2015/12/13 のログ
ご案内:「学生通り」に橿原眞人さんが現れました。
橿原眞人 > 師走の冷たい風が駆けて、肌を撫でる。
学生服が翻り、マフラーがはためいた。
橿原眞人は夜の静かな学生街にいた。
既に日も変わろうとしている時刻である。
人影は、外にはない。

靴音だけが響く。
寒空。済んだ空気故に星がまたたいている。
幾万年、幾億年、幾星霜、幾星霜、永劫――
その輝きは変わらない。
地上で、人間がどのような営みをしていても。
この世界がどれほど変わっても。
それは変わらない。この小さな惑星で何が起ころうとも。
星々の輝きは何一つ変わらない。

そんな夜空を眞人は見ていた。

「……流石に寒いな」

コート無しでは流石に辛い時期になってきた。
学園祭は終わり、学期末も近づいてきた折、学園もまた慌ただしくなってきた。
とはいえ、今の彼にそれはあまり関係がない。
今はただなすべきことをなそうとしている。
どのみち家族がいるわけでもなく、留年がどうとかを気にするつもりも彼にはなかった、。

橿原眞人 > この世界は変わった。
信じられないほどに変わった――らしい。
というのも、眞人は変わる以前のこの世界を直接は知らないためだ。
眞人たちの世代は、生まれた時には既にこの世界だった。
魔術や神仏、異界の存在。それらが架空のものとされた時代には、いなかった。
今の時代は、全てがある。ありえないことなど、なにもない。

それは、かつての時代の人々にとっては信じられないほどの変化のはずだった。
歴史の授業でも聞いている。幾つもの内戦や戦争があった。
世界の変容直後にはそういうことがあった。それは、当然の知識だ。
しかし、それは知識でしかない。過去は過去だ。
何があったとしても、経験していなければそれはただの過去だ。
いくら大きな変化や争いがあったとしても、その当時の思いを真に理解することは、きっとできない。

「……そうか、なるほど」

一人、つぶやく。
活路との邂逅の後に、色々な調査を行った。
自分を見舞った事件、グレートサイバーワンなるもの。
徐々に、何かが見えてきていた。
今はその調査の帰りだった。
電脳世界が主な調査の舞台ではあるのだが、眞人は住居を転々としている。
彼の“鍵”を狙うものたちを避けるため。
そして、ハッカーゆえの、自身の居所を知られたくないという思いのためである。

「……自身の価値観を否定された存在が、狂うのは道理のことだな」

ご案内:「学生通り」にリチャード・ピックマンさんが現れました。
リチャード・ピックマン > 静謐を乱す、足音。コツコツと硬い音ではなく、ペタペタと柔らかい、ビーチサンダルが立てるような情緒の無い音。

その足音の主は、異様な人間である。2mを超える痩身の長駆、この季節に半袖とハーフパンツにビーチサンダル。
赤と青のレンズがはまったサイバーゴーグルで、その奥の目をうかがい知る事はできない。
右腕は肘から先が銀色の義手に置換されている。
特徴の多い人物だが、何よりも目を引くのは、毛髪の変わりに大量に頭部から生えているコードの束である。

それが、ゴーグルから光を放ちながら、緩慢な動作で周囲を見回しながら、ゆっくりと近づいてくる。

「よお、ちょっと聞きてえことがあんだが、いいか?」元々猫背だが、顔を合わせるためにさらに腰を折り曲げて、声をかける。

橿原眞人 > 一つの組織に辿り着いた。
その名は常世GCO研究所。
殆どの情報は抹消されている。普通に調べれば、存在したことさえほぼわからない。
謎めいた組織だ。一度は常世財団の援助も受けて研究を行っていたらしい。
しかし、それもある時を堺に常世財団から解散処分の命令を受けることとなる。
曰く、危険な実験を行おうとしていた、とか。

かつての、そう、“かつて”の世界の科学者たちの末裔。
魔術も神も悪魔も仏も異世界も存在しなかった。
そう信じてきていた者達の末裔。
彼が求めたものは――

「……ん?」

そこで、眞人の思考は中断した。
自分以外の足音が聞こえる。
あたりは暗いのだが、何やら燐光が眞人の目の前から溢れてきていた。
異様な人物がそこにいた。とても長身で――あくまで人間としては、だ――奇妙なゴーグルをつけている。
右腕は義手らしく、何よりその頭から生えているのは髪の毛ではなかった。
それは、コードだ。

(なんだ、こいつ……)

そう思わずにはいられない容姿だった。
そんな人物が眞人に話しかけてきた。眞人は怪訝な顔をしつつ答える。

「……いいけど」

イヤフォンを耳から外しながら言った。

リチャード・ピックマン > 「イヤァ~忙しそうなところ、悪いな。」謝罪の言葉を口にするが、ニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべていることから、そんな意志はないことが読み取れるだろう。

「今携帯端末、持ってるか?持ってるよな?ちょっと取り出してみてくれねえか。」
「何、ぶっ壊そうとか盗もうってつもりはない。ただちょっと見てえだけだ。」
外見にふさわしく、奇妙な願い。

橿原眞人 > 怪訝さは増す。
このような時間に歩いている眞人も眞人であったが、目の前の人物の怪しさはそれを上回る。
何やら済まなそうに謝罪するのだが、そんな意志は微塵もなさそうに思えた。

「はあ? なんでそんな……」

そう言いかけたのだが、目の前の人物はあまりに異様だった。
刺激すればどうなるかわからない――十二分に警戒しつつ、眞人はポケットに手を入れる。

「……ほら、これでいいのかよ」

携帯端末を取り出して、目の前の人物に見せる。
何が起きてもいいように、電子魔術の発動の準備はしておく。

リチャード・ピックマン > 「ああ、ありがとう。そいじゃあ…」こめかみをトントンと叩くと、眞人の端末がメールの着信を知らせることだろう。
その着信表示を見て、さらに口の端を歪める。

「お前さんが橿原眞人だな。俺はリチャード・ピックマンだ。」過去に電脳空間で眞人に敗れたハッカー、"グール"が伝えた名が、奇怪な女の口から飛び出した。

「リアルで会うのは初めてだなァ、オイ。どうだ、驚いてくれたか?ええ?」ニヤニヤと、いたずらに成功して、そのリアクションをまつ子供のように笑っている。

橿原眞人 > 「……何?」

端末を見せれば、目の前の人物がこめかみを叩く。
端末が震え、メールの着信を知らせる通知が画面に映る。
差出人は――ピックマンだ。
奇怪な女の言葉に頭を上げる。

「――なんだって?」

眞人は思わず一歩引く。
以前、電脳空間でやりあって、さらには“協力者”になったハッカーだ。

「……ふざけんなよ。会うつもりなら最初から普通に連絡してくれ……!」

異様な姿に警戒しまくりであった。それを知られたく無いゆえに顔をそむけながら言う。
ハッカーなんてものは“くせ者”が多い。魔術師級ともなれば、なおさらだ。
だが、それでもなお、想像以上の人物であった。

「まさか現実(リアル)で会うことになるとはな……その義肢はともかく、頭のそれはケーブルか?
 道理で通信速度が速いわけだ……。
 ああ、俺が橿原眞人だ。現実では初めまして、だな。ピックマン」

リチャード・ピックマン > 「ウヒャハハハハハ!!ウハハハハハ!!」そのリアクションに大爆笑である。笑いながらしゃがみこんでバンバン地面を叩いている。

しばらくして笑いも収まってから。「あーおもしろかった。いや、別に用事があって来たわけじゃないんだが。お前さんが眞人じゃないかと目星をつけてたところに、一人で居たから。ちょいといたずらしたくなってな。あー笑った笑った。」

「ああ、初めまして。ウェブ上のが便利だが、リアルで対面することに意味が無くなったわけじゃないからな。顔合わせぐらいしておいて損はねぇだろ。」立ち上がって猫背を更に曲げ、顔の高さを合わせる。

コードを指摘されれば、軽く頭を振ってなびかせる。「おう、どれも一級品よ、まさに俺とウェブはポリネシアンみてぇにぴったりくっついて熱いベーゼを交わせるってわけだ。わかるか?」放送禁止用語をすれすれで避けた物言いである。

橿原眞人 > 「おい、そんな笑うことないだろ……!!」

異様な姿の割に子供のような反応をする女である。
いたずら心で行ったというのだ。
自身の見た目を考えて欲しいと眞人は思った。

「チッ……何がいたずらだよ。普通に話しかけてくれよ普通に。
 ……ああ、そうだな。どのみち連絡先も交換しているわけだ。
 いずれは会うことになってただろうな。……別にわざわざ視線を合わせなくてもいいよ。
 俺が上を向けばいいだろ」

猫背を更に曲げる様を見て言う。視線を合わされるとどうにも奇妙な気分になる。
相手の目の表情はうかがい知れない。その奇怪な光をピカピカとさせるゴーグルのためだ。

「随分と思い切ってるな……いや、ウェットな俺のほうが珍しいか。
 ……ポリネシアン? 何言ってるんだ?」

眞人はそういう経験はない。別段強い興味があるわけでもなかったため、ピックマンの卑猥な例えを理解できなかったようだ。

「……とにかく、現実のあんたも確認できた。その髪に義肢。リアルでも腕利きみたいだな。
 とりあえず歩こうぜ。俺は寒いんだ」

そう言って道の先を指差し、歩き始める。

「連絡しようと思ってたが、今ここに居るならちょうどいい。
 俺はあれから色々調査をした。なんとなくだが、情報も集まってきた。
 あんた以外の協力者も得た……俺の目的には近づきつつ有る。
 あんたに協力してもらいたいこと……それは金庫開け、前にそういったよな。
 だが、それだけじゃない。電脳世界での“戦い”にも協力して欲しい」

リチャード・ピックマン > 「ヘッヘッヘ、俺を見上げるのか?構わねぇが首がキツくなるぜぇ。」下品な笑みは崩さずに、少しだけ上体を持ち上げる。猫背は元々らしい。
ゴーグルのライトはいつの間にか消えていた。

「ああ、俺も驚いたぜ。まさか"銀の鍵"がウェットとはな。俺ぐらいか、もしかすると俺以上に弄ったジレット(サイバーウェアで身体を戦闘的に強化した人間を指す)かもと思ってたんだが。ようやるじゃねぇか、没入はパッチか?あんまおすすめしねぇぜ、ノイズが混じりやすいからな。」卑猥な話題はどうにも理解されないようだ、禁止用語設定がデフォルトな辺りで薄々わかっていたが。

「そんだけ着込んで寒いのか、不便な服だなぁオイ。」憐れむように言いながら、したがって歩き始める。シャツと短パンという真夏のような服装だが、ピックマンは震えたり鳥肌が出ている様子もない、吐く息も、白くない。

「それは構わねぇ。俺としても障害も排除してゆったり開ける方が好みだからな。」
「だが、問題はウェブでの魔術だ。お前さんが俺の盾をあっさり破っちまったろ。少なくともそれなりの防御魔術をウェブ上で張れるようにならねぇと、俺は後ろでこそこそして、鍵を開けたらまたすぐ後ろで震えるっていう、高難易度ダンジョンに連れてかれたLv1シーフみてぇな仕事しなくちゃならん。そんな情けねぇ仕事を俺はしたくない。」ペタ、ペタ、とそこが削れたサンダル特有の足音。

うつむきがちで「だから、だ……。クソ、俺が他人に頼るなんて十年に一度あるかないかだぞ…。」
「だから…あー…。教えてくれよ、魔術のやり方…。」蚊の鳴くような、小さな声で、お願いした。

橿原眞人 > ピックマンを見上げる。それでもなお背は曲がっているためどうにも元々のものらしい。眞人は眼鏡を指でかけ直す。

「師匠に……先代の《電子魔術師》に言われていたんだ。
 生身のままでいろ、電脳化はするなってな。あんたの言うとおり、没入はサイバーデッキを通じてやってる。
 あんたはその通り、ほぼ直接没入できるんだろうが……師匠がそういうには何か理由があるはずだ。
 深入りし過ぎると現実に戻ってこれなくなるとか、そういう話だったが……多分、本当は違う。
 何か外の理由があるはずなんだ。例えば……電脳の直接のハッキングを避けるため、とか」

電脳世界に深入りすればするほど、そこでの動きは現実に近くなる。
と同時に、電脳世界で受けたことが、もろに自身の脳髄に影響を及ぼすことになる。
電脳世界で重篤なダメージを受ければ、そのまま脳が焼き切れてしまうこともあるだろう。

「そりゃあんたの方が便利だがな、その格好は流石に異様だぜ。せめてもっと暖かそうな格好にしてくれよ。
 完全に不審なやつだぜ」

サンダルの音と革靴の音が響く。
ピックマンと眞人が並んで歩く姿は異様だ。

「……あんたは自分の能力を過小評価しすぎだと思うぜ。
 あんたの《スプライト》だって、電子魔術の一つには違いないだろ」

うつむきがちに、ためらいがちに、ピックマンが言葉を紡ぐ。
それに対して、足を止める。どうにも恥ずかしそうな様子に見えた。

「ンだって……? 魔術のやり方を教えて、だと?」

反復するように尋ねる。

「……へっ、かわいいところもあるじゃねえか。
 だが俺の電子魔術はかなり特殊で自己流だ。
 確かに使えたほうが良いには違いない。《グレート・サイバー・ワン》については未知数だからな」

眞人は携帯端末を取り出し、その画面を見せる。
このようにしなくても、電脳化した物同士なら有線なり無線なりで脳内の情報を交換できるのだが、眞人がウェット故に仕方がない。
画面に映るのは幾つものプログラムと、魔術の術式であった。

「俺の電子魔術はこんなふうに、魔術の発動過程をプログラムに置換して行う。
 つまり、ある程度実際の魔術のやり方もわからないとダメってわけだ。勿論俺も専門じゃない。
 あんたの壁をぶち破ったのは、電子化した魔導書が協力だったってのもあるんだが――」

そして、ピックマンを見上げる。

「それでもいいなら、教えてやるぜ。俺がな」

ニッ、と悪戯げな笑みを浮かべる。

リチャード・ピックマン > 「そうかい、《電子魔術師》が言うんじゃ仕方ねぇな。しかし、電脳への直接ハッキングか…当然脳はコンピュータじゃねぇから普通ハッキングは受けねぇ。
過負荷をかけてニューロンを焼くのが一般的な手法だが…相手は何せ神だろ?何されるかわかったもんじゃねぇ。」どんな惨めな末路が待っているか考えて、身震いする。

「バカ野郎、老君ズマニュファクチュアの怠惰シリーズだよ。気温調整と老廃物の分解、汚れへの完全耐性の機能もあるアルティメットウェア。
これがあるのに布で保温するなんて考えしてるほうが不審だっての。」心外だ、というように鼻を鳴らした。
ちなみに怠惰シリーズは機能こそ素晴らしいが、機能を優先しすぎた為にデザインの自由がなく、まためったに外出しない引きこもりや、デザインに頓着しない無精者御用達というイメージがついてしまい、売れ行きが伸び悩んでいる製品である。

「《スプライト》はな、確かに魔術めいてるが、完全に電子の存在なんだ。だから現状じゃ魔術的な攻撃は知覚すら出来ねえ。こないだやりあった時、まともに反応できなかっただろ?」
ウェブと魔術は相反するもので、それが融合するなんて考えもしないことだった。だからピックマンはその備えを全くしていなかったのである。

「クソッ、俺を可愛いなんて二度と言うなよチェリー坊やめ!お前の仕事に必要だから俺が学んでやろうってんだよ!」照れ隠しのように声を荒げる。イニシアチブを持って行かれたようで、忌々しげに歯噛みした。

相手が携帯端末を示せば「どれどれ」と覗きこむ。
「手順をそのまま電子化するってことか?話だけ聞けば簡単そうだな…。」どれほど面倒かと構えていたが、聞いてみれば単純なものだった。ウェブに魔術があふれていないのが不思議なほどだ。

「なっ…調子に乗るなよこの野郎…!」今自分と相手の関係は生徒と教師になりかけている。このままではピックマンが下になってしまう。
だがここで提案を蹴るわけにはいかない、独学で魔術を学ぼうとして、既に幾度も挫折しているのだ。
「くっ……ぐぅっ……た、頼む。」噛み締めた歯から押し出すように、"お願い"した。

橿原眞人 > 「た、怠惰シリーズ? そんなもんがあるのかよ……でも、やっぱどうかと思うぜ。
 いつもそんな真夏みたいな格好じゃな……」

実際に便利なのだろうが、それにしてもあんまりなファッションである。

「ハハ、まあ俺が教えるんだから俺が先生だぜ。
 電子関係はあんたは問題はないだろうが、重要なのは魔術部分だ。
 電脳世界で魔術的なプログラムを組むことはできる。
 だが電子魔術がそれと違うのは、実際に“魔力”が付与されている点だ。
 この点にかなり苦労したし、これができないとあんたの言う《スプライト》みたいに、魔術的な電子の存在ということで終わってしまう。
 電子魔術に使う魔導書が必要なわけだ――」

軽口を叩いた後に軽く説明をする。
魔導書が何よりも重要であり、それが魔力の根源ともなる。
つらつらと魔術的な面も説明は行っていくが、魔術をやったことがないものに取ってはよくわからないことだろう。

「要は、魔術の儀式をプログラムに置き換えたわけだ。
 だが、儀式はちゃんと行わないと魔術は執行できない。電脳世界でも同じだ。
 俺の電子魔術が詠唱や儀式を必要としないのは、その魔術の過程を一つのセキュリティに置き換えているからだ。
 それを解いていくことにより、儀式にあてる。そのセキュリティは普通ならすぐには溶けないような難解なものだ。
 それを解くことで儀式が成り立つわけだが――俺は、それを一気に解除する。
 だから、すぐに電子魔術が使えるわけだ。
 俺の開場の力は異能だが……普通のハッキングでも問題はない。
 あんたなら可能だろう」

“お願い”を受けて、フッと笑う。

「……ああ、協力者だからな。頼まれたらしかたない。
 それじゃあ、早速レッスンと行くか。
 まずは魔術の基礎からだ。行くぜ、図書館だ。
 そこで魔術の基礎から学んで、そして電子魔術といこう」

そう提案した。
どのみち今日はもう図書館は開いていないのだが、ウェブ上では関係がない。
没入して、図書館の電子化されたデータを見れば良いのだ。

「俺は一旦家に帰る。その後サイバーデッキで没入する。
 俺のスペースに来てくれ。そこで“授業”といこうぜ」

腕を組んでそんなことをいい、軽口を叩いてニッと笑った。

「俺ももうくよくよしてはいられねえ。
 あんたが協力してくれるならそれを最大限活用して――俺のしてしまったことを、なんとかするんだ」

そう言って、天を仰いだ――

ご案内:「学生通り」から橿原眞人さんが去りました。
リチャード・ピックマン > 「俺のファッション講座はいい、さっさと教えろよ"先生"」イー、と歯を見せつけて不快感を露わにする。下の立場になるのがとにかく気に入らないのだ。

そんな態度だが、元より頭が悪いわけでもなく、やる気もある。基本的な説明は一度で理解できたようだ。
「そのまんまじゃ女のポリゴンデータ、ってことだな、そこにさわり心地だの反応だのをどうやって付与するかってとこか…。」また猥雑な例えを持ち出しながら、顎を撫でる。
「やり方が分かればスプライトに代行させるのも出来そうだ。面白え、新しい玩具を見つけた気分だぜ。」話を聞く限り、全く手に負えないものでもなさそうだ、ニヤリと自信ありげに笑った。

「俺の先生出来るなんて光栄なんだからな。俺が《電子魔術師》の名を継いだら、自慢しまくっていいぞ。俺の心は広いからな。」生徒としての立場が歯がゆく、なんとか優位に立とうとそんな言葉が出た。

「やっぱウェブ上のが便利だな、俺の家もここから近い、また後で会おう。」現実で勉強して、ノートやメモを手書きで取るなんて悪夢でしかないので、いささかホッとした。
背を向けて歩み去ろうとして。最後の言葉に、振り返らないまま。

「これはお前さんにとっては償いらしいな。なんだか終わったら死んでも良いって感じだよなァ。
だが、そんなことはゆるさねえぞ、お前さんまで消えちまった俺が《電子魔術師》の名を継いだって誰が認めるんだ。弟子であるお前ぐらいのもんだろうが。
他に誰巻き込んだか知らねぇが、絶対に全員生きて終わらせるからな。覚えとけよ。」
少し口早に言い切ると、こんどこそ立ち去った。

ご案内:「学生通り」からリチャード・ピックマンさんが去りました。