東方三神山の一つ、「瀛洲(えいしゅう)」の名を頂く大古書店街。
学生街の中にありながら、異彩を放つ区域である。
常世学園の草創期から存在するとされ、経過年数に関わらずやけに古びた外観の店が大通りを含め、路地などに密集する。
古今東西の様々な書籍が集まる「書海」であり、学術書から魔導書、一般書、コミック、ダイムノベル、パルプ・マガジンなど扱われる書籍のジャンルに際限はない。
また、時折「異界」の書物も売りに出されることがある。
非常に価値の高い稀覯本なども取り扱われており、「禁書」の類のものも密かに取引がされているという噂がある。
一度迷い込めば抜け出すには時間のかかるような書籍の混沌の地。
学生街にある「古書店街」の大通りを中心として、幾つもの路地が伸びており、そのどこにも古書店が存在する。
印象としては雑多な街といえるだろう。
週末には古本祭りが行われ、安価に書籍が購入できる。
『万物の運行表(スキーム)』という、白と黒の頁から成る、未来過去現在の三世を記した予言書めいた書物などが流れたという噂が定期的に起こるが、どれもこれも眉唾な噂である。
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Time:02:28:04 更新
ご案内:「古書店街「瀛洲」」から神代理央さんが去りました。
■神代理央 > 結局、目当ての本は購入出来なかったものの、立ち寄った古書店の主人と話が弾み、珍しく有意義な休日を満喫して古書店街を後にしたのだった。
■神代理央 > ロクな買い物も出来ぬまま、随分と日も落ちてしまった。
魔術関係の資料や冬季休暇明けの講義で利用する書物を購入したかったのだが。
「…まあ、今更どうこう言っても仕方ないか。別段休みが潰れた訳では無いのだし」
まだ閉店していない書店もちらほらと見受けられる。
最悪、買う予定のものが見つからなくても久しぶりの休日を有意義なものに出来れば良いかと歩みを進める。
■神代理央 > 「…だから言っているでしょう。今日は非番なんですって。……別に365日本庁に詰めているわけじゃありま……いや、何で私の電気代知ってるんですか。正直ドン引きですけど。………ええ、はい。書類の推敲は明日お伺いしますから。それじゃあ、また明日」
久しぶりに袖を通した制服以外の洋服で古書店を巡り始めて一時間程。鳴り止まない着信とその内容に辟易しながら深い溜息を吐き出した。
「これでは、おちおち休んでられんな。全く、少し事務仕事に精を出せばこの有様か…」
最近は実働部隊では無く本庁での事務仕事も請け負うようになり、人員不足が叫ばれる風紀委員会において雑多な書類を片付ける戦力となりつつあった。
年末だから仕方ないのかと思いつつも、そろそろ落第街辺りを掃除しなければならない時期でもある為、迂闊に休みも取れないかと少し悩む。
どうせ帰省する予定は無いし、多少の雑用なら引き受けても良いのだが。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」に神代理央さんが現れました。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」から白鈴秋さんが去りました。
■白鈴秋 > 「Bランクの限界ということだ、恐らくな」
観念したのを見ても糸を緩めることは無い。相手は呪いの本を所有していた、何をしてくるかわからない……もう拘束した、一瞬でも不審な動きをすれば。即座に切り裂くだろう。
「いや、なんでもねぇよ」
相手の少し心配したような声には笑って返す。
態々話して慰めて欲しいなどと言う性格ではなかったから。
外からドタドタと足音が聞こえる。風紀がもうじき乗り込んでくるだろう。
「出来りゃ、風紀と表立って関係持つのは避けたかったんだが」
そんな事を呟くが、既に遅い。一気に乗り込んで来て、老人を連れて行き、自分達もまた事情徴収という形で話を受ける羽目になるだろう。
まだまだ暑い8月31日。8月最後の日の出来事だった。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」からアリスさんが去りました。
■アリス >
『圧力……そんなことで…死者の指が……』
拘束されると、観念した様子で項垂れる老人。
これで完全に事件は終わった。
「うん、助かった。ありがとう、秋」
そして彼の笑顔を見ると、心から安堵して。
いまさら足が震えたりして。
怖かった。もう終わってしまうかと思った。
「……秋?」
一瞬だけど彼が見せた表情は、嬉しさと切なさが混じったような。
すぐに普段通りの顔に戻った彼に、笑顔を見せて。
「うん、風紀の人に話をして、ご飯。手順としては何も間違っていないわ」
残暑厳しい夏の日のことだった。
また私は不運に巻き込まれて。
それを助けに来てくれた友人と乗り切った。
それだけの話なのに、どこか心が晴れやかだった。
■白鈴秋 > 「……本が壊れるほどの圧力をかけた。アリスがな、俺はそれを出来る環境を作っただけだ」
具体的には言わないが答えはする。何も答えずには少し可愛そうにも思えたから。
そして腕を振るうと……その糸は老人を拘束するように変化した。
「安心しろ、別に殺しはしねぇよ。風紀に引き渡してしかるべき処置をさせる……もっとも、さっきの話が事実ならもう自由の身になることは難しいだろうがな」
定期的に食わせていたのであれば食わせた人数は一人じゃないはずだ。良くて長期の有罪。最悪死刑……もっとも、年齢を考えればおそらくはどちらにしても牢屋が最期の場となるだろう。
「お互いに無事で何よりだな。助かったアリス」
そうお礼を言い少しだけ笑いかける。
拘束していない方の手で風紀の通報ダイヤルへと連絡する。来るまでにそう時間はかからないだろう。
「……本当に無事でよかった」
少しだけ目を伏せる。前は守りたい人達を守れなかった、だけど今回は友人と二人とも無事だった。それが嬉しくて。
だがそんな少しなきそうな顔はすぐに元の顔へと戻り。
「たぶん俺たちも風紀に話をする羽目になると思うから……終ったら飯でも行くか。それから帰って、飯つくるのは面倒だ」
■アリス >
「秋……」
ばっと立ち上がり、自分の体を触る。
どこも痛みはない。無事で、完全に意識も戻っている。
『…報いを受ける時か。その前に聞かせてくれ、いったいどんな手品を使ったんだ?』
鋭糸に囲まれながら燃え盛る魔導書を見続ける老人。
『アンチマジックか? それとも結界を破壊する術法か?』
立ち上がって秋の後ろに隠れる。
事件は終わった。後は彼をどうするか、で。
■白鈴秋 > 「ったく、変な期待かけんな」
信じてるから。そういわれ笑う。だがしっかりと任された仕事は果たす、彼女の能力ならあの怪物が復帰するまでにここを砂で満たすだろう。
周囲のざわつきがさっきまでと違い滑稽に思えてくる。
「今度からはもう少し弱い奴を選ぶんだな」
逃げまどう観客、そしてもがいている怪物にそう言い放つ。
世界がきしむ音が聞こえ、同じように闇へ。
「……当然の報いだ。相手が悪かったな……アリスを、こいつをいれたのは間違いだったぞ」
自分ひとりでは時間をかけ怪物は倒せても抜け出せたかはわからない。抜け出せたのは彼女の力のおかげだろう。
「アリス無事だな」
友人の名を呼び確認する。これで彼女だけ居ないなどそんな後味の悪いのはごめんだ。
糸は完全に老人を取り囲むように配置する。下手に動けば即座に襲い掛かり切り刻まんと。
■アリス >
「信じてるから」
場内がざわつき始める。
顔が黒塗りに覆われた観客たちに動揺が走る。
私と秋がしようとしていることに気づいたのかも知れない。
怪物は糸の結界に飛び込み、しなりを受けて自らの力の報復を受ける。
壁に叩きつけられ、ぎゃああああああと喚いて乱雑に両腕を振り回す。
「ジャバ………ウォック!!」
あらん限りの物質を砂に変え、周囲を圧迫していく。
小さな世界が砂に飲まれていく。
観客たちは止めようと場内に降りたり、逃げ出そうと右往左往。
赤子は糸を引きちぎらんと浮腫んだ腕を伸ばしている。
「もう遅い!!」
激情に任せて異能を使う。
砂に満ちた世界が軋み、悲鳴を上げ、大きな破砕音が響き、視界がブラックアウトした。
目を覚ますと、大した時間も経過していないのか机の横で麻痺毒に蹲る老人が見えた。
老人の目の前で魔導書、死者の指が燃え盛っている。
『やれやれ、これは面倒なことになった』
■白鈴秋 > 「予想はしていたが、これも十分な攻撃手段か」
耳を劈く泣き声、それは人の機能を失わせるには十分以上な破壊力を持つ。
その上でのあの動きだ。普通にやれば間違いなく殺されるだろう。
だがこちらは二人共普通じゃない。向こうは色々な物を作り出す凄まじい能力。そしてこっちは高速移動手段がある。
腕を伸ばされると空中に糸を伸ばし上へと思いっきり飛び上がる。
グルンと空を軽く回り、そのまま着地。先ほどのように。アリスの前、射線を邪魔しない位置へと。
それにしても恐ろしい威力だと思わず舌を巻く。火力担当を彼女にして正解だったかもしれない。
「ああ、守るのは問題ねぇが……一体何をするつもりだ」
質問をしてもそれの答えを聞く時間などくれるわけが無い。向ってくる怪物。
そして生み出される砂を見て。理解した。
「良いアイデアだ。了解した、守りは任せろ」
信じて突撃する。相手は巨大。ならばその力もまた絶大だ。
相手の足をくぐりぬけ反対側の壁に糸が突き刺さる。それを利用し相手へと高速で突撃する。
「悪いが、こっちは通行止めだ」
同時に巨大な蜘蛛の巣状に糸を張る。相手の速度もあり自分も高速で動く故にその力は大きい。もし蜘蛛の巣にまともにぶつかれば、しなった糸はゴムのようにその力を跳ね返し、壁に激突するのはすぐだろう。
■アリス >
「その前にトランプの兵隊とも戦わないとね、時間がかかりすぎる」
迫り来る巨大な赤子。
しかし、本当にあれを倒したらここから出られるのだろうか。
老人は言っていた。『それも織り込み済み』と。
多分、戦闘系の異能や魔術を持つ人間がこの世界に入ることも想定済みで。
そして、『二人ならちょうどいい』とも言っていた。
多分、この世界の容量はそれほど大きなものじゃない。
それを上回る負荷をかけられたら?
この世界を壊して抜け出せるんじゃないのだろうか。
「わ、わかった!!」
周囲の物質が球形に抉り取られる。
私の異能を使うに都合がいい、万能の元素とも言える気配が満ちる。
電撃を帯びた刃が怪物を切り裂く。
そして痺れると同時に、赤子らしく、泣いた。
泣き出した。
その大音声は耳を劈く。
そして転がるように手を突き出し、私たちを掴もうとしてくる。
足元に手を当てると、風紀の自律戦車を思い出した。
あの破壊力を。
「空論の獣(ジャバウォック)ッ!!」
接地ガトリングガン、GAU-8 Avengerを作り出し、耳を塞ぎながら速射。
鋼弾が赤子を押し返すように弾幕で圧倒する。
一発一発が常人が当たったら血霞になるレベルの威力。
「秋!! この世界を壊すわ……もし何かあったら守ってね!」
周囲に砂を作り出す。
それも大量に。この世界をオーバーフローさせ、内側から破壊する。
できるかどうかはかなりの賭け。
ガトリングで体のあちこちを欠損した、グロテスクな怪物がこちらに突撃してくる。