2016/06/17 のログ
■東雲七生 > 「んー……緑地に黄色のラインか、
青地に紫のラインか……いっそ迷彩ってのも。」
次々手にとっては、眺めて、なんか違う、と戻す。
それを繰り返し繰り返し、お気に入りの物を見つけられるまで続けていく。
「んー、それとも趣を変えてブーメラン……いやいや、ないない。」
あはは、と半分笑いながら一度手を止める。
■東雲七生 > 「……それにしても。」
まだ6月で、海開きまでひと月あるとはいえ静かな店内である。
店員の姿もあるし、店内放送も流れているのだが。
潰れてはいない割に、客の入りはそんなに多くないように見える。
「……それとも、今日がたまたま空いてるだけ?」
それならそれで、人目を気にせずのんびり選別できるから良いのだが。
ご案内:「商店街」に四季夢子さんが現れました。
■四季夢子 > ――ああ、そういえばもうそんな時期ね。
私がさも聞いてから思い出したと云わんばかりに眉を動かすのは、放課後に級友のお喋りが流れてきたから。
去年は去年で用立てたような気もするけれど、結局余り使いもせずに肥やしとなって、
結局年末の際に処分してしまったのよね、と頤に指を添えながらの帰路の折。
これも縁で丁度良いかと商店街に足を向けた。
「しーののーめ君っ……じゃないの、こんな所で奇遇ね?」
その結果、縁の寄る辺か顔見知りの姿を認めたりもし、こうして後ろからぺちーんと肩を叩いての御挨拶だってするの。
忍び寄る時にこっそりと透明になっていたのは言うまでもなく、驚かしてやろうって悪気の無い悪意がたっぷり。
■東雲七生 > 「うおぅ!?」
後ろから唐突に肩を叩かれて声を掛けられれば、心底驚いたって声を上げる。
ついでに軽く跳び上がったりしつつ、手に持った水着をそのままに振り返って。
「な、なんだよ、四季かあ……あー、びっくりした。」
なんて場所で悪戯してくるんだよ、と非難がましい目を向けつつ。
こっちは男用なんだけど、と辺りを見回して。
……ああ、確かにこっちの方が合うのかな、とか失礼な事を再び思う。
■四季夢子 > 彼の反応は期待通りのもの。
まるで兎さんみたいに飛び上がってくれるものだから、
私はそりゃあ満足そうに向日葵みたいに笑って差し上げるのでした。
「あはは、吃驚してくれてありがと。貴方って反応が面白いからついつい……
で、貴方も水着を買いに来たの?ほら、こういうのって通年着るものでも無いから――……」
形だけの謝罪をするように笑顔のまま己の手を併せ、頬に寄せてみせるのだけど東雲君が周囲を見回す
ならば、私の眉はぐるぐると上がりそうにもなる。
「貴方の後姿が見えたから来ただけだってば。流石に海パンとか私が穿く訳ないでしょ。」
なに、それとも穿いて欲しいのかしら?と肘でつつくような素振りをしながらも此方も周囲を一瞥す。
……うわあ、フンドシとかある。あれって誰が着るのかしら。
■東雲七生 > まだ少し驚きの余波で高鳴る胸を軽く撫でて、
小さく深呼吸をしてから笑う四季を睨みつける。
店の中で大声出したら迷惑かけちゃうじゃないか、と。
「むー……せめて外でしてくれよな、そういうことは。
……そうだよ、一応去年買ったのもあるんだけどさ。
一着だけだと、連日泳ぐにはちょっと心許無いって言うか。」
要するにローテーションするためにもう一着、ということ。
それから立場が逆転して非難がましくこちらを見る四季には、苦笑を返して。
「お祭りとかでお神輿を担ぐ人って、男女問わずそうだったりするよな。」
流石に海でふんどし姿は見ないけど、と。
■四季夢子 > 「おっと、それもそうねー。風紀の人とかうっかり呼ばれでもしたら面倒な事になっちゃう。
私の方は結局……ほら、貴方や朝宮先生と何度か泳ぐの練習したじゃない。それきりになっちゃって
使わなかったから年末に処分しちゃったのよね。」
互い互いに怨ずるような視線は互い互いに苦笑に追従して消えて、
此方は新しいものを買いに来たのだと簡単な御説明。
「あ~成程……?ここ、案外祭事用のもあったりするのかしら。サラシを巻いて法被着てる人とか実際いるし、
何某かのそういう限定的な需要があって生き残っているのかも……ほら、ショッピングモールとかもあるしさ。」
褌については、遊泳用と云うよりは祭事用と言われてみればご尤もねと頷いて、
此処よりも規模の大きいモールには置いていないことを考察し……
「って褌と地域戦略の関連性なんてどうでもいいわ。
東雲君が連日泳ぐくらい水泳好きだってのは初耳っだったけれど、何処か泳ぐのに良い場所ってあったっけ、海?」
そして放り投げて閑話休題とばかりに別の事を訊ねるのでした。
視線が少しジロジロと視るようになるのは、その割には去年は余り日焼けをしていなかったような、的なもの。
■東雲七生 > 「ああ、あれっきりかあ……
まあ冬になったら学校のプールも行くまでが面倒だもんな、仕方ないか。」
温水プールもあったはずだけど、と思いつつ。
笑いながら同情しつつ、新しい水着を手に取る。
「流石に大型量販じゃなかなか売ってないしな、サラシとか法被とかって。
確かにそういう事情から店が残ってるのかもな。
……うん? 普通に海行ったりプール行ったり、川もあるし。
泳げない訳じゃないから、水さえあればどこでも泳げるけど。」
去年はそんなに泳げなかったけどさ、と苦虫をかみつぶしたような顔で付け足す。
全部夏休みの補習が悪いんだ、と。
■四季夢子 > 「……ま、ほら。それに私は水に潜ったりするとアレだからね。
川とかで水遊びとかならなんてこと無いんだろうけどついぞ機会が無くってね。
だから今年はもうちょっと……と思ってさ。浮き輪とかも買おうかなーって。」
苦笑する東雲君に、肩を竦めて見せて去年の己を戒めるようにし、
彼が新たな水着を手に取るならば、此方も何となく別のを手に取ったりする。
紫地に緑の水玉模様なブーメランパンツだった。
「ふっふん、今年は補習が無いように頑張る事ね。で、こういう水着どう?すっごい目立つと思うんだけど。」
補習とは幸い無縁な身の上である事を隠しもしない。そんな風に鼻を鳴らして毒キノコみたいな色の水着を差し出した。
■東雲七生 > 「アレだな、確かに。
まあでもほら、何も泳ぐだけじゃないしさ、海とかって。
浜辺で遊んだりとか、浅瀬で遊んだりとかで十分楽しいじゃん?」
浮き輪良いじゃんか、と笑いながら。
スポーティなボクサータイプの黒地に白のラインが走った水着をそっと戻す。
ちょっとぴっちりし過ぎかなあ、と。
「……うん? あー、似合ってるんじゃない? 四季に。」
ちらり、と差し出された水着を一瞥し。
やたらと温度の下がった視線を四季へと向けてから、自分の手元に目を戻す。
■四季夢子 > 「あら東雲君ったらお世辞が上手になって……なんて言うとでも思ったかっ。
まったくもう冗談通じないんだから……ノリが悪いと女の子にモテないんだからね。」
炎のような目の色をして氷のような視線をくれる。
まあ東雲君ったらなんて器用なのかしら等々感心する訳も無くBooBooと悪態を返してやった。
「でもま、貴方の言う通り海とかも十分楽しいでしょうし、機会があったら行きたい所ね。
都合が合えば一緒に行かない?東雲君のこと、そりゃあ見事に砂浜に埋めてあげるわ?」
悪態をつきながら手は砂を盛る仕草をし、私の脳裏には砂浜に首だけ出している様子が想起される。
「……あ、でも埋めたら埋めたで日焼けしすぎて大変か。ちゃんと日焼け止めとかも用意しないとね。
なんとなくだけど、貴方そんなに肌強くなさそうな気がするし、合う奴とか調べないと駄目よ?」
それはそれとし、日焼けのアレコレを語りもしたならば私の手は次なる水着を手に取った。
白黒ボーダーのボディスーツタイプの奴。レトロな競泳水着のようにもみえるかも。
■東雲七生 > 「俺の方も冗談だって、じょーだん。
別にモテなくたって……あー……。」
水着を物色する手を止めて、神妙な面持ちでどこか遠くを見遣る。
少し考える様に眉間に皺を寄せながら、ぺらぺらと相も変わらずよく回る四季の言葉を聞いていって。
「四季とねえ……あ、それより朝宮先生誘ってやってよ。
何だか泳げる様になるんだーって気合入ってたし。
この夏はアウトドア派になるんだってさ。」
俺は誘われなくとも沖の方で泳いでるし、と。
やんわりと身代わりを提示しつつ遠慮してみる。埋められるんじゃ無かったら行くけども、と内心。
「日焼けなんて……まあ、すぐ赤くなって元に戻るタイプだからな俺。
こう見えて天気のいい日は外走ってるし、焼けてる方なんだぜ?」
ぺしぺし、と自分の腕を叩いて。
それから再び神妙な面持ちになると、おもむろに四季に向き直った。
「なあ、四季さあ。今、好きな人とかって居る?出来れば異性で。」
■四季夢子 > 日焼け止めを塗りすぎて真っ白になった姿を想像したら、
それもまた何処か可笑しくって口端が不審に緩んでしまうのも已む無し。
ただその折に幾つか予想しない言葉が飛び込んで来ると私の首は判り易く悩む、
或いは困惑と言わんばかりに傾いでしまった。
「おろ、朝宮先生?あの人もまだ泳げてなかったんだ……のんびりしてる人だもんね。
でもあの人がアウトドア派になったらこの島の人達は全員アウトドアというか……
そういえば東雲君、この間もジャージ姿だったし結構アウトドア派よねー。」
誇示された腕を釣られて私もぺちぺちと叩くと、酷い言い方をするなら顔に似合わず逞しい感じで、
益体も無く感嘆の声が小さく出たりもする始末。手に取った水着を置き、自分の腕も触ってみるけど比べるべくも無かった。
「うーん……私なんかも一寸鍛えてみるべき……はい?」
そうして比べるべくも無い頓狂な声が出るのは、東雲君が茶化す事の無い真水のような面持ちを向けてくるから。
「……な、何よ急に……まあいいけど……んー……好きの置場にもよるんでしょうけど、出来れば異性なんて言うからにはLoveの方よね。
私はまあ女の子だから?そりゃあ殿方のが好きなのは当たり前として……特定の個人はいない、かな?」
突然妙な事を聞かれたら私じゃあなくっても視線は水着がなくっても泳ぐようになってしまって、指先は困ったように唇に添う始末。
「……あ、でもなんていうの?同性どうのってのに否定とか排他ってつもりは無いわ。だから貴方がもしそうでも応援してあげるね。」
嘘は言わずにけれども茶化すようにしてしまったのは、やっぱり恥ずかしいからっていうのもあったからで、
顔に熱が上がるのが自分でも分かってしまって、ひょっとしたら赤く見えちゃったかも。
■東雲七生 > 「まあ、泳げるとこまで行かなくとも一緒に砂遊びとかしてあげたら……
って、それはもはや子ども扱いか。
でもほら、きっと朝宮先生と一緒に居たら目立つしさ、俺は遠慮しとこっかなーって。その点四季なら、消えれるし。
ん、俺はまあ……1年の時からそうだし。」
物凄く無責任な事をしゃあしゃあと言ってのけ、な、と同意を求める。
しかしアウトドアについて、自分の事も言及されれば、きょとんして答えた。
じっとしてるのは寝てる時以外あんまり耐えられない性質なんだ、と。
「別に、四季は女子だし良いんじゃないか?
それに、それ以上痩せたりがっちりしたら男子に間違われるようになるぞ。」
にひ、とからかう様に笑ってから、真顔でぶつけた質問の答えを受けて。
再び考え込む様に一点を見つめる。丁度手元に良い標的が居るので、買うつもりもなく水着を睨んで。
「いや、別に恋愛観は良いんだけどさ。同性でも異性でも。
んじゃあ、質問変えるけど。」
あー、うーん、と言葉を選ぶように呻き声を上げて。
それから、じいっと四季の瞳を覗き込むようにして、
「四季って、今まで誰か好きになった事ある?
Likeじゃなくて、Loveの方で。恋ってやつ。」
■四季夢子 > 朝宮先生が見目に反して稚気十全に砂遊びに興じる姿や、
失礼にも程があるけれど、何処か憎めない東雲君の冗談。
それら波間に漂い現れては消える白波のような物事を全て飲み込むような津波が一つ。
一つ波乗りをこなさないといけないかしら?と視線が再び泳ぎだそうとするけれど、
炎みたいに真っ赤な瞳が私を捉えてそうはさせてくれなかった。
「………………恋って言い換えれば愛でしょう?誰かに向けたら、自分だって向けて貰いたくなるものよ。だから私は無いかな。」
親にも愛されない私にどうして出来るものか。
なんて言葉は言える筈も無く、私は苦笑を伴わせて嘘ではないけれど、本当とも言えない言葉を返した。
オトメゴコロは複雑なのよ、なんて芝居がかった所作でウィンクの一つも添えておこうかな。
■東雲七生 > 「ううむ、そういうもん、なのか?」
怪訝そうな顔で四季から目を逸らして、再び水着を睨む。
何やら思うところあっての問いだった様だが、どうやら余計にこんがらがったらしい。
うーん、と小さく唸ってから、はた、と我に返り。
「あ、ああ。悪いな四季、急に変な事聞いてさ。
四季なら大人びてるしそういうのの一度や二度あるかと思ったんだけど……」
軽く手を合わせて謝罪の意を表す。
柄にもない事聞いちまったな、と少し恥ずかしげにはにかんで。
■四季夢子 > 「………そういうもん、かもね。
別にいいのよ。答えれる事は答えてあげる。だって友達でしょ?」
大人びていると言われたなら、謝罪をする彼の頭を親が子供にするみたいに、不躾に撫でて赤い髪をくしゃくしゃとしてしまおう。
炎みたいな色をしているのにちいっとも暖かくないのが少しだけ、残念。
「ふふん、その様子だと誰か気になる子でも居るみたい?そっちのお話も気になる所だーけーど……
これ以上お話していたらお買物の時間が無くなってしまうから、私はそろそろ御暇するね。」
手を離したら後はそのまま離れてお店の外へ。
買物をすると言いながら水着を買わず外に出てしまった事に気付くのは、屋台のメロンパンの芳しい香りに気付いてからの事。
大きいのを一つ購って頬張りながら、もうちょっと言い方があったかもしれないなって、化け皮だけで大人びてなんかいない我が身を省察するのでした。
ご案内:「商店街」から四季夢子さんが去りました。
■東雲七生 > 「わ、わ……んもう。」
ところどころ癖のある髪がくしゃくしゃにされても元々とタ愛して変わったようには見えない。
けれど七生は何だか子供扱いされてるようで少し不機嫌そうに口を尖らせた。
「いや、別に俺は……あ、おう。じゃあな、四季。」
弁解しようとしたが、その機を逸して。
何だか妙な誤解だけを残したまま、その場を去って行く四季の背を見送った。
「……んー、やっぱもう少しいろんな人に訊いてみるか。」
ぽつりと、独り言を溢して。
それから後は、これだ、という物が見つかるまで水着を物色し続けた。
ご案内:「商店街」から東雲七生さんが去りました。