2016/01/19 のログ
ご案内:「学生通り」に々 々子さんが現れました。
々 々子 > 「ここが、常世学園」
校門の前に立ち、校舎を眺める少女が一人。

「ここなら、馴染めるのかな、私」

々 々子 > 制服はまだ届いていない。前の高校の制服だ。
と言っても、これを着ていると教室で一人隅に追いやられた机に座っているときの事を思い出すのであまり好きではない。
私服にするべきだった。これだと校舎内にも入りづらい。

校門の前、どうしようかと少女は立ち尽くしている。

ご案内:「学生通り」に黒兎さんが現れました。
黒兎 > 校門の前、一人の少女が立っている。
否、立ち尽くしている。

姿は高校の制服姿、しかしながら、
この学園指定のモノというわけではない。
とはいえ、然程珍しい事ではない、風紀委員は別の制服だし、
それ以外の人間も思い思いの制服を着ている。

私は遠くの窓からそれを見下ろし、観察し、結論した。
真っ黒い日傘を取り出すと、彼女の近くへと歩み寄る。

―――些細な違和感を感じたが、そこは気にしない事にする。

黒兎 > 「えっと、新入生、ですか?」

私はその女子生徒に向けて、可愛らしく、首を傾げた。

々 々子 > どうしたものか、と。考えていたところに、声をかけられて振り向いた。

ーーうわ!きれーな目ー!赤?早速なんか『違うところ』に来ちゃったって感じ!

と、そのうち届くであろうその制服をきちんと着ている少女の目にしばし見とれていたが、それが怪しいということに気づいて慌てて言葉を探す。

「うん、授業は来週からなんだけど、荷解き終わっちゃって……あなた生徒?ごめん此処立ってたら邪魔だった?」

にへらと笑うと、一歩脇に。

黒兎 > 「ふむ―――。」

私はワザとらしく、仰々しく髪の毛を払う。
何、来賓で無く同じ生徒なら、態々気を使う必要も無いだろう。

「いや、入りあぐねて居るのかと思ってな。
 
 何だ、見惚れていたのか、仕方あるまい、
 何しろ、黒兎は美少女女子高生だからな。」

私は慌てて視線を外す女子生徒にそう冗談を言いつつ、小さく笑う。
日傘を少しだけ傾げると、言葉をつづけた。
この少女の近くに居ると何となく頭がぼんやりとするような気がする。
にんにくだろうか、にんにくでも食べて来たのだろうか。
この少女もまた、花の女子高生であろうに、非常識な。

しかしながら、口に出すのは憚れる。
初対面の相手にいきなり口が臭いなどと言われるのは不愉快だろう。
気を付けているからそんな事は無いだろうが、私だって不愉快だ。

「では、今日は何をしに?」

彼女は今日は授業が無い、と言った、
荷解きが終わって暇に飽かして下見だろうか。
これから毎日通うのに、実にご苦労な事である。

々 々子 > ーーうっわー!髪の毛つやっつや!日傘とか紫外線気にしてるのかなー。私ったら夏に日焼け止め塗る程度だもんねー。気にする子ってやっぱ冬でもさすんだー!

「あっはー!ばれた?いやめっちゃかわいい子に話しかけてもらえたなーって。美少女って自分で言っちゃう?いやかわいいからおっけーだよねーあはは!」

「でも入れなかったのも正解。えー?えー?両方正解?私のそばで問題解ける人ってレアなんだよ!すごーい!」

ぱちぱちと手を鳴らしたのは、拍手だろうか。

「それがさー、慣れるなら早い方がいいかなーって思って学校まで来てみたんだけど、職員室って先生ばっかりって思ったらなーんか入るのどーしよっかなーってねー」

黒兎 > 「お、おう。」

最初とは打って変わった態度に僅かに面を喰らう。
いや、お互い様か、私は小さく咳払いをした。

「成程、百合という奴か。
 確かに夜兎はどちらでもいけるクチではあるが、
 いくら美少女だからといってこの私に惚れると―――。」

私、夜兎は、パチン、とウィンクをする。
何、ちょっとしたファンサービスだ。
拍手喝采を向ける相手、これくらいしてもバチは当たるまい。

「―――火傷するぞ?」

それはあれか、周りに漂うニンニク臭―――。
基、心地の悪い感じのせいだろうか、つまり常習犯という事だ。歯を磨け歯を。

「ふむ、然し、ここはまだ正門だ。
 職員室の前で尻込みするなら兎も角、
 正門程度に屈していては先が思いやられるぞ?

 態々職員室に行かずとも、慣れるだけならば学園を見て歩けば良かろう。

 ここであったのも輪廻転生の導き、貴様の前世に縁があったに相違ない。
 この夜兎が案内してやろう。」

々 々子 > ーーそれにしても黒兎さん?ちゃん?先輩?、難しい言葉で話すんだねー。はいりあぐねて、って意味は何とかわかったけどあぐねてってなんだろ?

「百合?わたしはのまこ!どーのじのまこで、のまこだよー?
ーーあはははっ!いいねー!それで火傷した人多そう!めっちゃ決まってる!」

もし貴女にこの異能が効くならば。
返す言葉が段々と脊髄反射のような。
もっと言うなら『普段からこういう発言をしていただろうか?』とーー後からーー思うようなものになってくるだろう。
ところで幻臭ってどの病院にかかればいいんでしょうね?

「前の学校で先生からぼろっかすに言われたからさー、トラウマ?いやそんなに気にしてないんだけどね?でもなーんとなく思い出してねー。

え?本当?案内!?お願いしてもいいですかセンパイっ!」

黒兎 > 「そうだろう、黒兎は美少女女子高生だからな。
 のまこだな、覚えておこう。黒兎は黒兎だ、
 別に私は無理にまで宜しくして欲しくないが、もし良ければ宜しく頼む。」

ふむ、普段からこんな妙なファンサービス等していたかな。
と、僅かばかりに疑問符が頭に浮かぶ。
この場に漂うニンニク、いや、別のモノかもしれないが。
少なくとも、私、美少女女子高生吸血鬼の黒兎に何らかの悪影響を及ぼすような、
―――聖遺物の類、あるいは、香の類だろうか。

もっと分かりやすく、この学園に広く流通しているようなもので、
そのような効能があるものがあった気がするのだが、妙に考えが纏まらない。

いかにせよ、敵意があるわけでは無さそうであるし、
同校の志でもある、案内するくらいならば吝かでもない。

「ああ、構わないぞ、ついてくるがいい。
 ……ところでのまこ、ニンニクは好きか?」

々 々子 > 「やったー!え、ちなみに何年生?いやいやいやそれで何か変わる訳じゃないけど、あーいや呼び方が変わるかな?ここでの生活では確かにセンパイだけどわたし二年でさー。廊下であったときに一年生にセンパイとかいってたら黒兎っちゃんに変な噂立つといけないから!」

異能が効いていないと思っているのか、々子は嬉しそうに隣に近付いてきた。

「いやー、初めて声かけてくれたのが美少女女子高生とかわたしついてる!美少女ばんざーい!」

と、喜んでいたが質問には首をかしげた。

「ニンニク?んー餃子とかは好きだけど次の日休みー!ってときにしか食べないかな?臭うし」
「あっでも学園の特産物がニンニクっていうならありがたく食べるよー?」

黒兎 > 「ん、1年だ。
 この学園には最近入ったばかりでな。
 元居た塒から、少しばかり、狂犬に追われてな。

 それにしても、ふむ。新入生仲間だと思っていたが、成程、転校生だったか。
 仮にも人生の先立に不遜な態度で申し訳ないが、
 どうにも年上という感じがしないのでな、このままで失礼するぞ。」

のまこが近寄れば、脳を揺する感覚が強くなる。
やはり、この女子生徒、何か持っているな。
―――聖水、いや、十字架、どこだ。どこにある。
近くに寄って来た彼女の身体に手を這わせる。
何時もならばこのような、暴漢か痴漢、いや、この場合は痴女か。
迂闊な行動にはでなかろうに、この脳が揺すられるような感覚は、如何とも耐えがたいものだ。

「そうか、ニンニクは好みでは無いか……いや、黒兎はニンニクが苦手でな。
 何だかのまこから其れが匂う気がしたが、気のせいだったらしい。」

そう言いながらも、私は手で必死に発生源になりそうなものを探る。

―――無さそう、だろうか。

吸血鬼の人付き合いというのは、如何にして遣り難いものである。
何しろ、相手がその類の物を身に着ける習慣があるならば、
それを知っておかなければ、下手すると朝、
パンを咥えて走っていたらぶつかって即死、なんてこともあり得るのだ。

々 々子 > 「やったー、授業始まったら黒兎っちゃんの先輩だー」
へらり。
「あー、うん、わたし自分がタメみたいに話されるのは全然おっけーだから大丈夫だよー?」

「にしてもねぐらに狂犬って。家どーなって……わひゃっ!?」
「ちょ、ちょ、くすぐったい……ひゃひゃ!」

他校とはいえ制服。ポケットの数はそう多くない。
神を信仰するような敬虔さもなければアクセサリーにするほど大胆でもない。十字架も、聖水どころか香水もでてこなかった。

それでも、々子には思い当たることがあったのだろう。
黒兎の両肩に手を伸ばし、離そうとする。

「ニンニクは食べてないけど……ニンニクアレルギー?なんか頭ぽーっとする?」


「もしそうなら……ごめん!それわたしのチカラだわ!」

黒兎 > 探れども、それらしきものは見当たらない。
となれば、よくよく伝承に出て来るような、吸血鬼を狂わせる程の美血。
その血は実に甘く、何よりも美味しいと聞く。

「なぁ、のまこ、少し噛んで―――」

と、言いかけた所で、のまこにぐいと押し返された。
少しだけ離れれば、その感覚も薄れる。

「ふむ、力?」

もう二歩程離れて、私は美少女らしく可愛く首を傾げる。
言われてみれば、何故この解答に至らなかったのか、という答えである。
この異能学園にはありふれた、超常の力。異能の力だ。
彼女、のまこのそれは、何かしら、相手に悪影響を及ぼす類のモノなのだろう。

「―――つまり、異能の力、という事でいいのか?」

私、黒兎は、少しだけ身構える。
というのも、異能というのは術者が望んで振るわれるものが多い。
彼女、のまこに、私、黒兎に対する攻撃意思があったと考える事も出来なくはないのだ。
最悪、前もって、私の正体を知り、私を狩りに来た、という事も考えらえる。

々 々子 > 「そう。いのー」
なにやら噛んで、と聞こえたがもしかして黒兎は噛んでほしかったのだろうか。……いわゆる、Mというアレなのだろうか。
いや、今は説明をしなければ。
と、黒兎を見れば、自分から距離を取っていた。
正しい判断でありまさにそうさせようとしていたところだが、人が離れていくのは、やっぱり寂しい。
でも首をかしげた黒兎は最初のように可愛くて、噛むお願いくらい聞けばよかったとも思う。

「ごめんね、電話やメールじゃなくて人とこんなに近くで話せたの、久しぶりだったから……ここなら平気かな、って思ったんだけど……」
目に見えてしゅんとすれば、異能か、との問いに頷いた。
「わたしのいのー、今みたいに頭の中がぽわーってしちゃうらしいの。自分でも止められなくて……なんか普通に話せてたからぽわーってしてないのかなーって思って……」

黒兎 > 「……のまこ、何か勘違いしていないか?」

そう。いのーと、妙な肯定の言葉を漏らす彼女の目線が何やら怪しい。
然しながら、そんな事を気にしている場合ではない。
どうやら、のまこ的には、あまり好ましい状況ではないようだ。
ここは、適当に否定しておいたほうが良かろう。

―――彼女の返答、そうゆうの、が訛ったわけでは無く、そう、異能
と言っているのか、と一拍置いてから理解した。

「いや、あまり近寄らなければ会話くらいならば問題ない。
 少しばかり頭がぼんやりするだけだ。何しろ私は、美少女だからな。」

然し異能か、と思案する。
制御出来ない異能というのは、
周りの人間にも例外なく危害を及ぼす。

ここならば特別、と言っていたが、
いかに異能者といえど、そこまで特別製のスーパーマンではない。
遺伝子改造などはされていない、ただの人間である。
美少女女子高生吸血鬼である私に効いたのならば、
それ以外への効き目は、往々にして略略、想像に難くは無い。

「のまこは、たちばな学級という学級がある事は知っているのか?」

私は、顎に指を宛て、瞑目して、口を開く。
この学園には、たちばな学級、というものがある。
異能が制御できない者を集め、特別に授業を行っている。らしい。
らしいというのは、あくまでそういった学級がある事を知識として知っているだけであり、
詳しくその内情まで知っているわけではない、という事である。
何故、そのような事を知っているかと言えば、ただの年の功とでも言おうか。

学内でも全員が知っているわけでは無く、
学外から来る、全ての異能が制御出来ない異能者がそこに送られるわけではない。
のまこも、そこ目当てに来た、とも限らない。

「簡潔に云えば、異能が制御出来ない者の為の特別教室だ。
 当然、のまこのその異能を疎む者もいなかろうし、
 そこで教える教師も同様に、そのような力には理解のある者ばかりであろう。

 この学園は特別では無いが、そのような場所は設けられている。
 
 のまこがそのような場所を望むのであれば、
 その学級について詳しい先生を探して聞いてみると良い。」

黒兎 > あえて言おう。

美少女に不可能はないだとか、
大層な口をきいておいて何だが、
その後の事は、詳しくは覚えていない。

恐らく、のまこ。本名、々 々子の異能の影響だろうか。

美少女女子高生吸血鬼にも不可能はある、という事だろう。
元々私は特別な吸血鬼ではなく、普通の吸血鬼だ。

仮に、であるが、私にもっと知識の量があれば、彼女の異能を封印するだとか、
自分自身に異能を防ぐ防壁を張るだとか、如何様にしても対策は出来たであろうが、
普通の吸血鬼である私には、そのような能力は備わっては居ない。

然しながら、結局私は何事も無く彼女に学園の設備を幾つか紹介し、
そして再び、この校門の前に戻ってきたらしい。

日は落ちている。のまこの姿は既に無い。
別れを告げた覚えも無く、案内した時に何があったかも覚えては居ない。
今度会った時にでも聞けば良かろうか。はたまた、もはや縁すら無かろうか。

―――それは私には知り得ぬ事だ、私、黒兎の、この数時間の記憶のように。

ご案内:「学生通り」から黒兎さんが去りました。