2015/07/20 のログ
ご案内:「学生通り」にチェシャさんが現れました。
■チェシャ > 照り返すアスファルトの熱にやられて、この時期は外に居られない
コンビニ内の入口あたりで涼む猫
「涼ちぃんねぇ……」
■チェシャ > ひんやりと冷房の利いたコンビニ内で
箱座りしながら、頻繁に人の出入りされる入り口にて
人の行き交う様子を見つめる
■チェシャ > 「今日は誰かご飯くれるかなぁ……?
くれないかなぁ……?」
等と言いながら、じーっと行き交う人を見るが
誰もが忙しそうでくれる気配が無い
■チェシャ > 今日は誰しもが忙しそうで、相手をしてくれる気配も無く
そのまま身体をごろーんとして伸びをしつつ
「つまんないんねぇー」
と、あくびをし始めた
ご案内:「学生通り」に奇神萱さんが現れました。
■奇神萱 > ―――それから、熱い熱い夏の太陽が西の彼方に逐われて去った頃。
星も清かに月光の注ぐ、静かな夜だった。
時は宵口を過ぎてしばらく。この小さな島の住人たちの多くが眠りにつきはじめる頃。
昼間ならばいざ知らず、心置きなくヴァイオリンを奏でられる場所など数えるほどしかない。
その一つ、学生通りの寂れた横道にやって来ていた。
肺いっぱいに夜気を吸って、弦を一撫でする。
聴衆は望むべくもないが、嘆くことはない。誰のためでもなく、今は自分のために奏でよう。
人によっては『朝の歌』より評判がいいこともある。
一日の終わりにはお似合いだろう。エドワード・エルガー作曲。『夜の歌』。
■チェシャ > 気付けば、太陽が沈み月と星の空へと変化していく
月明りが優しく、星星もまるでビーズのボトルを散ばしたように輝き始めた頃
誰も来ない昼間のうちに、退屈に飽きて 気付いたら寝落ちていた頃に――……
ふと、何処からか 優しい夜の安らぎ、人の心を癒す音色が流れてくる――……
「ヴァイオリン?こんな時間に?」
珍しいんねぇ等と思いながら、物珍しそうにコンビニから出て行けば
音の聞こえる方へと足を運ぶ
辿りついたのは、学生通りの寂れた横道
練習としてももう少し、ヴァイオリン演奏に相応しそうな公園だとか
近くにあるのに等と思いながら
塀の上にて箱座りをしながら、そのヴァイオリンの音に耳を傾けるのだった
■奇神萱 > 作曲家は管弦楽団で第一ヴァイオリンを務めながら、医師でもあった人物にこの作品を贈った。
この曲には気安い場所で過ごしているような心地よさが詰まっている。
例えて言うなら、全てがあるべき場所にあるのだという安心感だ。
今日も精一杯のことをして、激動の一日を乗り越えた事を静かに祝うような旋律だった。
だから、気を抜いていると心をすり抜けていってしまうのだ。
よほど注意して聴いていなければ、印象らしい印象さえも残らない。
それほどに自然体で、聴衆にとっては力を抜いて聴いていられる作品なのだと思う。
奏者にとっては両刃の刃でもある。
あからさまな作為を示してはいけない。かといって、無作為に徹すれば注意が散漫になる。
この世ならぬ場所から響くピアノの伴奏が、今はとても頼もしかった。
聴衆はいない。わざわざ様子を見に来る者もいないだろうと高を括っていた。
ふと視線をあげて、はっとした。塀の上を伝って白い猫が寄ってきていた。
■チェシャ > 猫には、その作品の背景も一切分からない
……けれど、その曲を耳にすれば
人が夜の闇に優しく包まれて、身体を休めて眠りを守護され
人の見る夢を優しく見守られる様な――……そんな夜の優しい癒しを感じるのだった
彼女がどれだけ、その才気に溢れて卓越した技術で、細かい神経を細部まで行き渡らせて
演奏しているか?という事は、よくわからない
……けれど、彼女のその研ぎ澄まされた清らかな夜の音色は
うとうとと気持ちよく、優しく眠りを誘う効果がある様で
とろんとした、寝落ちる前の実に気持ち良さそうな表情をしている
彼女が、聴衆は居ないと高を括っていたところで
目が合うと「ここで、聞いているよ」と言わんばかりに塀からぴょんっと彼女の足元へと寄って
再び箱座りをし始めた。演奏を、邪魔する様子は無い
猫ながらに、感想は言えないのだけれど
彼女の音楽が心地いいから、こうして聞いて居たいという意思は、態度を持って彼女に伝わるかもしれない
■奇神萱 > 猫にもわかるんだろうか? わかるだろうな。人間にわかるんだから。
もしも不快な音だったなら、そっぽを向いて逃げてるはずだ。
こういう生物は人間よりずっと正直だからな。
今のところ逃げる様子はない。気に入ってくれたなら何より。光栄なことだ。
磨り減った何かが満たされていく。安らぎの旋律は子守唄を連想させる。
とは言ってみたものの、俺には子守唄の記憶があまりない。母親の記憶がないわけじゃないぞ。
ただ、歌声が思い出せないだけだ。よほど寝つきがよかったんだろう。それだけだ。
弓を放して、白猫にうやうやしく一礼する。
「いい子だ。人に慣れてるのか。この辺の飼い猫かね。お前、どっから来たんだ?」
答えるわけもないが、誰も見てないからどうということはない。猫は好きだぞ。行儀のいい猫は特に好きだ。
■チェシャ > 奇神萱の想定通り、人の様に感想を言う事は出来ないであろうが
『音』を捉える耳としてなら、人よりも猫の方がずっとずっと性能が良い
こうして、大人しく彼女の演奏を聞いていると言う事も
それは彼女の曲に心惹かれているという証であり、純粋に好きだから
不快な音なら今頃威嚇して、彼女の腕を掴んで、猫キックを繰り出す可能性だってあるのだから
彼の子守唄の事は分からないが、代わりに――……
今は彼の演奏が、子猫にとって子守り歌となっている様子で
うとうとと、時折気持ち良さそうに目を閉じたり、ハッとして開いて起きようとしたり
そんな猫の様子が垣間見れるだろう
聞いて居たい半面、音の気持ちよさに身も心も委ねたい様な……そんな波に揺られながら、ゆらゆらと舟を漕ぐ
曲が終わって、礼をされればその様子をじーっと見つめていた
「うん、人には慣れているよ。この辺じゃないずーっと遠くの飼い猫だよ
この世界じゃない場所……上手く説明できないけど、違う世界の猫だよ」
そんな事を返しながら、奇神萱の足元に、演奏のお礼のつもりなのだろうか?
身体を擦り寄せて懐きながら
「綺麗な音だと思ったよ。凄い素敵だった……ヴァイオリンさん上手なのね」
等と言って、懐くのであった
■奇神萱 > 「ん? 喋った…おい猫が喋ったぞ」
どうなっている。
『七色』が化けたのか? そのまさかの可能性が脳裏をよぎる。全身から冷たい汗が噴き出てきた。
はたまたアレか。猫又か。妖怪なのか。無害そうに見えてとんでもない曲者なのかこいつは?
………そうは見えないな。
不思議なことの多い島だから喋る猫くらいいるだろう。
そういうものとして受け入れるしかない。奇想天外なものには慣れているから平気だ。
「すまない。取り乱した。お前喋れるのか。いいな。そういう猫もいるのか」
人に話しても信じてもらえないかもしれないが、夢のある話だと思った。
こいつに限らず、猫は同じようにいろいろ考えてるんだろうか。気になるところだ。
猫会議で情報交換されたりしてるのか。かわいい顔してしたたかな生物だ。
猫相手ならまあ、いいか。
どんな猫にも人の笑顔を誘う魔力がある。そいつに抗うかどうかは個人の自由だ。
この世には二通りの人間がいる。好きなもののために恥も外聞も捨てられる人間と、それ以外だ。
笑顔を押し殺して生きる方がずっと恥ずかしいと俺は思う。片膝をついて首の下を撫でた。
「宿無しじゃないのか。そりゃな。美人さんだもんな」
「ヴァイオリンさんじゃないぞ。奇神萱(くしがみかや)だ。もっと聴きたいか?」
■チェシャ > 「うん、チェシャはねぇー喋る猫だよ」
くるくると足元でゆっくりと回りながら答えた
彼の動揺も、この猫にとっては『初めて出会う人は喋る猫を見ると高確率で驚く』
という事を知っているので、気に留める様子も無かった
彼もまた『猫が喋る事で驚いた人その1』に過ぎなかったから
彼の想定通り、この猫は『七色』でも無ければ、只の喋る猫に過ぎない
この街の不思議な現象の一つでしかないのだった
「いいよ、慣れているよ。皆チェシャが喋るって知ると、驚くもん
たまに驚かない人もいるけど、かなり珍しいよ
うんーチェシャはねぇー喋れる猫なんー だからねー他の猫よりもねー人と仲良くなるのが得意得意なん」
等とご機嫌に語りながら、くるんくるん回る
恐らく人の言葉を喋る分、普通の猫と比較すれば相当賢い部類かもしれない
この猫も、優しい人や猫好きの人間は大好きで大歓迎だ
彼女の手が自分の方へ伸びると知れば、くるくる回転するのをやめて触りやすいように大人しくして
首の下を撫でられると、その気持ちよさにごろごろと喉を鳴らしてご機嫌になるのだった
「うん~ チェシャはねぇ、宿が無い訳じゃないよ。でも時々色んな人の家にお邪魔したりもするよ
ふわふわはねぇ、美人さんで人のお話が聞けるおりこうさんこにゃにゃだから、猫のモデルが出来るんだよ
写真を取られるまでじっとしていられるし、お洋服を着るのも好きだよ」
猫の写真を取る――……というのは相当難しい
猫を猫じゃらして散々あやし、猫の飽きて静止した一瞬にカメラマンが素早く写真に収めるのだ
その上、猫は基本的に服を着たがらないし、嫌がる
人の言葉を理解し、喋り意思疎通出来るからこその利点なのかもしれない
「ヴァイオリンさんじゃないん? くしがみ、かや……かやちゃんでいいかなぁ?
チェシャ、覚えたよ
ふわふわの名前はねぇ、チェシャって言うのー
でもねー、自分をふわふわって言う事もあるんだよ。だからどっちでもいいよー
ホントー?もっと聞かせてくれるの?
かやちゃんのバイオリンの音ね、とっても綺麗で大好きだよ
気持ちよくって眠くなってくるんだもん」
純粋な瞳で、彼女を見つめながら子供の様な感想を語りながらも
他に色々聞かせてくれると知れば、喜んではしゃいだ
「次は何の曲かなぁ?チェシャも知っているかなぁ……?」
等と、彼女の演奏の邪魔をしないようにそっと離れて
近くに行儀よく箱座りしながら
■奇神萱 > 「ああ、気にしない方がいいと思った。もう驚いてない。お前は喋る猫だ」
愛くるしい見た目のせいか、気味の悪さは感じない。なかなか話のできるやつだ。
触り心地もまずまず上等。モップみたいな毛足の長さも魅力だが、伸び放題にはなっていない。
しっかり手入れされていて、愛情を注がれた形跡があちこちに見て取れた。
「ご主人に恵まれてるみたいだな。ふわふわのチェシャ」
「なら聴いていけよ。20世紀の作曲家ルロイ・アンダーソンが書いた猫の曲だ」
「ずばり『ワルツを踊る猫』。喋れる猫がいるならさ、ワルツを踊れるやつがいてもいいだろ?」
キャットフードのCMを見たことがあれば知ってるかもしれない。一時期よく流れたやつだ。
本当はフルオーケストラで演る曲だ。練習曲仕立てでヴァイオリンの譜面も作られてる。
『タイプライター』みたいな気分で弾けば、異界の二番ヴァイオリンが即興で合わせてくれるはず。
練習曲のつもりで結構。心して聞け。猫まっしぐら。
■チェシャ > 「うん、あんま気にしなくていいよ。喋るだけのふわふわこにゃにゃだよ」
毛並みを触ればきっと、毎日丁寧にブラッシングのされている
手入れの行き届いた艶のある毛並みの感触が気持ちいいでしょう
「うんー!ふわふわはね、大事にされているよ
だからねぇーチェシャは優しい人間が大好きなんー」
撫でられれば、その手の気持ちよさにごろーんと身体を伸ばしてリラックスする
「ルロイ・アンダーソン……? よく分かんないけど、ワルツはふわふわも踊れるよ」
曲が流れれば、始めのうちだけ耳にした事のある喜びからか
「それねぇ、チェシャ知ってるー!聞いたことあるよ、可愛い曲の奴だー
こんな可愛い曲がワルツを踊る猫って言うのねー嬉しいんねぇー」
と、ご機嫌に話してから
彼女のヴァイオリンに合わせて、まるでその場でワルツを踊る様に
くるくると、くるくると回って楽しむのだった
■奇神萱 > 初っ端から特徴的なポルタメント。弦を滑らせるみたいな感じで、「にゃーおー」ってな。
ヴァイオリンの音色はたしかに猫の鳴き声によく似てる。
作曲家は踊る仔猫の愛くるしさをこれでもかと叩き込んでくる。
あざといだけの生物。今はお前が世界の全てだ。
異界の奏者たちもわかって演ってるんだろうか。遅ればせながら楽器が増えていく。
遊び心に満ちた競演が売りの作風なのに、多様な楽器が揃わなければ魅力半減もいいところだ。
この世ならぬ場所から響く競演がじわりと厚みを増していく。負けてられないな。
身体を揺らしながらチェシャを見守る。食い気につられたわけでもなさそうだ。
純粋に音楽に浮かれて躍ってる。愛嬌のある猫だ。まるで人間みたいじゃないか。
踊る仔猫は犬に咆えられて退散する。そこまで考えてなかったな。
異界のオーケストラには犬もいるんだろうか。信じてはいるが、期待していいのかどうかわからない。
あと三小節もないぞ。なあどうするよ旦那方。あと一小節。俺は咆えないぞ。やるのか?
―――がうがうっ!!
獰猛な肉食獣が耳元でよだれを飛ばして咆えたみたいな、そんな咆え声が聞こえた。
バスカヴィルのブラックドッグ。シェヴォーダンの獣。ティンダロスの猟犬。そういう恐ろしいものの声を聴いた。
何だよ今の。やりすぎじゃないか? 予想を大きく上回る衝撃に俺まで内心飛び上がっちまった。
「今の曲な、最後に犬の鳴き声が入るんだよ。あれは……犬か? 本当に犬なのか?」
大いに疑わしい。汗をびっしょりかいていた。
■チェシャ > 軽やかな曲調と、本当に猫が『にゃーお』と、時折鳴くかのような旋律
可愛らしく愛くるしい曲調も、猫のしなやかで軽やかな踊りの表現が
実に巧みに表現されている曲だと思う
曲に合わせて、楽しそうに跳ねて、飛んで、くるりと回って――……
その様子は、まるで彼女の引いたヴァイオリンの曲がそのまま
猫の踊るイメージを持ちえて、その場で再現されたかのように
猫は、人のペットとして生きる道を選んだ時に
実に可愛らしく、愛される外見に特化し進化してきた
故に、人を魅了し、時にあざとく小悪魔にも似た誘惑で
人の心を蕩かす事が出来る
きっと、観客がこの場に居れば――……恐らく
彼女のヴァイオリンの腕に加え、今日は『ワルツを踊る猫』に合わせて
本当に踊る猫に、観客からの「可愛い」という喝采の声がきっと飛び交った事だろう
いつの間にかこんなに楽器が増えたのだろう?
徐々に、少しずつ増える楽器の合唱は、曲に贅沢さを増して
夜の学生通りには勿体ない様な、豪奢なオーケストラの音色が徐々に徐々に完成されていく
それはまるで、一見見逃してしまいそうになる
幾重にも丁寧に人の手を加えられて、様々な色を載せられた油絵の様に
重厚になってゆくハーモニーが、薔薇の花弁の重なる様子の様に実に美しい
見守られるチェシャは、そんな、徐々に豊潤さを増していく音楽に
心地よさそうに、身体を揺らして、跳ねて踊る――……とても楽しそうに
その様子は、ちょっと社交界で曲に合わせて踊る人と、なんら変わりは無いのかもしれない
――……そんなふうに、とっても楽しい一時は
幸せな雰囲気を纏い、完全に心はその素敵な音色に酔いしれていたものなのだから――……
がうがうがうっ!
っと、突如出てくる遠吠えは……あまりにも恐ろしくって――……
先程まで、幸せそうに踊っていた表情は一変し、恐怖で身体が硬直すれば
「なんなんっ!? 怖いんっ!!」
曲の通り、その声に怯えて一目散に退散していった
ご案内:「学生通り」からチェシャさんが去りました。
■奇神萱 > 「知らん。おおマジで逃げてったぞ。筋書き通りだ」
変なところで関心しながら白いモップみたいな姿を見送った。
慌ててどこかにぶつかったり落ちて怪我をしないだろうか。それだけが心配だった。
おそらく杞憂に終わるだろう。ドジを踏むやつは滅多にいない。猫はしたたかな生物なのだ。
「おやすみ仔猫(キティ)。いい夜を」
さてと。また静かになった。このまま続けてみるか。誰か通りがかる可能性もある。
アリベリク・マニャールの『ヴァイオリンソナタ』にしよう。そのうち誰かに聞かせるために。
第1楽章から第4楽章まで通してやれば相当な時間になるが、問題はない。まだまだ夜は長いんだ―――。
ご案内:「学生通り」から奇神萱さんが去りました。
ご案内:「学生通り」に渡辺慧さんが現れました。
■渡辺慧 > いつも寄る、カフェテラスの前。
時刻的に言えば昼頃。
日差しは一層強さをまし、照りつけるそれは、ひどく夏らしかった。
そんな中で、少しばかり心配げな顔をして空を仰ぎ見つつ。
何かを待つ少年一匹。
今日も、暑い日だ。
ご案内:「学生通り」に磐野 州子さんが現れました。
■磐野 州子 > 「けーいー」
暑い、暑いそんな昼ごろだがその待ち合わせ場所で待つ男の場所に向かう季節外れの長袖の白衣を着た少女が歩いてくる
いつもと違う所があるとすればいつもの学生鞄とはちょっと違う、女性らしいバッグを持っている所だろうか
「なんたって急に今日行くなんて事になったんです?」
そもそも昨日一緒に行く予定だったのだが、州子は熱中症で倒れた為に昨日は海に行けなかった為に断念したのだ
■渡辺慧 > 「…………おや」
「やぁ」
来た少女を、はっと顔を上げて眺める。
そういう自分は二日連続で海に行くわけだが……。
「……いや、だって。悪いじゃん。州子が行くって言ってくれたのに、その本人といけないってのも」
「……つー、ても。その本人の体調がよければの話なんだけどーも……」
で、大丈夫なの?
とでも言いたげな顔つきで。
その少女――州子の顔を眺めた。
■磐野 州子 > やぁ、と言われればやぁ、と言い返す。
別にいつもの挨拶なのだから特に意味もないが、ただ真似してみたかった
「別に行くっていうなら行くですけど…とりあえず一昨日、昨日で丸々二日寝込んでたお陰で元気ですよ?」
その慧にとって見覚えのある火傷跡がある顔はいつも通りの健康そうな顔色を保っている
「…というか、慧昨日誰かと海に行ったんです?」
もしそうなら二日連続で海なのではないか、という疑問が頭を過ぎる
■渡辺慧 > 「そっか」
なら、よかった。とばかりに吐息を吐く。
その息さえも夏の熱を持っているような気がした。
「ん。……あの話の後、人誘ってさ」
あの話、とは。あのカフェテラスでの事。
「で……昨日、ね」
だからこそ。その話を持ち出した州子と行かない、というのも。
なんだか、寂しいような気がして。
……昨日まで体調が悪かったその少女に、それを言うのも。
また悪いような気もしたから、どっちもどっちではあるのだけれども。
■磐野 州子 > 「あ…あぁ……良かった。慧が人を誘って海に行くなんて…
良かった、いや良かったです。」
わざとらしくオヨヨヨという擬音を発しながら泣き崩れているようなそんな素振りを見せる。
あの慧が誰かを誘ったという話を聞けただけでも州子は十分という気分もあったりする
「…昨日、行ったんです?」
妙に濁す様子の慧を見て不思議そうにしている。
何故そのように話しにくそうにしてるのも気になるのだ
■渡辺慧 > 「君はおかんか」
……いや、そんな風に母親にされた覚えはないから、一般的に周知されているイメージでの……話だけれど。
なぜ、そこにそんなに喜びを感じている。
というのは……感じなくもないが。
「え?」
そう言ったろうに。
と、不思議そうな表情をする。
「行ったよ」
「誘った人と」
……あれ、言わなかったっけ?
何て自らの言葉を思い返すように、中空に視線を這わせた。
■磐野 州子 > 「いやだって」
そこまで気にする意味に理由があるといえばあるが、そこまで言って喜ぶような人は早々いないし、言わぬが花という言葉もある。
ここはあまり言わないでおこう
「うん……うん。行ったならいいです。
二回目になるけど、いいんです?」
改めて確認を取るように州子の赤茶の瞳が慧をジッと見ている
■渡辺慧 > 「んー?」
そんな様子の彼女の顔を覗き込むように眺める。
気になるものは……まぁそう気にする方でもないけど。
珍しく気になったのだ。
……ま、いいか。なんて思って笑って。
すぐ顔を戻したが。
「俺より。州子がいいのかっていうのは気になってるけどね」
言外に自分は当然だ、という宣言をしながら。
目元を緩ませ。
「俺と行ってくれますかね、州子君や」
■磐野 州子 > 「割ととノリ気なんですね…」
嬉しいような複雑のような。
そもそも慧がぼっち海を阻止する為のこの州子の企画であった。
本音を言うならド真面目に誰かを誘って海に行くなんて予想していなかった
まぁ、慧にちゃんと友達がいると分かっただけで州子の企画は終了したので
言うなればコレは州子にとってオマケであり、最近バイト漬けだった自分へのご褒美ということで…
「ここ二日身体動かしてねーですから、行くですよ、慧」
手は差し出せない為、催促するように余った袖をバタバタと振っている
■渡辺慧 > 「楽しいことは好物です」
昨日の疲れなど見せずに――いや、そもそも疲れなどないのかもしれない。――楽しければそれでよし。実に、実に刹那的で……。
「ん。あーいよ」
一つ頷きを返し。
近くに立て掛けてあった――機能も使ったそのパラソルと、シート。――砂まみれになったあとはすでにみられない。――
を片手で抱え上げると。
「手をつなぐのでもお望みだったりするのかい」
なんて冗談交じりに言った。
■磐野 州子 > 「楽しくしてやるです
出来るだけですけど」
あの慧を楽しませれるかどうかは分からないがやるだけのことをやろう。
あくまで自分の息抜きということを念頭に置いておく。
「あれ、割と準備はバッチリなんですね?」
パラソルやらシート、所謂海で必要なアイテムが揃えられているのを見ると
あの慧がアイテムを揃えるなんて、みたいな意外そうな顔を浮かべる。
「今州子と手を繋ぐと私以外の他の人と手を繋げなくなるですよ?なんて」
実際に慧が直接手を繋ごうとするならばそのぐらいの敬意は込めようという意味も含めて冗談らしくくすくすと笑みを浮かべる。
■渡辺慧 > 「そりゃ、楽しみだね」
下手くそな――いつものわざとらしい――鼻歌を鳴らしながら。
すい、と。州子の前を歩き出す。
「家の家という名の倉庫にはいろいろ詰まってるのさ」
なんて、言いながら。
――ついでに。
州子の白衣の上から。その手を少しだけ握って離す。
そんなことを悪戯気にしながら……歩き出した。
「さ、行くか」
■磐野 州子 > 「なんですかそれ、夢でも詰まってるんです?」
そういえば慧の家を聞いたことないような、このでぇとが終わった後にでも聞いてみようか…覚えていれば
「ん…?」
でぇと、でぇと?でーと…
そんな時ふと白衣の上から手を捕まれ思わず「のあっ!?」と、不意を打たれた声を漏らすがいつの間にか慧の手は離れている
「ん、んー…まぁ、行くですよ」
ちょっと納得しないような表情を浮かべながら慧の後についていく形になるだろう
■渡辺慧 > 「だと、いいがねぇ」
先を歩きながら呟き。
シシシ。
後ろから聞こえる声に、笑いながら。
そうして海へと向かった。
ご案内:「学生通り」から渡辺慧さんが去りました。
ご案内:「学生通り」から磐野 州子さんが去りました。
ご案内:「学生通り」に深雪さんが現れました。
■深雪 > 学生通り、読んで字のごとく学生のために整備された通りである。
軽食、雑貨、娯楽、学業、全てに関連する店が軒を連ねており、
いつも多くの学生たちで賑わっている。
「……この辺り、だったと思うのよね。」
銀の髪を揺らす、長身の少女は何かを探していた。
足を止めて、辺りを見回す。
だが目当てのものはまだ見つからないらしく、首をかしげた。
■深雪 > 見つからないならば、それでも構わない。
そこまで強い欲求に駆られたわけではない。
ただ、どんなものか、見てみたかった。
そんな好奇心が刺激されただけだ。
見つからないということは、縁がなかったのだろう。
「……猫カフェって言うくらいだから、猫が沢山居るのよねぇ。」
猫好きのための聖地、猫カフェ。
…………なお、厳密にはこの少女は犬派である。
犬カフェがあれば、なお良い。
■深雪 > 諦めたのか、少女は通り沿いのベンチに腰を下ろした。
ハンカチで汗をぬぐい、道行く人々を眺める。
誰かに聞けば良いのかも知れない。
だが、そこまでするほどの情熱は持ち合わせていなかった。
「もしかして、向こうの通りだったかしら。」
そんな風に呟きながら、少女は佇む。
端から見れば、誰かを待っているようにも、疲れて座っているようにも見えるだろう。
ご案内:「学生通り」にネコメドリさんが現れました。
■ネコメドリ > ───ガラガラガラ、屋台が動いている。
動いているというのは引いている者が居ないのに一人でに動いているという事である。
動力は不明である。ベンチの前を通過したが、押している者も居なかった。
と、思えば屋台の上に何者かが乗っているようで──
「この辺でいいかなァ~~…よっこらせっと」
ベンチの近くに屋台が止まると、何か黒い物体が屋台の上から降りてきた。
「あ、ども…」
ベンチに座ってるあなたに軽く挨拶すると、屋台の中からのぼり旗を出す。
【ネコメドリカフェ】 ───そう書かれていた。
■深雪 > 少女の眼前には異様な光景が広がっていた。
人も馬も居ないのに、屋台が動いている。
それだけなら、モーター等、方法はいくらでもある。
「…………?」
問題は、その上に鎮座している生き物である。
鳥に見える……だが、明らかに一般的な鳥よりも大きい。
「……どうも?」
そして、その鳥が取り出したのぼり旗。
「ネコメドリ……カフェ?」
馴染みの無いその言葉に、少女は首をかしげた。
ご案内:「学生通り」から深雪さんが去りました。
ご案内:「学生通り」に深雪さんが現れました。
■ネコメドリ > 少女の疑問も露知らず、開店の準備をしていく鳥。
準備というかなんというか椅子が宙に浮いて独りでに並んでいく光景はさながらポルダーガイストのようだった。
屋台の中の整理はこの鳥自身が手作業でやっていたが……
「ホイ、ホイ、ホイっと…あ、これ忘れてた」
大きく【茶】と書かれた小さめの看板が屋台の前に立つ。つまるところ茶を扱っているのだろうと推測できるかもしれない。
「よーし!準備完了! ……あ、そこのお嬢さんも暑いでしょう?なんか飲んでいかない~?」
ベンチで暇そうにしてるあなたを見て声をかける鳥。
深雪 > それは少女のイメージしていた【猫カフェ】とは大きな隔たりがあるものだった。
だが、目の前で、まるで魔法のように進められていく準備には、興味を惹かれる。
その証拠に、じっと、黄金色の瞳が、準備を進める貴方の方へ向けられていた。
「・・・そうね、ちょうど、退屈してたところだわ。」
鳥に呼び込みをされる日が来るとは、誰が想像しただろうか。
苦笑を浮かべつつも立ち上がって、屋台の方へと歩いて行く。
「ネコメドリカフェ・・・ってことは、貴方がネコメドリ?」
■ネコメドリ > ネコメドリと問われれば鷹揚に頷き口を開く。
「ご明察!そう、オイラがネコメドリさ!さあ、座って座って!ネコメドリカフェにようこそ!」
あなたが店内に近づけば、何か妙に涼しい、軽く冷房でも効いたような感覚を肌に受けるかもしれない。
その冷気は屋台の中から出ているようだ。屋台といえばオープンである。店主であろう鳥もそうだが、謎が多い屋台だ。
「あ、何飲む?これメニューね。一応ホットもできるけどこの時期アイスしか飲まないよね~?」
メニューには茶類、緑茶や紅茶、果てはハーブティーもある。それとお茶菓子等──ちなみにコーヒーはないらしい。
深雪 > 謎が多いどころか謎しかない屋台に近付けば、これまた謎の冷気に包まれる。
店長がネコメドリだから、ネコメドリカフェ、か。
けれど、ネコメドリなんていう生き物は聞いた事が無いし…魔法生物か、それとも・・・
こんな状況では、そんな風に思案してしまうのも当然である。
・・・少し怪訝な表情をしながらも、促されるままに腰を降ろした。
「そうね・・・それじゃレモンティーと、シフォンケーキ、もらえるかしら?」
黄金色の瞳は、ずっと貴方に、ネコメドリと称した鳥に向けられている。
魔法生物なのか、人間なのか、魔法に掛けられた人間なのか。
その正体を探ろうとしている。とも取れるし、純粋に怪しんでいるとも取れる。
■ネコメドリ > 「オッケーオッケー!レモンティーとシフォンケーキねー…よし、セイロンのでやってみますか」
ポットに紅茶の茶葉を入れると予め用意してあったのか、ヤカンを傾けて湯を入れる。
そういえば先程から翼を使って物を動かしてる。それはまるで人の手のようだった。
十分茶が抽出されるまで待つ間、どこからともなく手品のようにシフォンケーキを取り出してあなたの前に置いた。
その時視線がかち合った───
「なんかさっきからオイラの事めっちゃ見てませんか?イヤン♪」
お茶目にウインクする鳥。
深雪 > 翼を人の手のように使う姿も、しっかりと見つめている。
なお、今の所、7:3で人間。もしくは魔法を掛けられた人間だと思っている。
視線が合う・・・確かに猫のような目をしているが・・・
「・・・貴方ほど変な生き物を、これまで見たことがないわ。」
苦笑交じりにそうとだけしか、言えなかった。
「貴方の中にどんな人が入ってるんだろうって、考えてたのよ。」
きぐるみ、という事は無いだろうけれど。
チャンスがあれば触ってみようと、心に決めた。
■ネコメドリ > 変な生き物と言われればワハハと狙いすましたかのように笑った。
「オイラの中?何言ってんの、オイラはネコメドリなんだから中に人が入ってるワケないじゃーん」
少女の疑問をさらりと受け流すと、ポットの蓋を開けて様子を見ている。
茶を抽出し終えたので、ポットを傾けてガラスのカップに入れる。氷は入っていないが──
「おいしくなぁ~れ♪」
まるでメイドカフェなる場所で聞きそうなセリフを言うと、翼の先をコップの近くに持っていく。
すると湯気はすぐさま消えていき、見る見るうちにカップが白くなる。そうすると今度は別の白い靄が立ち昇る。冷やされた水蒸気である。
最後にスライスしたレモンをカップのふちにかけるとそれを差し出した。
「おおっと、ちょっと冷やしすぎたかな…はい、できましたよ~!
あ、もしかして氷とか欲しかったりする?氷食べる人結構いるんだよなァ~~」
深雪 > 少女は貴方のテンションについて行けていないが、案外と楽しんでいるようだ。
「・・・・・・それじゃ、後で触らせてもらおうかしら。」
なんて言いつつも、大人しく、貴方がレモンティーを淹れる様子を、眺めている。
途中で魔法を使ったように見えたが、この島では魔法など珍しいものでもない。
ただ、それに気付かせないくらい鮮やかな手際なのは、驚愕すべきことなのだが。
「ありがと・・・氷は遠慮しておくわ。」
食べない人だったらしい。ガムシロップを少しだけ混ぜて、一口。
表情はさほど変わらないが、黄金色の瞳が満足気に、一瞬だけ閉じられた。
■ネコメドリ > 「ヱ!?お触りもしたいですって!?う、うん、そういう事言ってくる人も多いからね。
オイラは慣れてるから大丈夫だけどなるべくやさしくしてね…」
と、何故か身をよじってもじもじする鳥。とても人間染みているように感じるかもしれない
注文されたものは全部出し終えたのか、今度はこの鳥の方があなたの顔をじーっと見ている。
「ふっふっふーん」
あなたの顔を見て、満足気な声。きっと少女の顔を見て何かが伝わったのだろう。
深雪 > 「・・・そう言われると、その羽根を毟ってみたくなるわね?」
くすくすと笑いながらシフォンケーキを小さく切る。
ホイップクリームを少しだけつけて頬張れば、とっても優しい甘さ。
・・・・・・素直に美味しい。
そんな様子が伝わったか、満足気な声を上げるネコメドリ。
ちょっとドヤ顔している気がする。
何だか悔しい気がしたので、手を伸ばして軽く撫でてやろう。
勿論、いきなり羽根を毟ったりはしない。でも、“生”なのかきぐるみなのかくらいは、確認したい。
■ネコメドリ > 「…Sでらっしゃいますゥ!?お、オイラそういうの嫌いじゃないけど!綺麗なおねーさんにされるのならばむしろ好きです!ハイ!」
と、調子に乗る鳥。いつでも毟ってくれと言わんばかりに頷いた。
ケーキも冷蔵庫から取り出したような感じで程よく冷えている。少しだけ形が悪いかもしれないが、それが手作り感を感じさせる。
そんなこんなであなたがこの鳥へと手を伸ばすと───
「おォ──!?むしられ…アレ?」
ネコメドリに触れると、不思議と作り物のような感じはしない感触が返ってくるだろう。
本当に鳥のような感じがする。撫でていけば、そこには生物としての暖かみがあった。
人のように喋り、人のように翼を使う。人間離れしているのに、鳥だというのに、そこには人間性が存在していた。
深雪 > 「あら、そういう態度も嫌いじゃないわよ?
・・・・・・でも、どうせなら嫌がってくれないと、面白くないわねぇ。」
冗談か本気か、こちらもくすくす笑いながら返す。
でもまだ毟る気はないらしく、撫で方は優しげで・・・頭だけでなく、頬や顎の下あたりも、くしくし撫でていく。
触ってみて分かったのだが、きぐるみではなく、確かに生きている鳥のようだ。
本来なら・・・猫を撫でる予定だったのだが、これはこれでまぁ、斬新だ。
「ホントに不思議な生き物ねぇ・・・・・・貴方、何者なの?
正体を明かすか、本当に毟られるか、どっちがお好み?」
■ネコメドリ > 「あっあぅあっあぅぅ、そこだめっ」
あふんあふんと喘ぎながら身をよじる鳥。
くすぐったいのか、色々な所を撫でられる度に震えている。
「ナニモノ…って、オイラの正体はネコメドリでしかないワケで……
ハッ、つまり毟られるしかオイラには選択肢がない!?むしろ毟られる方でオナシャス!」
毟られる方がお好みのようだった───
深雪 > 「あら、駄目なのね・・・」
貴方の言葉通りに、すっと手を引っ込めてしまった。
少女はくすくすと、笑いながら貴方の反応を見て、満足気に目を細めている。
けれど、正体を明かそうとしない貴方に向ける視線は、少し不機嫌そう。
「・・・そんなに毟られたいの?」
少女はテーブルに左手を付いて身を乗り出し、貴方に近づく。
不機嫌そうな表情のままに、黄金色の瞳が貴方を真っ直ぐに見る・・・貴方の目が猫目なら、この少女の目は犬か、狼の目。
僅かに笑みを深めて・・・・・・伸ばした手で頬を撫でる。
貴方がよほど鈍感でないのなら、全身の神経が“危険だ”と告げるだろう。
「・・・ほら、嫌がってくれないと、面白くないわ。」
■ネコメドリ > 「…おォ!?え、いやー、そのー……」
身を乗り出してまで近づいてきたのには流石に驚きを隠せないようだった。蛇に睨まれた蛙。否、狼に睨まれた鳥状態である。
チラリ、チラリと視線を逸らしてはまた視線を合わせる。不機嫌そうなあなたへの対応に少し困ったかのような顔ではあったが…
「い、イヤン…」
しかしなんというか、何か期待したような目だった。それにしてもこの鳥、鈍感過ぎである。
もしくは、危険だと気付いた上でこの態度なのかもしれないが───
深雪 > 勿論このまま縊り殺すことも出来るが、そんなつもりは無かった。
だからこそ脅したつもりだったのだが、それでもふざけた態度を改めない。
ならば、振り上げた拳を振り下ろさないわけにもいかない。
「・・・0点ね。」
呆れ顔で貴方を見て・・・頬を撫でる指が貴方の顔をなぞるように移動し、冠羽のうち小さな1本を掴んだ。
優しげな笑みを浮かべたまま、けれどその手には迷いが無い。
抵抗しなければ、か細い指に力が加わり、ぶちり、と、痛々しい音を立てて引き抜かれるだろう。
■ネコメドリ > 「ご、ゴメンナサイ…フギっ」
0点と言われて謝る鳥。ドSなあなたを満足させられなかったのを理解したのだろう。
そして、ぶちぶちりと音を立てて頭の特徴的な羽が一つ抜けた。
「フギギギ~…やっぱそこ毟っちゃいますか~~。なんか割りと頭の毟られるんだよなァ~~…イタタタタ~~」
と、痛がる素振りを見せながら翼で頭を撫で付ける。
「でも一番小さいのだけを選んでくれたのはちょっと優しいね。
本当にそういう人だったら一つどころか全部引っこ抜くんだもん……」
深雪 > 引き抜いた冠羽をくるくる回して、ちょっとしたSMの真似事に満足気。
割と毟られる、という言葉には、いつもこんな事をしているのか、なんて、少し呆れた表情を貴方に向けた。
「ケーキとお茶が美味しくなければ、全身丸裸にして焼き鳥にしてあげるところよ?」
優しいと言われればそう返して、再びケーキを頬張った。
冠羽はどうしようか少し迷った後で、簪のように、銀色の髪に差してみた。
「でも、貴方、ホントは人間でしょう?」
動作から文化から言葉から、全て人間そのものである。
そして、魔術に長けているのも、先ほどのアイスティーを作る動作でわかっている。
だからこそ、半ば確信していた。別に外れていても構わないし、正体を無理に暴くつもりは無いのだが。
「・・・もう少し可愛い姿に化けたほうが、人が集まるんじゃなくて?」
言外に可愛くないと断言している。酷い。
■ネコメドリ > 「お、オイラは食べてもおいしくないんで…」
焼き鳥、という言葉を聞けばゾゾゾっと震える。
あなたが羽を髪に差せば、それを見てお似合いですよ~と、ご機嫌取りである。
人間だろうという質問には、少し考えたかのような間を挟んで、諦めたかのような表情を一瞬見せて答えた。
「ん~…まあ、ぶっちゃけると人間、だね……わかる人にはわかっちゃうからそこまで隠してるワケじゃないけどさ……
あ、でも可愛いでしょ?!オイラ愛嬌ありますよねェ!ねぇ!?」
遠まわしに可愛くないと言われてるのに気付いて必死に反論する鳥。
深雪 > 「誰も食べるなんて言ってないわ。焼くだけよ?」
実際、食べても美味しそうには見えない。いや、食べられないことは無さそうだ。
ちょっとだけ、少女の視線に“食欲”の色が垣間見えたかもしれない。
取ってつけたようなご機嫌取りの言葉には、ありがと、と素直に返した。
「やっぱりね・・・そうだと思ったわ。
貴方が可愛いのは確かだけれど、正直その見た目はあんまり可愛くないわよ。」
必死に反論する姿も、少々鬱陶しいとも感じるが、可愛らしい。
そして、素直に白状した所・・・そんな従順さも、可愛らしい。
■ネコメドリ > (焼くだけ焼いて食べないとかひでぇ!?女王様って呼ぼう…)
彼女のドS発言にそう心に決めた鳥であった。
「つまり見た目は可愛くないけど性格は可愛いと?よっしゃァー!」
翼を折り曲げてガッツポーズである。
と、どこからともなく新しいポットを取り出した。
「あ、お茶のおかわり入ります?サービスしますよ女王様!」
あなたのキビシイ性格に触れたせいか、もうすでに女王様扱いである。
しかしここはSMクラブではなくネコメドリカフェであった……叩いたら悲鳴は出るが、お茶も出るのだ。
深雪 > 「えぇ、否定はしないわ。
焼いて食べちゃいたいくらいには、可愛いわよ?」
くすくすと笑う少女。その言葉はまさか冗談だろうが・・・半分くらい冗談に聞こえない。
貴方がこの少女の正体を知っていたら、今すぐに逃げるべきだろう。
「あら、嬉しい・・・。」
少女は貴方のサービスと殊勝な態度に、満足気に微笑んだ。
本来の目的とだいぶかけ離れてしまったが、これはこれで、愉快。
ケーキを食べ終わり、食後のレモンティー・・・少しだけレモンを絞って、香りの変化を楽しんだ。
「美味しかったわ・・・“ネコメドリ”さん。お幾らかしら?」
少女は貴方を、あくまでもネコメドリとして扱った。
人間だということは、少女の心の中にしまっておいてくれるのだろう。