2015/09/16 のログ
■久藤 嵯督 >
「なるほど。霊だのオカルトだのは専門外なので、そっちは他のヤツに任せるつもりで未確認だったのだが……
まさかその俺に当たるとは、世の中ってのはよく出来てるもんだ。面白いほど貧乏クジが集まってくる。
だがまぁ、そう悪い事ばかりでもなかったがね……?
ああそれと、そこの首飾り。後で許可申請とその承認を確認しておくからな。
無断で禁書庫に入ったのであれば、数日間は奉仕活動だ。もしそうなら約束などは今の内にキャンセルしておくがいいさ」
禁書庫が基本的に立ち入り禁止であることは周知の事実。
堂々と言い放っているあたりそんな事は無さそうだが、もしかするかもしれない。
確認するだけタダなので、一応の警告。しかしこうもゴロゴロ入られては、禁書庫の名が泣く頃だ。
鋭い視線……元々そういう目付きなのであるが、それを女騎士に向ける。
「真っ白で綺麗な髪をしていて、顔立ちはかなり整っている。だが無愛想だ。
それが赤い制服を着ていて、腰には安物の刀を提げている。背格好はこの時代の一般人程度といった所だろう。
―――まあ、俺の事なんだけどな」
こいつ、思ったよりも鈍い。いいや、愚直であると言うべきか。
とりあえず、こいつを相手にポエトリーに話す事は諦めたほうがいい。
「なに、特に深い理由は無い。強いて言うなら、仕事と趣味を同時にやろうとしている……ってトコだよ。
"風紀委員としては"、関係のない市民を巻き込むわけにもいかんからな。
それに、俺も戦いは好きだ。それじゃあ不満か?」
余裕の態度を保ちながらも、その双眸は女騎士を深く観察している。
■寄月 秋輝 >
頭を抑える。
やはりこの手のバケモノの類は常識もクソもない。
「安心してください、嘱託風紀委員として正当なルートで入りました。
心配ならばご確認をどうぞ」
疲れた様子で呟くが、後ろめたさのかけらもない。
言葉通り正規ルートで入ったのだろう。
「……めんどくさいけど、進んで一人ずつ殺していくしかないのか。
ありがたいアドバイスどうも」
厄介なことだ。
皆殺しにするとなると、相応の労力がかかるものだから。
「……では、あとはお任せします。
僕はまた別の場所を見回りしますので」
どうにも厄介なものとばかり当たる。困ったものだ。
自分の運の悪さは女難の相だけにとどまらないらしい。
大きなため息とともに、その場を立ち去ろうと足先を他の方角へ向けた。
■『ナイト』 > 「真っ白で綺麗な髪、顔立ちはかなり整っていて無愛想?
ただの自画自賛でしたか。
どうせ、そんな事だろうと思いましたよ。
宝具『イービル・エクスカリバー』も愉快に笑うというものです」
『ナイト』はベンチから静かに立ち上がった。
そして地面から剣を引っこ抜く。
「そうですか。
関係のない市民を巻き込むまいとしている風紀委員とやらには反吐がでますね。
あんな雑魚の群衆を守って何になるというのですか?
奴等は、力のない弱者でしかありません。
弱者は淘汰されて然るべきなのですよ。
そして弱者を餌にした強者のみが生き残っていればそれでいいのです。
弱い奴に生きている価値など微塵もありません」
ここで表情を変えなかった『ナイト』はやっと、ニヤリと口を世がませた。
「奇遇ですね。私も戦いは大好きですよ。
特に、強い奴との決闘は胸が躍らされます」
宝具『イービル・エクスカリバー』をゆっくりと構えていく。
「そういう事です。
七英霊を全員成仏させなければ、殺戮は止まりません」
立ち去ろうとする寄月秋輝には目もくれず、久藤嵯督を睨んでいる。
■久藤 嵯督 >
「そうか、ならばいいんだ。行ってこい」
なるほど、嘱託風紀委員か。正規の役員以外にも許可しているあたり、切羽詰っている様が目に見えるようだ。
七霊の情報秘匿を緩めるにあたってのリスクはあるが、そう悪い判断でもない。
ただ、嘱託委員以下の知識であるという事は少し悔しいが。
そんな大したことも無い思いを抱き、見送りもせず『ナイト』の方を向く。
「そうかそうか……なるほど、お前とは趣味が合いそうだ。
然り、弱者は得てして淘汰されるもの。しかしそれが無価値であるかと聞かれれば、案外そうでもない。
弱者は基本強者を狩れぬが、何か便利なモノを産む力がある。それを気に入った強者が、それを守るのは、そんなに可笑しな事か?
また弱者の中には、強者に転じる素質を持つ者もいる。
つまり戦場にさえ出さなければ、いくらでも"使い道"があるという事だ。
故に、無闇に減らすこともあるまい」
「ここにある店の飯は、中々に美味い。
それも俺ほどではないが……理由などそれだけで十分だ。
たまたま仕事上でも守らなければならんので、まあ乗っかってやるワケだ。
それでも尚、無用な戦場を生むと言うのであれば―――」
[1/2]
■久藤 嵯督 > ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――貴様には、戦いを愉しむ暇さえも与えん。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■久藤 嵯督 > 【ガギィン!】
重厚な金属と金属がぶつかり合ったかのような音が、体内より響く。
タ ガ
『限定』の一段階目を解除したその直後に、身に纏う気配や風格といったものが一気に色を変える。
それはまごう事なき『強者』であり、鬼のようでもあり、餓狼のようでもある。
重心を軽く落とし、携えた刀に手を添える。
切れ味の鋭い眼光は変わらず、女騎士に突き刺さっている。
「風紀委員、久藤 嵯督。お前は?
お前を表す記号は知っているが、お前にも名前ぐらいはあるだろ」
[2/2]
■寄月 秋輝 >
(めんどくさい……)
バトルマニアと、それを怒らせた相手というのは極めて厄介な状態になることが目に見えている。
相応の闘気をみなぎらせる久藤の様子を感じ、大きなため息を吐き出す。
さっさと立ち去ろう。
二歩だけ歩いてから、はたと足を止める。
「最後に一つ。
弱いものに生きている価値がないと君が思うなら」
振り向く。
何の感慨も浮かばぬ目で『ナイト』を見つめて。
「この場で君が一番生きている価値がないよ」
そこからさらに二歩だけ歩くと、秋輝の姿は世界に飲まれるように消えた。
光の屈折率も変え、自分の姿を隠しながら立ち去った。
ここへ来た時と同じように、また姿を隠しながら彷徨い始めるのだ。
ご案内:「学生通り」から寄月 秋輝さんが去りました。
■『ナイト』 > 「弱者は無価値です。
生産して、弱いけど役に立っているつもりでいるのですか。
弱者が作りだしたものなど、壊してしまい以外の利用価値はありません。
強き者に守られているしか脳がない弱き者が、守られているという自覚もなく警察機構やら軍隊を偉そうに批判する。
弱者とは、そんな奴等でしかありません。
自分の身を自分で守る事ができない奴など、死んでしまえばいいのですよ」
淡々とした口調で、機械的に述べていく。
「素質のある弱者はまだ救いようがあります。
ですがそれは、強者になって初めて立派となるのです。
弱者など、捨て駒以外にどのような使い道があるのでしょうか。
一騎当千の強者に、弱者など無意味です」
「弱者のつくる飯など、食うに値しません。
そんな店いくらでも潰れてしまえばいいじゃないですか」
周囲の店を見て、吐き捨てるように言った。
寄月秋輝に生きている価値がないと言われると、さらに口元を歪めてしまう。
「私を弱者と同列に見るとは面白いですね。
その勘違いを晴らすのもいいものですが、まずは目の前の風紀委員ですか」
「戦いを楽しむ暇さえ与えぬとは戯言を……」
宝具『イービル・エクスカリバー』を柄を強く握る。
強者の風格が目の前にあった。おもしろい……。
「久藤嵯督ですか、覚えました。
『ナイト』以外に名乗るものは今の所ありませんよ。
それでは、参ります」
それは静かに、だが素早く嵯督へと迫る。
聖剣によるただの薙ぎ払い。
ウォーミングアップと言いたげに、軽いものであった。
戦いを楽しんでいるが故の慢心を感じるかもしれない。
あるいは強者の余裕が滲み出ているかもしれない。
一撃目は、そんな試すかのような剣筋だった。
■久藤 嵯督 >
「つまらん野次など、嗤って流せばいい……それが強者の特権だ。
なのにお前は、随分とそれに執着しているように見えるな。
弱者に親でも殺されたか?」
歪な笑みを浮かべていた顔が、今度は女騎士を嘲った。
「やれやれ……これでは『偉そうに批判する弱者』と何も変わらんな。
モノの正当なる存在価値を理解せず、ただ思うがままに否定する……まさにお前の言う『弱者』そのものじゃあないか。お笑い種だな」
前動作や重心、姿勢といったあらゆる観点から薙ぎ払いの動作を見切っていた。
しかしそれでも刀を抜くことはなく、ただ剣閃の外に逃れるのみ。
「フン、その程度で強者を語るか。
それともお前は、やっぱり『弱者』なのか?」
挑発するのは、半ば癖のようなもの。
■『ナイト』 > 「弱者に殺された親がいるならば、そいつも同じく弱者です。
存在価値がないのは変わりません。
弱者など生きている意味はない、執着する理由などそれ以外に何が必要でしょうか?
嗤って流してもいいですが、せっかくなら強者の手で消し去るのも一興です。
邪魔でしかないのですからね」
ニヤリと邪悪に笑う『ナイト』。
「弱者に生きる価値がない、これぞ正当なのですよ。
強者なら、自由に弱者をしりたげてもいいのですよ。
それこそが強者の特権というものです。
選択する権利は常に強者にあり、弱者にはありません。
弱者は、否定されて当然な存在なのですよ」
薙ぎ払いの動作は見切られていたようだ。
初撃は華麗に回避されてしまった。
あの程度の攻撃、対処してもらわなければ面白みにかけるというもの。
『ナイト』は楽しげに、しかし邪悪に笑みを浮かべた。
「挑発している暇があったら、次の攻撃に備えた方が身のためですよ。
私に本気を出させたら、褒めてあげますね」
挑発になどのらないと言った風に、加減をやめない姿勢。
『ナイト』に実力を出させたければ口ではなく、行動で示せというわけだ。
次の『ナイト』の攻撃は、聖剣による十連続の突きだった。
目にも止まらぬ突きだが、あえて急所は外し、四肢のみを狙っている。
「次は、どう対処してきますか?」
■久藤 嵯督 >
身を屈め、回り込んで、紙一重で突きをかわしていく。
それでも未だ刀を抜かずに、避けに徹している。
まるでそれが、『戦いの方法』であると言わんばかりに。
そして加減をやめなかった女騎士に対して、豪笑してみせた。
「ハハハハ! 口頭でさえ弱さが滲み出ていると言うのに、実力すら伴っていないとはな!
おまけに、無意味な殺生でさえ興とするか! ああ、俺は貴様に対して大きな勘違いをしていた!
今度こそよくわかった、貴様の正体が見えてきたぞ……」
刀に手を添えてくつくつと嗤いながら、言葉を紡ぐ。
「―――貴様は『弱者』どころか、アリを潰して悦に浸っているような餓鬼にすら劣る……
―――ただの『イキガリ』だ。
ただの一度でさえ、ヒトはこれを『英霊』呼んだのか……クハハ! 莫迦莫迦しいにも程があるぞ!」
『あえて抜かなかった』のが、段々と『抜く価値すらない』に理由が切り替わってしまいそうだ。
挑発半分に語ってみたのだが、小物もここまで来れば心から嘲わずにはいられない。
風紀委員や能力者達は、こんな小物の集団に手間取らされていたのか。本当に可笑しくてたまらない。
■『ナイト』 > 聖剣による十連続の突きにかわしていく嵯督を無表情で見る。
避けに徹し、刀を抜こうともしない。
あえて抜こうともしないのか。
加減している事は相手も見抜いているはずなので、彼の言葉はただの煽りだ。
耳を貸すだけ、ばかばかしい。
「殺生こそ、楽しめるものだと思いますけどね。
それを多くの人がなぜ拒むのか、理解に苦しみます。
最も、弱者よりも強者を殺す快感の方が、圧倒的に上ですけどね」
剣を構え直して述べた。
だが次の嵯督の言葉を聞いて、戦意喪失したかのように構えをやめる。
「つまらない言葉ですね……。
煽るだけ煽って、刀も抜かず攻撃を避けるだけですか。
あまり、斬る価値がない存在だと思わせないで下さいよ。
私をあまり失望させないでくださよ。
私は、強者を斬りたくて斬りたくてたまらないのですから」
騎士は剣を鞘に収めようとしていた。
■久藤 嵯督 >
「最初から、強者も弱者も関係無いだろうに。血が流れれば何でも良い、美学すら存在しない。
貴様はただの殺人狂だよ。
だから俺も、貴様で愉しむのはやめにした。俺の敵に値しないほどちっぽけなカスなのさ、貴様は。
そっちもやる気が無くなったのなら、また何処か別の場所でも尋ねてみたらどうだよ?
付き合ってくれるような奇特な輩には事欠かないだろうよ。貴様は誰よりも弱いからな」
刀から手を離して、上着のファスナーを下ろす。涼むようにぽんぽんと上下させて、風を取り込んでいる。
残暑に長袖で運動したならば、当然の反応だが……
■『ナイト』 > 「弱者か強者か、大いに関係がある事です。
強者なら喜んで斬りましょう。
弱者なら蔑んで斬ります。
そこに美学なんてものが必要だと思いますか?
殺人狂? 結構ではありませんか。
強者を斬るか、弱者を斬るか……。
その二択でしかありませんね」
剣を完全に鞘へと収めた。
「私とお前はどうやら気が合うようです。
前言を撤回しますね。
お前の名を覚えておく事は、もはやないでしょう。
お前の血で、この宝具『イービル・エクスカリバー』を汚す価値はありません。
お前はもはや、弱者でしかありません」
もはや蔑む目で、久藤嵯督を見ている。
「弱者は弱者らしく大人しくしていればいいですね。
存在している価値すらないのですからね。
この聖剣に見合う敵とはまだ巡り合えないようです。
お前に刃を向けた事は、もはや黒歴史でしかありません」
再びベンチに腰掛ける。
そして静かに目を閉じる。
「弱者はうせなさい」
■久藤 嵯督 >
「いいや、去るのは貴様の方さ」
そう言って女騎士のすぐ横にどっかりと座り込み、脚を組んで激辛ドリンクであるデスジュースを取り出す。
既にそこにいる者など、まるで意に介していないかのように。
「このベンチな、実は俺の特等席なんだよ。ここで飲むコイツがまた良いんだ。
『モービル・セックスゲイバー』が何だか知らんが、弱者が失せるべきだって理屈なら、まず貴様が消えるべきだと俺は思うね」
それだけ言って、赤い劇物をラッパ飲みし始める。
■『ナイト』 > 「子供の喧嘩ですか……」
女騎士の横にどっかり座る男に、『ナイト』は呆れるようにして溜息をつく。
こうなってしまったら、今の間は見下す事もしなくていいだろう。
弱者がジュースを飲んでいるだけだ。
しばらく本格始動する気がない『ナイト』にとっては、もはや戦意がない弱者を相手にする気はない。
『ハンター』『モンク』『プリースト』『ハンター』と次々に行動し始めている七英霊だが、『ナイト』はまだ大きく動く気はないのだ。
それでも強者を見かけたらぶっ殺したくなるぐらいだろうか。
「それで、その飲み物はなんですか?」
次にふったのは、そんな内容だった。
■久藤 嵯督 >
「負けじと弱者呼ばわりしといて、よくそんなクチが聞けたもんだ。
ああこれか? 野菜ジュースだよ。もう一本あるから飲んでみな」
懐から二本目の容器を取り出して、女騎士に投げて渡す。
ペットボトルとは違う、合成樹脂の容器。その中には赤い液体が並々と入っている。
中身は激辛マニアですら悶絶するほどのシロモノ。ほぼ無臭であることからだまし討ちポイントも高い。
それを自分は、目の前でおいしそうに飲んでみせる。
おいしいものの例としては不十分どころかマイナスに片足突っ込んでいるが、
まあこいつにそんなモノを教えてやる気もない。精々もがき苦しめば良いのだ。
■『ナイト』 > 「刀を抜かず、行動で示す事もなく、ただ口で煽るだけしかできない輩には『弱者』という言葉が相応しいでしょう」
煽るというよりかは、淡々と説明する風に述べていた。
「野菜ジュースですか。
私にもくれるのですね」
投げ渡された容器を受け取ると、不思議そうにそれを見る。
それが激辛である事を『ナイト』は知らない。
久藤嵯督がおいしそうに飲んでいるところからも、それが激辛であると気付かせ辛くしていた。
「それではいただきます」
容器の蓋をあけると赤い液体がその姿を現す。
無臭である。
警戒心が人一倍強い『ウィザード』や『シーフ』ならば、それが辛いものだと気付けたかもしれない。
だが『ナイト』はそんな事も知らずに、容器に口を付けて赤い液体を一気に飲んだ。
「……ぎゃああっ!?」
そんな声をあげつつ、口を抑える。
な、なんなんだ……この辛さ。
野菜ジュース?
いや、この弱者に『ナイト』は騙されたのだ」
「み、水……。
水……」
『ナイト』は苦しそうに水を求める。
■久藤 嵯督 >
「人に本気を出して欲しけりゃ、まずは自分からそうするのが礼儀ってモンだろ。
ちょっと前から思ってたけど、お前結構頭悪いな」
げらげらとは笑わなくなったが、言葉の辛辣さまるで変わらない。
「おーおーおーおーおー……自称強者のイキガリさんは……貪るべき食物にすら勝てないご様子だ。
俺だったらこんなにも飲み干してしまえると言うのに、強者として情けないとは思わないか?
今ここでお前の舌はクソザコ認定されかけてるトコなんだぜ? それが水なんて欲しがっちまって……
ほーら、がんばれーがんばれー」
それだけ行って女騎士をほったらかしに、ベンチを立ち上がって自販機へと向かう。
そこで缶入りのミルクセーキを購入すると、再びベンチの前へ。
苦しむ女騎士の目の前にミルクセーキをちらつかせながら再び煽り始めるでのあった。
「今度は未開封だから俺が手を加える余地もない、正真正銘の清涼飲料だ。
だけどお前は、弱者なんて無意味だとか抜かしたよな? だったら、神様仏様弱者様の用意したこいつだって必要ないワケだ。
自 分 で そ う 言 っ た よ な ?
水道もダメだぜ。お前が水を引いてきたワケじゃあないだろ?」
■『ナイト』 > 「余興を楽しむのに、本気を出す事はありません。
そもそも、私が本気を出す場面は限られてきますね。
強大な力は、それなりに制御する必要があるのですよ。
頭が悪いと煽り優位に立とうとしているお前なら、その事はご存知ですよね。
つまり、お前が本気を出すに相応しい相手か見極める必要があります。
強い者には本気をだす、それが礼儀です。
弱い者に不必要な力を放出するのは、礼儀ではありません」
まるであたかもそれが当然と言いたげに、説明口調で言った。
「そうですね。舌を鍛え忘れていたようです。
そこは言い訳する気もなければ、認めざるをえません。
ですが強さを求めた先に、辛いものに負けているようではいけませんね。
仕方がありません、耐え抜く事にしましょう」
『ナイト』は、強い心で辛さをも耐えようとしていた。
苦しむ表情はするが、それもだんだん引いていく。
ただの気合で、辛さに打ち勝つつもりらしい。
「弱者の施しを受けるまでもありませんね。
こんなものは、我慢すれば耐える事など容易なのですよ。
水なんてものは自分でも用意する事ができます」
■久藤 嵯督 >
「だったら攻撃が当たらなかった時点でギアを上げるべきだったろ。
だがお前はそれをやらなかった。それがお前の意見なら、完全にお前の怠慢だったって事になるぞ。
それとも、それすら判別出来ないほどに目が曇っていたのか? まあ事実そうなんだろうな」
「じゃあ手伝ってやるよ。こっちに通常の10倍のやつと、1000倍のブルーカラーがある。
学生街のカフェで買って帰れるから、1000倍をいっきで一ダース飲み干せるようになれ。それまでは辛味に勝った事にならないからな。
あと少しでも辛そうな顔をしちゃダメだ。心の底からおいしいと思え」
最悪の場合は死に至るが、本人が打ち勝つつもりなのだからやらせてあげよう。
負けっぱなしでいられないのだから仕方ない。本人の責任だ。
「へぇ、何処から?」
■『ナイト』 > 「ただ罵りながら攻撃を避けているだけで、反撃すらしてこない相手にギアを上げろとでも言うのですか。
確かに他の英霊なら、それでも容赦なしに攻撃を続ける事でしょう。
簡単な話です。
お前は、自分の強さを行動で示す事ができませんでした。
確かにお前には強者の風格自体はありました。
それは認めますよ。
ですが、お前はそれを行動で示す事ができませんでしたね。
ただ、私を楽しませてくれるなら、今からでもお前が弱者である事を撤回していいですよ」
その表情は、無感情。
はっきりとした感情は読みとり辛いかもしれない。
「私は辛さに勝つ必要などないのですよ。
なんですかその提案?」
蔑むような目で久藤嵯督を見る。
「辛さに必ずしも勝つ必要性など私にはありませんよ。
いくらなんでも、それは迷走しすぎではありませんか。
辛さは、剣とは全く関係のない別分野です。
いざ勝負する事になれば勝つ必要性も出てくるでしょう。
されぞ、そんなものに関わらなければいいだけなのですよ」
何か勘違いしているようなので、それを正すために説明しておく。
「さて、どこからでしょうね。
例えば、弱者から奪う事なんて事もできますね。
弱者は淘汰されるべきですからね」
そう堂々と言った。
■久藤 嵯督 >
「よしわかった、少しでもお前が話を聞けるやつだと思ってた俺がバカだったって事だな。オーケー、もう何も言わん」
「お前さっきと言ってることが180度……もういいか。
で、結局水道水の水を飲むのと何も変わらない答えが帰って来ると。
あーあ、随分と無駄な時間を過ごした気分だよ」
挨拶もなしにベンチを立ち上がり、その場から去って行った。
ご案内:「学生通り」から久藤 嵯督さんが去りました。
■『ナイト』 > 「元々、話が通じない者同士だと私は思っていましたよ。
なので言葉ではなく、行動で示してみてください。
お前が弱者から強者に成り上がる事を心よりお待ちしています。
今度は言葉ではなく、剣で語り合いたいものですね。
その時は、強さを求めたその先を、この七英霊『ナイト』の実力を見せてあげますよ」
『ナイト』はニヤリと笑った。
「弱者からただ奪うだけです。
それが強者の権利ではありませんか。
何を寝ぼけた事を言っているのですか?」
立ち去って行く嵯督を見守る事なく、再び群衆に目を向ける。
ご案内:「学生通り」から『ナイト』さんが去りました。
ご案内:「学生通り」に不凋花 ひぐれさんが現れました。
■不凋花 ひぐれ > カランコロン、カランコロンと下駄が鳴る。
チリン、リリンと鈴が鳴る。
すっ――とかすかな人の息遣いが鳴る。
ゆったりと、背を気怠げに伸ばす。されど人の往来が在る中。あまりみっともなく見られんように淑女然として。
それを為す娘はひどく静かに歩いていた。学生街なる場所を興味深そうにして。
異なる空気、異なる質感。
目を閉ざしたまま歩む彼女にとってこの場所はどこか異質に思えた。
時折人にぶつかりそうになって心配されるものの、たおやかな見た目に反して芯のある歩き方をする為に不安は多少軽減される。
そう云うのも、彼女からすれば常にあること。
「…………」
冷たい空気。平らな地面。見通しの良い分、何か落ちていたら危険である。
杖代わりの鞘がしっかりと足元を照らすのだ。
■不凋花 ひぐれ > どこへ向かうという目的意識は無かった。
『色々と見て回って行くと良い。ここは勉強だけでなく自治も司る。特色たるこの社会を肌で感じてほしい』
と云う先生の話を耳にしたから。何と言う先生だったか。首を傾げると鈴が鳴った。
学校を中心としてカテゴリされている島の全貌を見て回る気にはなれないものの、生活圏はしっかり把握しておく必要がある。
あとは委員会街という場所も気になる。委員会所属。それも面白いやもしれない。この体ではやれることも限られるだろうが。
部活動はどうだ。剣道部になら入れそうだ。最もレベルがどのくらいかを把握しておく必要もある。
――カランコロン カラン コロン
規則正しく小気味良い音がアスファルトを叩く。
■不凋花 ひぐれ > 瞑目して口をすぼめた。呼吸を最小限にしながらゆったりとした体勢で歩く。
呼吸法ひとつを取っても歩き方ひとつにしても、日常的に気を配ることで鍛錬とすることもできる。
傍から見れば整然としすぎた模範的な歩き方にも見えるものの、鞘で地面を叩く姿に目が行ってしまいがち。
ぎこちないと見るかしっかりしていると見るか、印象は実に掴みにくい。
時折周囲の店に足を止めて、何処に何があるのか、どんなものを売っているのかを把握する。
「こちらは……」
視認出来ない位置にあるものには周囲の言葉に耳を傾ける。必要な情報が何であるかの取捨選択をし、搾り出す。
文具店、食事処、カフェ。音や匂いから判断するにそういうものが多いらしい。
■不凋花 ひぐれ > 「次は委員会街というところにでも……」
そんな風に零しながら、周囲の店を見て回る。
結果的にものめずらしいものが無かったのは単に運が無かった体あろうか。
兎角、あまり飽きさせてはくれないようで、どこか安心しながらめぐり続けているだろう。
ご案内:「学生通り」から不凋花 ひぐれさんが去りました。