2015/07/22 のログ
ご案内:「商店街」にライガさんが現れました。
ライガ > 商店街の一角、魔導具を扱っている店。
その軒先で、何やら考え込む影が一つ。

「ここで3件目だけど、あるかなあ……」

求めるのは、魔術をシャットアウトする素材を使った眼鏡。
だが、これまで見てきた店は、どれも機能性を前面に押し出したごてごてしたものばかりで、スタイリッシュなものとなると、なかなか見つからない。

「ここで見つかるといいけど」

ライガ > とはいえ、いつまでも軒先で悩んでいても仕方ない。
意を決して扉を開き店内へ。

「……お、涼しい。
ちょっとここでまったりしてくか」

ぶらぶらと歩き、アクセサリーのコーナーへ向かう。
目当ては魔眼を抑える効果のある眼鏡だ。まだ発現してるわけじゃないけど、不確定要素だし、買えるときに買っときたい。

ご案内:「商店街」に獅南蒼二さんが現れました。
ご案内:「商店街」に奇神萱さんが現れました。
ライガ > 「おっと、サングラスもあるな…日中だけだろうけど」

様々な柄のフレームを手に取り、眺める。
やがて2、3種をレジに持ってゆき、会計をしてもらう。

「あ、コンタクトって手もあったなそういや。
ま、割れるだろうけど」

奇神萱 > 学園都市でも知られた繁華街のひとつ。学生たちの暮らしが息づく普段着の街。
商店街の路傍、魔術系の道具屋が並んだあたりにヴァイオリンケースを開いて置いた。

ガット弦の具合をたしかめ、親父譲りの仕事道具を肩にあてて軽く一当てする。
はじめに足を止めたのはいかにも好奇心が強そうな女子生徒だった。
何か始まるのかと興味津々の様子で、声をかけようか迷っている様だった。
笑顔をみせると何倍にもなって返ってきた。どうやら聞いていくことにしたらしい。

人通りの多さもあって、時を追って少しずつ聴衆が増えていく。

頃合だな。
まずはクライスラーにしよう。
挨拶代わりにはもってこいのお気楽な小品だ。

『美しきロスマリン』。

ライガ > ふと、メロディーが聞こえたような気がして。
扉の間から外をうかがう。
ムワッとした熱気に顔をしかめたが、どうも蒸し暑いせいだけではないらしい。

「なんだか騒がしいな……」

どうにも気になるので、外に出てみようとする。
しかしその横をすれ違うように入ってきた人影に見覚えがあった。

獅南蒼二 > 貴方が会計を済ませたころに,同じように店へと入ってきたのは白衣の男だった。
魔導具を扱うこの店にはあまりにも不釣合いな服装だが,学園に在籍する者なら,男の正体を知っていてもおかしくは無い。
男は店員に声をかけ,魔導具の材料になりそうな,水晶や黒曜石,そのた宝玉の類を次々と頼んでいた。

「あぁ、それから……異世界の杖は置いていないか?」
魔法戦争でも始めるつもりなのだろうか。
そう思えるくらいには大量の魔導具を買い漁っている。

ライガ > (魔術学の先生じゃないか、物々しいけどなんだろ)

とはいえ、外も気になるので一歩外に。
流れてきた軽快な音色に耳をそばだて、その主を探せば。

「え、ええー……」

群がる聴衆の、その向こうに見えた女子生徒。
どうもその人相、劇団フェニーチェの照合データと酷似している。
ちょっとだけ顔をしかめるとすぐいつもの顔に戻り、その少女へ近づいていく。

奇神萱 > 『古いウィーンの舞踏歌』の中じゃ『Liebesfreud/愛の喜び』が有名だ。
『愛の喜び』、『愛の悲しみ』、それから『美しきロスマリン』。
第一曲から第三曲までセットで奏でられることも多い。

聞き取りやすくて軽やかな、躍動感のあるアルペジオとスピカートの取り合わせ。
呑気でお気楽な主題の繰り返しだ。聞いている方にとってもわかりやすい様に思う。

この作品も作曲家自身のレコーディングが数多く残ってる。
見所はスタッカートの表現だ。どんな表情をつけていくかが奏者の腕の見せ所。
あの人騒がせなおっさんに負けないくらいの茶目っ気を見せられるかどうかだな。

ほんの二分足らずの曲だ。弓を放すとまばらな拍手があった。
聴衆の反応はまずまずだな。つかみは十分。次の曲にかかろうとした矢先、近づいてくる人影があった。

「今のはフリッツ・クライスラーで『美しきロスマリン』」
「次は『カヴァティーナ』という曲だ。スイス人のヨアヒム・ラフが結婚の年に書いて大ヒットした」

話なら後にしてくれ。ご覧のとおり、俺は忙しいのさ。
『ヴァイオリンとピアノのための6つの小品』から『カヴァティーナ』。

獅南蒼二 > 白衣の男は購入したものを布袋と鞄に詰めた。
大量の鉱石や魔石でいっぱいになった袋は重いだろうが,それをいとも容易く持ち上げる。
・・・いや、持ち上げたのではなく、袋ごと、風船のように浮かせて移動している。
必要最低限の物資は確保した…後は触媒としての水晶を確保するだけだ。

もうここには用が無いはずだったが…店の外へと足を踏み出せば,そこには人だかりが出来ていた。
その中央に居るのは・・・少女だろうか、ヴァイオリンの音色など聞き分ける耳は持っていないが、素人にもそれが良い演奏なのだろうということは、理解できる。
「・・・・・・ほぉ。」
気付けばこの白衣の男も,えらく大きな荷物を横に置いて…演奏に耳を傾けていた。
店の外壁に背中を預けて、白衣のポケットに手を突っ込み、視線だけを奏者へと向ける。

ライガ > 演奏が終わると、ヒューっと口笛を吹き、短く拍手をした。
微笑みながら、声をかける。

「いやいや、僕は話をしに来たわけじゃあない。
──劇団『フィニーチェ』の、『伴奏者』で、間違いないかな?
どうしてこんなところに居るのか知らないけど、君が忙しくても、こちらには立派な用があるのさ。
さ、できればご同行いただけるとありがたいんだけど」

そう言いながら、さりげなく、両手を後ろで組む。
(──“西天に昇りし銀の王よ、我窮地に陥らん。ひとたび我を護りたまへ”
っと。群衆が……邪魔だな)

獅南蒼二 > 聴衆に分け入る青年の動きは、明らかに意図的なものだった。
白衣の男は青年の後ろから場を俯瞰的に見ている形であり、状況は手に取るように分かる。
しかし、動こうとはしなかった。
ポケットから煙草を取り出して,指先から生じさせた炎で火をつけ,静かに紫煙を燻らせる。

「ヴァイオリンの演奏よりは,愉快な演目になりそうだな。」

そんな風に小さく呟いて,僅かに目を細めた。

奇神萱 > カヴァティーナに分類される曲は数多くある。
もともとの意味は歌劇に挿入されたリート風の叙情歌だ。
器楽に転じた後も歌うような旋律が残っているのはその名残りってところか。

ラルゴより速く。アンダンテより少し速く。
イツァーク・パールマンは格調高く。ミッシャ・エルマンは雄渾に奏でた。
新婚さんの甘い気分が伝わったのか女子学生が頬をあざやかな朱に染めていた。

個人的にはもっと多くの人に聞いてほしい曲のひとつだ。
できることなら作曲家の名前を覚えて帰ってほしい。自分の手で調べてほしい。
ラフは『カヴァティーナ』だけの作曲家じゃない。そのきっかけになれば何よりだと思う。

さっきよりも大きな拍手を遮るように声がかかる。無粋な奴だな。

「訳のわからないことを。そのナントカってのはずいぶん前に潰れたって聞いたぜ」
「中にはご同業の人間がいたのも知ってる。とっくの昔に刺されて死んだ」
「で、ヴァイオリンを弾いてるやつを全員とっ捕まえてるのか? ははは、面白いな」

からからと笑って答える。Why so serious?

「リクエストがあったら聞くぞ。知ってる奴なら暗譜でいける」
「どうだ、そこの白衣の? 失礼。先生か」

獅南蒼二 > 傍観を決め込むつもりだったが、騒動の中心人物に声をかけられてしまった。
やれやれ、とばかり肩を竦めて、壁から離れる。

「…生憎だが,私は音楽に疎くてな。
 普段なら気にもしない私が立ち止まるくらいにアンタの腕が良いという事くらいしか分からん。」

それはある意味で素直な賞賛の言葉だっただろう。
だが、リクエストと言われても、曲名も作曲家も分からない。
だからこそ、

「逆に聞こうか、お前が、目の前の青年に捧げるなら、どんな曲を選ぶ?」
そうとだけ言って、白い煙を吐き出し、楽しげに笑った。

ライガ > 「あー。そのヴァイオリンね、グァルネリウスだっけ?
件の人物の所持品、いや、遺品かな?
てなわけで、なんで君がそれをもってるのか……普通に事情を聴くこともできるわけさ」

両手をスラックスのポケットに突っ込み、素早く取り出せば、その手先にはナックルダスター。
両拳を胸の前でぶつけ合うように、ガチリと鳴らして火花を出すと、
ひゅるひゅると花火が上がり、パァンと音がした。

(いや先生、この場に居て大丈夫なのかよ、巻き込まれても知らないぞ)

奇神萱 > 時を追うたび聴衆が増えて、ヴァイオリンケースの中の小銭が積み上がっていた。
質問を質問で返すのは禁じ手だろうに、それをあえてやるとは見上げた根性だ。

「そうか。そうだな。歌だ。歌が足りてない様に思う」

笑って答えた。
ここにいる理由? 聴衆が欲しくなったからに決まってるじゃないか。

「普通にお行儀よく聞いてくこともできるわけだ。そっちの方がいいと思うぞ」
「ラフの『カヴァティーナ』が好きなら気に入るはずだ。演るなら楽しい曲がいい」

19世紀の作曲家にして伝説のヴィルトゥオーソ、ニコロ・パガニーニ。
『カンタービレ』。その意味は、「歌うように美しく」。

獅南蒼二 > 質問を返された少女の内心や,青年の心配などどこ吹く風,白衣の男はのんびりと煙草を吹かしている。
魔術学の教師であるから,もしかしたら,身を守る術くらいはあるのかもしれない。

いずれにしても,白衣の男はどちらにも加担しようとせず,再び壁際へと戻ってしまった。
小銭を投げ込んではいないが、今の段階では,この男は聴衆の1人でしかない。
だが、何を思ったか…吸殻を携帯灰皿へ入れて、

「場所代は払わんが,聴衆の安全確保くらいはやってやろう。
 演奏でも歌でも舞踊でも,拳闘でも,好きな演目を演じてみろ。」

中央の2人にそうとだけ言って、楽しげに笑った。

奇神萱 > 若き日のパガニーニは恋をしていた。

お相手は貴族の女性で、一時は楽器を手放してまで一緒に過ごすことを望むほど熱を上げた。
恋人はギターを弾いていた。パガニーニはヴァイオリンをやってた。
楽器が違う。音楽を愛する二人は同じ音を奏でられない。
だから、パガニーニは最愛の人と競演するためだけに曲を書いた。

突き抜けたバカだ。真偽のほどはわからないが、バカバカしくて美しい話だと俺は思う。
そして傑作が生まれた。

この世ならぬ場所からギターの伴奏が入る。それは彼方からの音楽。
底抜けに爽やかな旋律。縦横無尽に雄飛する音域の妙。
それはこの際どうでもいい。

この曲はヴァイオリンとギターのための『カンタービレ』。恋する男が書いた歌だ。
生まれや育ちが違っても、立場の違う者同士でも、ひとつの旋律を奏でることはできる。
過去も未来も関係ない。それが俺からの返答だ。

ライガ > ギターの伴奏が入ると、辺りをちらりと見回す。
勿論ギターなんてどこにも見当たらない。

「いや、だから、なんで君がそのヴァイオリンをもってるのさ。
まあいいや、僕はそっちに付き合う気はないから」

眼の奥がチリチリと痛むのを無視しながら、
銀色の鎖を取り出し、地面にジャラジャラと伸ばし始める。

「ま、とりあえず遺品の回収でもさせてもらおうかね」