2015/12/20 のログ
ご案内:「学生通り」に渡辺慧さんが現れました。
渡辺慧 > 色がついている。華やかな色だ。灯の色。
浮足立った雰囲気は実にクリスマス間近の様相を呈していた。

そんな中を一人、風紀委員の制服を着て歩く。
赤い、赤い色のそれはこの街の雰囲気になじんでいる用で、その実浮かれた街の中では浮いていた。

渡辺慧 > 「……さっむ」

だがしかし。そのやる気のなさは模範的な生徒のそれではない。
どちらかというと制服のそれに振り回されているとでも言えそうだ。
吐いた息は当然のように白く、冬はすぐ傍に合った。
……ただの、見回りだ。
浮足立った街が、少しでも、その浮かれたまま空に飛んで行ってしまわないための、ただそれだけのため。

この分じゃ、その効果は本当にわずかなものかもしれなかったが。
人手はいくらあっても、いい。ただ、健やかに。
楽しさを傍受できる環境をつくるためには、少しだけ協力しようと思ったのだ。
……なんて殊勝なことをいえども、気紛れなだけと言われれば、ただそれだけなのだが。

渡辺慧 > さて。
それはそれとして。自分自身のクリスマスといえば……まぁ。
昨年と同じだ。用事などない。どこかに行き場は。
もしかしたら今年は、このまま風紀としているのかもしれないが。
要請が来たら考える。気まぐれを理由にして。

昨年に訪れた、いつもの場所。時計塔は、あの晩に限りは自分がいてもいい場所ではなかったようだ。
不意に訪れたカップルが、あの場にいた自分に気まずそうな顔をしていた。それを思い出し、苦笑する。
ごめんね、と心中で謝罪しながら、歩く。
この制服を着ていても、自分を見て浮かれた姿を正すどころか、見向きもされない辺り底が知れるものだ。まぁ、別にそれでもいいのだ。
ただ、いるだけでも。

ご案内:「学生通り」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
渡辺慧 > うん、と伸びをする。
いい時間だ。
……どうせなら、ケーキ作りでもするか、等と。
やったこともないそれに手を付けるのも楽しいものかと。
その足は、気づけば本屋の方向へ歩き出した。
変わらないな。この一年通して、何かあった。あったのだ。
あったけど、変わるはずもなく、ただ停滞し続ける。
自分が出来ることはそれだけなんだ。

前を向いて、歩く。
楽しげに鼻歌を漏らしながら。

谷蜂 檻葉 > 華やかな地上に比べて、空は曇天。
見上げても星一つ無い空には障害物のない、凍えるような風が吹きすさぶ。

そこを、イルミネーションのように明るい髪色の少女が飛んでいた。

「……寒。」

風除けはしていても、大気を動くだけでも寒い。
動かなくても寒いのだから、形容しがたい程度に寒い。

マフラーで口元を覆い、
コートで身体を隠して飛ぶ檻葉はやがて我慢の限界に達してゆるゆると高度を落としていく。

(……もう少し飛べばよかったな)

降りた先はちょうど通りの中ほどを過ぎた所で、時期が近づくにつれて増えるアベックの姿に
自分の気の短さを嘆く。 あと少し飛んで、人気のないところまで進めばよかった。

ともあれ、まだ帰り道の途中だ。

(そういえば、今日―――)

そこで、一つ用事を思い出す。 用事というより、欲望だけれど。

(本屋は、あっちか。)

買っている連作小説の新刊を求めて、見覚えのある後頭部に気づかないまま同じ道を往く。

渡辺慧 > 「…………ん」

何か、風が吹いた。何かの気配がした。
この溢れている人の中で、少しだけ変わった気配。
別に気に留める程ではない。この街ではそれは普通だ。
空を飛べる人はいる。風を起こせる人はいる。
普通から逸脱したものが、普通である街では、それはとても普通な気配だった。
だから、振りむいたのは、ただの気分だったのだろう。
そこに、彼女の顔が見受けられるならば。
その気分をどのように評価するかは――。

「……あ」

谷蜂 檻葉 > くるりと、前の某かがこちらを向いた。

おおよそ、飛行する生徒は居ても多くはない。故に、目の前で気づけばこちらを向く人は多い。

だから、それはそれとして日常のように無視をしようとして
他の生徒とは違う赤い制服に、よく目立つな。と感心のような呆れのような感想を抱いて

「……う?」

知人の顔に、マフラーに口を埋めたまま目を見開いた。

少しだけコートから出した指でマフラーをツイと下ろして笑う。

「こんばんは、見回り?」

寒さで赤くなった鼻は、季節感があった。

渡辺慧 > 頭をかいた。
今の気分を言葉にするのは少し難しいだろう。
この格好で、知り合いに会ってしまった、というのも加味して。

「そっ。……奇遇だねぇ、こんばんは」

彼女の鼻の赤み。そして彼女の、空を飛ぶというものが、日常化していると考えられるそれは――やっぱり、その気分を言葉にすることはできなかった。

「クリスマス気分、ってところか」

谷蜂 檻葉 > 「本当に、風紀委員だったんだね。」

クスクスと笑いながら、行く方向は同じなのだろうからと少しだけ歩幅を広げて隣に並ぶ。

言外に、笑わせる冗談かと思ってた などと口角を上げて。

「いや、まぁ。訓練所の方で用事があって、その帰りよ。
 クリスマス気分は……前夜に家で静歌とパーティする時に、かな?」

彼女も私も独り身だから、もしかしたら枢木を呼んで三人でのパーティかもしれない。
ところで、

「風紀委員サマのご予定は?」

あってもなくても、興味深そうに尋ねる。

渡辺慧 > 「俺が嘘つきとでもー?」

少し意地悪気に口角を吊り上げ、笑う。
もちろん、誰にこのことを言っても結果は同じなのだろうから。
それは冗談とも同義なのだけれど。

「ふぅん…………そっか」

その名前に聞き覚えがあった。どこかで会ったのだろう。
そして、前までの関係性と同じではないのは自分だけなのだろうとも。
羽目を外しすぎないようにね、と。風紀委員として。
それ以外に言う必要はない。

肩をすくめて。
「それの下準備、かな」

思いついたばかりのそれを、予定に含めていいならば、だけれど。

谷蜂 檻葉 > 「嘘はつかないけど、本当のことも言わなそうかな。」

だからそう、幽霊委員とか。
やってるけど、やってない。灰色の事実じゃないかと思っていた。

そうして、また内容のない言葉に首を傾げる。

「下準備?ケーキの予約でもするの?
 ……予定ってあれでしょ。一人で1ホール食べきるとか、そんな感じ?」

それなら予想ができそうだと、楽しげに笑う。
少しだけ、そんな馬鹿な事はしないよね。と不安そうに瞳は揺れる。

渡辺慧 > 隣を歩く少女の存在を感じながら、目的地へ歩く。

「本当の事、ねぇ。口下手、ということにしといてもらえないかな」

ある種の肯定。言わないことは幾つでもある。
言う必要がない事は、言わなくていい。

首を傾げたその動作と、不安そうな瞳に、喉の奥で笑って。

「ケーキ作り。楽しそうだろ」
そういって、子供のように笑う。

谷蜂 檻葉 > 「ふふ、じゃあそういうことにしておいてあげましょう。」

言わない意図は見えなくても、彼の言わない素振りは何となく解る。



――――何故、たまに話す程度の彼の事が解るのかは、分からないのだけれど。



楽しげに、ケーキを作るんだと笑う慧に、目をパチクリと瞬かせる。

「……出来るの?」

それに、材料を買う商店は逆方向だ。
この先には……もう、目前に迫った本屋があるくらいで。

渡辺慧 > 奥歯を少し強く噛んだ。
分かっていたことだが、こうやって彼女と再び話をすること自体、自分の弱さを表す事となっている事も。

別に何でもないことのように、ふい、と前を向きながら歩き。

「だから、本屋」
「ケーキ作りの本ぐらい、おいてあるだろ。きっとね」

目の前にある楽しそうな物だけに食いついていれば、他の事は見えなくなっても、そう。しょうがない。

谷蜂 檻葉 > 「なるほど。」

言いながら、並んで本屋の自動ドアを抜ける。

いくつかある書店の中で、規模は大きくなくともしっかりとした種類と最新のモノを集めている店で、檻葉もよく利用していた。 ……図書館の帰りに通う形になる事は、静歌に話すと首を傾げられたが。


こっちだよ。と図書館の次に通い慣れた通路を進んで、料理本コーナーを手で示す。

その本人は、更にそのまま少し奥へ進んで、小説コーナーで迷うこと無く一冊の本を手にとってレジへ進んでいった。

渡辺慧 > 「手慣れてるね」
「……ありがと」

自分は、どちらかというと古書店の方が利用する。
なぜかと言われれば、しょうもない理由になりそうだが。

「……………ん」

しかしこれは当然の流れで。
ある程度種類がある中で、それを選ぶのは難しい。
迷いに迷う自分があるから、こうしているのだからそれも当然の話なのだけれど。

「んー………」

様々な本に目移りさせながら、顎へ手を当てて唸り、そして、迷う。

谷蜂 檻葉 > 『――――では一点で482円になります。 袋にお入れいたしますか?』

「お願いします。 ……あ、カバーは良いので。はい。」

『では502円お預かりいたします。 こちらレシートと20円のお返しになります、毎度有難うございましたー。』



定型文の応酬をさっさと終わらせて、慧の元へ戻る。

「……それで、良さそうなのはあった?」

そっち、おかずとかのレシピ本でケーキは載ってないと思うよ。
と、クッキーを始めとしたお菓子本の集まっている一角を指差す。


「どんなケーキを作るつもりなの?」

尋ねながら、一緒に視線だけで探していく。

渡辺慧 > 「む」

指さされるままに、顎に手を添えた状態で視線を動かす。

「……あぁ、おかえり」

無意識化の動作で、今気づいたようにぼんやりと告げる。

「あぁ、いや。……そうだね。ムズカシイ」

口をへの字にして、難しい、と。その言葉通りに顔を悩ます。
何しろ思いついたのが先程なのだ。なにを、どの方向を作ろうかなんて思いついてもいなかった。
自分一人でここに来ていたら、閉店時間まで悩み通していた可能性すらある。――もちろん、それもわるくはない、と思ってしまうのだが。

「どうしよ、っかなー」

谷蜂 檻葉 > 「ん。」


おかえり、という言葉に首肯だけで返して横に並び、
本棚にきらびやかに並ぶ料理本に視線を走らせていく。

上へ下へ、右へ左へ。

「つまり」

どうしよう。と、困った顔で動きを止めた慧に視線を向けて。

「何も考えていなかった、と。」

呆れるような、しかし何処か、”いつもの”ものをみているような。

渡辺慧 > 「ふ、ふ……」
その通りだ、ともいえる台詞にこぼれる笑い。

「発案者は俺。発案時刻はつい先ほど」

そして、少しだけ。なぜか得意げに。

「いつも通り、って奴」

そして、再び。
難しい顔の中に、楽しげなそれを混じらせ、視線を送った。
煌びやかだ。どれもこれも、華やかなものだった。

谷蜂 檻葉 > 「………。」

はぁ、と小さなため息が静かに響いた。

「まぁ、別に良いんだけどね。なんでも。」

真剣そうだった瞳は、半目の……ジト目になって本棚を睨めつける。

「ねぇ、渡辺くんは料理得意なの?」

そも、此処を聞いていなかったな。と、視線を前に向けたまま尋ねる。
その手には三冊のレシピ本が収まっている。

渡辺慧 > 呆れかえったそれには気づいたまま気にしない。

「そーそ。なんでも、いいのさ」

どこか浮遊感のある言葉を発しながら、目線は本を追う。

「ん……」
その問いに少しだけ、視線を向けた後。

「まぁ。………一人だからね。少しは出来るさ」

目線で、その抱えられたレシピ本を見遣った後。
また、戻す。

「君も何か作るのかい」

谷蜂 檻葉 > 「じゃあ、コレぐらいがいいんじゃないかしら。」

はい、と押し付けるように一冊の本を渡す。 というよりは懐にねじ込む。

開けば、『コレで女子力UP!』の見出しが踊る、
基本中の基本にトッピングによるデコレーションを主体においたレシピ・アレンジ本らしい。
表紙にデカデカと写っているのははマカロンだが、
中を見ればオーソドックスな菓子が、華やかにアレンジされて載っている。

「……私の事はいいの。」

本棚に戻した視線を良い事に、ぷい。と少しだけ頬を赤らめて別の棚に視線を向けた。



大雑把な料理はできる、が。 不器用で、独力の料理は苦手なのが現状だ。

渡辺慧 > 「お、-う……?」

目を瞬かせ、不思議そうにその本を受け取る。
いや、どちらかというとそれは、受け取らされたという方が正確なのだが。

「……へぇ」
と、少し本を開いて中を確かめると。確かに、それは。

く、と喉の奥を鳴らして笑う。

「折角だから、君も作ってみればいいじゃないか」
面白がるように。からかう、というほどでもないが……いや。
これでは、ほとんどからかっているともいえるのかもしれない。

谷蜂 檻葉 > 「いいったら良いの!」

家にもまだ全部出来てないのがあるし…。と小さく呟くように眉根を潜めて。

「……他にも、買っておく?」

話題をそらすように、改めて尋ねる。

渡辺慧 > ふい、と。
再び本棚を眺め――。

「……いや、いいさ」
これで十分、と本を片手に笑う。
むしろ十分すぎるぐらいだ。
過程を楽しむ、というならば、最良すぎるぐらいに。

「付き合わせて悪かったね」

谷蜂 檻葉 > 「そう?」

まぁ、いくつもあってもまた作るときに迷うだろうし、決めるならそれで良いのだろう。
そのまま、カルガモの如くレジに進むところにもついていき、店を出る時も少し後ろを歩いてついていく。



「―――ところで、渡辺くんは見回りの最中ってことだったけど。」

私は女子寮に帰るね、と。
なにか言いたげな表情でみつめる。