2015/08/07 のログ
リグナツァ・アルファニウス・ピセロット > 7つの色のヴェールが、リグナツァの周囲を取り囲み、風もないのにゆらゆらと揺れる。

「……そもそもだな、風紀委員会以外だの部外者だのと分けることがおかしいだろう」

そのヴェールの一つ一つが更に7色に分けられて一つめの陣を取り囲む。
あわせて49。ぐるりと円を為した色彩のヴェールは虹というには細やかにすぎる。

「襲撃されるものと襲撃するものの違いは何だ?風紀委員会はこんなにも脆弱だというのに何故無防備なのか」

2つ目の陣が7色に分かたれて3つ目の陣として取り囲む。
343枚のヴェールが囲う中心、極彩に囲まれた魔術師の姿は見えるはずもないのに、

揺れるヴェールの隙間から不意に、魔術師が手を差し出している相手が――

魅せられかかっていた学生を、アルヴァーンが背後から引き倒す。
白い犬だけが、主人を見つめている。

枯れた細い腕に、何もかもの権勢を奪われた古い何者かに、睦言を囁くようにして魔術師が顔を近づける。
聞くべきでない遠い昔の言語を囁き交わしながらその腕を魔術師が掴むと、ヴェールが一気に払われた。

「……風紀の敵は常世の敵だからだ。お前たちを助けるものはこの島の全てだからだ」
ヴェールの中に有った旧い古い神のように、腕を枯れてやせ細らせながら、リグナツァが転移の痕跡そのものを掴むと、ズルリと引き揚げた。

「アレを見たものは居ないな?よし、ならばあとはリグナツァに任せておけ」
「…終わったぞ、蓮教員」
袖の中に枯れた腕を仕舞いこむと、後ろを向いている先輩教員に声をかけた。
「一つ昔のツテを借りてな、転移のことならなんでも任せよ、とそういうことになっているのだ」
あるいはその匠の目ほどの解析力を魔術に対して発揮できたのならば、
古い旧い【魔術】そのものとの契約が見えたのかもしれないが、
とりあえず今のところはアルヴァーンの引き倒した学生に謝りながら手を貸すただの魔術師である。

「そしてだな、これを使うとアルヴァーンの機嫌が妙に良くてな」
枯れてない方の腕で珍しく撫でさせてくれる犬を存分に撫でるただの青年である。

黒神 蓮 > 「お疲れさま」

(何やら終わったらしいリグナツァの方へ無表情で向き直る、
そのままレジ袋から何かを取り出し、ひょいとリグナツァへと投げ渡す、
投げ渡したのはお気に入りのコーラグミ、と微妙に温いコーヒー、自分なりの感謝の気持ちだ)

「それじゃ、僕は行きます、仕事がありますので」

(ついつい話し込んでしまった、遅れてしまったら後輩達に示しが付かない、
もうここでやるべきはやったし、さっさと立ち去るべきだろう)

「……あ、消毒液は返さなくていいんで」

(途中で振り返って言葉を付けたし、今度こそ立ち去った)

ご案内:「委員会街:風紀委員本部側面路地、保存されている現場」から黒神 蓮さんが去りました。
リグナツァ・アルファニウス・ピセロット > 「結果は後で風紀に回す、今の段階で言えば…上のほうだな。
そう待たずともこちらから門を開けるだろう」
アルヴァーンを撫で終えて、片手でコーヒーを受け取り、
白い犬はコーラグミを受け取った。……食べた。

「では、こちらもすべきことを為しに行かねばな」
妙に気分の良さそうな白い大型犬を連れて、消毒薬の礼はまたいずれ、と心に決めて。
往路のごとく、復路もまた陽炎のように、魔術師と犬は消え去った。

ご案内:「委員会街:風紀委員本部側面路地、保存されている現場」からリグナツァ・アルファニウス・ピセロットさんが去りました。
ご案内:「公安委員会庁舎前公園」に『室長補佐代理』さんが現れました。
『室長補佐代理』 > 夜半過ぎの公園。一本の街灯に白く照らされたベンチに腰掛けて、男は溜息をつく。
右手はポケット。左手には缶コーヒー。
書類を適当に片付けて、とりあえず一休みと外に出てきたらもうこんな時間だ。
夏季休暇もクソもあったものではない。

『室長補佐代理』 > 先日、落第街に仕事に赴いた際。
紆余曲折の果てナイフによる裂傷を右腕に負ったため、今日は医師に言い含められて現場から離された。
命に別状はないし、傷もすっかり塞がっているが、それもこれも魔術治療の賜物である。
外で普通に治療をうけたら数針は縫うことになっていたろう。
まぁそれも、この常世島では一瞬で癒える。その程度のかすり傷という扱いだ。
実際、その程度の怪我なら既に数えきれないほど男はしているので、それほど気にしたことはない。
しかし、それだってこの常世島の発達した魔術治療やら異能治療の研究努力と臨床結果があってこそのものである。
ならば、毎度それを使って治療する医療関係者からすれば、その心境こそに目くじらの一つも立てたくなるだろう。

『室長補佐代理』 > 実際まぁ医者の言うことはある程度正しい。
いくら傷が塞がったところで失った血がすぐに戻ってくるわけではないし、ピリついた現場の状況が改善されるわけでもない。
そうなれば、ある意味で『元凶』といえる被害者を一先ず現場から遠ざけることは、『治療』という見地から見ればあらゆる意味で合理的な対症療法といえる。
だからこそ、男も別段何をいうでもなく、言われたとおりに今日は部下に現場仕事を任せ、いつも通りの書類整理に精を出していたわけだが。
 
「しんどい」 
 
率直かつ極々当たり前の感想を、つい虚空に漏らす。

『室長補佐代理』 > そう、世間は夏季休暇である。
そんなもんだから、書類整理の為に普段は協力を頼んでいる連中が今庁舎に居ないのだ。
あくまで協力者であって、公安委員ではないため、いなければ無理に頼む事はできない。
いや、無理に頼めば多分どっちも微笑混じりに手伝ってくれるだろうが、だからといってそれに甘えるのは良い事とはいえない。
しんどくたってなんだって、やれば終わるのだから一人でやればいいのだ。
自分で出来るなら自分でやればいい。男はそう考えていた。
そう考えているからこそ、こんな夜中までかけてもまだ書類が片付いていないのだ。

『室長補佐代理』 > 二級学生昇格審査以降、仕事は当然増えた。
仕事が増えるということは書類も増えるということであり、特に報告書の類はそれこそ加速度的に増加している。
一枚一枚片付けるのはそれほど苦ではないが、何せ量が量であり、男はその上、右手が使えない。
片手でやれば当然手間は両手の倍であり、その倍加した手間がそのまま時間へと跳ね返ってくる。
その結果がこの有様と思えば、正に漏れるは自嘲の笑みばかり。
缶コーヒーを一口啜りながら、空に浮かぶ真っ白な月を仰いで、また深く、溜息をついた。

ご案内:「公安委員会庁舎前公園」に麻美子さんが現れました。
麻美子 > そんな彼の視界から、突然その白い月が消える。
かわりに、少女の柔らかい手の感触が顔を覆った。

「―――だーれだッス。」

少し遅れて、背後から響く軽快な笑い声と、そんな声。

『室長補佐代理』 > 「――だれだろうなぁ?」

唐突に視界が遮られ、嗅ぎ慣れた『匂い』が香る。
口端をつい緩めながら、流れる様に嘯く。
 
「こういう、仕事やら何やらで切羽詰まった時、目を瞑ったり寝こけたりすると、出てくるのは妖精さんと相場で決まっちゃいるが。
……俺の知る限りだと、『この声』は、妖精っつーには少しばかり強かな奴の声色だな?
悪いが、自己紹介してもらってもいいか?」

麻美子 > 「お断りするッスー。自己紹介じゃ答えになるじゃないッスか。」

そう言ってケラケラと笑うと、
彼の目を隠したまま、ぎゅっと身を寄せる。

「だから、ヒントをあげるッスよ。
 ヒント1、『あなたが大好きな人』ッスよ。」

『室長補佐代理』 > 「それじゃヒントじゃなくて答えじゃねぇかよ」

背後から、笑みと共に寄ってくるその香りと体温に、苦笑と共に答える。
左肩だけを竦めて、改めて、笑みの主にこちらも身を寄せて、声をかける。
 
「悪いな、麻美子。待たせすぎちまったか? ぼちぼち、今日は切り上げて帰るつもりだったんだけど、遅くなっちまったな」

麻美子 > 「ぴんぽーん、大正解ッス!!
 ―――それじゃ、賞品を進呈ッスよ。」

寄せられた頬に口づけすると、両手を離した。
先ほど隠された白い月のかわりに、にっこりと笑う彼女の顔が映る。
足元に置いてあった荷物を手に取り、
ベンチを乗り越えるように隣に座ると、そっと体を寄せた。

「待ちくたびれたからわざわざ来たんスよ。
 もうお気に入りのドラマも終わる時間ッスよ?

 折角作った料理も冷めちゃったッス。
 ま、それくらいで緑サンへの愛情は冷めないッスけどね。」

悪戯っぽく笑いながらパチンとウィンクをして、
彼の手に指を絡めた。

「それで?まだ帰れないんスか?」

『室長補佐代理』 > 「……いや、豪華賞品のお陰でもう今すぐ帰りたい気持ちになったんで、少し休んだら帰る。施錠もしてあるし」
 
不意打ち同然の口付けで頬を染め、男はつい顔を背けてそう呟く。
いつまで経ってもこればかりは慣れない。
ある程度覚悟が決まっている時ならまだしも、不意打ちには咄嗟の対応ができないのだ。
不測の事態への対処は未だに覚束無い。
それでもまぁ、流石に絡められた指先には僅かに力をこめて応える。
ベンチの隅に置いた缶コーヒーが、窮屈だと抗議するかのように月明かりを反射するが、知ったことではない。
 
「なんだか、夏季休暇だってのに帰り遅い日ばっかりで悪ぃな……麻美子」

麻美子 > 「クイズ正解の豪華賞品はまだ全部受け取ってないッスよ?
 残りの賞品の受け取りは帰ってからどうぞッスー。」

頬を染める彼の顔を笑顔で見つつ、
その反応に彼女もわずかに頬を染める。

恋はまるで魔法のようだ、
こんな恥ずかしい事でも、やれてしまう。

『……なんていうか、我に帰ったら負けッスね。』

一瞬でも躊躇えば、意識すれば、
その熱は彼女の顔へと昇って行く。

そんな彼女の頬を、夏の風が撫でた。

「ま、帰りが遅い分は精々、
 一緒に居る間に十分にサービスして償うッスよ。」