2016/12/12 のログ
ご案内:「学生通り」に雪城氷架さんが現れました。
雪城氷架 >  
「ふぅっ…寒っ…」

ぎゅっとマフラーを口元までずりあげて、木枯らしの中を歩く

師走、年の瀬
とにかく周りも慌ただしい
去年は実家に戻って年を越したけど、今年は常世で過ごすことになりそうだ

それと言うのも…父親が島に来たからだ
父がこの島にいるおかげで、母は島から戻るという考えがなくなっている

「ばかっぷるめ…」

小さなため息を白く残す
まったく子供までいる親があんなにいちゃこらいちゃこら…血筋だろうか

雪城氷架 >  
「(今年もあとすこしか)」

大きな事件は本当になかった
一年目からあんな"炎の巨人事件"のようなものがあって、
内心この先どうなるんだろうと思っていたけれど

「(この調子なら、平和に何事もなく新年を迎えられそうだな)」

そういえばこのへんは雪は降るんだったっけ、そんなことを考えながら歩く
しばらく歩いて、コンビニの通りに辿りついた

ちょっと視線を向けると、ガラス窓越しにホットメニューが見える

こうも寒いとちょっとくらい買い食いもしたくなるものである

雪城氷架 >  
しばらくして
コンビニの自動ドアから出てきた氷架は
袋いっぱいにつまった肉まんを腕に抱えている

もちろんそんなに作り置きはなかったのだけど"待ってる"と言ったら蒸してくれた
話のわかる店員さんである

「はー、あったかいあったかい…♪」

異能を抑えているので人並みに寒暖の差を感じるようになったけれど、
これはこれで、そういったありがたみを再確認する良い機会だった

寒空の下の肉まんのなんと頼もしいことか

人目も憚らず、歩きながらはむっと1つ口に咥える

雪城氷架 >  
「ん…」

ふと商店街へ続く道に色々と飾り付けがしてあるのが目に入る
キラキラとしたそれは、まだ点灯されていなくても何かよくわかった

「あー、そうか。クリスマス……」

もぐっと肉まんを一つ詰め込んで、ふぅと一息
当日よりも先に、夜の商店街はイルミネーションに包まれるんだろう

「そっか、クリスマスか。ふふ」

今年は何をプレゼントしよう
手編みでも簡単なものなら今から十分間に合う筈
去年と同じものをあげたってしょうがない、何か本でも買ってみようか───

雪城氷架 >  
書店に寄って帰る、その前に手元のコレを消費しきらねば

きょろきょろと辺りを見回して、目についたベンチへと歩く
その途中、うっかり凍結していた路面で滑りそうになった

ちょうど風の吹き抜けになっているらしかった、危ない危ない

尻もちをついて肉まんをばらまくなんてあまりにも恥ずかしすぎる

そこそこの運動能力の持ち主で良かったと思える次第である

「よっこいせ」

美少女らしからぬことを言いつつベンチに腰掛ける
ひんやりと冷たい
異能が使えればちょっとぬくくできるのに

とりあえず冷めないうちに残りの肉まんを食べてしまおう

雪城氷架 >  
「(冬用のブーツももう一足くらいほしいな)」

口元をもぐもぐさせながらそんなことを考える
今持っているのはファッション性こと文句なしなのだが、
いかんせん滑り止めという点で実用性に乏しい
丁度中間ぐらいのもの、いいのないかなんて
書店に次いで靴屋も見なければならなくなりそうであった

「ぁーん」

もきゅ

……そういえば最近、妙に食べるのが遅くなったような
異能の調子が悪いのと何か関係があるのだろうか

雪城氷架 >  
「うーん……」

これぐらいの数、以前ならもう軽く食べ終わっていたきがする
育ち盛りだったのだろうか

手元の肉まんとそれをかかえている我が胸を交互に見て
いやそれはないまだ大丈夫と心が言い訳した

ぱくん

最後の1つを頬張る
膨らんだ頬にそっと触れると結構冷たい

今日は帰ったら長風呂しよう

雪城氷架 >  
包み袋をくしゃくしゃと丸めて……投げずに、ゴミ箱まで歩いて入れる

「さーて」

少しは身体も温まった

まずは書店に行って、編み物の本を買おう
そしたら靴屋へ寄って、新しいブーツを探す

寮に帰ったら本を読んで何を作るか決めて…
明日材料を買ってきて、試験休みは勉強半分編み物半分

クリスマスに向けて、気分が盛り上がってきた

雪城氷架 >  
「…っと」

すいっと足をどける
さっき転びそうになったところだ

なるほど、建物のエアコン室外機から流れてきた水が
吹き込む風で凍っているらしい

そういえば、以前もここで転んでる人見たっけなぁ、
なんて思いつつちゃんと凍結しているところは避けて、歩いて行く

商店街に向かう足
頭の中は未来のことで一杯である

雪城氷架 >  
言い訳がましいといえば言い訳がましいのだけれど
考えごとをしているから周りのことに気づかない、なんてことはままあることで

───といっても、気づいていれば回避できたのかといえば
一般的な身体能力しかない氷架にはきっとそれも難しくて

けたたましい音に気づいてそちらに視線を向けた時には、
もう目の前に、前輪をスリップさせてこちらに向かってきている車両が目に入った

そんな状況で、
氷架が、咄嗟に出来たことと言えば──────

ご案内:「学生通り」にグレーテルさんが現れました。
グレーテル > 「危ない!!」

少女の前にスリップした車、その目の前に巨大なマシュマロが現れる

ばふっ

そんなマヌケな音を立てながら車がマシュマロに衝突し停止する

「あなた大丈夫だった?」

そう言いながら空からふわっと、ケーキのようなコスチュームを身にまとった少女が現れた、
そのままゆっくりと少女の前に

「(うわぁーー美人さんだ)」

そのまま氷架の前に現れた少女は、ぼーっと彼女の方をみとれていた。

雪城氷架 >  
──そう、何もできなかった

あわや衝突、といったところだったが……

「わうっ」

びっくりして尻もち
……それだけで済んだのが幸いだっただろう

突如現れた巨大なマシュマロ
それのおかげで自分も、どうやら車の運転手も無事だったらしい
周りはちょっとした騒ぎになりつつ……

「あ、ああうん大丈夫…
 びっくりしただけ……」

座り込んだままそう答える
まだ心臓がばくばく言っている…
あとお尻が、いたい

グレーテル > 「無事でよかった、立てる?」

少女はケーキのような衣装を着ていた、
この時期だからクリスマスケーキの営業にも見えるだろうか?
そして手には巨大なロリポップキャンディーの杖
その杖を持っていない左手を氷架に差し伸ばし、笑みを浮かべる

「この時期は車の通るところは危ないから、気をつけないと」

車の運転手はゆっくりと黒魔から出てきて、
巨大なマシュマロをみて、どうしよっかという表情で見ていた。

「あ、大丈夫よ、そのマシュマロはちゃんと食べられるから
 食べたら車を取り出せるよ~」

雪城氷架 >  
「うん、ありがと」

差し出された手をとって、立ち上がる
まさか車両が滑ってくるとは思ってなかったけど、言われる通りである
少しだけ考えに耽りすぎて周りを見ていなかった

見れば車の方にも被害はないらしく一安心
周辺の人間がマシュマロを眺めては写真をとったりしていた

ああこれに救われたんだ、と一目でわかった

「…魔法?魔術?すごいね…えっと」

さて名前がわからないし、見た目で…言うにもなんともな格好であった
ケーキのお嬢さん、は流石に失礼な気がした

グレーテル > 「えっと、私はグレーテル、魔法少女グレーテル!
 あなたお名前は?」

相手が自分の事をどう呼べばいいかわからない、
そういう仕草から少女は名乗った

魔法や魔術様々な異能が入り乱れるこの学院、
魔法少女の一人や二人珍しくないだろう

「えっと、お菓子の魔法……」

そう言って彼女の手に現れる、いくつかのクッキー

「お近づきの印にどーぞ、大丈夫、
 爆破の魔法とか仕込んでない普通のクッキーだから」

それを少女に差し出した

雪城氷架 >  
「ま、魔法少女?」

元いた場所ではアニメの中だけの存在だったのだけど、
この島では確かに魔術や魔法は普通に存在しているし、何よりも、そう
魔法が使えて少女なら魔法少女という来もする……するよね?

けど今までにこんなにドストレートなのは出会いがなかったというか

「えっと…私は氷架。雪城氷架…。
 ありがと、助かったよグレーテル」

そして色とりどりのクッキーを差し出されれば、笑顔でそれを受け取る

「爆破の魔法?
 そんなのもあるんだ?」

この可愛らしいクッキーが爆弾になったりもするのかな、なんて思いながら

周囲の様子は少しずつ落ち着いて、車の運転手がこちらへきて頭を下げた

なんにもなかったんだから、いいよ。気を付けて
そう言葉をかけると申し訳なさそうに車に乗って、その場を後にした

グレーテル > 「うん、その魔法少女……自分でも信じられないけどね」

そう言ってグレーテルははにかんでみせた。

「氷架さんね……よろしく、この島に来て人命救助第一号だよ」

お菓子を受け取ってもらえば、嬉しそうに微笑む

「そうなのです、グレーテルはお菓子に様々な魔法をかけて
 人助けをしたり、怪異や悪い人と戦ったりします」

そう言って大きな胸を張り、軽く自己紹介を周りにする。

「だから、皆さん、悪い子としたら メッ ですからね!」

そのまま車が去ったら、そのままおマシュマロに触れる。
マシュマロはみるみる小さくなり、グレーテルの手の中におさまる

雪城氷架 >  
「へぇ…」

自分でも信じられない、という口ぶりとは打って変わって
悪いことはいけないと広報する少女はその在り方をしっかり生きているように見えた

「(すごいな)」

内心そう思う
自分と…そこまで大きく歳が離れてるわけでもないだろう
むしろ見る分には、きっと自分よりも幼い気がする

人助けをして、悪い人に立ち向かって……

自身だけのことで精一杯な自分とは比べるべくもなく、立派だった

「大変そうだね、お仕事」

仕事なのかとちょっと疑問には思ったものの、そのまま口に出す

グレーテル > 「お仕事というか、みんなに“夢と希望”を持ってもらわないと、
 消滅する異世界もあるから……ただそれだけ、だからがんばってるだけ」

お仕事と言われれば、そう言ってむしろ使命かもと続け

「氷架さんも、気をつけてね……もし助けが必要な時はいつでも呼んでね」

そう言って右手のロリポップキャンディーの杖を天にかざせば
ぐるぐるとかき混ぜるように動かしていく
そうすると、次第に二人の上に雲……いや巨大なわたあめが現れる

「ではみなさん、足元は滑りやすいこの時期、お気をつけて
 魔法少女はみなさんをいつでも見守っていますよ」

そう言ってグレーテルはわたあめの雲に飛び乗る、
まるで孫悟空の筋斗雲のようだ。

雪城氷架 >  
"だけ"だと少女は言う

それができることがどれだけスゴいことなのか
氷架は身をもって知っている、だから自分よりも少し小さな彼女を、尊敬した

「うん、そうする。
 本当にありがとうグレーテル」

まるでおとぎ話のように雲に乗った少女を見上げる
現実感と夢見心地が半々と言ったところだった

グレーテル > そのままグレーテルは雲のようなわたあめに乗り、そのままこの場を去っていく

彼女の乗った雲が飛んで行くのは、学園地区の中心部の方
もしかすると彼女の正体は、この学園の生徒かもしれない。

また、どこかで会えるかもしれない。
そんな想いをこの場にいた何人かは抱いたかもしれない。

ご案内:「学生通り」からグレーテルさんが去りました。
雪城氷架 >  
雲の上の少女を見送って…

「………」

心に去来する一つの思いがあった

「(また、助けられちゃったな)」

この学園に来てから、助けられてばかりだ
自分よりも小さくても、あんな風に生きている子もいるのに
きっと恵まれた環境にいる自分のほうが、何もしていない

「…クリスマスだなんだって、浮かれてちゃいけないのかなぁ」

雪城氷架 >  
冷静になると、さっきのことを思い返す

…もしあの子が来てくれなかったらどうなってた?
誰も助けてくれなかったら、あのまま───

ぞくっと寒気がした

あの場では何もできなかったけど
あの時咄嗟に自分がやろうとしたことは……

雪城氷架 >  
じっと手を見る

咄嗟に、その手を翳して異能を使っていたら

───

密度100%の氷壁に阻まれて自分は助かった
もしくはその場で炸裂する爆炎が車を弾いて、自分は助かる

そのどちらも、運転手は無事では済まなかった

じゃあ、何もしないままだったら、自分は……

「(…何のための、異能なんだろ)」

くるりと踵を返す

お買い物という気分ではなくなってしまった
また今度…日を改めてにしよう

ご案内:「学生通り」から雪城氷架さんが去りました。