2018/06/14 のログ
■アリス >
「へえ……私は綺麗な髪だと思うけれどね」
まじまじと相手の姿を見る。失礼。
「猛勉強したのよ、日本にいるのに日本語ができなかったら友達ができないじゃない」
「……結局本土じゃ友達できなかったけど」
突然のぼっちオーラ全開。
気を取り直して相手のアドバイスに頷いた。
「ええ、気をつけるわ。灰の塵芥を取り上げられたら死んでも死にきれないもの」
「面白いのよ、この漫画。中華まんを探すトウキョーの旅人の話で」
嗚呼、致命的説明下手。
「万能の異能だけど、全能じゃない。結局は使う人のマンパワー次第って感じ」
「神代理央ね、よろしく! 異能も魔術もって、訓練をたくさん…って……」
風紀委員じゃん!! 漫画を咄嗟にばばっと後ろ手に隠した。遅い。
■神代理央 > 「……う、あー。何だ、有難う。君…いや、アンダーソンの髪も、とても綺麗だと思う」
自分の髪を綺麗だなんて、母親か実家の召使いくらいしか言われた事が無い。
もごもごと礼を告げた後、マジマジと此方に視線を向ける少女の金髪に視線を向け、素直に感想を告げる。
「気にするな。最初から日本語が喋れる日本人だって、友達を作るのは難しいものだ」
そう言えば、自分も社交辞令的な友人は居ても正しく『友人』と呼べる人間はいないかもしれない。
いっそ友達料金でも設定してくれる方が楽なんだけどな、とマイナス方向全振りな思考を巡らせる。
「…料理漫画か何かか?」
中華まんなんて東京が舞台ならそこらのコンビニで売ってるんじゃなかろうか。
流石に他にもストーリーがあるのだろうが、理解出来ないといった表情で首を傾げる。
「とはいえ、想像型の異能はそれだけであらゆる場面において有能だ。万能であることそのものが、大きなメリットであるしな。
……さて、どうやら次の所持品検査で私に得点稼ぎをさせてくれるのはアンダーソンで決まりみたいだな?いやあ、すまないね。でも、規則は規則だからな」
後手で漫画を隠した彼女に、にっこりと満面の笑みを浮かべてみせる。
■アリス >
「そう? ありがとう、私の髪はね、ママに似たの」
微笑んで片手で自分の髪に触れる。
いじめられる原因を作った髪。
でも、パパとママにもらった大切な髪。
「……ひょっとして世の中に本当の友達を持っている人なんていないんじゃ…」
眺めていた老店主が引くくらいの負のオーラを放つ。
「ううん、コンビニにない中華まんを探して相棒の大きなカエルとね、地下街を彷徨って…」
ダメだ、要領を得ない!
この漫画の面白さを言葉で表現できたらアンダーソン賞を与えるのに。
「か、隠すもの! 絶対に隠し通してみせるもの!」
「ロッカーを異能で二重底にするし……」
後ろ手に本を隠したまま絶望に満ちた表情で後退り。
■神代理央 > 「奇遇だな。私も髪と瞳の色は母方譲りなんだ。とはいえ、アンダーソンには負けるがね。金糸みたいに綺麗な髪だ」
心にもないおべんちゃらなら幾らでも口から出せるのだが、こういう時に相手を褒める為の良い言葉が思い浮かばない。
口調は穏やかだが何故か少し困った様な表情で、改めて彼女の髪に賞賛の言葉を送る。
「それは流石に…というか、そもそも本当の友達ってのが何なのかよく分からんがな」
自分としては、対価に基づく関係の方が余程強固なものに思えるのだが。
流石にそんな事を眼前の少女に言ってしまう程、デリカシーが失われた訳でも無い。
「コンビニはある設定なのか。材料では無く完成品を探す辺り、中華まんが重要なファクターなんだろうか?」
きっと読めば面白い本なのだろう。
些細な問題は、彼女の説明を聞いても全くストーリーが思い浮かばない事だけである。
「そうか。なら、ロッカーと机の中は特に重点的に探してやらないとな?
何なら、担当に掛け合って明日にでも所持品検査をしても良い。私は兎も角、こまごました功績を稼ぎたい同僚は幾らでもいるからな?」
後ずさる彼女を笑みを浮かべたまま視線で追いかける。
きっと今の自分は、さぞかし意地悪な笑みを浮かべているに違いない。それがデフォルト過ぎて自分では自然な表情のつもりなのだが。
■アリス >
「えへへー、ありがとう! 理央ったらお上手ね?」
多分だけど年相応の笑顔を見せる。
自分のことながら、くるくると表情が変わる。
「それはもう……心から何でも打ち明けられて? お互いを尊重しあえて?」
「友情なる不可思議なものをお互いに持った…?」
ダメ、全部疑問符がついてしまう。
なんてうさんくさい……
「そう! 何でもあるトーキョーの街で、変わったものを集めるから意味があるのよ」
言ってから現代ファンタジーという言葉を使えばよかったと思った。
でももっとわかりづらくなるだろうか。
「や、やぁ……! この漫画は家宝にするの…ダメよ、絶対にダメ…」
涙目で下がるも後ろはもう本棚。絶体絶命。
■神代理央 > 「口先だけで渡り歩いてきたからな。とはいえ、今の言葉は本心だぞ?」
どうやら、自分の拙い褒め言葉でも彼女は喜んでくれた様だ。
内心ホッと溜息を吐き出しつつ、彼女に小さく笑みを浮かべて言葉を返す。
「友情を不可思議とか言ってる時点で残念極まりないな…」
友人がいなくとも、流石に友情とやらが社会一般的にどのような感情を指す言葉なのかは理解している…つもりだ。
疑問符混じりの言葉を紡ぐ彼女に、呆れた様に小さく溜息をついてみせる。
「ふむ…。なら、お前も此の島で変わった物を集めれば良かろう?物語の舞台には負けるかも知れないが、此の島にはやたらめったら変わったものばかり集まるからな」
そもそも、人間じゃない種族が普通に学園生活を送っている時点で島外とは環境が大きく異なる。
友情という不可思議なものを、彼女が此の島で見つけられる事を願うばかりだ。
「…なら、所持品検査の前に御両親と仲直りしておく事だ。没収される前に、早く家に持って帰るんだな」
もうちょっと苛めてみたい、と思ってしまったが、初対面の少女をこれ以上追い込むのも酷だろう。
堪えていたものを吐き出すように小さく吹き出すと、穏やかな口調で彼女を宥める。
実際、漫画数冊の為に所持品検査等する訳でも無いのだし。…する奴がいないとは断言出来ないが。
■アリス >
「ふふ、本心ならなお嬉しいわ」
嬉しそうに笑って、言う。
「残念ってゆーなー……でもわからない、本当にわからないのよ…」
肩を落として言う。
この街に来て追影さんという友達はできたものの、現時点で一人。
一人!?
少なくない!?
自分に絶望した。
「…それ、いいかも!」
「変わったものを集める趣味、私の異能でコピーできるくらい覚えれば持ち運びは考えずに済むし」
新しい指針ができた気がする。
今まで両親に内緒のバイトとか、学校の準備とかで忙しかったし。
変わったもの探し。その響きの良さに自然と笑顔になる。
「あ、あー! それを言うためにいじめた! いーじーめーたー!」
地団太を踏みそうになって、老店主が苦笑いしているのを見て止めた。
「…ちょっとは雨の勢いも弱まったかしら」
自分の分の傘も創り出して、本を大事に大事に抱える。
「それじゃ、またね理央!」
そういえば同世代だ、どうせなら友達になってと頼めばよかった。
そんなことを考えながら雨の中を歩き出していった。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」からアリスさんが去りました。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」に神代理央さんが現れました。
■神代理央 > 「本心さ。アンダーソンにおべっかを使ってmしょうがないからな?」
小さく笑みを零しつつ肩を竦める。
「…まあ、焦って探す様なものでもあるまい。ゆっくりと時間をかけて、大切な友人を得ていくと良い」
随分と年寄りじみた言葉を彼女に投げかける。
友達がいないのはお互い様なので、自分自身にも跳ね返ってくる言葉なのだが。
「……まあ、コピーするのはほどほどにな」
これから、彼女は此の島で様々なものに出会うのだろう。
ならば、こうやって少しでもその生活が豊かなものになるように、後押ししてやるのも先輩の勤めだろう。
……自分に似合わぬ事をしているのは重々承知だ。
「引っ掛かる方が悪い。これからは、俺みたいな悪い奴に騙されない様にすることだな?」
彼女の反応に満足げな笑みを浮かべつつ、視線は店の外へ。
「ああ。またな、アンダーソン。本はちゃんと見つからない場所に隠しておくんだぞ?」
雨の降りしきる空間に消えていく彼女を見送り、自身も数冊の本を雨宿りの屋根代代わりに購入。
こういう血の匂いのしない出会いも良いものだ、と幾分悲しくなる様な思いに浸りつつ、上機嫌で本を抱えて家路へと急ぐのだった。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」から神代理央さんが去りました。