2018/01/24 のログ
ご案内:「学生通り」にイチゴウさんが現れました。
■イチゴウ > 常世島は類を見ない豪雪に包まれていた。
ひとたび辺りを見渡せば溢れんばかりの銀世界が広がっている。
雪があちこちに覆い、街頭やイルミネーションで
照らされる様は絵になっているようだが
この積雪が各種交通機関等、様々な悪影響を与えている事も
また事実である。
学園や学生寮へと繋がるこの学生通りも悪影響が
出ている場所の一つであり塊とも形容できる雪が
あちらこちらに点在し正に雪の海と言っていい。
その中、雪をサクサク踏みつけながら雪塊を前に
佇む四足ロボット。
その背中には二本のボンベが背負われそこからは
ホースが伸びており前左足に固定されたノズルへと
繋がっている。
「携帯放射器、準備完了。」
誰に向けられたわけでもなく機械的に呟けば
前左足のノズルからヒーターの音を一回り大きくしたような
聞いているだけで温かくなるような音と共に
炎が噴射され積もりに積もった雪を溶かしていく。
■イチゴウ > ここ数日ロボットに回ってくる任務と言えば
このような除雪作業ばかり、
火炎放射器を背負いながら西へと東へと。
あまりの緊急事態に生活委員会の除雪車が出払ってしまっているのが
さらに拍車をかけている。
今日の多脚戦車の敵は異能者や魔術師ではなく
目の前に広がる大量の雪のようだ。
「多すぎる。」
一定の噴射を続けた後に間隔を空けるため
炎を止めたのと同時に漏らした一言。
大体場所が場所なため出力を大分制限されているのも
あって恐ろしく時間が掛かっているが
愚痴を連ねるわけでもなく燃料をチャージし
ただ黙々と重なった雪を溶かしていく。
学生通りで炎を吐きながら除雪する様はさぞかし
目立っている事だろう。
■イチゴウ > 「む。」
除雪作業に勤しんでいると何か気になるものが
視界に入ったようで歯切れの悪い声を鳴らすと同時に火炎の噴射を中断し
道の脇へとサクサク歩いていくだろう。
「これがスノーマンというものか。」
ロボットが道の脇へと近寄っていけば感心したような様子、
興味を引いたのはポツンと一体点在していた雪だるま。
上下のバランスがお世辞にも良いとは言えないが
それがかえってある意味温かさを醸し出している。
雪だるまに取って付けられたような顔は
対峙している機械の顔とどこか似ていて。
ロボットもそれが気になり雪だるまの後ろにある
閉店した商店のショーケースに映る自分と見比べている。
■イチゴウ > 「人間の創作物もまた面白い。」
雪だるまを一定の間眺めた後に静かに頷く。
人間はロボットにとって理屈が通らず分かりにくいものであり
だからこそ惹かれる部分がある。
密かな満足感を得た後は作業に戻り
再度ノズルから噴霧される燃料に点火する。
また雪だるまが少し気に入ったのか
炎を雪へとぶつける際にダメージを与えないよう
射線を工夫しているのが見て取れる。
■イチゴウ > 火炎放射による強力な除雪作業のかいあってか
ロボットの周辺に積もっていた雪は水たまりへと
姿を変え、道路を濡らして色々な光をゆらゆらと反射している。
しかし雪の谷はこの学生通りまだまだ先へと続いている。
少なくともこれを明日の朝、
学生の通学時間までには片付けないといけないのだ。
雪が続いている彼方を見つめた後
まるでやる気を入れんばかりに油圧機構から音を鳴らし
溶けた雪の中、熱い除雪活動を夜通し行う羽目になっただろう。
自分とよく似た後ろの雪だるまはいつしか溶け始め
ていた。
ご案内:「学生通り」からイチゴウさんが去りました。