2018/11/13 のログ
ご案内:「商店街」に厨川 児鹿さんが現れました。
■厨川 児鹿 > 「……むむ。こちらが……いやこっちも…」
商店街、とある八百屋で首をひねる少年。
いや、ただの少年ではない。学生服に身を包み、風紀委員腕章を身に着けた……
青年と言うには、どうにも小柄すぎる少年だった。
「…この人参下さい!」
ぴし、とニンジンを指差し、店主に突き出す。
…店主が軽く拍手をした。今日一番の上物を引き当てたらしい。
小さくガッツポーズをして、似たような物を数本買い込んでから店を出る。
■厨川 児鹿 > 彼の名は『厨川 児鹿』。
極一般的な、普通で通常でノーマルで平凡で凡庸で特筆すべき所のない男子生徒。14歳である。
趣味は料理。特技は合気道。
そんな彼は今、明日の朝食の献立を考えながら自転車を押しているのである。
■厨川 児鹿 > 「……………………はっ。」
ぴた、と足が止まる。
『今川大判あじまんおやき チョコアーモンド味新発売 1ヶ200円』
それは悪魔の誘惑であった。
児鹿はナッツが非常に好きであり、その中でもアーモンドはとびきりに好み。
それがクランチとなりチョコクリームとタッグを組んだら1+1で200だ。10倍だぞ10倍。
「(…いや、しかし……かなりこれは、キツいのでは……
欲望に負けてしまっていいのかボクは……)」
しかしそれは同時に2つの問題を発生させる。
1.ここで買って食べたら、まず間違いなく夕飯が腹に入らなくなる。
2.どう考えてもカロリー・脂質ともにオーバーしてしまう。
3.買い食いはかなりはしたない行為。風紀委員として良いものかどうか。
冷静に考えたら3つだった。
そんなわけで、邪魔にならないところへ自転車を移動させてウンウンと唸っているのが現状の児鹿であった。
ご案内:「商店街」に冬桐真理さんが現れました。
■冬桐真理 > ――放課後の商店街。
日も傾き冷たい風が脂や砂糖の香りを運ぶ通りを女が歩く。
長身の女性はいつものレインコートではなく、割烹着――田舎のお袋のような、食堂のおばちゃんのようなそれを身に纏い、灰色の髪を白い頭巾で包んだ格好で藤かごを提げて練り歩いていた。
「昨日はから揚げだったな。次は魚にしたいところだが・・・・・・」
通り過ぎたのは商店街でも有名な揚げ物屋。
とんかつの質に自信アリの名店だが横目で眺めてスルーする。
家庭的を極めたような格好から放たれるのは物騒でぶっきらぼうな言葉遣い。献立を考えているようで、自炊スキルのない彼女にとっては惣菜の選別程度であれど悩むもの。
「・・・・・・なんだ、あれは?」
焼き物か干物か、それとも煮物か。
漠然と魚料理を想像しながら歩く先に見えたのは見かけない、小柄な影。
何かに悩むような、困ったような唸り声を上げる姿に見えたものは風紀委員の腕章。
一瞬遠回りでもしようか、と思うがあからさまに悩んでいる様子であれば見捨てるのも後ろ髪引かれるもの。
「・・・どうした、財布でも落としたのか?」
結局小柄な男子学生に話しかける目つきの悪い家政婦という構図になってしまうのだった。
■厨川 児鹿 > 「……いや……しかし……」
ぶつぶつ。しばらく気付いていなかった小柄な少年も、話しかけられれば流石に顔を上げる。
眉間にシワは寄っていたものの、その顔は女か男か一瞬わからないほどに中性的で整っている。
「はっ。あ、ああいえ何でもありません。お声掛け頂きありがとうございます!
そこの大判焼きのチョコアーモンド味を買うか否か迷っていたところなので!」
ぴし、と背筋を正して受け答える。
首から下げた、風紀の文字が彫り込まれたホイッスルがからからと揺れた。
全体的に身奇麗で真面目そうな印象を与える、きっちりした姿である。
■冬桐真理 > 「馬鹿真面目か。」
あんまりな第一印象が口を衝く。
ちらりと一瞥すれば小奇麗に整えられた、整えられた顔立ち。
対応とルックスから、年上女性の弱そうなタイプだなと考える。
「チョコアーモンドか、美味いだろうな。
迷うくらいならば買えばいいだろうに」
身も蓋もない答えだが、「何を迷うのか」と言わんばかりの表情。
■厨川 児鹿 > 「よく言われます!」
すっごいポジティブシンキングだった。
実際言われ慣れているのだろう、特に裏で傷ついた、という素振りもない。
何やら思われているとは露知らず、やはりまた首を傾げ始める。
「いえ、それはそうなのですが。
いかんせんカロリーと脂質が高い食べ物ですので、武道を志す身としては節制すべきではないかと思っておりまして…
それに今食べると晩ごはんが入らなくなりますし。」
むむむむ、と悩む悩む。
だが欲望を肯定されたことで、じわじわ食べたい派が台頭してきた模様である。
■冬桐真理 > 「そうだな、チョコもアーモンドも生地も、どれも脂質の塊だ」
少年の悩みにうむと頷く。
人の食生活に口出しをする趣味はなく、できるような食生活を送っているわけでもない。
「そうか、ならばあたしは買おう。だが、ひとつ丸々ではもたれるな。
――半分協力してもらえるか」
にぃ、と悪巧みのような顔で(味覚的にも)甘い誘惑を掛ける。
■厨川 児鹿 > 「ですよね……やはり避けたほうが。」
そこまで言って、魅力的な提案に顔を上げる。
「…おお、それでは料金の半分はボクが出します!
なるほど半分なら問題ありませんね!」
ふふん、と少し悪そうな顔を真似して見せて、すたすたと店へ歩いていく。
馬鹿真面目ではあるのだが、厚意を無碍にするほど堅物でもなければ空気も読めるらしい。
■冬桐真理 > 「物分りのいいやつは好きだぞ。ならば善は急げだ。
売切れたら格好がつかんぞ」
少年の後を追い店へと足を進める。
正直なところ少年が言わなければ気にすることもなく通り過ぎていただろうが、いざ話題に触れれば興味を惹かれる。
半分は少年の後押しだがもう半分は自身の興味でもあるのだ。
「ああそうだ、大判焼きはな、てんぷらにしても美味いぞ」
テレビか雑誌か、そんな話を思い出す。
■厨川 児鹿 > 「そうですね!ありがとうございます!
すみません、チョコアーモンド味一つ!」
ひょこ、とカウンターに顔を出して注文する。
作っていたおばちゃんが一瞬孫を見るような目になった。
生地の焼ける香ばしい香りと、チョコの甘い香りが周囲に漂う。
嗅いでいるだけで珈琲が欲しくなる香りだ。
「え"、天ぷらですか?……すっごいカロリー高そうですね。
…美味しいのかなぁ。やってみようかなぁ……いやしかし……」
また考え込んでしまった。
アイスの天ぷらもあるしなぁ、でもなぁ、などと聞こえてくる。