2016/11/20 のログ
クローデット > 何故かは分からない。
それでも、この身体が、この足が、魂が、「行くべきところ」を知っているかのように…何かに導かれるかのような足取りで、古書店の「とある場所」にまっすぐと向かう。
そして…そこにあったのは、白魔術の奥義書だった。
著者名は「Caroline Renan (カロリーヌ・ルナン)」。
曾祖母の、そのまた曾祖母に当たる人物で、ルナン家が生んだ白魔術の大家の一人だ。

「………。」

クローデットは、畏れるように震える指先で、その魔術書に手を伸ばした。

クローデット > その魔術書を手にすれば、先ほどまで感じていた安らぎの根源がそこにあった。
思わず、その奥義書を胸に抱く。

無論、故郷に帰れば、この奥義書も手の届くところにある。クローデットは、ほかならぬ著者直系の子孫だ。
しかし…こちらでは他の研究、実際的なものや必要なものを優先していて、なかなか白魔術を更に高みに持っていく余裕がなかったのだ。

それでも…身体が、魂が、これを欲していたのだと、思わせるほどの何かがそこにはあった。

(ああ、わたしには、やはり…)

ご案内:「古書店街「瀛洲」【常世祭期間中】」に獅南蒼二さんが現れました。
獅南蒼二 > 視線がその本へと向けられているのなら,背後の影に気付くことはできなかっただろう。
足音を潜めたわけではないが,別段,大きな音を立てたわけでもないからだ。
だが,彼は己の存在を隠すつもりなど,さらさら無かった。

「カロリーヌ・ルナンか……白魔術を扱った文献としては古典だが,優れた魔導書だな。」

背後から向けられる声に,貴女は何を感じるだろうか。

クローデット > 「………獅南先生、お久しぶりです。
最近は、講義に顔も出せずに、申しわけありません」

背後に柔らかく振り返り、そう答えるクローデットの声は、いつもの余裕を持って…いや、いつもより優しげに響いた。

「実家に帰ればあるのですけれど…こちらには持ってこられませんでしたので、つい。
お恥ずかしいところを見られてしまいましたわね…まだ、自分のものにもしておりませんのに」

改めて獅南の方に向き直るクローデットは、淑やかな微笑を湛えている。
クローデットが目の前の相手に…「裏切り者」に敵対しないのは、先日の件はあくまで「別人」だから、という建前だけでもなさそうだった。

獅南蒼二 > 獅南がわずかに目を細めたのを,貴女はどう見るだろうか。
少なくとも獅南は,貴女の言葉や表情から何かの違和感を感じているらしかった。

「いや,気にするな……私も1ヶ月ほど勝手に休講させていたのだからな。」

向き直った貴方の瞳を,相変わらずに疲れ果てながら澄んだ瞳が見つめ返す。
貴女があくまでも“演じる”つもりならば合わせてやろうと思ったが,どうも,それだけでもないらしい。

「…この店にはお前と私しかいない。ならば,もうお前のものも同じだろう?」

クローデット > 「休講」。それが示唆するその時期の『出来事』を思い出せば、流石のクローデットも少し表情が硬くなる。
…それでも、

「講義は教師の方がいて下さってこそですもの…あたくし達生徒はそれを受け取る身です」

と、クローデットは糾弾することをしない。一応、店主がいる事を慮ってのことだろうか。

「…まだ、お代をお店にお渡ししておりませんもの。
これから、お店の方とお話しして参ります」

「失礼致します」と、礼儀正しく柔らかい所作で頭を下げてから、話す相手を獅南から店主へ変えるように、身体の向きを動かす。

「申しわけありません、こちらの魔術書なのですが…」

そう、店主に声をかけるクローデット。
魔術書の奥義書だ。流石にクローデットとはいえ、結構馬鹿に出来ない経済負担になりそうだが…。

獅南蒼二 > 獅南としては試したつもりだったのだろう。僅かでも表情が変われば,それで十分だった。
それでなお会話を続けるというのなら,
少なくとも,今この瞬間は,教師と生徒を演じるつもりがある,ということだ。

「良い心がけだ……。」

そうとだけ呟きつつ,店主と話す貴女を横目に見て…小さく息を吐いた。
捨て駒とまでは言うまいが,手駒として踊らせていたつもりだった。
そして道がすれ違った時に,不要になった手駒を切り捨てた。

それだけのはずだったのに,今更ながらに貴女のことを気にしてしまうのは,ヨキの言葉の所為なのか。

「……………。」

何かを言いかけて,しかし獅南は何も言葉をかけなかった。

クローデット > 白魔術の奥義書を確認して店主が告げる値段は、魔術書の奥義書としては高いわけではないものの(時代が新しいのが幸いしている)、古書としてはそれなりの額。
普通の学生であれば、間違いなく諦める値段だった。
クローデットは、仕送りに加えて公安委員会の手当もある、かなり裕福な部類の学生だが…

「…少々、お待ち頂けますか?持ち合わせを確認致しますので…」

と、ポシェットから財布を取り出して、真剣な表情で中の貨幣を数える。
…と、その表情が安堵に綻んだ。
獅南には、その綻ぶ表情の若さが、クローデットの普段の表情からは不釣り合いにすら思えるかもしれない。

「………ああ、大丈夫です、足りました。
改めて、頂いてもよろしいですか?」

そう、花めいた微笑で店主に尋ねるクローデット。
持ち合わせがあるのならば、店主に拒む理由はない。

獅南蒼二 > 貴女の様子を見つつも,自分自身の探し物を続ける獅南。
正直に言えば,獅南はまだ,貴女の内面を掴みかねていた。
……裏切者たる自分への敵意が失われたわけではないが,しかし形を失っているようにさえ見える。

「……足りなければ貸してやろうかと思ったが,要らんお節介だったようだな。」

言いつつ,獅南も店主に数冊の本を手渡した。
その本たちは魔術学に関する著書であること以外には一切の共通点が無い。

クローデット > 「そうですわね…先生に利益を供与して頂くわけには参りませんもの。
…ありがとうございます」

獅南の言葉に、店主の方を向きながらもくすりと笑みを零して応じ…代金を支払い、奥義書を受け取る。
そうして、正式に自分のものとなった奥義書を幸せそうに胸元に抱き、店主の前の位置を獅南に譲った。
まるで、その奥義書が、クローデットの精神を劇的に和らげるお守りか何かの役目を果たしているように見えるかもしれない。

「…獅南先生の探究は、まだまだ留まるところがありませんのね」

獅南が店主に提示した数冊の書を見て、楽しげに笑んですらみせる。

獅南蒼二 > やや困惑していた獅南も,現状を認識すればその思考はすぐに“現象”を引き起こしている“原因”を探し始める。
いや,その“原因”は,誰の目にも明らかであろう。

「いや,利子で儲けようかと思ってな。
 もしくは,お前の父親に請求してやっても良かったんだが?」

敢えて父の話などを交えるのも,貴女の反応を見るためだったのだろう。
何れにせよ,今の貴女はまるで“大好きなぬいぐるみを抱いた子供”のようだった。
いや,子供でもここまで変われはしないだろうが……。

クローデット > 「…獅南先生から、「利子」なんて言葉をお聞きするとは思いませんでしたわ」

くすくすと、やはり楽しげに笑う。
…が、「父」の話が出れば、クローデットはその瞳を………

寂しげに、翳らせた。

「…「お父様」は、お金の話はあまりお詳しくないかもしれません…
ただでさえ、なかなか連絡がつきませんし」

そして、「お父様」と呼んだ。

獅南蒼二 > 「…確かに,金には執着しない男だった。
 お前のこととなれば,幾らでも払ってくれるだろう。」

そんな皮肉を言いながらも,獅南は貴女の瞳をまっすぐに見る。
貴女がそれを演じているのなら大した役者だと賞賛すべきだろう。
だが,むしろそうであってくれたほうが,話が単純で分かりやすい。

「………それにしても,随分と気分が良さそうだな?」

問題は,演じていると推測できる要素が何一つ存在しないことだ。

ご案内:「古書店街「瀛洲」【常世祭期間中】」に獅南蒼二さんが現れました。
クローデット > 「………そう、だと嬉しいのですけれど」

皮肉にも、素直に瞳を翳らせる。

上辺だけの「同志」として鞘当てを続け…ついには対立までしたはずの獅南からすれば、意味不明なことだらけだろう。
公安の…そして「炎の魔女」であるクローデットが、魔術書を扱う古書店で、無垢な少女のように振る舞う意味など、存在しないのだから。

「ええ…ここ最近ないくらい、気持ちが安らいでいるんです。
…きっと、「これ」のおかげですわね」

伏し目がちにした目線の先には…恐らく獅南の予想通り…腕の中の奥義書がある。

「………わたし、やっぱり白魔術が好きなんです」

獅南蒼二 > 「………………。」

万人に可能であるような推測が証明されたところで,何一つ明らかにはなっていない。
獅南が言葉を失うのも,仕方のない事だっただろう。
月並みな表現だが,まさしく別人のようだった。

「それは何よりだ……」

いずれにせよ,一つだけ明確なことがある。
白魔法が好きだと語る貴女の表情は,これまでに見せたことのないほどに純粋な表情だということ。

「……なるほど。今のうちに一つだけ聞くが,それがお前の本心か?」

クローデット > 「…おかしなことを、お聞きになられますのね」

くすりと…花の綻ぶような笑みを見せる。
いつもの表情に近づくが…それにしても、邪気がない。

「勿論ですわ。人の「祈り」が力になるなんて…シンプルで、美しいと思われませんか?」

「シンプルで美しい」。過去に、獅南の研究室で、「普段通りの」クローデットが白魔術を評して口にした言葉ではあった。

獅南蒼二 > 「いや……おかしなのは私の頭か,もしくはお前の精神だ。」

まるでため息を吐くように,獅南は呟いた。
それから,貴女の言葉を静かに聞き……

「あぁ,実にシンプルで分かりやすい。それは認める。
だが,祈り……か。」

少しだけ,表情を曇らせて……

「……お前が言う【祈り】とやらは,いったい,何を祈っているというんだ?」

クローデット > 「頭も精神も…正常か異常かを定めるのは、随分難しい領域ですわね」

やや目を伏せがちにして、呼気だけの笑声を漏らす。
それでも、その瞳に宿るおかしげな光からは、獅南の言葉を、まるで本気にしていないのが伺えるだろう。

そして…【祈り】について尋ねられれば、くすりと、優しげに笑んだ。

「…今日の獅南先生は、おかしなことばかりお聞きになられますわ」

そして、

「「祈り」は個人的なものですから、一様には決まらないものです。
…わたしの場合には「大切な人」の、心の安らぎですが。…それ以上のことなど、望みませんわ」

と…あまりにも、あまりにもささやかな【祈り】を吐露した。
しかし、クローデットの「異状」を、獅南はそれ以上掘り下げることは出来なかっただろう。

「………それでは、あたくしはそろそろ失礼致します。
せっかくの稼ぎ時に、お店の方のお邪魔をしては申しわけありませんので」

と、いつも通りの整ったお辞儀の後に、クローデットは店を出て行ってしまうからだ。

…もっとも、これ以上の困惑はないという意味では、獅南にとっては救いだったかもしれない。

ご案内:「古書店街「瀛洲」【常世祭期間中】」からクローデットさんが去りました。
ご案内:「古書店街「瀛洲」【常世祭期間中】」にクローデットさんが現れました。
ご案内:「古書店街「瀛洲」【常世祭期間中】」からクローデットさんが去りました。
獅南蒼二 > 「………………。」

獅南は,もはや何も答えはしなかった。
というよりも,貴女の言葉に対して返す言葉も,笑い飛ばす皮肉さえ浮かんでこなかった。
貴女の背を見送ってから,獅南は右手を額に当てて,大きな大きなため息を吐く。

「……おい,この店,クスリでも撒いてるんじゃないだろうな?」

無論それは冗談であったし,事情を知らぬ店主には通じないだろう。

獅南蒼二 > いずれにせよ,どのような理由があるにせよ,
クローデットがあの様子で居る限り,妙な暴発を引き起こすことは無いだろう。
であれば,この偶然にはひとつ,感謝しておくべきなのかもしれない。

「………………。」

どうせ考えたところで,何一つ分かりはしないのだ。
魔術学の分野では丸一日以上思考を続けるほどの忍耐力をもった獅南も,
他の分野では,人並かそれ以下の力しか持ち合わせていない。

やがて獅南はもう一度ため息を吐いて,店を後にする。
………この件はもう自分の手を離れたか,と,希望的な観測をその胸に抱きながら。

ご案内:「古書店街「瀛洲」【常世祭期間中】」から獅南蒼二さんが去りました。
ご案内:「古書店街「瀛洲」【常世祭期間中】」に獅南蒼二さんが現れました。