2017/02/23 のログ
■東雲七生 > 時折吹き抜ける風に身を竦めながら、ぶらぶらと路地を歩く。
野良猫に軽く手を振って挨拶をし、さてこの道はどこに続いているのだろうと考える。
何処に出ようと最終的には家に帰るか、訓練施設に向かうか、の二択ではあるのだが。
「……最近バイトか鍛錬かしかしてないもんな。」
果たしてこれで良いのだろうか、と思う時が無くも無い。
同級生たちは、何やかんやで割と青春を謳歌してる雰囲気もある。
常世学園に通って二度目のバレンタインは、流石に去年ほどあからさまな仲間外れにはされなかった。
むしろ周囲の浮かれた雰囲気に何となく乗れなかった感じすらあった。
去年ほどチョコを貰えなかったから、というのもあるかもしれない。
■東雲七生 > 「んー……此処に出るのか。」
路地を抜けた先で足を止め、ぶつかった通りを見回して軽く息を吐く。
そこは見慣れた通りで、主に衣服店が並んでいた。
部活の一環だろうか、七生と同年代の生徒がレジカウンターの向こう側で退屈そうにしている。
「……あ、そーだ。深雪に何か買って行こうかな。」
年中同じ制服姿だから、カーディガンくらいは着て貰いたいと、七生は近くの店に向かった。
そして数分後、紙袋を抱えて心なしか嬉しそうに出て来て、ほんの僅か足取り軽く帰路につく七生の姿があった。
ご案内:「学生通り」から東雲七生さんが去りました。
ご案内:「学生通り」に東瀬 夏希さんが現れました。
ご案内:「学生通り」に冬夜さんが現れました。
■東瀬 夏希 > 「……思ったよりわからんものだな」
先日、異常存在研究所を襲撃した際に保護し、名前を与えた「冬夜」。
その後は自室で同居する方向で考えていたのだが、いくつか問題があった。
内一つが……衣服がない事である。
流石に衣服がないと今後色々と差し障る。室内でも、男性型の冬夜が全裸でうろつくのは勘弁していただきたい。
その為、服を揃えに来たのだが……
「……こういう時、どういうのを選べばよいのだ」
服選びなどほとんどしてこなかった夏希にとって、異性の服を選ぶというのは非常に難易度の高いミッションだった。
■冬夜 > 「へー、色んな服があるなぁ。サイズもすごい…
ねえナツキ。これはどういう人が着るのかな。」
軽く手を広げた長さが2m30cm程度はある恐ろしく大きなシャツを指差す。
多分、『そういう層』が購入するのだろう。
そんな感じで、非常に能天気に目を輝かせ、店をうろうろしているのが現在の冬夜である。
目覚めて以来初めての外なのだ、燥ぐのもしょうがないと言えばそうなのだが…
「僕のは一番安そうなのでいいよ?」
当の本人だと言うのに、自分のものにはとことん無頓着だった。
■東瀬 夏希 > 「この学園都市には、異端……一般的な人間ではない存在も多数在籍しているからな。そう言った連中を対象にしたものだろう、それは」
恐らく、探せばとんでもなく小さいのもあるはずである。色んな意味で多種多様、である。
そして、安いのでいい、と言う言葉には、曖昧な表情。
「確かに、それでもいいとは思うのだが……あまり質素なのでは、見目が悪いかと思ってな……」
質素倹約を旨としているとはいえ、一応は同居するのにあまりに質素では虐げているようにも見えるだろうか?と言うちょっとした不安もあるのだ
■冬夜 > 「ふーん。確かに言われてみれば色んな『人』が居るからね。
あ、こっちはちっちゃい。」
店の片隅に、まるでミニチュアのように置かれた、小さな服の下がった沢山のハンガーと試着室。
しゃがんでじーっと見ていたら、見世物じゃねーぞと文句を言われた。
「怒られちゃった。
ああ、なるほど。それは悪いことだね、うん。悪い。ナツキにそういう印象を持たれるのは僕の心も…悪い。」
なんと言い表せば良いのか、いまいち分からなそうな顔で首を傾げる。
ともかくそういうことなら、と店をきょろきょろ見回してみる。本人に服の知識がほぼない以上、何の足しにもならないが。
■東瀬 夏希 > 「同じ人として括るのも難しい所ではあるがな」
少し考える。
種族的に人類の区分に入るか、の問題もあるし……「異端」と言う区分の問題もある。
それに囚われてはならぬと理性は騒ぐものの、やはり異端と言う認識は夏希の中には根強い。
それをどうすべきかも今後の課題だった。
「単に値段を上げればいいというものではないとは思うのだがな……私の好みとしては落ち着いたものの方がいいのだが、なんとなくでもいいがお前に希望などはあるか?」
一応聞くだけ聞いてみる。
勿論、殆ど当てにしてはいないが。寧ろ、世間に出てきていきなり自分の服を選べと言われても困るだろう。
■冬夜 > 「? ヒトじゃないかもしれないけど、人でしょ?」
そう言って、キョトンとした顔で夏希の顔を見る。澄んだ、ルビーのような赤い瞳だった。
しかしそれ以上は何も言うことはなかった。興味が失せたのか、別のことを考えているせいか…
「ううん…なんだろう。自分でもよく分からないけど……
なんとなくだけどね、なんとなくだけど……目立つような服は…なんだろう、嫌?なのかな、多分。
それと、できれば動きやすい…歩きやすいようなのが、良いか悪いかで言えば良いかも。」
まるで引き出しを開けて中身を掘り出して確かめるように、考え込みながら口に出す。
不自然といえば不自然だが、日も浅いのでしょうがない。
とにかく、そういう希望が出た。
■東瀬 夏希 > 「…そう、だな」
苦笑する。冬夜は純粋だ。これは見習わないといけないかもしれない。
「ふむ……目立たず、動きやすい……となると、伸縮性のいい素材がよかったりするのだろうか」
首をひねりつつ服を品定めし、手にとっては冬夜と見比べる。
サイズの問題もあるし、パッと合わせた時の雰囲気と言うのもある。
そこら辺のセンスが微妙なのが悲しい所だが……
■冬夜 > 「ん。なんだかごめんね、僕にもそういう知識があれば選ぶのを手伝えるんだけど。
うーん、うーん……」
うーん、と見ながら辺りを探し回る。
…そのうち運動着コーナーに迷い込んでジャージを眺めるようになるだろう。
「動きやすそう。」
動きやすさしか見ていなかった。
■東瀬 夏希 > 「いや、無いのは仕方ない。寧ろ私が疎すぎるのだ」
思えば、今までの人生の殆どを異端狩りのために費やしてきた。
その反動で、それ以外に関してはかなり疎くなってしまっているのである。
社会常識に欠ける、と言ってもいいかもしれない。
「(……改めて思えば、私はなんと狭い世界だけで生きてきたのだ)」
世界を語って復讐を正当化してきた癖に、その世界をほとんど知らない。
そのことに改めて気づくと共に苦笑する。そんなことすら見えていなかったのか、と。
「……流石におかしいだろうな」
顔をしかめつつ。いや、ジャージは流石に駄目だろう。
ジャージで外を歩かせていたら、どんな目で見られるか分からない。
「制服の支給があれば楽なのだが……」
それでも結局私服は必要なのではあるが。
■冬夜 > 「そうかなぁ。僕より随分マシに見えるけど…
……あ、これ……」
夏希の様子を見て心配そうに顔を覗き込む。
すると、ちょうど影に隠れる形で後ろに陳列されている服に目が留まった。
「これ……うん、これ、良いんじゃないかな。
よく分からないけど、良い…気がする。この…これとか。」
Tシャツとブラックのパーカージャケット、それとインディゴのジーンズのセットである。
動きを阻害せず、派手さはないが、決してみすぼらしくもない。そして高くもない。
下に「今ならブーツも付いてくる」と書いてある。
そして指差したのは、小さな炎を模したワンポイント。
どういうわけか知らないが、このワンポイントをいたく気に入ったらしい。
■東瀬 夏希 > 「まあ、一般的にな……」
自分が一般論を語るのはおかしい気もするが。
とは言え、多分この感性は間違ってない。多分。
「ん?ああ、それか……ふむ」
少し軽く見えるが、これくらいの方がそれらしいのかもしれない。冬夜がそれがいいというのならばそれが一番だろう。
「では、これと類似したものをいくつか。後は簡素な衣服をいくつか、か……。しかし、なんでこれが?」
小さな炎を模したワンポイントを指さしているのを疑問に思い。
■冬夜 > 「ふーん。」
自分もわからないのにこれ以上話すのは難だと思ったのか、そこで会話を切り上げる。
「うん。安いし、動きやすそうだなぁって。思ってたよりも派手だけど、そこはしょうがないかな。
………んー。よくわかんない。」
どうやら、それを気に入った理由は自分でも分からないようだ。
忙しなく首をひねっているが、答えが出てくる様子がないのかすぐに考えるのはやめた。
「なんとなーく、だけど……
なんだろう?良いか悪いかで言えば良いような、そんな気がしたんだ。
わからない、けどね。」
■東瀬 夏希 > 「まあ、シンプルなのも用意しておけば、必要に合わせて使い分けられるだろう。値段もまあ、大丈夫な範囲だ」
財布の中身を確認しつつ。一応それなりに支給されているので、余裕はある。
「ふむ……まあ、服と言うのは個人の趣味嗜好が大きく反映されるものではあるしな。お前が気に入ったのなら、それが大事だろう。ああ、そうだ。試着してみるか?」
一応確認。こういうのは一度きてみるのが大事、とも聞いたことがある。聞いたことがあるだけで詳しくは知らないが。
■冬夜 > 「ありがとう、ナツキ。
……そういえば、寝間着と言うものは買わなくていいのかな。」
テレビで中途半端に知識を付けたらしい。
一応キョロキョロ探してはいるが、パジャマコーナーはちょうど反対だ。
「ん、そうする。ちょっと着てみたいな。
せっかくナツキが買ってくれた服だし、楽しみ。」
ふふーん、と愉快そうに笑いながら受け取って試着室へ。
人が入っているところを開けかけて店員に注意された。店員の対応も慣れたものである。
そして、数分後。
「どうかな、こんな感じで。着心地は良いよ?」
少しヨレヨレだが、なんとか様になった感じで着ている。
夏希より少し高い程度の身長のため、かっこいいとか素敵というよりは先に可愛いが来るが。
■東瀬 夏希 > 「ああ、寝間着も大事だな。そちらは簡単なのでいいか?」
確認。外で見せるわけじゃないし、変に拘る必要はないはずだ。
それでも、ある程度拘りたいのならばその意は汲むつもりだが。
そして、店員に頭を下げつつ。出てきた冬夜を迎える。
「ふむ……悪くないのではないか?」
言いつつ、皴になっているところを手際よく伸ばしていく。そう言ったことは慣れたものである。