2015/08/23 のログ
ご案内:「委員会街」に十六夜棗さんが現れました。
■十六夜棗 > 委員会官庁施設の立ち並ぶ一角、その施設と施設の間の路地の陰で。
すぐには特定されない程度の変装をした十六夜棗はある物を探していた。
声を発する事はなく。
建物の壁を見て、ケーブルや配線があればその先を追う。
委員会街の露出している回線。その配置の確認だった。
■十六夜棗 > メモを取る事も、手を制服のポケットから出す事もしない。
今日はただ、見るだけ。出来れば、委員会街界隈の外まで追えればベター。
視線だけを廻らせて、それらしき物を発見はしたものの、先を追えばそれは地下へと繋がっていた。
落胆の溜息。……暫く視線を宙に浮かせて考え込む。
■十六夜棗 > この場所に留まっても、誰かに見つかってしまえば、深夜に不審な人物の長居と言う事案になりかねない。
――ここよりも、地下。それだけを覚えれば、後は見られない事を祈って、路地の間を抜けて、通りへと出て、逃げにかかる。
見つからなければ、計画を立てても構わないし、見つかれば計画も立てずに見ただけにすればいい。
意図を余り決めずに調べれば、”意図的な害意がない事が他の誰かの異能や魔術によって証明される”位はこの島の特性を考えれば期待できる。
とりあえず調べて、情報を集めてから、何をしたいか、したいことに勇気を出すか。それを考えても遅くはない。
■十六夜棗 > 今夜は、誰にも見つからなかったようだ――
と言う自覚の元、通りに出てさっさと委員会街の外へと早足で脱出する。
その後は人目のない所で変装を解いて、そ知らぬ顔をすればいい。
本当に誰にも見られていないか、それは――
【2-6、目撃者、映像(NPC)はなし 1、あり】 [1d6→2=2]
ご案内:「委員会街」から十六夜棗さんが去りました。
ご案内:「風紀委員会・収容施設」に白い仮面の男さんが現れました。
■白い仮面の男 > 「今日はとても天気がいい」
施設を少し離れた場所から見つめる男が一人
笑顔を浮かべた仮面を着けたまま空を見上げる
「今日は上弦の月、まるで半分に割ったかの様に綺麗に半分に見える…
こんな月を眺める事が出来ないのは、心が痛い…」
自身の胸を抑え、苦しむような動き
■白い仮面の男 > 「彼等彼女達は突然自身の居場所を奪われ一方的な暴力であの牢獄に捕らわれ不自由を強いられている…
彼らは確かに罪を犯したのかもしれないが…罪を犯していない者などこの世には居ない」
手を広げ演説のように声を上げる
「ならば彼らに救いはないのか?
カンダタの様に救いのチャンスはないのか?
……答えはノー」
後ろに振り返る
リザードマンを改造した機竜
犬や狼に熊に虎、様々な獣を機械化した機獣
そして剣や銃を持ち人の限界を外部要素で超えた機人
最後に大量の玩具(武器)
「君達は糸、彼らを地獄から救い上げる糸だ。
さぁ…今宵の大きな大きな宴を始めよう」
ユラリユラリ陽炎の如く、機械の兵隊たちが消えていく
■白い仮面の男 > 一匹の機竜、自分が最も手を加えた一匹を残し全ての兵隊は高く硬い壁の中へ
「さて…糸を掴み無事に抜けだす者は何人いるのだろうか?」
突如響き渡る警報、離れていても聞こえてくる
響く轟音に立ち上る煙…あぁ、ついに宴は始まった
「もう少し近くで見てみよう。ここからでは流石に何も分からない」
男と機竜は散歩でもする様に歩きはじめる
混沌とした宴の中心へ向けて
ご案内:「風紀委員会・収容施設」に平岡ユキヱさんが現れました。
■白い仮面の男 > 収容施設内部はまさに地獄と化していた
突如現れた機械の兵団に武器を持ち暴れる違反学生達
「ふむ…中とここでは電波があまり通らない様だ」
仮面をトントンと叩きながら呟く、外から音を頼りに中の様子を察知する…
そんな異能があれば便利だが
「そんな異能は持ち合わせていないものだからね…残念だが、ここでゆっくりと待つとしよう」
異能や装備を使い違反学生達を鎮圧する
これだけならさほど手間取ることもない…だが今回は機械の兵団も居る
圧倒はできずとも遅れは取らない。そして数の利ではこちらが上
「だが、懸案事項もあるにはある…」
以前落第街で戦闘した彼等の様な突出した戦闘力を誇る存在
それを懸念する
ご案内:「風紀委員会・収容施設」にメグミさんが現れました。
■平岡ユキヱ > 「風紀委員である! 全員動くなッッ!!」
拡声器越しに怒号を張り上げると、一斉に施設の空を照らすようにサーチライトが照射される。
光源を背に逆行で居並ぶは、風紀特別攻撃課。
他の課に後れを取ってなるまいかと、真っ先に馳せ参じたのだ。
「首謀はどいつだ…!!」
周囲を見渡しながら、主計隊が封鎖線を展開し始める。
■白い仮面の男 > 「だが、それも無い様だ」
そんな存在が居れば既に兵団も違反学生達も鎮圧されている頃だろう
だがいまだに戦闘の音は大きく響いてくる
まるで川のせせらぎのようにその音を感じながら
「算段が順調にいくと気持ちのいいものだ」
満足げに頷き、風紀の増援が来るならそろそろかと周囲をグルリと見回す
「ふむ、想定内だが…随分と速い」
笑顔の仮面の男と改造の施されたリザードマンが拡声器越しの声を聞き
少女の方を向く
■メグミ > 「――加勢します。」
ユキエへと声を掛け、後ろに下がる風紀委員が一人。
本来は別の課であるが、さり気なく、乱さない様に戦列に加わり様子を伺うことにする。
同じ風紀委員には違いない。
■平岡ユキヱ > 「ご無沙汰しています、メグミ先輩」
待ってました、とニヤリと笑い挨拶を交わす。
「残暑の花火や祭にしては派手すぎる…。ちょっくらお仕置きタイムといきましょう」
言いながら、あいつか、と検討をつけてこちらを向いた白い不気味な存在と対峙する。
「…警告する。貴様はこの島の平和を侵犯している。
今すぐこの乱痴気騒ぎをやめて反省文を提出しろ」
1000字の小論文ほどにな! と最後付け加えて。
ご案内:「風紀委員会・収容施設」に流布堂 乱子さんが現れました。
■白い仮面の男 > 「平和を侵犯しているという事について反論はないが…反省文とは
ふふ、お嬢さんは実に心が広く寛大だね」
反省文なんて単語が出てきたことに小さく笑う
「だが私はこのボランティアをやめるつもりはない
中で自由を手にする為にもがく者たちの為、私は喜んで君たちの矢面に立ち彼らを手伝おう!」
手を広げ高々と宣言する
自分は退く気もなく
中で暴れる違反学生達が解き放たれるまで
駆け付けた風紀委員の部隊を全て相手にすると
■流布堂 乱子 > 「……収容施設って」
偽物の紅い制服の少女はうめいた。己の見込み違いに。
「誘拐された人が集められる方ではなくて、こっちの事ですか」
壁が揺れる。怒号が響く。状況は大いにかき乱されていて、早急に事態を収集しなければならない。
『…ロッソさん、アレ、ダブルブッキングですかね』
「逃してくれる公算は高いかもしれませんけれど、こんなに悪目立ちしてはしょうがないと思いますよ」
反常世財団組織としての偽名で呼ばれながら。
収容施設内で少女はもう一度ため息をついた。
落第街宝町。
その区画が『風紀委員が入ったら命はない』とまで言われるようになった所以は、
二人の兄弟にある。
曰く。
天魁星と呼ばれ、百八の異能者を束ねて一画を支配していた兄を弟が裏切り、
風紀委員会に売り渡した。
兄の地位に代わりに座った弟は、未だに風紀と通じており、兄を慕う部下たちを次々に売り渡している、と。
だが事実は大きく異なる。
天魁星は、その"忠臣"たちの手から逃れるためにこの収容施設へと自ら訪れたのだ。
理由については、依頼を受けた乱子にもわからない。
仲介したギルドは知っているのかもしれないが、今回の件には関係ないと判断したのだろうか。
ともかく、彼は仮の宿を再び移すためにギルドへと依頼を行ったし、
乱子たち実行部隊は極めて穏便に、風紀委員会を騙ることで収容所内に侵入していた。
『天魁星の異能の危険性が明らかになったため、海底収容施設タルタロスへ移送する』
あとは一時間もすれば、管理官が天魁星を連れてくるだろうと思われていたのだが。
このままでは首をすくめて待っていれば、外の騒ぎが収まって安全に脱出できる、なんて話にもなりそうにない。
ため息をつき終えて。
「……今回は皆さんも私の趣味に付き合っていただくとしますか」
『えー?風紀のコスプレして悪目立ちするんですかぁ?』
じろりと一睨みして、いつもの軽口を黙らせる。
居並ぶのは偽物の紅い制服を着た、金ずくで集まった脱獄の手伝い人たち。
「もっと簡単な言い方が有るでしょう。……正義の味方のフリ、しようじゃありませんか。」
どれもこれも一筋縄ではいかない能力を持つ、荒事屋の集まり。
『要するに』
『ひと暴れして』
『誰も彼も大人しくしちまってからずらかろう、ってハラですか』
少女がコクリと頷くと。
悪人たちは似合いもしない衣装の首もとを緩めながら、片手間に違反学生を叩きのめしながら機獣、機人たちの元へ向かっていく。
『ロッソさんは今日の体育は見学かしらー?』
「ええ。こっちのモニターから監視させて頂いて、欠席分のレポートを書きますよ」
最後に出ていく少女にひらひらと手を振ってから。
乱子は管理室のモニターに向き直った。
■メグミ > 「ええ。」
状況が状況故、ユキエの言葉に短く答えて小さく頷き、白い仮面の男を見据える。
矢面は彼女に任せると見れば、臨戦態勢を整える。
……白い仮面の男の一挙一動を、注視している。
■平岡ユキヱ > 「…了解。その言葉…宣戦布告と判断する!!」
腰に掛けた刃体加速装置に手をかけ、叫ぶ。
「挺身隊、散れッ! ネズミ一匹逃すな…! いや、…ジ○リーはいいぞ?」
あの茶色いネズミは無理だな。とニヤリと笑い準備OK。
赤備えの挺身隊が散る中、仮面の男へと間合いを詰める。こいつが首謀なのだろう。
ならば話は早い。
「貴様のボランティアは侵略行為。その真白い仮面…叩き割って素顔を晒させてやる」
白い仮面の男を間合いに捉える、その距離『数十m』。間合いだ。間合いなのだ。
―カチカチカチカチッ
鞘のトリガーを引く音が小さく響く。それが合図。
「千刃訓…抜刀機動!!」
マナーモードで刃体を射出すると、弾丸のような速度で白い仮面の男に斬りかかった!
■メグミ >
「ジの字とミの字とピの字は、逃さざるを得ませんね。
尤も、あれは断じて違いますが――」
後方で備え、自前の召喚術を行使する。
呼び出すは、二体。
"契約に従い降臨せよ、射手の公爵"
「――Summon・Leraie」
"雨を叶えよ、水の私"
「――Summon・RainSpirit」
緑の色の服を着て弓を持つ狩人のような人型と、
雨色の透き通る身体を持つ、精霊の一種を呼び出した。
まだ、動かない。
■白い仮面の男 > 「ふむ、何という速さ…私では反応できなかったよ」
割り込むように金属に覆われた手で刀を防いだリザードマン
本能的な感と機械による高速演算と動体予測
この二つが合わされば反応のできない動きであろうとそれに合わせられる
「では、私は彼等の相手をしよう」
散り散りに動く隊員たちを見回す
自身の作品への信頼か少女の事は気にする様子もなく
「彼等には空の旅をプレゼントしよう」
1人1人に転移をかけ、遥か上空へ
動きがバラバラなせいか全員一気にとはいかないが、そのおかげで
1人1人様々な場所に転移させられる
「ほう…サモナーとは、風紀委員では多種多様な人材が揃っている様だ」
ふと目にとまる精霊と狩人
そして黒い髪の少女…彼女にも空の旅をプレゼントしよう
そう転移の矛先を向ける
ふわりとした浮遊感と共に上空からの自由落下が始まるが
召喚師である少女には時間稼ぎにしかならないだろう
■平岡ユキヱ > 「…!? こいつ、術者か…!」
小さく舌打ちする中、隊員が消えていく。どこに行ったかはわからない。
が、相手の言葉に不敵な笑みをあくまで返す。これもまた戦いなれば。
「空か…。おい、名無しの白いの! 『実に心が広く寛大だな』ぁ?」
意趣返し。皮肉たっぷりに、リザードマンと鍔迫り合いしながらのたまう。
「メグミ先輩ッ!?」
術がかかった。そう感じた瞬間、リザードマンと距離を置き、すぐに打ち合う。
眼前の敵を前に背を向けるは自殺行為。ここでやるべきは。
「最速でこのトカゲ人間をぶっ潰す!!」
鞘に納める度にカチカチとクリック音が響く。超々高速の乱打撃戦開催である。
■メグミ >
「――ッ!」
転移は掛かる、が、
"召喚術の知識"を以って、彼女はその原理を見抜く。
――転移の範囲・対象が、"対象指定"か"座標指定か"。
彼女に転移術を仕掛けたのであれば、そのどちらの術理を以って行われているかを、看破する。
……転移先の状況を視認、そう離れていない位置であると認識する。
そして幾らか、同様に他にも飛ばされている委員の存在も認識する。
「――Summon・Wyvernッ!」
魔力を解放し、複数の翼竜を呼び出す。
上空に飛ばされた他の委員をその背に乗せる様命じ、救おうと飛ばす、が――
(っ、自分の分が、間に合えば良いのでs――)
そのまま、落下した。
……彼女は落下する。する、が、呼び出した狩人と精霊は健在だ。
ユキヱが相手しているリザードマンと弓を引き、矢を放つ。
射手の公爵として放たれた矢弾は、速さや転移だけでは避けきれぬ対象であるリザードマンを狙い定める追尾を見せ、
盾ですら貫く威力を乗せる、人外のそれで膂力で奮われる破壊力と――壊疽。
射抜いた存在の身体を壊死させる権能を、叩き込むか。
■白い仮面の男 > 「私は君の様に体を使うのが苦手でね、頭を使うことにしたんだよ」
他愛もない会話、そんなトーンで話しながらも残っている隊員を空へ空へ
「そうだろうか?だが、確かに彼等にはいい経験かもしれない」
ドシャ、と何かが地面に落ちてきた
「きっと彼らは最後に素晴らしい景色が見れただろう」
恐らく異能や魔術で無事に着地できる者も居るだろう
だがそうでない者は?答えは少女の後方に転がっている
無事に着地されてもここまで戻ってくるのにも多少時間が居る、隊員の足止めと言う観点では満点だろう
「トカゲ人間とは…彼はれっきとしたリザードマンだよ?」
いなす等の技術はこの速さでは合わせられない
リザードマンができる事は自身に少女を釘付けにすること
そのために金属に覆われた腕を盾の代わりに刀を防ぐ、見える動きに合った最適解
攻撃を防ぐ事にのみ特化した動きで少女と打ち合う
が…
「ん…?」
仮面に小さく響くアラート、リザードマンの体を見れば矢の様な物が突き刺さっている
「ふむ、これは…仕方ない『耐えろ』」
細胞の壊死を見れば即座に駒として切り捨てる
もう少し、小女たちの攻撃から耐えればいい
機械化された体のせいか即座に倒れる事もなくまさに肉壁としてリザードマンを使う
■平岡ユキヱ > 「…!!」
落下するメグミを見て、駆け出す。
原理はわからぬ、だがおそらくは。自分の分まで間に合わなかったのだろうとユキヱは判断した。
武器、重いので廃棄。プロテクタ、重いので廃棄。
袖、邪魔なので破って廃棄。
駆ける中、ドシャ、という音が耳に聞こえた。ああ…。主計隊だろうか。
そこまでは、頭が回らず。
「…!!」
歯を食いしばって駆ける。全てが無事なんて程、甘い相手でなかったか。
覚悟はしていた、いや違う、嘘つきめ。とぐらぐらと頭の中が揺らぐのを首をふるってゼロにする。
「メグミ先輩ッ!!」
彼女の落下を受け止めるように、駆けている。
その背中、仮面の男とリザードマンには、完全に無防備になる瞬間。
■メグミ >
「っ……」
落下した、が。
受け止められれば、生き延びる。
そして、召喚師はこの態勢でも戦える。
「ありがとうございます。ユキヱさん。さて」
呼び出す魔術師であり、同時に指揮官である。それが召喚師だと、言わんばかりに手を打つ。
――雨の権能を持つ精霊を前方に待機させ、割って入らせる。レライエに第二射を放たせる。
狙うは白い仮面の存在本体。転移や速度だけではかわしきれぬ、"射手の公爵"として中てる追尾性と、
人外の膂力で射られ盾すら射抜く破壊力。そして、壊死の権能を叩き込むか。
「……やってくれましたね。」
睨む様に、白い仮面の男を見据えるか。
■白い仮面の男 > 「あぁ…何と美しい友愛」
眼前の敵に背を向けながら駆ける少女に追撃はない
「ふむ…彼女は思ったよりも弱い様だ」
年相応ともいえる少女の行動
胸を熱くするその行動に答える様に、施設の門が吹き飛ぶように開く
「想定通りだ、素晴らしい」
あふれ出る兵団、当初より数は減っているが奥には五体満足に目を輝かせる違反学生達
消耗品などいくら無くなろうとまた増やせばいい、だが彼らは違う
「機竜『私を守れ』」
お気に入りだったリザードマンに告げるラストオーダー
機械が熱を上げリザードマンの瞳は白くなり神速ともいえる速度で男と射られた矢の間に入る
「今までありがとう…そしてお休み」
心臓の位置に矢を受け、リザードマンは完全に停止する
最後は男の盾となりその巨体は倒れた
■流布堂 乱子 > 「……やっぱり人に掛けられるんですね、アレ」
屋外モニターを見れば、風紀委員の学生達が上空に転移させられていく顛末が見える。
これまでのあの男の動機である、人集めという観点で見れば、違反学生と風紀委員の間にさほどの差は認められないのだけれども。
前回の遭遇戦では手を出してこなかった理由といい、
調書に会った子龍誘拐の時の発言といい、
今晩の前口上といい、
どうにも底が知れない。
ここまでの手勢と、改造手術を鑑みればよほど大きな組織でも後援に付いているのかと疑ってしまうのだが。
『ロッソさーん、ロッソさ――ん?』
「…ん、ああ聞こえてます。どうかしましたか?」
思考から意識を引き戻す。
収容施設内へと散っていった仕事仲間からの通信に答えると、屋内のモニターに視点を切り替えた。
『ここの施設職員の口止めはどうしますー?』
「正義の味方のフリといったじゃないですか。適当に救援に来たとでも言っておいてください。」
『はーーい。……あー。いや、すいません。話してる間にやられてましたー』
モニター内では、紅い制服を着た学生を肥大化した前足で叩き潰している機獣…既にその体を真っ赤に染めた大虎の姿が写っていた。
その前に立つ、もう一人の紅い制服の男子学生。得物もなく、細い肉体は肉塊となった学生の物だった太い足よりも更に細いかもしれない。
ただ。こちらの体も既に返り血で紅く染まっている。
「……ええ、見えています。
虎狩りを続行してください。あいにくと毛皮に傷の入った三級品ですけどね、
"貴方と違って"」
『わーかりましたー。さーてとー……
紛い物さーん、虎はどうして強いと思いますー?』
握った拳が、黄色の縞模様を纏う。
細い体躯を覆っていたブカブカの制服が、内側からの膨張で膨らんだ。
どこか緩んだ表情が、そのまま、牙を剥いた虎頭の笑みに変わっていく。
『純粋に、ただ虎だから、ですよ』
結果のわかりきったモニターから目線を外すと、乱子は他のモニターを通して施設内の様子を把握していく。
今のところ、こちらに被害は出ていない。
あの機龍ほどの存在がゴロゴロ居たらまた違ったのだろうけれど。
当初の目的である天魁星を目指し、奥へと歩みを進めるギルドの面々から逃れるかのように、
あるいは増援として駆けつけるかのように、
正門へと兵団と違反学生達は向かっているのが乱子にも分かった。
■白い仮面の男 > 機獣に恐怖はない、あるのはわずかな本能的感直感と指示に従うという思考のみ
眼前の男子学生徒の力量差など考えずただ邪魔になるのなら排除するだけ
それだけの思考で虎は男子生徒へとその牙を立てようと迫る
■平岡ユキヱ > 大地にコゲたような黒い軌跡を描きつつ、
メグミを抱えたまま仮面の男と屹然と向き合う。
「…この行為が弱いのならば。私は弱いままで結構だ。
お前のように、こんな悲しいことを素晴らしいなんて言う
虚無主義嗜好のインテリ気取りどもは、この世から撃滅してやる」
ひどく悲しそうな、だが凛とした眼差しだった。
「挺身隊、生きてるものは立ち上がれ! まだ仕事は残っているぞ!
成さねばならぬ事があるなら、戦え!!」
応! と血まみれで歯を食いしばって準備オッケー。特攻課の命知らず達が各地から
違反学生をただ確保するために駆けるという狂気のような光景が各地で展開されたかもしれない。
■メグミ > 「っ……漏らして出てきてしまいましたか。
――時間稼ぎになれば良いのですが。」
雨の精霊に指示を飛ばす。
――違反学生を中心に、身動き一つ取れぬ程に過激な豪雨を降り注がせる。
豪雨は行動の自由を奪い、体力を削ぎ、呼吸すれば水をたらふく飲んでしまう程の苛烈さを以って降り注がせる。
雨の牢を以って、特攻隊が抑えきれぬ範囲の、抜け出た違反学生を封ずる。
「……後はあちら、ですが」
レライエには第三射、四射と淡々と矢を放たせる。
効くかどうかはともかく、抑える必要はあると言わんばかりに白い仮面の男へと放つ。
――その追尾性故に、神速でも無い限り、誰かに庇わせようとするならば軌道を曲げて追尾する、かもしれない。
■流布堂 乱子 > 飛びかかろうとしたか、あるいはその二足歩行の虎人の足を狙ったか。
未だに先の犠牲者である学生の血液を牙から滴らせながら、機虎が動き出すよりも、
むしろその相手である虎人が動きだすよりも更に早く。
機虎に向けて三つの灰色の閃光が走り、その肉体に突き立てられようとしていた。
『そんな機械を入れてるから遅くー……あれー?』
『前口上長し。我合流せり』
紅い制服の胸元からいわゆる鎖帷子を覗かせ、
どう見たって変装には馴染まない黒いフードを被った女子学生が仕掛けたアンブッシュ。
虎へと投げつけられた三つの苦無にはそれぞれ過剰な量の爆薬が括りつけられており、導火線の先には火種が燃えていた。
『成敗』
その導火線に一切関係なく。
手元の起爆装置の操作によって建物の一角ごと吹き飛ばすような爆発が三つ、連続して巻き起こった。
■白い仮面の男 > 「悲しい?彼らを見たまえ、彼らの目には希望や幸福が宿っている
それのどこが悲しいのかね?」
施設から現れた者達は文字通り死力を尽くし抵抗する
すべては自由の為に
「ふむ…そう言えば」
男の姿が陽炎の様に消え、男に向けた矢はメグミの方へ飛来する
「その矢はどこまで賢いのかね?」
自分が居た場所からメグミの居る場所を中心に対角線に移動する
「…第二プランか」
突如建物で起こった爆発を見ればそう呟く
■平岡ユキヱ > 「彼らはまだ罪を償っている途中だ。あの眼差しは『欲望』という。
本当にここの収容者の事を思うのであれば、説法なり本土の職業斡旋でもするがいい」
建物の爆音を耳にしながら、そう短く述べる。
「…!? 先輩ッ!!」
仮面の男が消えた瞬間、悪寒を感じて思わず叫ぶ。咄嗟に、身を乗り出して彼女をかばおうと。
■流布堂 乱子 > 『ルフス』
「ロッソです。何か」
『クライアントを確保した。ルートはどうする』
モニターを見れば、目的の房へとたどり着いた紅い制服の男子学生が居る。
……このまま正門へ向かうのは、当然ながらありえない。
「コジさんとキリメさんが西側廊下で交戦、及び発破によって屋外へのルートを作りました。
既に違反学生たちは正門へ向かったようですから、敵の数を減らすのはそこまでにして、
合流してから脱出してください。
ただし、違反学生と同方向へ逃げて無用な追跡を受けないためのルート閉鎖を行ってください。
……これもコジさんとキリメさんに任せてよいかと。
これ以降は管制の必要もないでしょうから、私はここを出て正門に向かいます」
『わかった。』
短い返答の後に、通信は終わった。
…後は連中に任せておけば大丈夫だろう。
管理室から、杖をついて退出する。
誰よりも早く事態の収集のためにこの部屋を出て行った、
本来のメンバーたち。
それを追って、偽物の紅い制服の学生達も皆いなくなった。
モニターにはただ、赤い血に塗れた施設内の様子だけが、見るものもなく映されている。
■メグミ >
取り敢えず、取りこぼされた違反生徒は雨を以って封じさせる事にする。
雨の精霊を他に行動を回させる余裕は無さそうだが、専念させれば抑える事は出来そうだ。
身を庇おうとするユキヱには、軽く制すように声を掛ける。
「大丈夫です。問題ありません。
一番……ではありませんが、射手としての腕は良いですから。それに――
――悪魔と呼ばれるような生物が、過失で契約を違える事は、基本的にありませんよ。」
――射手の公爵の"肩書"故に、狙いを違える事はない。悪魔が契約を違える事はない。
反射された矢は軌道を変え、白い仮面の男に向かうか。
とは言え、矢である以上永続的に飛ぶ事はない。
二度、三度、根気良く避ければ、矢は"消える"だろう。
「……ルギウスと同じ匂いがしますね。アレ。
本当、どうしたものでしょうか。」
地に足を付け、一つ、息を吐いた。
■白い仮面の男 > 「欲望…大いに結構!」
パチパチと拍手と共にまた別の位置に現れる
「人は欲望のために動く、素晴らしい。
獣も人も全て欲望を満たすために己の持てる全てを使う
私とてそれは同じだが」
何度も場所を変え矢の動きを観察し、止まれば距離による減衰があるのだと発見する
「矢の特性は消えない、か…ではこの場を有効に使わせてもらおう」
そう呟けば男は転移する
ほぼ視界ゼロの雨の中へと
■平岡ユキヱ > 「欲望だけで動くなら、人は獣と変わりなし!
理性が、恥が、自制があるからこそ! 人は人なのだ!」
高らかに仮面の男に叫ぶ。お前の認識は誤りであると。
「…。あ、悪魔?」
それ初耳なんですが。と思わず声に出るユキヱさん。
さすがメグミ先輩というか、相当ヤバイモノを従えているようだ。ならばよし。
「手段は…あるにはあります。効くかはともかく、ちとドえらい騒ぎになりますが」
刃体加速装置と延長砲身もってこい! と叫ぶと同時、傍にいた挺身隊がギョッとする。
「『一発だけ』です…。『一発だけ』なら…あのスカした野郎ををギャフンといわせてやる自信がある。
攻守交替です、メグミ先輩。あいつを意地でも足止めて下さい。
魔術の転移は専門外なんで…」
反撃ターンじゃい、と延長用の真っ黒い砲身を組み立てながら、そう呟いた。
■流布堂 乱子 > 「足で」
向かってきた違反学生の左足が、杖の一撃によってその移動を支えられなくなった。
「喉まるごとでしょうか」
飛びかかろうとした機械化された犬の群れ。
片足しか無いと侮って噛み付いた乱子の右足のブーツから、キィンという甲高い金属音と共に、仕込みナイフが頭蓋を貫通する勢いで生えた。
正門へ向かう道すがら。
前門の虎、後門の狼といった状態でしぶしぶながら収容施設に戻ってきた違反学生の最後の抵抗を打ち砕きながら、乱子が歩く。
「ああ、言い忘れましたけれど両手を組んで頭の上に乗せて跪いてください。そうしたら放っておきますから」
『こんなところに居たらなぁ!お外の学生様や!お前ら風紀委員が楽しんでるような当たり前の暮らし一つ出来やしねぇんだ!』
「顎で」
食って掛かる違反学生の先の先を取って、
宣言通りに掴んでから確り角度を固定して壁に叩き付ける。
返答はした。それ以上言葉を掛けることもなく、ゆっくりと廊下を歩いて行く。
■メグミ > 厳密には距離ではなく、飛距離。
雨の中に潜り込んだ所で、当たるといえば当たり、完全にゼロでなければ狙えるのだが
――暫く避けていた故に、限界が来たのだろう。矢は、一度消えた。
頼みがある、と言われれば、思案してみせ、頷く。
「……分かりました。
出来る限り、やってみます。」
――先ず、雨の中に消えた白い仮面の男ヘ向け、 強く命じ
「必ず中てなさい。」
矢を放たせる。
それは確かに白い仮面の男に向かうものの、既に何度も放った手だ――
「――」
……その合間に、魔法陣を展開し、詠唱を開始した。
それなりの準備を掛けてまでして、何かを呼び覚まそうとしている。