2015/07/08 のログ
ご案内:「公安委員会直轄第二特別教室」に『室長補佐代理』さんが現れました。
■『室長補佐代理』 > 「……はぁ」
気の抜けた溜息をつきながら、向かう机は己のデスク。
累積したるは書類の山。
もはや日常と化しつつあるそれに辟易としながらも、左手は意識と乖離したかの如く自動的に書類整理を続ける。
逆にいえば、もうそうなってしまうほどの枚数を仕上げているともいえる。
■『室長補佐代理』 > 追試も一通り終わり、課題も一段落つき、ようやっと休めるかと思いきやそんなことはない。
男の都合などまるで無視して工場のコンベアよろしく定期的に送られてくる各種書類は積もりに積もり続け、今こうしている間にも恐らく増えている。
明日には補充とばかりに数枚追加されるはずだ。
下手すれば数十枚だが、それは部下の働き次第なので薄野の『活躍』をあらゆる意味で祈るばかりだ。
■『室長補佐代理』 > 「現場仕事は出来るって部下ばっかりだな……」
ある意味、それが正しい形ではある。
男は中間管理職である以上、出張るよりはこうしてデスクに向かって書類整理を続けるのが本来の姿なのだ。
そういう意味では正しく元のポストに戻れたといえるのだが、どうにも釈然としないものがある。
クロノスに対して現場向きがどうのこうのを嘗て謳った男だが、自分も実はそうなのではないかと自嘲の笑みが漏れる。
笑みといっても苦々しさたっぷりの皮肉気な苦笑でしかないが。
■『室長補佐代理』 > 西園寺の一件から害来腫討伐、クロノスの暴走事件と連続して『身内』の『処分』に奔走した結果、男の仕事は大分少なくなっていた。
当然監視やら調査の仕事は未だに普通にあるのだが、それは特別な案件でもなんでもなく、昔から日常的にやっている調査部の通常業務であり、別段特筆することではない。
そして、それらに纏わる現場仕事も薄野が率先してまるで書類仕事から逃げるようにやっている以上、男に残る仕事はこういったデスクワークなのである。
逆にいえば、もうデスクワークしか残らないほど現場の仕事は減っているということでもあった。
悪くないことである。
平和の証拠とまで驕りはしないが、それだって昔よりは起伏のない日常になっている証左ではある。
■『室長補佐代理』 > ロストサインに関するアレコレは片付いていないとはいえ、それはもう公安の仕事ではなく本来でいえば風紀の仕事である。
もっといえば、実働の荒事が増える以上、それは調査部の仕事からすら離れていく。
交渉だって本来でいえば専門外だ。
それだって、別室であるからこそ『特別な案件』に対して『便利』にこまごまやらされているだけというのが実状だ。
しかし、肝心の『調査部別室』が絡める『特別な案件』がなければ、自然日常は見ての有様になっていくのである。
ご案内:「公安委員会直轄第二特別教室」に麻美子さんが現れました。
■麻美子 > こんこんとノックすると、その教室に足を踏み入れる。
彼の姿を見つけると、ゆっくりと歩み寄り、
片手に持った弁当を持ち上げてにへらーっと笑った。
「『室長補佐代理』サン、約束通り手伝いに来たッスよ。」
■『室長補佐代理』 > 「おう、麻美子、よくきたな」
見知った相棒であり、恋人でもある少女に笑み……といっても大分不景気なそれを返し、勝手に作った麻美子のデスクの椅子を引く。
今後手伝って貰うことが確実に増えるのだから、先んじて作ることは何も悪いことではない。
「色々気を使って貰ってわりぃな」
名前の呼び方から弁当まで色々な意味でそういいながら、立ち上がって茶の準備をする。
「紅茶がいいか、コーヒーがいいか」
■麻美子 > 「別にいいッスよ。」
手をひらひらと振ると、引かれた椅子に座る。
『うーわ、本当めっちゃ書類あるッスね……。』と苦笑いすると、
机の上に弁当の包みを置いた。
「あ、麻美子はいつも通り紅茶でお願いするッス。」
■『室長補佐代理』 > 「おう」
短く返事をして、紅茶を淹れる。
といっても男は片手であるし、何より調査部室に置いてあるそれである。
いつも通りのティーバックだ。
まぁそれでも、経費で落として仕入れている来客用のそれなので、結構良い葉を使ってはいる。
出来あいにしては良い香りを漂わせるそれをそっとデスクにおいて、ついでに茶菓子の詰まった籠を差し出す。
専ら食べるのは薄野ばかりなのでそれほど目減りはしていない。
「書類の方はまぁ見ての有様でな。一つ一つは大したもんじゃねーんだけど、量がこれだけあると終わりゃしねぇ。
その上、微量とはいえ毎日増える。二人でやってもしばらくは掛かるだろうな」
先を想像して、重苦しい溜息を吐き出す。
■麻美子 > その紅茶にミルクと砂糖を入れてかき混ぜると、口に含んだ
「さすが公安委員会、いいティーバック使ってるッスねー。」
ふぅと息をつくと、籠からクッキーを取り出して齧る。
手近な書類に目を落とすと、
適当に書き込んで『終わっている』書類の山に積む。
「ま、その間『室長補佐代理』サンと二人きりって考えるとそれほど悪いものじゃないッスよ。」
次の書類にペンを走らせながら、口を開く。
「そういえば、『室長補佐代理』サン、
なんか最近やたらと『公安委員会』、
特に『暗部』の情報が情報屋の間に流されてるッスよ。
ま、ちょっと前に誰かさんの部署に盛大に事件を起こした公安委員がいるッスから、
特需で高値で取引されてるのかもしれないッスね。」
そう言って、鞄から週刊誌のようなものを取り出す。
表紙には『公安委員、影の始末屋『アークエネミー』と呼ばれる彼の秘密に迫る』と書かれている。
■『室長補佐代理』 > 「ああ、『噂話』がやたらと跋扈してるようだな」
対面のデスクに座って、そう表向きはすっとぼけておく。
といっても、こんなものはポーズのようなものだ。
実際はお互いに『分かって』やっている。
言葉にすることは言質をとられ、時に物証にまでなるが、そもそも『察して』話していればそれらは最初から浮上しない。
昔通り、じわりと滲むような笑みを浮かべて、ゴシップじみた週刊誌のような何かを一瞥して、左肩だけを竦める。
「ま、会談じみた都市伝説ってのは抑止力にもなるしな。ある意味で『都合がいい』んじゃないか?
もし、麻美子もジャーナリスト魂とやらが疼くならいくらでも『公安の一部署』として取材は受けるぜ。
何せ、今二人きりだしな」
悪戯めいて、そう嘯く。
特需で取引されているのなら、一緒に上手い事あつかって小遣い稼ぎにしてもいいし、抑止力として誇張を交えて吹聴してもいい。
『上』も『だからこそ』積極的に取り締まっていないのだろうし。
■麻美子 > 「ま、刺激的な噂話は退屈な学生相手に売るには丁度いいッスからね。
麻美子も少しだけ『取材協力』してやったッスよ。」
取り出したほかの情報誌、表紙には
『噂の影の始末屋、『アークエネミー』、
その『恋人』に独占取材!!血に塗れた彼の素顔とは!!』
と書かれている。もちろん、中身を開けば誇張に誇張を重ね、
もはや別人と化している記事が並んでいるのだが。
具体的には、彼の姿が相当に美化されて乗っている。
『イケメンの影の仕事人』というのは、その手の女子にはウケるのかもしれない。
「……ま、それだけの話ッス。
『室長補佐代理』サンとしては、
『噂話』についてどう思ってるのかが知りたかっただけッスよ。」
そう言って肩を竦めると、山から取り出した書類を別の山へ。
話しながらも、かなりのペースで片づけていっている。
■『室長補佐代理』 > 麻美子から渡された情報誌を片手で捲り、読み進めるたびに微かに笑声を漏らす。
見知らぬ舞台役者のプロフィールと化したそれは、あらゆる層のあらゆる需要に答えるかの如く見知らぬ何かに変質しきっている。
特に『恋人』に独占取材の件など、これでもかというほど誇張されたそれは最早『完全無欠の御伽噺の怪人』である。
こんな人物が実在しているのならば、切り裂きジャックもオペラ座の怪人も裸足で逃げ出すだろう。
「俺としてはそうだな。まぁ、あくまで『噂話』だし、好きにすればいいと思うぜ。
ただ、そうだな、もしこんな奴に追われていると怯えている悪党が一人でもいるのだとしたら……同情は禁じ得ないな」
麻美子の半分以下のペースで書類を片付けながら、そう皮肉気な笑みを漏らす。
「逆にきくけどよ、麻美子は『そういう』のが好みなのか?」
どこぞの『恋人』の独占取材に関する記事を指差して、そう笑う。
美化されきった容姿の件である。
■麻美子 > 「いくらなんでも、そんなバカみたいな記事を本気にする悪党はいないッスよ。
あくまで、そんな世界とは無縁の一般女子がキャーキャー言うための記事ッス。」
そう言って肩を竦めてケラケラと笑う。
そういった世界とは無縁の学生からすれば、
『ありそうなファンタジー』ほど夢のある世界はない、という事なんだろう。
これが『【アークエネミー】の正体だ!!』と煽り文句の書かれたページには、
人気のイラストレーターが描いた想像図として、
なぜか知らないけど白馬に乗っている全身黒づくめの服装にマントを羽織り、
長い黒髪がサラサラと靡き、西洋風の剣を掲げて、
全身に謎のベルトを巻いている仮面をつけたイケメンが映っていた。
ナポレオンか何かのようにも見えるその人物の腕には、
申し訳程度に公安委員会の腕章がつけられている。
控えめに言っても影の仕事人という雰囲気の見た目ではない。
―――そういうのが好きなのか、と聞かれれば苦笑いを浮かべる。
「そんなわけないじゃないッスか、
そういうのが好みだったら、緑サンとは付き合ってないッスよ。
麻美子にとっては緑サンが一番ッス。」
少しだけ頬を染めると、そう言って、
照れ隠しをするように書類仕事に戻った。
■『室長補佐代理』 > 「そりゃあ良かった、今から剣術を修めて乗馬の練習をしなけりゃならないのかと、内心、戦々恐々としてたからな」
少しだけ赤くなった恋人の頬を一瞥して、男も嬉しそうに笑う。
傍目から見るといつも通りの滲むような笑みなのだが、付き合いの長い人物ならそのイントネーションの違いが分かる。
些細な違いではあるが、それでも、それは大きな違いだった。
「まぁ、しかし、公安の仕事人を『都市伝説』として一般女子が黄色い声をあげられるような時勢になったってわけか。
そう思えば、こうやって今書類の山に埋もれているのも、悪い気持ちじゃあなくなるな」
もし、今の時勢が荒れているのだとすれば……これらの記事がゴシップに留まることはない。
色々な理由で検閲もされるし、一般生徒が読んでも性質の悪い冗談としか思えないだろう。
ところがそれが、今や『怪談』の一種として楽しまれるようにまでなっている。
この記事を読めば、悪党すら公安の記事にも関わらず、十中八九は鼻で笑う始末だろう。
なら、それは……悪くない兆候であるといえるのではないだろうか。
「非日常が日常の妄言の種になるのなら……それはまぁ悪くない話だ」
■麻美子 > 「馬に乗って剣術を修めてれば、
少なくともそこらの不良には負けないんじゃないッスか?」
冗談っぽく笑うと、書類にペンが躍る。
『文字を書くこと』を生業としている以上、
書類仕事は専門分野のようなものだ。
取材対象の発言をリアルタイムでメモに取れる程の速記と、
『EX』クラスの異能を『なんとなく』で発動できるほどの情報処理能力は、
次々と片方の書類の山をもう片方の山へと積み上げていく。
「ま、あれ以降は目立って大きい事件もないッスからね。
ロストサインでも一番目立って厄介だった
『殺刃鬼』は『何故か』悪党ばかりを狙うようになったッスから、
それにおびえるように落第街の治安も若干落ち着いてきてるッス。」
また一枚書類を積み上げると、くるりとペンを回した。
「ま、この学園では『非日常』も所詮『日常』ッスよ。
おっきく動くような事が無ければ、
しばらくは公安委員会も安泰なんじゃないッスかね。
体のいいイメージアップ用のマスコ……アイドルもいるッスからね。」
けらけらと笑うと、さらに書類を積み上げた。
彼女が来た時に山と積まれていた書類の山は、
既にほとんどがもう一つの山に移っている。
■『室長補佐代理』 > 「歌って踊れるキグルミの方が『都合がいい』のかもな。
実際に不良にボコられて、話の分かる武人と蕎麦を啜る何者かよりは、確かに見栄えはいい」
とっくに今日のノルマを片付けてくれた麻美子の手際に舌を巻きながらも、軽口は途絶えない。
麻美子のお陰で、楽しむ余裕ができたともいえる。
それでも、せめて自分の手元の書類は片付けようと、遅々ながらもペンを奔らせる。
日頃の勉強会のようだなと頭の片隅で思う程度には、それは落ち着いた雰囲気だった。
非日常が……少なくとも、男を取り巻いていたそれが、日常の境目にまで降りてきているのかもしれない。
まだまだ、この島は平和とは言い難いし、仕事も山ほどある。
まだ見ぬ巨悪もあれば、現在進行形で続いている悲劇もきっとある。
それでも、男と麻美子の周囲のそれは以前よりは落ち着いている。
「これが終わったら、約束してた祭りにでもいくか」
だからこそかもしれない。
ふと、そんな言葉が自然と出た。
■麻美子 > 「これを機に公式マスコットキャラクターでも考えたらどうッスかね。」
そう冗談めかして笑うと、
『正直、公安委員会の人は全体的に不気味すぎるんスよ』と肩を竦める。
彼の提案を聞いて、一瞬書類に記入する手を止めると、
にっこりと笑って『そうッスね。』と彼の提案を受け入れた。
「なんだかんだとお互い忙しかったッスからねー。
ま、ちょっとくらい休んでも平気ッスよ。」
『西園寺偲』の一件から尾を引いた長い長い一件は、
ようやく終わりを迎え、それと同時に、彼女、
そして彼にも日常を運んで来た。
この学園のどこかでは、『誰か』の非日常が続いているのかもしれない。
でも、それは二人とは関係のない非日常だ。
「お祭り、超楽しみッス!!」
今だけは『室長補佐代理』ではなく
大切な恋人の『緑』ににっこりと笑みを向けると、
残り少ない書類の山にペンを走らせ始めた。
■『室長補佐代理』 > 二人とも、何かあればきっとまた駆り出されるだろう。
それほどまでに日常は脆く、有事であればあるほど静観は赦されない。
だからこそ、麻美子はかつて広報部にいたし、男は紆余曲折を経て公安に戻ってきた。
終わりがあれば始まりもある。
次の事件はいつまた幕を開けるかわからない。
それでも、今は……幕間くらいは、楽屋裏で休んだって構わないだろう。
「それなら、誘った甲斐もあるってもんだ」
上機嫌そうにそういって、もう自分の分もほとんどなくなった書類の山に手を付ける。
実際、問題はまだ解決しきっているわけではない。
公安暗部や広報部のこともあれば、男に宿る『悪魔』のこともある。
外部的な要因である落第街に纏わるあれこれや、他の委員会の動き。
ごく個人的な事にまで落とし込めば課題のこともある。
互いを取り巻く環境は、いまだ穏やかとはいえない。
それでも、今だけは。
そう、束の間の、今だけは。
「さて、そろそろ一段落つくし、そしたらお楽しみのランチにするか」
そういって、『恋人』が持ってきてくれた弁当に視線を送った。
■麻美子 > 半分機械のようになりながら黙々と書類を片づけていたが、
『彼のランチにするか』という言葉に我に返ったように手元を見る。
書類はもう残すところ1枚になっていた。
最後の一枚を山に詰むと、満足気に笑って頷く。
「いつまでもこんな所に居たらカビが生えるッスから、
屋上なり、外なりにでてご飯にするッスよ。
……それに、ランチは『緑サン』と食べたいッス。」
この部屋にいる限りは、彼は『室長補佐代理』だ。
「公私混同はよくないッスからね。」
そう言ってけらけらと笑うと、弁当を持って立ち上がる。
■『室長補佐代理』 > 「それはいえてるな。俺も、『恋人』と仲睦まじく過ごすならオフの時のほうが嬉しい」
『恋人』の物言いに嬉しそうに微笑んで、こちらも自分の分の最後の一枚を片付けて、麻美子の真似をするように山に積む。
一通り仕事を終えたところで同じように立ち上がり……腕章を外して、ポケットにしまった。
「いくか。麻美子。実はここの屋上は穴場でな。洒落た小さな庭園があるんだ」
自分から左手で手を取って、屈託なく笑う。
その笑みは、不思議といつもよりも健やかで、和やかで。
「プライベートで過ごすのにも中々、悪くないところだ……人気もないしな」
少しだけ、不敵だった。
■麻美子 > 彼の不敵な雰囲気と、付け加えられたように言ったその言葉に
少しだけ頬を染めると、『それなら、ゆっくりできるッスね』と頷く。
自分の手を掴む彼の左手に指を絡め、付き合い始めの、ビギナーだった頃よりは、
こうして彼に振り回される事が増えたな、なんて思いつつ、
少しだけ高鳴る鼓動を胸に、そのまま手を引かれるようにして教室を出て、
『恋人』と仲睦まじく過ごすべく、屋上へと向かっていった。
ご案内:「公安委員会直轄第二特別教室」から麻美子さんが去りました。
ご案内:「公安委員会直轄第二特別教室」から『室長補佐代理』さんが去りました。
ご案内:「公安委員会外事部特殊情報課」にライガさんが現れました。
■ライガ > 机の一つに座り、違法な宗教施設から回収した書類を調べている。
時々通信機器を弄り、どこかに電話をかけているようだ。
「……ええ、データを後日送りますので一応そちらでも調べておいてください。
それでは。マアッサラーマ」
通信を切ると、目の前の書類を見る。
トランスを目的とした薬物の製造や輸入、抜けようとした信者の処分についての資料、スラムでの影響力。
これだけならば風紀に回したほうがいいかもしれないが、資金援助をしている連中が海外、アラブ圏の富豪連中にいる。あのあたりはそういう類に関して特に厳しいはずだが、地下に潜っている組織は数知れない。収賄も横行してるし。
■ライガ > (内政干渉、とまではいかないけど。
やっぱ常世に深く根を張る前につぶしておいたほうがいいよな。この手のやつは)
とはいえ、今回の件はまだいい方だ。問題なのはこの新興カルト宗教だけで、厄介なものは比較的絡んできていないのだから。
あるいは有名な異能・魔術団体。あるいは反財団系の多国籍企業。あるいはテロリスト。
常世学園、ひいては財団の敵は無数に存在する。
それが故に、外事部特殊情報課では、留学と称して職員を各地に向かわせているのだが。
(……キリないよな、これ。
ま、理解できなくもないけどね。常世島っていう宝の山目指して世界各地からちょっかいかけてるわけだし)
■ライガ > 書類を担当部署別にまとめ、それぞれ封筒に入れると、外事部謹製の呪術印で厳重に封をする。
ただひとつ、ある魔術の資料についてだけは、違和感のないように抜き去っておく。
「よし、投げる分の整理完了っと」
机の前を片づけると、うーんと伸びをして、首をこきこきと鳴らす。
■ライガ > 「今日は天体観測会、だっけ。
雨音するけど、大丈夫なのかな?」
この部屋に窓はない。
いや、もともとはあったのだが、狙撃が心配だとかで、課長が塗りつぶさせたのだ。
そこまで心配するほど、立地条件良い場所ではないのだが。
忘れ物がないか確認すると、ドアを開けて出ていく。
ご案内:「公安委員会外事部特殊情報課」からライガさんが去りました。
ご案内:「式典委員会本部」に正親町三条楓さんが現れました。
■正親町三条楓 > 正親町三条楓は無言で通達書に目を走らせる。
生徒会からの通達らしくごたごたとお題目が並べられているが、要はこういう事だ。
『犬飼命に関する全ての事柄にA-13項を適用。
公安、風紀両委員会以外の介入を禁ず』
A-13項はすなわち、生徒会における機密性の高い事柄に対し、他委員会からの干渉を防ぐ為の項目だ。
この通達が来た以上、楓はこの犬飼命という生徒に対し、『バランス』の名目ですら接触出来なくなったという事だ。
(また物騒な事をしていますわねぇ)
正親町三条楓は平和を愛する。
こんな事柄、わざわざ自分から関わるものか。
■正親町三条楓 > 大体この犬飼命というのは誰だ。
風紀委員らしいが、聞いた事もない。
おそらく落第街あたりを担当していたのだろう。
わざわざ楓にまで通達を出すあたり、よっぽど何か知られたくない事で動いているらしい。
(知った事ではないですねぇ――それより)
■正親町三条楓 > そう、それより問題は明日からの海開きだ。
式典委員会運営局は、既に本日から臨戦態勢に入っている。
海開きの為の諸準備、生徒への通達、水泳部協力の監視員確保、スイカ割用スイカの調達。全てぬかりない。
一部の生徒は徹夜で準備するらしい。何が彼らを駆り立てるのか。
「――予算はぁ、ギリギリですかぁ」
なんとか予算以内に収めたらしいが。
それでも残り予算がぴったりゼロ。
足りない分は自分たちでカンパを出して補ったらしい。やめろと言っているのに。
■正親町三条楓 > いずれにしろ、今日でテストも終わり。
明日からは海開き、そして夏季休暇も近い。
生徒たちも浮かれている事だろう。
「……夏、ですねぇ」
そう、夏。
皆が開放的になる季節だ。
とはいえ、学生である。その本分を弁えた行動だって必要だ。
というわけで、この毎年必ず謎の人物から出る企画書「常世島ヌーディストビーチ開設」イベントに不許可の判子を捺す。
今度風紀委員に誰が出しているかを調べてもらおう。
ご案内:「式典委員会本部」に神宮司ちはやさんが現れました。
■神宮司ちはや > (がらがらの式典委員本部へ楓に渡された体験入部用のカードを使って入る。
ちょっと忘れ物を思い出して取りに来ただけだったのだが、扉を開くと誰かが机に座っているのに気づいた。
相手が楓だとわかるとにこやかに笑い、挨拶をする。)
あ、楓先輩お疲れ様です。いよいよ明日から海開きですね。
■正親町三条楓 > ふと顔を上げると、少年の顔。
楓は嬉しそうに微笑みかける。
「あらちはや君。
どうですか、委員会には慣れましたか?」
■神宮司ちはや > はい、先輩や他の委員のみなさんのお陰でなんとか。
ぼくでもちょっとお手伝いできているなら嬉しいです。
(机の上に出された「常世島ヌーディストビーチ開設」の企画書をちらっと見やるも慌てて視線を逸らす。
ついでに話しも逸らすように、)
あ、あのぼくお茶をお入れしますね。
それからその、そろそろ体験じゃなくて正式に委員会に入らせてもらおうかなって、考えてて……。
(隣の部屋の簡易キッチンから緑茶を入れる準備をする。
お湯を沸かすも、夏場だからアイスのほうがいいかなと思い氷が残っているかどうか冷凍庫を覗く。)
■正親町三条楓 > 「あら、ありがとうございます」
楓は自前のティーカップを持ち込んでいるので、それでお茶にしよう。
私物の持込だが、他の委員は着替えや洗面用具、果ては布団と枕を持ち込んでる者までいる。
ここを合宿所か何かと勘違いしているのか。
「――ええ、私もそう思いまして」
机の上に、一枚の紙と腕章を取り出す。
紙は式典委員会への入会希望書。腕章は楓と同じ式典委員会のものだ。
■神宮司ちはや > (沸いたお湯をお茶っ葉が入った急須に入れる。氷を入れるから濃い目に出す。
少し蒸らしてゆすり、戸棚から何かお茶菓子がないかと探したところ、プルポン製の袋菓子が出てきた。
これを少し失敬させてもらおう。
楓先輩のティーカップが並んでいるなら、それを背伸びして丁寧に取り出し、自分はガラスのグラスか何かを借りて氷を別に取り出し、おぼんに乗せて持っていく。
楓の前で緊張しながらお茶を注ぐ。ソーサーに乗せて机に出した。)
粗茶ですが……。
(出された書類と腕章を見つめる。いつも楓先輩がつけている腕章と同じもの。
もし同じようにつけたら、楓先輩のように堂々とできるのだろうか……。
試しにちょっと自分の腕に付けてみる。うーんとうなり)
……変じゃないですか?なんか、楓先輩みたいに似合うか心配なんですけど
■正親町三条楓 > カップを持ち、口をつける。
うん、美味しい。香り、味、ともに素晴らしい。
「結構なお手前で」
微笑みながら頷く。
彼が腕章をつけると。
「ええ、とっても似合ってますよ」
二人で同じ腕章をつけられる事を、素直に喜び。
■神宮司ちはや > ありがとうございます……えへへ、お茶は入れるの得意なんです。
(褒められれば嬉しそうに頬をかき、自分も手近な椅子に座る。
一口氷を入れたお茶を飲めば緊張もほぐれた。)
そうかなぁ……。これでもし委員だって周りに思われても
僕なんかじゃ説得力ないかなって……。
だから楓先輩みたいにもっと似合うような、堂々と出来るような人になりたいです。
それで、その書類を書いて提出すれば大丈夫ですか?
■正親町三条楓 > 「ふふ、あなたならすぐですよ」
カップをソーサーに戻しながら言う。
彼が堂々と凛々しい姿を見せてくれれば――その姿を思い、楓は頬を少しだけ染めた。
「はい。書類を提出すれば、手続きは完了です」
元々体験入部していたし、何も問題はない。
これで彼も、正式に式典委員会の一員だ。
■神宮司ちはや > そうなれたらいいな。でもこの腕章ちょっと目立って恥ずかしいですね。
(照れたように微笑んで腕章を机に戻すと、早速傍にあったボールペンを借りて書類へ記入する。
律儀で丁寧な字が必要事項を埋めていく。
しばらくして項目が全て埋まると、はいといって両手で恭しく書類を楓へ渡した。)
■正親町三条楓 > 「――受理します」
書類を受け取ると、委員会印を書類に捺す。
あとはこれを、生徒会に回せばいい。
――そもそも各委員会は慢性的な人手不足の為、こんな手続きをする必要性も薄いのだが。
「神宮司ちはや君。ようこそ式典委員会へ」
■神宮司ちはや > 改めて、よろしくお願い致します。 正親町三条楓副委員長。
(少し背筋を伸ばし、きちんと手足を揃えて頭を下げる。
緊張してギクシャク気味だがまぁ真面目であることは感じられるだろう。
顔を上げればふにゃりと頬を染め、恥ずかしそうに笑う顔があった。)
ぼくもいっそう頑張りますね。少しでも楓先輩の力になれるように。
■正親町三条楓 > 「――はい、学園の為に頑張ってください。
そして、式典委員会の掟をひとつ、ちはや君に教えますね」
ゆっくり立ち上がり、彼の前に立つ。
今は自分の方が背が高い、が。
彼は育ち盛りの男の子だ。きっとすぐに追い抜くだろう。
「何よりもまず、あなたが楽しんで下さい。
式典委員会は色々な人を楽しませる委員会です。
あなた自身が楽しめないイベントでは、誰も楽しませる事は出来ません」
それが式典委員会、唯一とも言える鉄則。
そして先輩たちから脈々と受け継がれる伝統だ。
『何よりもまず、楽しめ。
イベントをつくりあげる事を
学生生活を
そして常世島を』
その教えを、ちはやにも受け継いで欲しい。
これは楓の本心だ。
■神宮司ちはや > ぼく自身が楽しむ……――
(自分の前に立つ楓を見上げる。
式典委員会の掟を胸の中で復唱する。
何よりもまず、楽しむこと。
今まで自分は楽しむことを積極的に行ってこなかった用に思う。
でもこれからはそれではいけないのだ。
自分も楽しんで人も楽しめるようにならなければ。
なかなかちはやには難しい課題だが、それが委員会に受け継がれるものならちはやもそれを継ぎたいとおもう。
これが自分の変化のきっかけかもしれない。
楓の言葉に大きく頷いた。)
が、頑張ります……。楽しむ……たのしむ。
先輩は、楽しいですか?
(ふと気になってそんな風に聞き返す。
イベントを、この学校生活を、常世島を、楽しんでいますか?と)
■正親町三条楓 > 「――ふふ」
楓は笑った。
その笑顔が物語っているだろう。
―ー彼女は、人生を最大限に楽しんでいる、と。
「さ、行きましょう――明日からは、忙しいですよぉ」
カップを片付けながら言う。
そう、明日からは海開き。式典委員会の腕の見せ所だ。
■神宮司ちはや > (楓の笑顔を見る。
含みはある、見る人を虜にするような蠱惑的な笑み。
けれどそれはちはやの目にはいたずらを思いついた少女の笑顔にも見えた。
その彼女が言葉にしなくても伝えるのだ。
聞いた自分が少し野暮ったくって、恥ずかしげに俯いた。
こんな風に自分も、自分のことを楽しく笑えたらいい。)
はい、先輩。明日のために、がんばりましょう。
(彼女には及ばないもののふわりと自分も笑みを作る。
自身を励まし人を励ますような笑顔だ。
二人分の茶器を片付け、楓の手伝いを終えたなら
その後は、送れるところまで彼女を送るつもりだ。)
■正親町三条楓 > そして二人は帰路につく。
――帰り道。校門を出ると、ちはやの手をそっと握って。
二人で手を繋いで帰った。
ご案内:「式典委員会本部」から正親町三条楓さんが去りました。
ご案内:「式典委員会本部」から神宮司ちはやさんが去りました。