2016/05/03 のログ
ご案内:「商店街」に寄月 秋輝さんが現れました。
寄月 秋輝 >  
商店街、スーパーの一角。
本日の悩みどころだ。

右手に持っているのは、値段は高く少々小さいが、鮮度がよい状態のレタス。
左手に持っているのは、値段こそ安いものの、若干端が黄ばんできているレタス。
と言っても、十数円の差しかない。

「……さて……」

しかしここに居る男はそれに真剣に悩む。
一食分ほどの差も無いサイズ差だが、鉄面皮の眉間にわずかに皺を寄せるほどに悩んでいる。

寄月 秋輝 >  
右手のレタスを掲げる。
同居人が居る以上、鮮度には気を遣うべきか。
いい食材を用意しなければ失礼にあたるか。

右手のレタスを下げ、左手のレタスを掲げる。
いや、同居人が居るからこそ、可能な限り節制すべきか。
悪くなった場所は切って捨てて、火を通せば問題ないだろうか。

その他の安いものを詰め込んだ買い物かごを見る。
安売りシールの貼られる瞬間を見て買い集めた食材たちと共に扱う食材として、このレタスはどちらがふさわしいか。

彼の思考は途絶えない。

寄月 秋輝 >  
悩みに悩んで一分後。
どうやら決心がついたらしい、左手に持っていた古めのレタスを棚に戻した。
自分一人ならまだしも、同居人にこれを食べさせるのはしのびない、と感じたようだ。

一瞬だけ十数円の名残を感じて、左手が離れようとしなかったが、それを無理矢理引き離す。我ながら女々しい、と青年は自嘲気味に笑った。

「あとは……」

次の目的を探す。あとの買い物は、さほど迷うこともなく。
どんどんカゴの中身が増えていく。

寄月 秋輝 >  
二十分そこそこで買い物を終え、会計を済ませる。
移動した先の世界での買い物ルールが全く変わらないことは救いだったと言わざるを得ない。

「買い忘れ無し、と」

持参の買い物袋にしっかり詰め込み、抱える。
しっかり鍛えた体にこの程度の荷物は重荷にならない。

寄月 秋輝 >  
「平和だな」

そう、かつての自分の生き方とは比較にならないほど。
店を出て、薄暗いが残照の残る空、そして常人には見えぬ空の星々を眺めて、思わず呟く。

などと考えていると、また厄介ごとが起こりそうだ。
そういう日は早々に帰ってしまうに限る。

少しだけ足早に、家への道を急いでいった。

ご案内:「商店街」から寄月 秋輝さんが去りました。