2016/06/04 のログ
ご案内:「商店街」に蕎麦屋さんが現れました。
■蕎麦屋 > 夜も更けたころに、いつもの屋台を担いでえっちらおっちら。
道具の買い出し――などと思い立って遠出をしてみたのだが。
「あら――よく考えれば当たり前ですねぇ。あらら。」
よく考えてみれば一般的な店で夜が更けても開いている店など中々ない。
歓楽街ならばまだまだこれからなのだろうけれど。せいぜい24時間営業のコンビニくらいか。
見事に一面のシャッター……帰り路を急ぐ人影がちらほらあるくらい。
「……どうしましょう?」
折角来たので帰るのも忍びないが、店を置くには少しばかり場所が悪い。
■蕎麦屋 > 「……どこかない、ですか、ねぇ?ないですか。」
徒歩で、というのは時間が掛かって仕方がない。出来れば二度足は踏みたくないのだけど。
と、未練たらたら商店街を端まで歩いてみるつもりで。
客がいれば置けばよし、どちらもなければ帰るのも仕方なし。
■蕎麦屋 > 「――あ。」
そも――声をかける奇特な客も居ないのでは。
思い出したように提灯には灯を入れておく。――『掛け100円』のいつもの文字が浮かぶ。
「これで良し。」
鼻歌交じりに再び。
今度は昼に――その前に、住民票なりなんなり作ってからですけど。
ご案内:「商店街」に塩塚 東一さんが現れました。
■塩塚 東一 > ぶらぶらと今日も今日とてギャンブル三昧、博打とイカサマが得意と言う、おおよそまともな人間とは思えないプロフィールの持ち主である
「あん?蕎麦屋か?」
見ればそばの屋台がある、そう言えば蕎麦なぞこの頃食っていない
たまには屋台もいいものだと思い、ふらりと寄る事にした
「こりゃどうも」
■蕎麦屋 > 「あら――毎度。はい、蕎麦屋でございますよ。」
胡散臭さで言えばあんまり人の事も言えない。それに人は見かけによらぬとも言いますし。
そも、蕎麦を食うというなら客でありそこに貴賤もなし。
よいしょ、と屋台を下して開店準備。
人通りも少ないし――少々の時間なら店を開けても問題もない、はず。
「少々お待ちくださいね……一杯いかがです?」
簡易の机と椅子をさくりと準備。
瞬く間に夜鳴き蕎麦屋の開店です。
■塩塚 東一 > 「ラーメンの屋台ならともかく、蕎麦の屋台なんてまるで落語の世界だなぁ……」
有名な「時そば」など、落語には度々蕎麦が登場する。
「所謂、夜鳴き蕎麦、って奴か、ああ一杯頼みます」
椅子に座って蕎麦を頼む、割とワクワクしているらしい
■蕎麦屋 > 「中々時代錯誤で宜しいでしょう?
夜鳴き蕎麦、というとラーメンの方を浮かべる方が多いようですが――」
落語の世界、というか売り方だけならばそのままだろう。
会話は途切れさせないままに、器と手打ちの生蕎麦を取り出して、蕎麦を鍋へ柔らかく放り込む。
伸びない程度に火が通れば笊に上げ、湯を切るついでに器を温める――器も一度水を切り、流れで蕎麦を盛る。
きっちりと出汁から取った熱い汁を張り、刻んだ葱と海苔を添えれば――
「はい、毎度、お待たせです。……薬味と天かすはそちらから好きなだけどうぞ」
つ、と至って普通のかけ蕎麦を客の前へと。机の端に置いてある薬味と天かすの器も示して。
■塩塚 東一 > 「おっ、やっぱ旨そうだねぇ、出汁の匂いが腹に響くや」
そう言ってまずは汁を一口
「うんうん、しっかり出汁が出てんなぁ、カップ蕎麦なんかも嫌いじゃないけどな
やっぱりこういうしっかり蕎麦した蕎麦は格別だよなぁ」
かつおの風味がよく出た汁を味わいお次は蕎麦だ
「いいねぇいいねぇ、やっぱり蕎麦は細くなくっちゃなァ
こないだ自分で作ったんだけどさ、うっかりほっといたら汁吸って太くなるわプチプチ切れるでさぁ」
なんだか落語めいた事を言っているが実際に蕎麦は旨い
ずるずると蕎麦を食べて行く
■蕎麦屋 > 「カップ麺にはそれはそれで良さというものがございますけどね。
まだ少しばかり冷える時分ですから、こういうのがまた格別かと思います。」
いやぁ、それにしても勢いよく啜ってもらえると気持ちがいいもので。
頷きながら、蕎麦をほおばる姿を見て――
「あー……それはもう、茹で過ぎとしか言えないですねぇ。
冷蔵のパックなら、目安時間通りに茹でれば旨い蕎麦になりますよ。湯も並々張らなくてもよいし。
時代の発展は目をみはるばかりです、まったく。」
あ、でもそこらの冷蔵パックよりはうちの蕎麦の方が格段に旨いはずですけれど。とは付け加える。
■塩塚 東一 > 「しかしまぁ、旨いねこの蕎麦
しっかりコシもあるし汁も旨い、文句なしだよ」
旨い旨いと言いつつ
「そういやこの店、何か名前あるのかい?」
落語では「当たり屋」なんて名前があるが……
■蕎麦屋 > 「いや、有り難うございます。そう言って貰えるのは蕎麦屋冥利に尽きる話で」
絶賛には感謝をもって答える、と。
「はい?……屋号はございませんよ。
蕎麦屋ですから、強いて言えば蕎麦屋が屋号でしょうか。」
小さく首を傾げて、考える素振りをしてから。
蕎麦屋がすべて蕎麦屋と名乗れば区別もつかないだろうが。
■塩塚 東一 > 「へぇ……ま、飾りっ気がないってのもいいね
最近はキラキラネームだか何だか分んないけど人の名前だかペットの名前だか分らねぇ名前があるからなぁ
名前ってのは憶えやすくて親しみやすいのが一番だ」
コイツもコイツで東一、という何ともシンプルな名前の持ち主である
しばらくして器もすっかり空っぽになり、箸をそろえて器を差し出した
「いや旨かったよ蕎麦屋さん、ここまで旨い蕎麦は始めてかもなァ」
■蕎麦屋 > 「何をしているか、個人が特定できるならそこまで拘る物でもありませんので。
いえ、拘りたい方は拘ればよい話ですけれどもね。」
蕎麦屋ならまさか饂飩を食わせろと言われることもあるまい、と思う。
返却された器を受け取って
「はい、毎度。また機会があればどうぞ?
普段は落第街の方で屋台を出しておりますけれど」