2016/10/27 のログ
ご案内:「風紀委員資料室」に龍宮 銀さんが現れました。
■龍宮 銀 > (資料室の扉を開ける。
部屋の中には数台のパソコンと、棚に並べられた書類が並んでいる。
その部屋に足を踏み入れ、後ろ手に扉を閉めた。)
――二年前の、――
(時系列順に並べられた資料の中から目的のものを探す。
指がファイルの背表紙を順に辿り、一冊のファイルの場所で止まった。
それを取り出し、――開けない。
鍵などは掛かっていない。
開こうと思えば何の力も要らない。
だけど。)
――。
(そのファイルを開く事が出来ない。
開けば知りたかった事を知る事が出来る。
それと引き換えにどうなるのか、予測が付かない。
それが怖くて、開けない。)
■龍宮 銀 >
(開くのが怖い。
怖いけれど。)
――っ。
(開いた。
閉じられている資料を一枚ずつめくる。
子供が誘拐された事件。
男が街中で異能を不正使用していた事件。
様々な事件のファイルを順にめくっていき、)
――、ぁ。
(「それ」があった。
二年前、とある違反組織に拉致されていた二級学生。
ある教師を殺害し、彼と共に暮らしていた子供を浚ったその違反組織。
その違反組織を摘発し、その二級学生を救出した、その報告書。)
あ、――は、っ……。
そこに記されている名前は二つ。
一つは自身の名前。
まだ覚えている。
地獄のような日々を、今でも夢に見る。
そこに記されているもう一つの名前。)
■龍宮 銀 >
は――が、――
(ぐにゃりと。
視界が歪む。
ばさりと、資料が床に落ちる音が遠くで聞こえた。
気が付けば、今まで見えていた景色が真横に傾いていた。)
――あ――?
(そこで初めて自分が倒れていることに気付く。
起き上がろうと腕を動かすが、力が入らず起き上がれない。
呼吸がうまく出来ない。)
――たす、……だれ、か。
(部屋の中には、誰も居ない。
指に何かが当たる。
震える手でそれを引き寄せれば、自身のスマートフォン。
倒れたときにポケットから零れ落ちたのだろう。)
『…本当に些細な事でもいいから連絡してきなよ!
些細な事でも助けるからね!』
(その声を思い出した。
指を動かす。
うまく操作できない。)
せん、ぱ――たす、……け、て――。
(連絡先一覧から彼の番号を呼び出したところで、視界が急激に狭くなっていく。
なにもみえない。
ドアの開く音が遠くに聞こえて、そのまま意識を手放した。)
ご案内:「風紀委員資料室」から龍宮 銀さんが去りました。
ご案内:「風紀委員資料室」に真乃 真さんが現れました。
■真乃 真 > スマホの着信音にしている古いテレビのヒーローのテーマが流れる。
真の連絡先を知るものは多くなく。電話してくるものは更に少ない。
名前を見れば最近連絡先を交換した後輩の名前がある。
何だろう何か困った事でもあったのだろうか?
例えば、課題が終わらない。例えば、財布を無くしてしまった。
そんな事だろうか?
普段自分が助けているような内容を頭に浮かべて電話に出る。
「…もしもし!どうしたんだい?何か困った事でもあったのかい?…もしもし?」
…後輩の声は聞こえない。代わりに聞こえてきたのは誰かの慌てるような声。
聞いたことのある声だった。風紀委員に所属する生徒の声だった。
幾らかの慌てた断片的な言葉が聞こえた後、電話は切れる。
走る。
廊下を階段を道路を走る。
途中で教師から次の授業が始まるぞとか言われたけど「抜けます!」と答えて走る。
嫌な感じがする。嫌な感じしかしない。
そうして、風紀委員の本部に辿り着いたのが今である。
向かうは資料室である。
聞こえた声の主は『資料目録』の異能を持つ3年生である。
その異能と整理整頓を好む性格から資料室のヌシをして君臨してるとかしていないとか。
今は、そんなことはどうでもいい。
あの人がいるならば場所は資料室かここのラウンジそれかあの人の自宅だろう。
あの人の移動は基本的にに転移魔術だし。買い物も通販で済ますという。
「龍宮さん!」
資料室には彼女の姿はない。
そこにいたのは電話越しに聞こえた声の主一人。
■真乃 真 > 彼女が倒れた龍宮銀を見つけて救急車を呼んだという。
「倒れたのか!…無事だよね!生きてるんだよね!?」
彼女に詰め寄って聞くと命に別状はないが詳しい事は分からないと…
きっと、彼女は倒れながらも自分に助けを求めたのだろう。
苦痛の中で、恐怖の中で、不安の中で、他の誰でもない真乃真に助けを求めたのだろう。
それなのに…
全然助けられてないじゃないか。
もっと彼女の事を知っていれば上手く助けられたのだろうか?
倒れる前に気がつくことが出来たのだろうか?
あまりにも、真は余りにもあの後輩の事を知らない。
あの生徒指導課で規則に厳しくて真面目で意外とおしるこコーラが好きだったりする。
龍宮銀という後輩の事を真はあまりにも知らなさすぎる。
■真乃 真 > 意識を失っていた彼女の傍らに落ちていたのは二年前の事件ファイル、そしてスマホだったという。
『今から私は出かけるけど絶対にそのファイルを見たらだめだよ。真乃君はもう部外者だからね。
でも、もし真乃君がそれを見たとしても私は出かけるから見たかどうかは分からないけど。見たらだめだよ
元の棚にもどして大体あそこに置いてあるファイルだけど見ちゃだめだよ。
そういえば、二年前のファイルだから真乃君が既に見たものであってもおかしくはないよね。』
そんな事を言いながら扉を開けて出て行った。
「ありがとう、次貝さん。」
聞こえるか聞こえないかの声でそう言うと。
ファイルを手に取り捲る、捲る。
そこに見た同じ苗字の二つの名前。
保護された二人の二級学生。
姉妹であるその二人の名前はどちらも聞いたことのあるもので
片方は先ほど、スマホに表示されていた名前で
…これを知ってどう動けばいいのだろう?
僕は彼女をどう、助ければいいのだろう?
いや、これは既に終わったことだ──本当に全部終わっているのか?
彼女は既に助けられている──本当に彼女を、いや彼女たちはこれで助けられたと思っているのか?
ならどうすればいい?
――この資料室はあの頃とまだ風紀委員だったころと同じ埃の匂いがする。
ご案内:「風紀委員資料室」から真乃 真さんが去りました。