2015/07/05 のログ
『室長補佐代理』 > 「振るおうにも片腕なんでね。時と場合を選ぶだけさ。
しかし、アンタ教師だったのか。『異邦人』でやるには面倒が多そうな稼業だな」
 
おどける様にそういって、また左肩だけを竦める。
みれば、男は右手はずっとポケットに突っこんだままで、ほとんど動かしてもいない。
 
「公務中といえば公務中だな。
今まさに保護を断るヒールの折れた教師に任意同行の提案をしているところだからな。
まぁ、他には今のところさして目立った仕事はねぇな」
 

ヨキ > 「ここまで来るのに、随分と時間を掛けたものだ。だからヨキは“教師”であらねばならん」

(彼の右手に目を落とし、)

「……それは不具か?それとも、君の異能によるものか。
 委員会にも、その構成員にも、秘するものごとが多いらしいな」

(大きな唇が、ようやく薄い笑みを見せる)

「目立たぬ仕事をこなすのが、君ら公安の仕事なのだろう?
 例えばヨキのような余所者が……あるいはヨキよりか弱きものたちが、“時と場合”に遭遇せぬように」

ご案内:「常世公園」に一樺 千夏さんが現れました。
一樺 千夏 > 暗がりに火が灯る。
それは一定の明滅を繰り返し、近づいてくる火だ。

外灯の下に出れば身の丈2m近い大柄な女性がタバコを吸っているだけなのだが。
左手にコンビニ袋をぶら下げて、悠々と歩いてくる。

「あらやだ、深夜の逢引だわ」
声に出た。

一樺 千夏 > 煙を吐く。
「お邪魔みたいだから退散しましょうかねー。

 ったく、蒸し暑くて嫌になるわ。
 人気がなけりゃ、少しは涼しいかと思ったんだけどねー」

ご案内:「常世公園」から一樺 千夏さんが去りました。
ヨキ > (耳に届いた女性の声に振り返る。不思議そうな顔をして、合い挽き、と呟いて)

「……ああ、逢引。如何にも」

(真面目くさった顔で、はっきりと肯定した。ブーツを持ったままの両手を緩く広げて)

「そうだ。ヨキが彼に声を掛けたのだ。
 次は君がこのヨキの獲物になるかね?」

『室長補佐代理』 > 「邪魔ってこたぁねぇが、逢引っつうには少し色気のない出会いではあるな」
 
ぐっと背伸びをしながら立ち上がって、そう呟く。
 
「目立たず仕事出来てりゃいいんだけどな。実際はそうもいかないってことも多いのさ。
仕事ってのは往々にして、『時と場合』を選ばないもんだからな」
 
教師の笑みに薄笑いを返しながら、男は教師に近寄り、一枚の紙切れ……名刺を教師に渡して嘯く。
正確には名刺でもない。
何せ、名前が書かれていないのだ。
名刺のような何かとしかいえない何かだ。
公安委員会調査部への連絡先だけ簡潔に書かれている。
 
「『時と場合』はそっちが選んでいいのさ。俺達は一応これで、行政機関の一部だからな」

ヨキ > (ああ、と残念そうに声を漏らす)

「……機を逸してしまったか。次は彼女との逢引を図らねばなるまいよ」

(歪なかたちの指先が、名刺を挟むように受け取る。
 表裏と引っ繰り返して文字を探し、懐へ収める)

「ふ。これが君の自己紹介か。
 ……良かろう、ヨキにもまた“名刺”がある」

(言って、空いた指先が外套の襟に隠れた首に触れる。
 金属をなぞるような、ごく微かな音がして、)

「――これがヨキだ」

(弧を描いて差し出された人差し指と中指に、いつの間にか鉄の花弁が挟まれている。
 花弁は指の中で有機物めいてふわりと広がり、小花を象った。

 金属のテクスチャを持つそれは、紙のような柔らかさでいて、熱くはない。
 宿っていた体温ほどの熱が、夜気に晒されてすぐに冷えた。

 冷えると同時、花は柔らかさを失う。作り物の鉄の花が、相手の手に残る)

「学園では工芸を。……しかし創るときに異能は使わん。
 “我ら人間”には、異能よりも雄弁な手わざがある。

 ……それではね。公安の君、夜の眠りは大事にしたまえよ」

(踵を返す。ゆっくりと公園を後にする)

ご案内:「常世公園」からヨキさんが去りました。
『室長補佐代理』 > 受け取った鉄の花弁は手のうちに丁度おさまり、銀の指輪にふれて冷涼な金属音を鳴らす。
夜風に流れる音とその技に目と耳を傾けるうちに、その教師は既に踵を返していた。
男は一瞥だけ視線でそれを追い……静かに、笑った。
 
 
「教師らしい手厳しい指摘だな」
 
もしかしたら、あの教師……ヨキにはその『眠り』の意味も、よくわかっているのかもしれない。
内に潜む何者かの息遣いすらも。
『異邦人』には、そういうモノがいることも珍しくはない。 
 
ならばこの邂逅も、偶然に見せかけられた何かしらの必然なのだろうか。
 
「なんてな」 
 
確証も意図も理由も意味もない、予感という名の妄言にも近い推測を戯言のように脳裏で転がして、男もまた公園を後にする。 
以前なら、らしくないと一笑に付すのかもしれない。
だが、それで済ませた結果、『知らずに踊った』事例の直後では、その自嘲の論すら説得力にはなりえない。
 
そこから先は既に堂々巡りでしかないが、巡る当人は巡ることには意味を見出す物である。
自分も所詮はそれに過ぎないのかもしれないと、男は苦笑した。
 
ポケットの中に転がる鉄花が、徐々に体温の熱を帯びる。
強いていうなら、恐らくそこに残った熱だけが、今は唯一信憑性に足りえる『何か』なのだろう。
心中でそう一人ごちて、男もまた、宵闇の中へとその身を滲ませていった。

 

ご案内:「常世公園」から『室長補佐代理』さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に『室長補佐代理』さんが現れました。
ご案内:「常世公園」から『室長補佐代理』さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に霜月 零さんが現れました。
霜月 零 > 「あー、だりぃ」

取り敢えず公園のベンチで一息。一応考古学の試験も終わったので、のんびりしているのだ。

「しっかしなあ……」

思った以上に仕事は出来なかった。考古学、評価は低めかも知れない。
そう思うと少しげんなりしてしまうのであった。

ご案内:「常世公園」に雪城 涼子さんが現れました。
雪城 涼子 > 試験期間、ではあるが地味に座学は今までの蓄積で割とどうにかなっているので割と余裕がある。
ただ、なんとなく周りの緊張感に引っ張られて自分も気が引き締まる思いをしたり……なのだが。
そろそろいい加減疲れてきたので、なんとなく気晴らしに散歩などをしてみると……

「あら、あらあら」

どこかで見た顔を見つける。ふむふむ。
折角なのでちょっと話でもしようか……と、のんびりと考えながら近寄る。

霜月 零 > 「ん?ああ、涼子さん」

現れた人影に気付き、思わず少し姿勢を正す。
今まではそう気にしてもなかったが……流石に、恋人の母親、と言う関係性になれば意識せざるを得ない。

雪城 涼子 > 「ふふ、久しぶりねー……ってほどでもないかな。ま、いっか。
 元気してたかな?」

こちらは特に気負う理由もなく。のんびりと、普通の調子で普通に挨拶する。

「というか、なに涼子"さん"ってー。なんか妙に仰々しいなあ」

霜月 零 > 「まあ、ぼちぼち……うっ」

早速勘付かれた。いや、冷静に考えれば、あの時にばれててもおかしくはないのだが。

「あーいや、えっとー……」

めそらし。どうしよう、氷架からまだ聞いていないのだろうか。しかしそれを聞いたら致命傷だ。どうする霜月零。

雪城 涼子 > 「言い訳無用。大体、零くんが先生で私が生徒なわけでさ。
 って、まあ、あれから全然訓練できてないけれど……あ、そんなだからか。冷たいな―」

むー、となんだか一人納得して膨れてみせる。イマイチなにを考えているのか、わかりづらい。

「ま、いっか。それで、あれから進捗はどうなの?」

霜月 零 > 「いや、それはまあ、また別っつーか……」

確かに一応は師弟みたいな関係ではあるが。今自分の中を占めている関係性はそれとは別だ。

「…………」

溜息も出ない。進捗、と言えばもうアレの事だろう。確定だ。心当たりしかない。
氷架の許可もなく口にするのもためらわれたが……どうせ、ここでボカしてもいいことはない。

「えっと、氷架と……恋人に、なりました」

顔を赤くしながら、大事な事実を伝えた。

雪城 涼子 > 「……………」

うーん、思ったよりあっさり釣れてしまったというか……
いやいやそれにしても、思ったより展開が早かったわね……

「私、修行のつもりで聞いてたんだけど……あらあら。
 まさかそんなことになっていたなんてねえー。まあまあまあ」

なんだか、近所のお姉さんだかおばさんだかな声をあげる。

霜月 零 > 「うっ……」

墓穴を掘ってしまった。後で氷架に土下座する必要があるかもしれない。

「あ、あのえっと……まあ、その……ええ」

もう何を言っていいのかすらわからない。完全に目がぐるぐるして混乱してしまっている。
いや、この人もしかして、分かっててやってるのではなかろうか……?

雪城 涼子 > 「んー、なるほどねえ……あのひょーかちゃんがねえ……
 ふむふむ……零くんだったかー」

なるほどなー、とまたなんだか一人で納得する。

「それで、いつからなの?」

霜月 零 > 「あ、えっと……」

素直に言うかちょっと迷う。
流石にこう……早すぎる、と言われそうだ。

だが……もう、素直になろう。一番誠意を見せるべき相手の一人のはずなのだから。

「……あの日、カフェで話した当日の、夜」

だが俯いてしまう。こう……とても、恥ずかしい。

雪城 涼子 > 「あー……………」

なるほど、あの時か。あの時いた式典委員の人の後押しがあったとはいえ、なかなか大胆な決断をしたものだ、と妙に感心する。
まあ、天秤自体は傾いていたのだろう。要するに、遅かれ早かれ、というやつだ。
……うん。やっぱり、あの子にはかわいそうなことをしたけれど……立ち直ってくれてるかな。

「なるほどねえ……納得したわ。じゃあやっぱり、あの時の話ってひょーかちゃんが相手だった、でいいのかしら?」

霜月 零 > 「あ、あの時の話……?」

どれだろう。いや、気になる女性と言う意味の話で言えば、確実に氷架だ。

「気になるってのがどうこうなら……まあ、それで」

そもそも、こっちに来て、特別に「異性」として意識したのは、基本的に氷架だけだ。

……正親町三条楓もある意味で「異性」として意識したが、寧ろアレは女の武器を悪用したことに対してだ。恋愛相手と言えば圧倒的にNOである。