2015/07/31 のログ
ご案内:「常世公園」に久藤 嵯督さんが現れました。
■レイチェル > 「依存、依存……か」
実のところ、六道の気持ちは分からないでもない。
人間は誰かに依存しなければ生きていけない存在だ。
彼女が団長の幻影を追いかけているように、レイチェルもまた、自らの
追いかけている幻影を思い描いた。
それは、大剣を背負った、壮年の男の影だ。
ブランコを漕ぐレイチェルの目の前に現れたそれは、彼女に微笑みかけて、
そして消えていった。
「オレも、まだまだ依存してばっかりだよな……」
はぁ、と溜息をつくレイチェル。
かつての師匠の姿など思い浮かべても、何の利も無いというのに。
それでも時折、思い出してしまう。
料理の仕方、銃の撃ち方、剣の振り方、魔を退ける方法からその他戦闘技術まで。
あらゆることを教えてくれた、まるで父親代わりのような存在だった。
レイチェルが家族を失ったあの日、その大きな手を差し伸べてくれた男。
いつか、自分も誰かに手を差し伸べたいと思った。
どんな事情があろうが、背景があろうが。
目の前に居る者に、手を差し伸べられるような人間になりたい、と。
これが正義だなどと、そんな大それたものを騙る気は無い。
血に塗れた手は、正義などと呼んで良いものではきっと無い。
それでも。
そんな手でも。
求めてくれる者が居たのなら、手を差し伸べてやりたい。
レイチェルは常々そう思っていた。
自分の手を眺める。
一見すれば普通の手でも、この手で何人の者を殺めてきただろうか。
悪魔に憑かれて手遅れだったから殺さなければならなかった、やらねばこちらが殺されていた。
つい先日の『七色』の件で言えば、殺さねば、島が危なかった。
言い訳など、きっと幾らでも思いつく。
しかし、そんな言い訳をほんのちょっぴりでも浮かべてしまう自分にひどく嫌気がさした。
言い訳など、甘えだ。レイチェルは拳を、ぐっと握る。
それでも、誰かに手を差し伸べたい。
だから、もし『美術屋』――六道が外の世界を知りたいというのなら、
いくらでも手を差し伸べて、共に歩もうという気持ちが彼女にはあった。
一緒に歩いてやる、その言葉に偽りは無いつもりだ。
ただ、いざ誰かに手を差し伸べる時、あの男のようにしっかりとその手を
握ることが出来るだろうか。
それが少しだけ、不安だった。
「……さ、パンでも食べて、見回り再開、だな」
手に持ったビニール袋から、菓子パンを一つ取り出して、
ぱくりと口をつけた。
■久藤 嵯督 > 「こんな所で夜食か? ラムレイ」
自分の当番を終えて自宅へ帰る途中、公園前を通りかがる。
公園内に見えたのは自分と同じ風紀委員、”全身武装”のレイチェル・ラムレイの姿。
彼女はまだ業務中だったハズだが、何をこんな所で油を売ってるのだろうか。
■レイチェル > 「ふ、おうっ……」
口に含んだチョコパンがその名を呼ぶことを拒む。
こほんこほん、と咳き込んだ後にレイチェルはチョコパンを飲み込んだ。
「久藤嵯督か。いや何、色々業務があって夕食とれてなかったからな、見回りも大体終わったし、ちょっと
食べてたとこだよ。別にサボりじゃねーぜ。ちょっと休憩休憩」
そう言って、チョコパンの袋をビニール袋に戻して縛ると片手に持ったまま、ブランコを
揺らす。
■久藤 嵯督 > 「食ってから喋れよ」
食ってる最中に話しかけたのはこちらの方だが、無理に返事をしようとする方が悪い。
やれやれと首を横に振れば、白金の髪の端っこが僅かに揺れ動く。
「……誤魔化してる、ってワケでもなさそうだな。ならいい。
しかしそれにしたって、随分とわびしい食事だな。そんな事でいざという時動けるのか?」
腕を組んでジャングルジムに寄りかかれば、横目でラムレイの方を見やる。
黒く尖った視線が突き刺さることだろう。
自分は以前、彼女が魔力切れによる『衝動』を引き起こした所を目撃していた。
つまり久藤嵯督は、レイチェル・ラムレイの自己管理能力を疑っているのだ。
アレがまた繰り返されるようであれば、こちらとしても対応を考える必要がある。
■レイチェル > 「血なら、ちゃんとくれる相手が出来たから大丈夫だ。そうそう衝動に引っ張られることはねぇよ」
今は、佐伯貴子が居る。親友が、自分の為に血を分けてくれる。
彼女が居る限り、最低限の理性は保てそうだ。
それに他にも、力を貸してくれるという人間が居る。
ありがたい話だ。
とはいえ、わびしい食事で量的に足りなかったのは確かだ。
思えば今日は忙しく、昼食も食べていなかった気がする。
もうひとつ買っておけばよかったな、などと後悔しつつ、レイチェルは俯いた。
■久藤 嵯督 > 「フン。血はどうにか出来たようでも、どうやらタンパク質の方がおざなりらしいな」
どうにも目の前の女は、解りやすい反応をしてくれる。
あの女狐やサボり魔もこれ位素直な反応をしてくれれば精神的に楽なのだが……
今回はその正直な姿勢に免じて、一つ手伝いをしてやろう。
同じ仕事場で働く者を扶助するのも、風紀委員として欠かせない仕事の一つなのだから。
「……見回りは粗方終わっているんだよな。
だったら、この後で何か食わせてやらなくもないが……」
半分は仕事、もう半分は打算だ。
園刃が言うには『人の中身を知れば知るほドワクワクする』らしいので、
その真偽を確かめるいい検証にもなる。
精々その空きっ腹を利用させて貰うとしよう。
■レイチェル > 「まぁ……それならご馳走になろうかな。丁度、飯屋のある所見回ったら、見回り終わりだからな」
そう言って、ブランコから立ち上がった。
金髪の少女はクロークを翻して、嵯督に歩み寄る。
「さて、行くとしようぜ」
一度だけ、先ほど影を見た背後を振り返った後。
レイチェルは再び歩き出すのだった。
前を向いて。
その後二人は飲食店で食事をして、別れたことだろう――。
■久藤 嵯督 > 「そうだな」
歩み寄られれば腕を解いて、寄りかかっていたジャングルジムから歩き出す。
嵯督は来た道を振り返るようなことはしなかったが、そちらが前であるという保障は何処にも無い。
やり方の是非など、明日にでも問えばいいのだ。
見回りを終えたところで適当な飯屋を見つけたら、そこで食事を摂ったことだろう。
その後彼のサイフの中身がどうなったのかは、嵯督のみぞ知る。
ご案内:「常世公園」からレイチェルさんが去りました。
ご案内:「常世公園」から久藤 嵯督さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に五代 基一郎さんが現れました。
■五代 基一郎 > 夏の夜。休みの二日目だろうか。
黒猫を連れ添って……先導させるように街を歩く。
探す一人はここらにいそうなものだが。
公園の緑が昼間の熱を鎮めていく夜の公園に足を踏み入れ
噂にも話にも聞いた、話を聞いた人物を探す。
どうなっていることだろうかと。
ご案内:「常世公園」に惨月白露さんが現れました。
■惨月白露 > 昼間の熱が漆黒の空へ溶けて消えていく夜。
満月の空の下、彼はぼんやりとベンチに腰掛けていた。
公園に響く足音に、ビクッと視線を向ける。
「また会ったな、風紀委員。」
震える身体を抱く様にしながら、
妖気に染まった瞳でその男の顔を捕える。
普段よりも伸びた髪、伸びた爪。伸びた牙。
上気した頬、少しだけ、荒い呼吸。
「なんだよ、散歩か?」
■五代 基一郎 > 「何言ってる、会いに来たんだ」
姿を見かけてそちらへ歩み寄ろうとすれば
黒猫が足回りを邪魔するように歩みより、男を中心に回る。
大丈夫だ、とかがんで一撫ですればそのまま男の右肩に飛び乗る。
「昨日のことを聞いてさ。」
落第街にての昇格審査。
その際の顛末。警備してた風紀連中から聞いた話。
突拍子もない事態が入り込み、それがまた流れてきたが故に
どういうことだと、聞くために探していたわけだが
「何故そのまま、あの場に留まらなかった」
単刀直入に聞きながらベンチへと歩み寄る。
顛末は聞いた。だからこそ問うた。
なぜその時に跳ね除けず、裁かれなかったのかと。
様子がおかしいことなど承知の上で淡々と問いながら歩く。
「お前はその場で拒否できたはずだ。
そんな紙切れに何の意味もないことを知っているお前が
何故拒まなかった。」
■惨月白露 > 「はっ、そりゃまた随分とタイミングの悪い訪問だな。」
満月の夜。白露の妖の血が、一番強まる日。
黒猫を視線で追いながら、苦笑いを浮かべ、
一応、ベンチを少し詰めると、彼の問いかけに肩を竦める。
「『何故留まらなかった』って聞かれてもな。
俺は二級学生だぜ?
その場に居た公安委員が出てけってモーション取ってたし、
お前が言うには『紙切れ』らしいソイツを持ってきてまで
俺を連れてこうとした奴は、公安風紀の関係者だ。
公安委員の奴が受け渡しを拒否してるなら兎も角、
断れるわけがねぇだろ。俺には何の権限もねぇんだぞ?
なんだ、そこでひと暴れして、
公務執行妨害で処刑でもされりゃ良かったのか?
それとも、『いや、俺は行きたくないです。』って答えれば、
公権力に逆らえるとでも言う気か?」
はっと笑い声を漏らし
「そんなの許しちまったら、お前らは誰一人逮捕できなくなるぜ?」
■五代 基一郎 > 「時は待ってくれないからな」
明らかに異常な、いや人からはみ出しつつある者となっている
その姿に臆することもなく……いや、それに気を留めることもなく
詰められたベンチに腰かけて隣に座る。
座れば、その言葉を聞き
言葉に対してその瞳と共に向けて問う。
「そうだ。お前はそれが出来たはずだ。
これは公権力がどうこうという話ではない。
権限でもない。権力でもない。
お前の意志をそこで働かせられれば出来た。
お前が本来にして望まないことを断れた。
お前が裁かれることを強く望めば、そのまま裁かれてとなるはずだった。
だがお前は選ばなかった。」
馬鹿馬鹿しい、選ぶことなどできなかったと自らをも嘲笑うその顔に
俺の目を見ろと告げて話を続ける。
「罪を償わず、権利で立場を動かされ道理の通らぬまま”一般学生”になることが
どういうことかお前も十分わかっているだろう。」
その強権を振るった者がどういう意図を以って行ったのかはわからないし
知る必要もない。対象が対象ならクズの極みの所業だ。
己の強権で欲しい人材を何をとすることもなく手中にすることがこれだ。
人間を道具か何かと思っている者がよくやることだ。
その強権を以ってただ立場だけ変えただけでは何も変わらない。
罪を償わず、何も変わらないまま身分だけ正規になったとしても
それは実質二級学生と犯罪者のままと何も変わらない。
特に今回の場合、この自らが自らを取り巻くものがどういうものか
知る者にとっては己の中に淀みと怯えを抱えたまま生きて行くことになる。
それは自身と目の前の者が話していたことだ。
身分だけ一般学生になっても何の意味もない。
この目の前の者にとってそれは何を変えることもなく、ただ淀みを深く
泥沼深く沈めるに等しい。
「流されたな。それでもいい、と思ったから
お前は自分の意志を放棄したんだ。違うか。」
■惨月白露 > 臆する事無く隣に座る男に、目を見開く。
『随分と度胸があるやつだな』と内心で賞賛しつつ、
言葉を聞けば、五代の目を見る。
彼が望むように、ぐいと、距離を詰めて。
「その通り『流された』んだよ、俺は。
だけどな、俺は決して意思は放棄してねぇよ。
そうやって流されて生きる事、それこそが、俺の意思だ。
俺が唯一つ、望んだことだ。」
とんとん、と自分の胸のあたりを叩く。
「俺はあそこに裁かれに行ったんだよ、
で、その結果がそれだったって、ただそれだけのこった。
俺には裁きってやつは下らなかった、
贖罪の機会は他でもない『正義の味方』に奪われて、
その場に居合わせたもう一人の『正義の味方』にも見捨てられて、
俺はただ、この真っ赤で真っ黒な泥沼にますます深く沈み込んだだけだ。
いいか、もう1度言うぞ?
俺は自分の意思を放棄しちゃいない。
俺はただ裁かれたかった、だけどな、
そこに居た奴らは、誰も俺に罰を与えちゃくれなかった。
それぞれに何を考えてたのかは知らないけどな。
そこで暴れりゃ、拒否すりゃ、確かに『始末』はされたんだろうな。
だけどな、それは俺の今までの罪全部に対する結末じゃねぇ。
『そこで暴れた』ってたった一つの事実に対する結末だ。
そんなんじゃ、全然たりねぇんだよ。俺みてぇな奴には。」
高ぶる感情に呼応するように、『妖』化が進む。
髪は腰ほどまで伸び、喉からは小さく唸り声が漏れる。
「―――俺を裁けよ、風紀委員。
俺が話す、三人目の正義の味方さんよ。
………俺に、『罰』をくれよ。」
■五代 基一郎 > 昂る獣の目を見て、一度目を閉じて立ち上がり言葉を続ける。
「流されること……それは生きることには、ならないな
それを決めたのは意思だろうが、お前は何をも見ようとしていない。
全てを諦めている。お前にとっては”まだ”この世界などどうでもいいのだろうな。
自分”が”楽になりたいと目を閉じている。」
それが意味あることなのか、理解させようとしているのかすらわからない
何か訓示のような教示のように言葉を続けるが今そもその言葉が通じるかもわからぬような
抽象的にも近い、遠く近い言葉が続く。
「誰も楽にさせてくれなかったから嘆くか。
あわよくば”終わり”を求めてか、己の納得のいく満ちるものを求めて。
だが
俺はお前から”奪いに来た”のではない。
俺はお前かを”見捨てに来た”わけでもない。
お前が”罪”を認め、”罪”と”罰”を背負い生きて行く意志があるならば
迷いの闇が塞ぐ赤黒い泥の中であろうとお前の前に立ち
お前の”罪”を認めてて裁き、”罰”を与えて”贖罪”への道へ導こう。
お前はまだ”盲目”であり”聞こえぬ”者であるから。」
獣とは裏腹に何か壁を隔てたような……どこか静かに揺蕩う水面のような
冷たさをも持つ声が、気配が公園に満ちて
いつしか静かに音もない世界へと移り変わっていく。
天上には星が流れている。遥かなる軌道を描きながら流れる星々が闇を切り裂く天の下で
男は立っている。
その獣を前に、待つように迎えるように。
黒猫はいない。闇に溶け込んでいる。
「お前に道を示そう。
果て無き道を」
暗闇のなかに、ぽつぽつと灯りが瞬いては増えて行く。
男を中心に灯火が増えては揺らめいていく。
明かりがその顔を一時照らす。
その目は鏡のように、また強く意志を持つ瞳だった。
■惨月白露 > 彼から広がる揺らめく幾多の灯が、ゆっくりと、ゆっくりと、
漆黒の闇に座り込む白と黒の『獣』を照らし出す。
「生きるとは言わない、か、
そりゃそうだ、俺は今は死んでるようなもんだからな。」
二級学生は本来、存在しないものだ。
だから彼は、この学園に、この世界に、生きてすらいない。
その、誰もが目を背ける汚泥、
闇の内に入り、血の池に踝まで浸かってまで
彼の前に立ち、そのリードを引く者がいるのなら。
「それがお前の決めた、
今までの『俺』に対する『結末』だって言うなら、俺の贖罪だって言うなら、
これからは、お前が示す道、お前の横を歩いてやるよ。
果てが無い道って言うなら、いつまでもな。」
音も、なにもかも消えた世界で、
虚空に座る蒼灰の瞳は、男の鏡のような瞳を見上げ、その牙を覗かせる。
「そんなら、次の『飼い主』はお前だ、俺の事は好きに使えよ。」
そういって、口元を笑みで彩り―――。
ぶるりと震えると、身体を抱く様に地面に蹲る。
「話は終わったろ、さっさと帰れよ。」
昂ぶり漏れる熱い呼気と共に、白銀の牙が覗く。
伸びた黒爪が、その白い肌に食い込んだ。
「わりぃけど、これ以上『待て』はできなそうだ。
わざわざ寮でも落第街でもなくこんな場所に居る理由をちったあ考えろ。
満月の夜はどうにも身体が熱いんだ、まだ一緒に居るって言うなら
――――喰っちまうぞ?」