2016/05/06 のログ
■伊都波 凛霞 > 個室のドアをこんこん、と軽く叩く音
それに続いて、ドアがスーッと静かに、というよりはおっかなびっくり開いてゆく
そこから黒い瞳が中を覗いて
「こんにちわー……?」
珍客が現れた
■久藤 嵯督 > 「―――!?」
まさか。
来るのか、この部屋に。一体誰が?何の用で?
ノックが鳴った瞬間、急いで姿勢を戻そうとする。
血液を取り戻していくにつれて傷は塞がってきたので、ある程度の無茶は効く。
ばたばたと布団で音を立てながらも、来客者の顔が見える頃には、ごく一般的な入院体勢に落ち着いていた。
「……ああ、お前。確か……伊都波と言ったな。どうした、こんな所まで来て」
平静を装ってはいるものの、若干顔を引き攣らせている。
■伊都波 凛霞 > 「えっと…お見舞いにきたんだけど……」
幸い一人遊びの様子は見ていなかったようで、
ちょっと大きめの紙袋を抱いて、病室に入ってくる
ドアをしっかりと締めてベッドの脇まで歩いてくると、座ってもいい?と一応断ってからパイプ椅子に腰を掛ける
「…あれ、私名前言ったっけ…。そういうキミは、久藤嵯督クン」
公安や風紀を通じて名前を知ったのだろう、ということは互いに想像に難いものではない
■久藤 嵯督 > 「……それは、どうも」
確かにそんな性格をしてそうではある。と、合点がいく。
……どうやら、一人じゃんけんには気付かれていないようだ。心の中で胸をなで下ろす。
ご自由に。と吐き捨てて、荷物を抱えた伊都波凛霞に注目した。
「言っても無いのに、互いの名を知り合っている。というのも、妙な気分だな」
嫌悪するほどではないが、と軽い調子で。
■伊都波 凛霞 > 「うー…やっぱり怒ってるよね…?
何も知らずに邪魔しちゃったみたいなもんだし…」
素っ気なくとれるような態度にしょんぼりと頭を垂れる
落ち込んだ、ように見えてすぐにがばっと顔をあげて
「それはもう何回も何回も問い正したから!
休み時間の度と放課後に公安と風紀委員の子捕まえては聞き迫ってたから!」
大迷惑である
「おかげでこの病室も知ることができました。やったね」
何が嬉しいのか、にへっと笑って"はいお見舞い"と紙袋からフルーツ籠を出して、ベッド脇の棚に置く
「…ま、まぁ…顔も見たくないだろうなーとは思ったんだけど…。
ちゃんと謝っておかないとダメかなって…ごめんね。
私昔からあんな感じで、平和ボケしてるっていうか…ほんと、ごめんなさい!」
今度は勢い良く頭を下げる、忙しい
■久藤 嵯督 > 「もはや問題児じゃねーか。何が優等生だこの野郎」
聞き迫る様子を想像して、頭が更に痛くなってくる。
……そして、嫌いな上司がそうなっている姿を思い描いて、明らかに悪い笑顔を浮かべた。
「……別に。面倒をかけられることには、慣れている。
確かに数日間の予定は丸潰れになったが、この程度の負傷は想定の範囲内だ」
傷つく覚悟もなく風紀委員をやっている奴がいるものかと
平和に染まった生徒達を極力守っていくのが、自分達の仕事であると。
「別に俺は謝って欲しいとも思ってないし、顔を見たくないとも思っていない。
ああいった場所に近付きさえしてくれなければ、それでいい。
本当に申し訳ないと思っているなら、今度からはそうしてくれ」
謝られている方が申し訳なくなってくる心理からか、頭を上げるよう促して。
■伊都波 凛霞 > 促されてゆっくりと頭をあげる
「…別に、優等生とか周りが言ってるだけだもん…」
ぶすーっと膨れてみせる
普段の表情や所作からは少なくとも、優等生らしさは感じられない…?
「それなんだけど、私。保険課に入ることにした。
あんなことが日常的に起きてるなんて、放っておけないよ。
あ、大丈夫!自分の身は自分で守るし、キミに迷惑はもうかけないから!
……なんか、あんな世界があるっていうのがびっくりしちゃって、あの時はほんとダメだったなー……」
思い出し、項垂れる
自分のやらかした過ちを誰が責めるでもない
されと過ちは過ちとして、日常的にけが人や死者が出る場所、
そこでの治療や救出、ようするに善行でそれを覆してゆこうとしているようだ
■久藤 嵯督 > (……これを高嶺の花と崇め立てている奴の気が知れんな、ほんと)
それよりももっと、ある意味では気安い存在であるというのに。
そこまで口にするのは流石に気の毒だったので、同情の視線を送ることに留めておくことにした。
「……軽々しくそれを口にしてるわけじゃあないってのは、よくわかる。
だがお前はそれでいいのか?
家族や友人と過ごす時間も、自分一人の時間も、
今まで自由だった時間が……義務と使命に奪われることになるんだぞ。
どれだけ献身を重ねたって、見返りが来るという保証はどこにもない。
それでもお前は、”委員”になるのか?」
委員に属する者として、その覚悟を確かめなければならない。
中途半端な覚悟で委員になったって長続きはしない。
助けられた人間と同じかそれよりもたくさん、助けられない人間を見ることになるだろう。
日常的に救いを求められることに、”ただの一般生徒”だった伊都波が耐えられるかどうか。
腹の中を試すかのように、その黒い刃のような視線を突き刺してくる。
■伊都波 凛霞 > 「?」
同情の視線には首を傾げている
自覚がないというか、その類の周囲の声に疎いのだろう
「んー、厳しいこと言うよね。
家族とゆるやかに過ごす時間は大事。
友達とわいわい過ごす時間も大事。
もちろん自分が自由に使える時間も大事。
けど今、私がやりたいと思ってることも大事。
実際に気持ちを量る天秤みたいなのあるといいのにねー」
あはは、と笑って
「でも私は今の自分の気持ちに従う。
いやー、後悔とか多分するかもしれないし辛いこともあるだろうけど、
別にそういうのって、自分で道みつけて歩けば大なり小なりあるものだもん」
一息ついて、刺すようなその視線に笑顔を返す
「だからまぁ、どっちかっていうと私は……
ああいう場所で毎日何が起こってるのか知りつつ避けて、
おひさまの下だけ歩いてるほうがイヤ…かな」
知らないほうが良かったんだろうけどなー、と冗談交じりに苦笑して頬を掻いた
危険な場所だと聞かされてはいても実際に踏み込んで体験するとでは大きく違う
限りなくリアルに、現実的に
あの町で命を落とす、大怪我をする…そして助からない生徒がいるのだと知ってしまった
■久藤 嵯督 > 暫くの間、帰ってきた笑顔をじっと眺めただろうか。
それから真っ白な天井を仰ぎ見て、目を閉じて息を深く吐く。
(なるほど、十分だ)
まず目の前の少女は、『関わった出来事を自分の責任として見る』ことができる。
わざわざ見舞いにきた点も含めて、そこは確信していた。
それでいて、その先にある苦難や後悔を乗り越えていこうという意志がある。
戦いを悲観しているような今日日の委員にも、中々見られない心構えだ。
「風紀委員という仕事柄、また怪我でもしてここの世話になることもあるだろう」
瞼を開いて、再び少女の顔を見やる。
■久藤 嵯督 > 「―――その時は、お前が治せ」
―――とても口には出せないが、その覚悟を『気に入った』。
■伊都波 凛霞 > その言葉にくすっと笑みを浮かべて
「じゃあちゃんと治せるように私も頑張るけど。
その前に、仕方ないことだろうけど極力怪我は避けないとね」
病院送りがデフォルト、なんてことになったら目も当てられない
過酷な現場なのは承知の上なのだが
「それと、いざそういう時になったら、
"治せ"じゃなくて"治して下さい"じゃないと思いっきり染みる消毒とかしちゃうかもね」
そんな冗談交じりの言葉を投げかけて、ちらりと病室の時計を眺め見て立ち上がる
「長話しちゃうと体に触るよね。
果物、新鮮なうちに看護師さん達に切り分けてもらうといいよ。
…ちゃーんと大人しく寝てはやく体治すこと!」
最後に『お大事に』と言い残し、ドアの前で軽く手を振って、少女は病室を後にしたのだった───
ご案内:「医療棟601号室」から伊都波 凛霞さんが去りました。
■久藤 嵯督 > 「ハハ、問題児の次はヤブ医者か。
そりゃあ怖いな。口のきき方には気を付けるとしよう」
言ってることと言ってることが明らかに矛盾している。
「善処はするさ。……いや、している。無駄な負傷は資本の無駄だ。
だから、必要なだけ」
正直少しは無茶を効かせてもいいかななどと考えていたものだから、
若干言葉に詰まったところがある。
実際それで手が届くこともあるので、程よく傷を負ってくることにしよう。
「別に。もう治りかけているとこだって……」
少女が病室を後にしてから、果物の礼を言ってなかったことに気付き、軽く自己嫌悪する。
これだから規則正しい生活なんて糞くらえなんだ。などと考えつつも、
果物を食べるために、生まれて初めてのナースコールに手を伸ばすのであった。
ご案内:「医療棟601号室」から久藤 嵯督さんが去りました。