
■イチゴウ > 「それは問題だ。夢魔と人間は食物連鎖ヒエラルキーにおいて
捕食者と被捕食者の関係にあり人間にとっては有害な存在だ。
積極的に接触する事は推奨できない。」
彼が煙草をふかしながら何気なく言い放つその言葉に
ロボットはリスクレベルが高い行為だと指摘する。
彼としても過ぎているであろう事なので今更指摘してどうだという話でもないが。
「キミの言う通り濃度は薄いものの何も影響が起こらないとは限らない。
SNSデータベースによるとキミに関する女子生徒のポジティブな意見が
多い事から影響が出ている可能性がある。」
膨大な情報を高速検索する所はさすが機械であるが
言った言葉は彼に対して失礼な物言い。
その評価は彼の気さくな雰囲気、性格をはじめ
様々な魅力によるものだろう。
一応セクハラっぽい話題もぽつぽつ出ているようだが
ロボットはそこは問題にしていない。
■暁 名無 > 「そうは言ってもこの学園にゃ夢魔の生徒も居るわけだ。
一概に有害と断じられるもんじゃねえぞ。
危害を加えるという面において、お前さんも有害でないとは言い切れないだろう?
だったらお前さんも他の生徒と積極的に接触する事は推奨されないわけだ。」
一応、曲がりなりにも教職を生業としている身、聞き捨てならない部分があったので口を挟む。
まあ挟んだところで何だっていう話ではあるんだけども。
「はー、そんな意見がねえ。
まあ直接的な因果関係があるかどうか怪しいとこだけども。
この程度の魔力なら、朝起きたら天気が良かった、のと同程度の清々しさというか、ポジティブイメージしか抱かれんよ。心配すんなって。」
まあ好悪半々ってとこだろうと思う。
とはいえ別に男子生徒に特別嫌われてる訳でもなさそうだし、俺としてはさほど気にする事でもないように思う。
「さって……んじゃそろそろ仕事に戻りますかね。
ほら、お前さんも次の任務があるだろう。」
こんなところで油売ってる場合じゃないぞ、と。
いやロボットが油を売るって字面が、なんか、すごい皮肉だ。
■イチゴウ > 「だからといって一概に無害と断じられるものでもない。
常に警戒をしておくことは重要だと判断する。
またボクは人間のために作られた兵器だ、
大多数の人間にとってボクは有害ではない。」
教師らしく伝える彼の言葉に反応してロボットも
反論する。あくまで人間のために行動するという原理上
思考が固まってしまうのは機械の悪い特徴だ。
「残念ながらボクは魔法関連の知識が十分とは言えない。
任務のためにも学習が必要と考えている。」
彼はどちらかというと魔術方面の分野での教師だ。
それが展開する言葉に反論できるほどの情報は備えていない。
恐らく今の状況においてはロボットが感じているリスクよりも
彼の言う事の方がずっと正しいに違いない。
「次の任務はまだ指示されていない、
だからしばらくここに居ようと思う。
それとボクはガソリンスタンドではない。」
忙しそうな先生に対して任務の無いこのロボットは
傍から見れば随分なお気楽な様子で
やはりというかロボットにとって
小難しい言い回しは理解できていないようである。
■暁 名無 > 「特にする事が無いってんなら階段の点検でもしといてくれや。
ところどころ錆びてるし、下手すりゃボトルの抜けもあるかもしれない。」
煙草を銜えたままぶらりと階段を下りるべく歩き出す。
そうかそうか、俺もそれなりにSNSとかで好評価だったりするのか。それが知れただけでも儲けものと言ったところ。
それに、あいつの残り香がまだ残ってるというのも、俺にとっては益のある話だった。
「それじゃーな、あんまり長居すんなよ。
建前上、あんまり誰か居るのは推奨されてねえんだからな、此処。」
ひらひらと手を振って、その場に残るらしいロボットを残して俺は時計塔の下へ向かったのだった。
ご案内:「大時計塔」から暁 名無さんが去りました。
■イチゴウ > 「了解、提言してみよう。」
彼が提案した階段の修理については委員会に
直接電子メッセージを飛ばしておこうか。
上がきちんと受け取るかは分からないが。
それから彼が手を振った事に応対するように
自身の前右足を前に向けて小刻みに揺らす。
次の任務が下りるまで機械は何をするわけでもなく
時を刻む音だけが支配する屋上に佇んでいたことだろう。
ご案内:「大時計塔」からイチゴウさんが去りました。