2015/06/29 のログ
ご案内:「公安委員会直轄第二特別教室 調査部別室」に薄野ツヅラさんが現れました。
ご案内:「公安委員会直轄第二特別教室 調査部別室」にギルバートさんが現れました。
■薄野ツヅラ > 「なんだかんだ云って第二に入り浸ってるのは事実よねェ」
ぼんやりぼんやり、いつものようにブラックコーヒーを啜る。
利用してやる、と吐き捨てた筈の公安の教室に入り浸っているのは皮肉なもので。
彼女は一日のうち、落第街の次に長くこの教室で時間を潰す。
故に、何故か彼女が第二特別教室宛のクレームの対応をすることも多かった。
───全てに於いて「管轄外よぉ」と言い放ち、コーヒーを傾けるだけだったが。
■ギルバート > いつものとおりぼんやりと歩いている。
指先には手書きのメモ。
本日は彼の所属する第一隊恒例の新人教育イベント、所謂"初めてのおつかい"の真っ只中だ。
「えーと。調査部はココ……なのか?」
扉の前に佇みノックを二回。
初夏の風はじんわりと、片目にかかった毛先を湿らせる。
■薄野ツヅラ > ノックの音がふたつ聞こえれば、厭そうに扉を見遣る。
またクレームかしらぁ、と頬杖をつきながら声を張った。
「はぁい、何か御用かしらぁ?」
相も変わらず間延びした口調に怠そうな表情。
扉の前の誰かに向けて、ひとつ。
いつも通りの、何ら変わらぬ猫を被った対応を。
■ギルバート > がらりと扉を開いた少年は、背丈からしてツヅラから少し大きい程度。
幼さの残る顔立ちは、年下と印象付けるには十分だっただろうか。
「あ、スイマセン。」
「オレ、第一隊の使いで来ました。」
一年のギルバート・レイネス。と少年は名乗る。
彼の所属する第一隊は実行部隊であり、調査結果は調査部に委任している。
ようするに、適材適所といったところ。モチはモチ屋である。
依頼内容はこうだ。
ここ最近の犯罪率増加の背景には、島民の不安を煽る銃器や薬物の違法流入にある。
既に胴元は絞り込めてはいたが、特定までには至らずにいた。
そのため、対人調査の専門部署である第二特別教室に白羽の矢が立ったのである。
大事な情報ではあるが、ドが付く新人のギルバートが派遣されたのには理由があった。
第一隊には新人教育の一環として、こうして他部署での情報の受け取りを行わせる慣わしがある。
顔を知れば当然他部署間での連携もスムーズになり、何より必然と仲間意識も芽生えるのだ。
当然それが不利益にも繋がるが、人道的な配慮により肯定されていた。表向きは。
時として人の情も利用するのが世の慣わしではあるが、この時のギルバートにはそんな都合は微塵も想像にない。
なお、当然監視の目はあるが、その上でそれを無事守り抜かねばならない。
時として公安委員会所属の"サクラ"が邪魔立てすることもあり、既存の委員からは毎年恒例のサプライズと化していた。
「依頼してた情報を取りに来た、んです、けど……。」
「(やべー、結構かわいいかも。先輩かな?)」
柄にもなく俗っぽい考えを浮かべながら、関係ないなと咳払い。
「……えっと、あなたが室長ッスか?」
■薄野ツヅラ > 「───第一隊?」
扉を開いた少年の言葉を聞けば、暫し考え込むように人差し指を唇に宛がう。
第一隊、だいいち──……と何度か呟けば、はっとした様子でぽんと手を打つ。
確か公安委員会の中でも第二特別教室と同じような派生組織。
其の中でも荒事を中心に執り行っていると『クロノス』から教わった。
確か彼女は「本来は第二は調査が主ですから」と云っていた。
「ええと、なんだったかしらぁ……
この間思いっきり使いッ走りさせられた時のよねェ」
はて、と独り言ちながら杖に体重を掛けながら立ち上がる。
かつり、かつりと2人しかいない教室に乾いた音が響く。
教室の隅に大量に積まれた書類の山を掻き分けて、一冊のクリアファイルを引き抜く。
引き抜いた瞬間に他のファイルが崩れたがお構いなしにつかつかと元の席へ。
「此れでいいかしらぁ、現状の情報だから余り詳細ではないけれど。
もっと詳しいのが欲しければもう何日かして取りに来るのをお勧めするわぁ」
椅子に座ったままひらひらとファイルを動かす。
生憎依頼されていた調査も先日の一件で進捗は自信を持てるものではなかった。
故に、珍しく「時間をくれ」、と漏らす。
室長か、と聞かれれば。特徴的な笑い声を響かせる。
「あっは、室長なんかじゃないわよぉ───……
ボクは絶対あんな面倒な中間管理職なんてやるもんか、って感じだしぃ──…」
生憎ボクはヒラの調査員よぉ、と付け足しながら、ふんわりと笑顔を浮かべた。
■ギルバート > 「あー……違うんスね。スイマセン。」
こりゃマズったかなと笑って誤魔化す。
誤魔化しのできる仕事ではないのだが、生理現象故のもの。
特に他意はないのだが、それ故に新人特有の初々しさのようなものが感じられた。
"受け取ったファイルに目を通すな"。
手を伸ばそうとした矢先、隊長の言葉を思い出す。
好奇心に躓けば、ロクなことにならないのは明白である。
普段意識しない言葉であるが故に、今この瞬間には余計に彼の心を占有する。
だがそれ以上に気掛かりだったのは、"目の前の少女は誰なのか?"
第二特別教室の生徒は、素性を隠しているというのは公安の者なら誰もが知っている。
それは新人のギルバートですら。
しかし名前は知れずとも、軽い話ができれば十分だった。
「あー……その、もしかして"先輩"ッスか?」
「オレ、毎日欠かさず登校してますけど見たことなくて。」
■薄野ツヅラ > 何処かぎこちない様子の少年を見遣って、こてり、首を傾げた。
謝られればクツクツと笑って、「気にしなくても大丈夫よぉ」と。
「ンッンー──……
一応籍は2年に置いてるわぁ、見たことないのも当然よぉ
だって登校はしてないしぃ──……」
どこか困ったように笑いながら頬を掻く。
そう云えば年下と関わること自体が珍しいわねェ、とぼんやり思案しながらコーヒーを傾ける。
普段は情報の受け渡しに来る生徒はあまりコミュニケーションを取ろうとしない為、
彼女にとっては少年の問いは些か新鮮なものだった。
■ギルバート > 「行ってない? 先輩、もしかして不良なんスか?」
へーはじめて見た。そう言いたげな表情。
何分学園自体の秩序は、極めて高く保たれている。
それはひとえに公安のみならず、風紀や生活、その他各種委員会の努力の賜物と言えよう。
当然それを総括する、生徒会あっての秩序ではあるが。
島内での治安の悪化は、ごく一部地域に留められている。
そのごく一部の地域が、あからさまに特定地域に限定されているのには少年も思うところがあったが
彼の権限ではできることが限られている。
ならできることを最大限にするしかないと、彼は常々思っていた。
今の少年の目をしたギルバートからは、あまり想像できないかもしれないが。
「やっぱりヨーヨーとか武器にするんスかね?」
「オレ、昔のドラマで見ましたよ!」
他の隊員が見たら驚くか、ひとしきり笑うような光景。
口下手である彼が、同じ公安委員とはいえ女子生徒相手にこんなにも饒舌に喋っているのだから。
数日間はこのネタで、同僚からからかわれ続けるのだが、それはまた別のお話。
■薄野ツヅラ > 「不良ってねェ───……」
随分短絡的な発想ねェ、とやりづらそうな表情を浮かべる。
彼女は本能的に相手取ってはいけないタイプ
───即ち純粋な相手に天然気味な相手──だ、と判断する。
するまでは良かったものの、少年の蛇口を捻ったかのような言葉に気圧される。
やはり苦手なタイプだ。こう云うタイプは全員が全員皮肉を皮肉と受け止めない。
「………ヨーヨーは武器にはしないしぃ───
不良と云うか逃げ出しただけよぉ、
青春の一頁は同じような人種で固まって過ごすのが最善だしぃ」
ボクが混じったら迷惑かかるわぁ、と。
困ったように笑顔を浮かべた。いつも通りの営業スマイルである。
そんな彼の普段の様子を知り得ない彼女からすれば喧しい後輩ねェ、其の程度の認識だった。
■ギルバート > 「青春ッスかー……オレ、あんまりそういうの考えたことないかも。」
「気付いたら今の生活してたから。なんか。全然実感なくて。」
「生きるだけで精一杯っていうか……。」
「……そういうの、ありませんか?」
俯きがちに口を尖らせる。
奴隷生活から始まって、怒涛の人生真っ只中にあっては、どうにも現実感のない言葉であった。
■薄野ツヅラ > 「ンー、別に其れなら其れでいいんじゃないかしらぁ?
ボクも少し前までは食うか食われるかの生活で青春どころじゃなかったしぃ──……」
何か地雷を踏んだかしらぁ、とばつの悪そうな表情。
そうひとつ問われれば、取り繕うようににっこりとほほ笑む。
「まァ、生きてるだけでボクも十分有難いわぁ──……
落第街に居る限りは続く訳だけどぉ」
■ギルバート > 「あ、スイマセン。なんか湿っぽくしちゃって。」
「そういえば、先輩が室長じゃないってことは……別にいるんですよね?」
「どんな人なんですか? オレ、本来ならその人に会わなくちゃいけなかったんスけど。」
あたりを軽く見回すが、当然のように他の生徒の姿なし。
たまたま出払っているだけなのか、それともこのめぐり合わせ自体が意図的なものなのか。
何れにせよ、クエスト条件の一つが満たされないことには代わりがない。