2017/08/10 のログ
龍宮 鋼 >  
(新たに出現した鉄塊の数は五つ。
 しかも捻じ曲がってはいるが、生えているものは明らかに砲塔だ。
 このままでは分が悪い。)

猫だァ?
言ってくれるな風紀風情がァ!

(吼える。
 同時に前髪を搔き上げるような動作を行い、右目を覆う仮面のような甲殻と、両手に手甲のような甲殻を出現させた。
 鋭敏化した視覚と鋼鉄のような拳で放たれる砲弾を弾き、逸らし、叩き付け、じりじりとだがその距離を詰めていく。
 狙いは一つ、近付いてぶん殴る。)

神代 理央 > 「別に猿でもイノシシでも良かったんだが。まあ、街中で噛まれるといえば大概は野良猫か野良犬だろう?…ああ、犬と呼ばれる方が好みだったか?」

唇を薄く歪めるだけの笑みと共に、小さく首を傾げてみせる。
その間にも、彼女に砲弾を放ち続ける異形と、それを物ともせずに距離を詰めてくる彼女の姿に感嘆の息を吐き出す。

「…怪力だけではなく、随分と頑丈なことだ。避けられるのではなく、真正面から叩き落されるとはな。しかし―」

僅かにではあるが、異能の発動に集中する時間が与えられた。
それならば、動きの鈍った彼女に効果的な一撃を与えるべく、高火力の砲塔を備えた下僕をイメージする。
その結果、まるで巨大な毛虫に砲塔を突き刺した様な醜悪な見た目の金属の異形が2体、召喚される事となる。

「…我ながら酷い見栄えだ。だが、徹甲弾を放ち続けるコイツラの砲撃を、いつまで防ぎきれるかな?」

余裕綽々、といった口調と共に傲岸不遜な笑みを向ける。
しかし、クールタイムの無い急激な異能の発動と、普段行わない砲塔を選別した異形の召喚は、戦い慣れていない――まして、戦闘中の異能の発動すらロクに行った事が無い――己の身を蝕む。
頭の奥に僅かに響く鈍痛は、今までに経験した事が無い痛み。その痛みに耐えながら、己の矜持を守る為に尊大な態度と攻撃の手を緩めない。

龍宮 鋼 >  
好きなだけ吼えやがれ……!

(今にそんな口を聞けなくしてやる。
 そう言いたげな笑みを浮かべるが、正直きつい。
 距離が詰まれば詰まるほど、判断する余裕が少なくなるし、しかも数が増えた。)

テメェを……ぶん殴るまでだ!!

(ならば、戦法を変える。
 急所を守るように新たに甲殻を生やし、地面を蹴る。
 頭、心臓、肩や脚など、被弾してはまずいところへの砲弾だけを撃ち落とし、他は全て無視。
 脇腹や頬、額などを銃弾が掠めて血が飛び散るが構うものか。
 血まみれになりながらもものの数秒で鉄塊の懐へ潜り込み、発勁の一撃で彼に向かって殴り飛ばす。
 更にその後ろへ隠れながら接近。)

神代 理央 > 「吠えているのは貴様の方だろう?きゃんきゃん煩いぞ、駄犬」

平和な商店街は既に戦場さながらの地獄絵図と化している。
彼女に吹き飛ばされた異形はアスファルトを砕いて地面に埋まっており、召喚された異形達は轟音と硝煙を撒き散らしている。
被害額が凄まじい事になりそうだな、と鈍痛の響く頭でぼんやりと考えた。

「…面白い。出来るものならやってみろ」

彼女にダメージが通り始めた事に、僅かに警戒の色を見せる。
先程までの攻防を見れば、多少掠る事はあってもあんな出血を伴う程のダメージには至らない筈。
それが今、彼女の身体を砲弾が掠め、自らと同じ紅い瞳を持つ彼女は、その瞳の色と同じ血を流している。
ダメージが通っている間に、戦闘不能にしておくべきだろう。殺すまで至らずとも、動けなくして捕縛せねばなるまい。
そう思考している間に、彼女は異形に突貫し何かをしようとしている。それに対抗する為に追加の異形を召喚しようとした瞬間――鈍い頭痛は突如激しさを増して自身に襲いかかる。

「―…っ、ぐ、あ…」

思わず呻き声を上げ、僅かに体勢を崩す。
吹き飛ばされてきた異形は、何とか脇に控えていた毛虫もどきが砲撃で弾き飛ばすものの、接近する彼女に対してはもう一体の毛虫もどきが必死に弾幕を張ること以外、何も出来ぬまま―

龍宮 鋼 >  
(甲殻で覆った部位はともかく、それ以外は生身の身体だ。
 拳銃弾程度ならともかく、徹甲弾なら貫くことは難しくない。
 ともあれ距離は詰めた。
 もはや遮るものは何も無い。
 一匹程度の弾幕など足を止めるまでもなく弾き飛ばして距離を詰め切り、突進の勢いをそのままに右の拳を彼の顔面へ――)

――やめだ。

(突き立てない。
 体勢を崩した彼の眼前でビタリと動きを止めた。)

勝手に自滅してるヤツ殴ったってちィとも面白くねェや。
弱い者イジメァ趣味じゃねェ。

(歩きだす。
 その途中に転がっている鉄塊の残骸をゴォンと空き缶か何かのように蹴り飛ばす。)

次ィ会うまでに力ぐらいまともに使えるようンなっとけ。

(背中を見せながらひらりと右手を挙げ、どこかへと立ち去っていってしまった。)

ご案内:「商店街」から龍宮 鋼さんが去りました。
神代 理央 > 眼前に迫った彼女の姿を視認し、思わず舌打ちする。
弾幕は意味を成さず、鉄塊を吹き飛ばす拳が己の身に振り下ろされるのは数瞬先の事だろう。
せめて痛みを感じなければ良いのだが――

「………っ…?」

眼前で止められた拳に僅かに身動ぎする。
止めをさす前に言いたいことでもあるのだろうかと、思考の纏まらないまま彼女を睨みつけるが―

「弱い者苛め…だと?ふざけるな!自滅だろうが何だろうが、敗北したのは俺だ!それを…情けでもかけたつもりか…!」

戦い抜いた末の敗北なら良い。例えどの様な条件であろうとも「戦う」という選択肢を選んだ自分が敗北するならばそれは仕方のない事だった。
だが、勝者である彼女に止めをさされず、まして「弱い者苛めはしない」と言われるのは、己にとって耐え難い屈辱だった。

「…言われずとも、次は必ず貴様を倒して、俺の前に跪かせてやるさ。此処で止めをささなかった事を後悔するようにな」

立ち去って行く名も知らぬ彼女に捨て台詞を吐き出した後、力尽きた様に座り込む。
それまで振るっていた異能が牙を剥く感覚と、苦い敗北の味に不愉快そうな表情を浮かべながら荒く息を整えているだろう。

到着した救急車に運ばれる事を良しとせず、到着した風紀委員に事後処理を頼み、事の顛末を後日報告する旨を伝えれば、フラフラとした足取りで此の場を立ち去った。

ご案内:「商店街」から神代 理央さんが去りました。