2016/11/13 のログ
ご案内:「学生通り 露店街」に石上守衛さんが現れました。
■石上守衛 > 学生通りは常世祭期間中、特に賑わう場所の一つだ。
幾つもの部活の展示や露店が軒を連ね、さらには常設の店舗も常世祭一色に染まる。
当然、人通りも多くなる。それだけ問題も多くなるということだ。
故に、守衛はツカツカと靴音を立てながら通りを歩き、問題などがないか目を光らせる。
腕に燦然と輝くは「常世再実行委員」の腕章――とはいえ、実行委員だからと言ってどうということもない。
人混みの中では、一人の人間にすぎない。
「……ッ、人が多すぎて、危険ね、これ。そこの店、客席を路地まで出さないでください」
人混みに揉まれつつも、その人波をかき分けて守衛は一々細かい点を店舗に注意していく。
秩序を保つためとはいえ、あまり効果はない。この場そのものが既に混沌だった。
この人数を守衛だけでさばけるはずもない。守衛にできるのは危険と思われる行為を注意するぐらいであった。
そうこうしつつ、時は経った。食事時は過ぎて、ようやく人混みも解消され、問題なく道を歩けるようになった。
「15時……」
古風な懐中時計を懐から出して目をやれば、針は3を指していた。
そろそろ休息すべきだろう。そういえば、食事なども摂っていなかった。
守衛はそう決断すると、周囲を見回す。目に入ったのは屋台のうどん屋だった。
腹が膨れさえすればなんでもよかったため、守衛の足はそちらに向かう。
実行委員会本部に戻っても良かったが、それは手間である。
■石上守衛 > 「――かけうどんを、一つ」
『あっはい、かけうどんですね。食事の席はあそこです。一つ空いてますけど、もしかしたら相席になるかも……』
「構いません」
背筋を伸ばし、直立不動の姿勢になって店員の学生に言う。
店員はやりづらそうな反応を見せながら、守衛に発泡スチロール製の容器に入れたかけうどんを渡した。
代金を支払うと、守衛は設営されていたテーブルに着き、近くにあったウォーターサーバーの水をコップに注ぐ。
「いただきます」
そして、黙々とうどんを啜り始めた。
向かいの椅子には誰もいない。
■石上守衛 > 味としてはごく普通のかけうどんであったが、守衛は味わうことはない。
うどんを選んだのは腹に溜まれば何でも良かったのと、すぐに出されるであろうという考えからに過ぎない。
食事などさっさと済ませて、再び職務に戻らなければならないのだ。
一人でうどんを啜るなどは、女性らしさに欠けるであろうか。
だが、守衛はそんなことは一切気にしないようだった。
今頭の中に浮かんでいたのは、携帯食料を持ってくるべきだったという後悔の念。
そして、職務の事ばかりであった。
祭事の時はハメを外す人間が多い。ハレの日であろうが何であろうが、そういう輩は守衛の特に忌避するところである。
祭りのときであろうとも、秩序は保たれればならない。今こうしている間にも、問題は起こっているだろう。
早く、自分が行って見回らねば――
強迫観念に近いそんな思いを抱きながら食事を続ける。
実行委員会に提案すべき事、そして本業である公安委員会の職務のこと。
様々なことを思い浮かべては、ハメを外す人間、異能・魔術を使った違反者、こういう祭事の際に出張ってくる自警団的組織。
それらのことも思い出し、徐々に不機嫌にもなりつつあった。
近々、自分の所属している護島三隊でとある違反部活への調査を行うことになっていた。
違反部活の手入れなど特に珍しいものでもない。今回の件もいつもと変わりのないことだ。
だが、また秩序を乱す違反者などを見ることになるのだと思うと、やりきれなさが沸き起こる。
「……疲れてる。ってことね」
はあ、とため息をついて水を飲み干した。
普段あまり考えないようなことを考えていた。
常世再学園の公共の安全を守る委員会に入ったときから、私を殺して職務に忠実であろうとしていたのに。
きっと、連日の職務で自身に緩みが出ているのだろう。是正しなければ、と自分に言い聞かせた。
ご案内:「学生通り 露店街」に滝川 浩一さんが現れました。
■滝川 浩一 > 「かけうどん一つお願いします。」
屋台のうどん屋の店員へそう注文し、会計を済ませる。
少しすれば、発砲スチロール製の容器に入ったかけうどんを渡され、食事の席を示される。
席がほぼ満席なのか、示されたのは既に一人の女性が座っているテーブル。店員さんに聞けば『相席にして欲しい』と返され、渋々了解する。
かけうどん用のトッピングが並べられている棚の近くへ行けば、ステンレス製の容器に入ったネギをうどんの中に入れる。
その量たるや山盛りでもはやネギで麺が見えなくなっていた。
ウォーターサーバーで水をコップへと注げば、女性のいるテーブルへ近づく。
「……すいません、相席、失礼します」
彼女の向かい側へと座り、そのように短く告げる。
目の前に居る少女の姿を一瞥し、腕章を少し見つめれば、実行委員だと察する。
休憩時間なのだろうか?と考えつつ、テーブルに備え付けられていた割り箸に手を伸ばし、パキッと割れば麺を啜り出す。
■石上守衛 > うどんを食していると、こちらに歩いてくる人影を守衛は認めた。
先程の店員の言葉を思い出す。相席になるだろうと。
あまり相席は好きではなかったものの、仕方がない。
これもまたルールというものだ。個人の感情で我儘を言うわけにもいかない。
「どうぞ」
人影は青年だった。恐らく年齢も守衛と同じぐらいのようだ。
彼が相席を求めれば、守衛もそれに対して短く返す。
山盛りに盛られた葱を見て少し怪訝な顔をするが、そこまで珍しいわけでもない。
好みは人それぞれである。それについてどうこう言うつもりもなかった。
それにしても入れ過ぎではないかとは思ったが。
しばらく、うどんをすする音のみが響く。
彼とは知り合いでもなんでもないため当然ではある。
だが、不意に守衛は顔を上げ、ハンカチで口を拭きながら彼の方を見た。
「見ての通り、常世祭実行委員会の者です。常世祭中ですが、何か問題などはありませんでしたか」
自身も見回りをし続けてはいるが、限界がある。委員同士での情報共有も行っているが、同様だ。
一般の参加者に何か聞いてみるのも良いだろう……そんな、職務上の興味であった。
運営側にはない視点でこそ見えてくるものもあるだろう。
■滝川 浩一 > 相席が好きではない様子を何処となく感じ取り、その上自分の山盛りのネギを見て怪訝そうな顔をした彼女。
「どうぞ」と言われたので一応は席についたものの、他人であるために会話は無く―――
(やっべぇ…超気まずい)
当然こうなる。
さっさとうどん食ってこの場から去ろうと麺と葱を絡ませてそれを口へ運ぶ。
周囲はガヤガヤと活気が溢れ、カップルや親子、友人同士で食べに来ている者が多い中での相席。
この席での沈黙、静寂がとても居づらく、冷や汗が吹き出て箸を持つ手が震える。
「えっ、は、はぃっ!あえっと、も、問題あっ、ありません!たた、楽しく過ごさせて、はい、貰ってます!」
突然、声を掛けてきた彼女に一瞬唖然とする。
その後、裏返った声で返事をすれば詰まりながらもそう返す。
別に緊張する場面でもないのに手汗や冷や汗が吹き出て、何故か揚がっているこの青年。
その表情は笑顔ではあるのだが…引きつっているためやけに不自然だ。