2016/02/09 のログ
ご案内:「学生通り」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > すっかり日も傾いた放課後。
授業も終わって帰路を歩く七生は、これからの予定を考えて足を止めた。

「んー、いつも通りトレーニングして飯食って……風呂の前にまた軽く走って、かな。」

殆どトレーニングしかしてないな、と少しばかり照れた様な笑みを一人浮かべる。
実際ここ数ヶ月は学校に居る時以外はトレーニング中か居候先の家主に言い様に遊ばれているかのどちらかだ。
偶にはちょっと息抜きに遊びに行くのも良いか、と橙から濃紺へ変わっていく空を見上げ思いもしたのだが。

「……中間期末、すぐ来るよな……」

学生として避けられない現実も、確かにそこに存在しているのだった。

東雲七生 > それと、もう一つ。

「テストが近いってだけじゃねえよなあ……
 何かみんなやたらとピリピリしてるっつーか、殺気立ってるっつーか……。」

七生は周囲から感じる不穏な気配を感じ取っていた。
そしてそれは主に同性、男子生徒から多く感じられる。
普段は試験前でも気楽そうにしている男子達でさえ、何だか妙に神経を尖らせているのだ。

「どうしたのか聞いても、何にも答えて貰えなかったし。」

それどころかかなり邪険にされたのである。
『どうせお前は絶対貰えるだろ』『この裏切り者め』などと散々な言われ様であった。一体、七生が何をしたというのか。

「……進級掛かってるとはいえ、流石によっぽどじゃなければ普通に大丈夫だと思うんだけど。」

東雲七生 > なんだか、どうにも居心地が悪い。
普段はなるべく目立たないように過ごしているだけに、誰かの気に障ったという線は無さそうだ。
そもそも一人二人に邪険にされるならまだしも、一斉にである。口裏を合わせたのかもしれないが、そこまでする理由が思いつかない。
となると、何か他の理由がある筈である。

「ん~……何だろうな……今月に入ってからだもんな~」

そう、先月まではみんな普通に、今までどおりに接してくれていたのだ。
それが今月に入って突然、手のひらを返すかのように待遇が悪くなったのである。
この謎を解く取っ掛かりがあるとすれば、ポイントはそこだろう。

ご案内:「学生通り」に真乃 真さんが現れました。
真乃 真 > 真乃真は街を行く。
テストが近いと言うのに焦る様子もなく普段と変わらないハイな様子で!
そうしていると何か悩んでる様子な男子生徒が目に入って来た。

「そこの君!何か悩んでるんだろう!顔を見れば分かるそれは悩んでいる人の顔はって…
 師匠!じゃなくて…東雲君じゃあないか!」

声を掛けたら悩みながら歩いていたのはいつか屋上であった男子生徒。

「いやあ本当に久しぶりだね!もしかして背伸びた?」

そんな適当なことを言う。
伸びたかな?

東雲七生 > 「いや、悩んでると言うか考え事を……
 って真乃先輩じゃないっすか。」

突如声を掛けられて多少面喰いながらも訂正しようとしたが、
その相手が誰か判ると僅かに眉間に皺が寄った。
嫌いなタイプ、というほどではないが、どちらかと言えば苦手なタイプに分類される相手だった。
                     ソレ  
「伸びてないっすよ。ほっといてください、身長は。
まあ、それはそれとして久し振りっすね。あれから少しは何か……出来ました?」

成長しました、と聞こうとしてたたらを踏み、辛うじて絞り出した問いは何とも変なものだった。

真乃 真 > 「伸びてないかな?こう、前会った時よりもこうなんか力強くなってる気がしたんだけど
 気のせいだったみたいだ。」

どうやら一回り大きくなってるように感じたのは勘違いだったらしい。

「うん、がむしゃらに困ってる人を助け続けてるよ。
 まだ、何も出来てないけど少しは見えてきたと思うぜ。」

そう言って自信ありげに笑って見せる。
大嫌いだとか言われながら、嫌な顔をされながらも助け続けてきた。
そして、それはきっと間違ってはいないのだ。

「それにしても東雲君は何を考えてたんだい?テストかい?
 それともあれかいバレンタインに好きな子からチョコもらえるかで悩んでたのかい?」

東雲七生 > 「残念ながら気のせい……
 あ、筋トレしてたから腕回りとかその辺はちょっと太くなったかもしんないっすね。」

軽く二の腕を摩ってみる。自分じゃあんまり自覚は無いが、多少の変化はあるのかもしれない。
が、服の上からでは分かる筈も無いだろう。

「がむしゃらに、っすか……ふーん。
 んまあ、それで角が立ってないんなら、それで良いとは思うんすけどね。」

真っ直ぐに突っ込むきらいがあり過ぎるこの先輩に対して、僅かな不安を覚えている事は確かだ。
要するに余計な事までして、有難迷惑になっているのではないだろうかという心配である。

「……いやまあ、テストもっすけど、最近クラスメイトからの当たりが悪い気がするんす……よ……
 って、バレンタイン?」

きょとん、と真を見上げて首を傾げる。

真乃 真 > 「角はうん、ザクザク…いや、そこまで迷惑はかけてないと
 信じたい、いや信じてるよ。」

今みたいにそこまで困ってない人に『さては、困ってるね!』と行ったのは
少なくはない。それで助けれた人もいるので結果はオーライです。

「先に言っておくと僕は魔術系の教科と英語では全く役に立たないからね!
 それについてはあんまり期待しないでほしいな!」

テストについて先にそれを言うがクラスメイトの話を聞くと
やれやれと無駄にオーバーなリアクションを取る。

「そうバレンタイン。女子がチョコレートを友達とか好きな相手に渡す日だよ。
 どうやらいらない心配だったみたいだね。さては君モテるんだろ!
 それでクラスメイトも君に嫉妬してるんだろうね。モテる男は辛いよね!」

気持ちは分かるみたいに言うけども、真は義理チョコしかもらったことないのでモテる男の気持ちは分からない。
去年は貰った大量の10円のチョコレートを見られて逆にクラスメイトが少し優しかったぐらいだ。
義理はあってもそれ以上は一切持たれていなかった。

東雲七生 > 「それは先輩が信じててどうこうって問題じゃないっすけど。」

まあ、面と向かって苦言を呈された訳ではないなら宜しいのだろう。
不満というのは誰かの裡にある間は何も問題を起こさないものなのだから。
七生は小さく肩を竦めると、そのままあからさまに溜息を吐いた。

「仮にも先輩なのに学業の面でそういう事を堂々と言えるのはどーなんすかね。」

やれやれ、と頭を振ってからバレンタインの説明を聞き、
ほお、とか、へえ、とか感嘆を漏らした。

「全然知らなかったっすよ。そんなイベントがあるんすね。
 とはいえ、だからって俺を除け者にしなくても良い気がするんすけどねー……」

別段今までチョコを貰ったという試しが無い。
いや、あるにはあるがあれはバレンタインではないし、出来れば思い出したくない過去だ。
開きかけた記憶の蓋をそっと閉じて、七生は再度溜息を吐いた。

真乃 真 > 「うん、違いないね!」

確かに真が信じたところで全くそれには関係ない。
むしろ悪くなることすらあるだろう。だがそれでも信じたい。

「英語と魔術教科以外なら頼りになるってことさ!
 そう言ったら凄そうに聞こえるだろ?」

確かにそもそも授業を取っていないその二種類の教科以外は
優等生とは言わなくても平均点より高めの点数を維持しているのだった。
意外なことに。

「知らなかったって本当かい?日本では割と有名だぜ。
 実は東雲君は異邦人だったりするのかい?」

東雲七生って名前からなんとなくこの世界の人だろうと思っていたけど。
或いは違うのかもしれない。

「なんて言うんだろうね。チョコレートをもらえる人と貰えない人が居て
 君はきっともらえる側の人なんだよ。当日の主役だ。
 その人たちの間の溝はとんでもなく深い。異邦人とこの世界の人なんて目じゃないくらいに深い。
 だから、クラスメイトはそれを羨んで妬むのさ。悲しいことだよ。」

たかがバレンタイン。されどバレンタイン。
貰える人間と貰えない人間の差はあまりにもあまりにも大きいのだ。のけ者にするのも仕方なし。

東雲七生 > 「まあ、凄そうには聞こえますけど。
 ……幸か不幸か、勉強見てくれるダチは居るんで、もしそれでも間に合いそうにないなら先輩にも声を掛けると思うっすよ。」

軽く微笑んで頷くと、大きく伸びをした。
そろそろ真面目にテストに向けて頭を切り替えていかなければならないな、と何処か他人事だった意識を意図的に向け直す。

「いや、まあ……あんまり縁の無い生活してたんじゃないっすかね。」

入学以前の記憶が欠落してるから、とは言えず。
曖昧に言葉を濁して、誤魔化しながら軽く頭を掻いた。
行事ごとも全て抜け落ちている。去年のハロウィンやクリスマスでさえ、クラスで話題になっていたから気付けたようなものだったのだ。

「理不尽っつーか、そもそも勝手な思い込みっつーか……。
 別に俺は主役になれる様なタマじゃねーっすよ。むしろそういうのは御免こうむりたいっすね。」

冗談じゃない、と溜息と共に肩を落とす。

真乃 真 > 「それでも間に合わなさそうな時は多分僕もかなり必死になってるだろうな!
 助けるけど! 」

そんなギリギリの時期に来られても実は少し困る。
自分の点数に変えてもたすけるけども…。困る。

「そうか。そんな人もいるよね。」

それだけ言って次の話題に移る。
確かに変だと思ったが特に触れるべきことでもあるまい。

「まあ、確かに理不尽だし勝手な思い込みかもしれないけど世の中なんてだいたいそんなものさ。
 テストとバレンタインが重なってみんなピリピリしてるんだよ。
 それにあと一週間もしたら自然になくなると思うんだよ。それまでは耐えるしか思いつかないかな?」

流石にバレンタイン終わった後もそんな感じなら問題だが。
それはないだろう、きっとすぐに忘れる。

東雲七生 > 「助かったかどうかは結果が出ない事にゃ分かんないもんっすけどね……
 まあ、大丈夫だと思うっすよ。割とこれでも、アテはいっぱいあるんで!」

それは生徒に限らず、教員であったりもする。
何だかんだで春から地道に増やしてきた既知の数はそれなりなものになっているのだ。

「だったら良いんすけどね~……はぁ。
 別にそんな事で人生の今後が左右されるわけじゃなし、気にしないで試験に集中すりゃ良いのになあ。」

青息吐息で苦々しく吐き棄てて。
一度大きく伸びをすると、七生は首をぐるっと回した。

「そんじゃあ、そろそろ帰って勉強の準備だけでもしないと。
 というわけで、真乃先輩お疲れ様っした!」

真乃 真 > 「まあ、確かに人生は左右されないけど、今が全てみたいなところはあるからね。
 うん、僕も彼らの気持ちも分からなくは無いよ。 
 …でもそんなんだからチョコ貰えないんだよクラスメイト…。」

釣られるようにため息を一つつき。
その労力をもっと前向きなことに使えと思う。
逆に、助けなきゃいけないのはもしかしたらクラスメイト達の方なのかもしれない。

「ああ、勉強がんばりなよ。
 僕を頼る状況まで追い込まれないよう願ってるぜ!」

そう言ってまた街を歩きだす。
さっきまでと同じような足取りで困ってる人を探すように。

ご案内:「学生通り」から真乃 真さんが去りました。
東雲七生 > 去って行く背を目で追って。
ああ、相変わらずだったなあ、と呑気に感心をしてみたり。
ヒーローになりたいという気持ちは分からなくもないが、やはり七生はその姿にどこか歪さを覚えてしまう。
困っている人を助けるのではなく、困ってるように見える人を助ける。

「……んー、なんか、なんっか違う気がすんだよな……。」

しかし、その違いが七生には分からない。
まあ、今のところは特に問題らしい問題を起こしたという訳でもなさそうなので。

「……ま、いっか。」

ふぅ、と小さく息を吐いて再び居候先へと歩き始めるのだった。

ご案内:「学生通り」から東雲七生さんが去りました。