2016/11/04 のログ
ご案内:「商店街」に学園七不思議―【ヘルメットさん】さんが現れました。
学園七不思議―【ヘルメットさん】 > 夕暮れ時の商店街。
買い物客で賑わう平和な商店街を、一人の少女が駆け抜けている。
息を切らし、時折つんのめって転びそうになるも、懸命に手足を振って大地を蹴るその姿。
何をそんなに急いでいるのかと周囲の人が振り向き、数瞬後、自分は一体何を見たのか?と揃って首を傾げる。
それも仕方のないことだろう。
だって少女はフルフェイスのヘルメットを被っているのだから。

そう、何を隠そう商店街を走り抜ける彼女こそヘルメットさん。
新進気鋭の都市伝説であり、七つどころではない学園の不思議に数えられる(自称)怪異である。
普段は一目につかない場所でしょうもないイタズラを繰り返す彼女が、今日は何故だか衆人環視の中を全力疾走しているのだ。

学園七不思議―【ヘルメットさん】 >  
「っは、はぁっ、はぁっ、はぁっ!」

吐き出した息がフルフェイスのヘルメットを曇らせる。
ヘルメットの内部は最早蒸し風呂もかくやという息苦しさであり、
彼女の多くは無い体力を倍速に近い勢いでゴリゴリと削り取っている。
それでも彼女は足を止めない。止められない。
何故なら―

『待てーーーーーっ!!止まれ!止まれ!!そこのヘルメットの女生徒!!止まりなさいっ!!』

背後には怒気を孕んだ声をあげる鬼の形相の風紀委員が居るからである。
両腕を振り上げ、全力疾走するヘルメットさんに食らいつかんと走る男子風紀委員。
その手にはぐしゃぐしゃに丸められた紙が握られている。

要するに―
ヘルメットさんはしくじったのだ。
何時ものように悪戯を済ませ、「ヘルメットさん参上!」の紙を周囲に張り付けていたところを見回り中の風紀に見つかり、今に至るというわけである。

「ったく、もうっ!!何だって、こんな…しつっこいのよ!!
 アンタ風紀でしょ!?私なんて放っといてもっと大きな事件とか追いなさいよー!!」

後ろを振り返らず叫ぶヘルメットさん。
自分が取るに足らない怪異であると認めるような発言なのだが、今の彼女にそれを気にしている余裕はない。
いよいよもって体力の限界が近づいているのだ。

『やっかましい!!風紀の乱れに大きいも小さいもあるものか!!風紀委員として、見逃すわけにはいかんのだ!!』

背後から聞こえる声はいよいよもって近づいてきている。
このままでは不味い。
神出鬼没、正体不明の都市伝説の正体が露わにされてしまう。

哀れなヘルメットさん。
縋るような視線で周囲を見渡すも、フルフェイスのヘルメットでその視線は周囲には届かない。
ヘルメットさんと追跡者に道を譲るように後ずさる通行人たちは、彼女の視線にびくり、と肩を震わせるばかりである。

あぁ、このままヘルメットさんは捕まってしまうのであろうか。
背後に迫る風紀はここぞとばかりに声を張り上げる

『誰か!!誰かコイツを捕まえるのに協力してはくれないか!!現行犯なんだーーーーっ!!』

そして負けじと声を張り上げるヘルメットさん。

「誰か!!誰か後ろの何とかしてよ!!しつこい変態ストーカーなのーーーーーっ!!!」

互いの叫びは食い違う。
果たしてこの声を聞きつける者は居るのだろうか?
また聞きつけたとして、どちらの声を信じるのだろうか
二人の追いかけっこは続く―