2015/08/26 のログ
■リヒット > では、どうやったら『向こう』へ帰れるでしょう? どうやって『こっち』に来たのかも分かっていないのに。
「……からからは、嫌だ……」
川を泳いでいたところを突然、何モノかに飲み込まれ、西の方の荒野に放り出されてしまったリヒット。
熱砂の荒野にかろうじて川を見つけ、泳ぎながら人里を目指してきたはいいものの、想定外の人の多さに面食らってしまったのでした。
では、荒野に帰って手がかりを探すかというと……少なくとも、夏場にあそこに行くのは、水の精にとっては自殺行為です。
また、かつて先祖が人間の生活排水によってミームを変異させられたことが原因で、リヒットは純粋な『水の精』とは少し違っています。
すなわち、真に綺麗な水とともには生きられないのです。
人間の生活にある程度近い場所にいる必要があり、それが、リヒットが公園に仮住まいを置いている理由でもあるのです。
……とはいえ、ずっとこれでは埒が明きません。
■リヒット > 「……とりあえず、着るもの……?」
意を決して、人混みの中へ行く必要がありそうです。しかし、リヒットには未だ、衣服がありません。
そして改めて気付かされることが、この街、ゴミらしいゴミが転がっていないのです。
綺麗で居心地が良いのは大変結構ですが、ボロ布の1つも見つからないとなると、隠すべき場所を隠すための手段は見つけるのが極めて困難そうです。
……それに、他の人間たちはまるで皆新品の服を着ているかのように、身なりがきちんとしています。
そんな中にボロ布や葉っぱ一枚だけで紛れ込むのは、嫌がられたりのけ者にされたりする、そのくらいのことはリヒットでもわきまえています。
あるにこしたことはないのですが。
……と、水面に波紋が広がり始めます。すぐに、池の外が騒がしくなってきました。どうやら夕立のようです。
水中で聴く雨音というのは、子守唄のように心地がいいものです。顔を外に出すことなく、リヒットは身体を丸くし、しばしその音色に聞き入っていました。
■リヒット > ……雨音は、10分もせずに静穏に戻りました。
うとうとしかけた頭を水中で軽く揺さぶり、顔を水面から覗かせると、辺り一面は水たまりだらけです。
空は未だに雲が多いですが、ところどころに青空を覗かせ、天使の梯子を下ろしています。
「……うえぇ、ゴミ箱にカッパが引っ掛かっちゃったぁ」
「あーもう、破けてるじゃないの。どうせ使い捨ての奴だし、そこに捨てちゃいなさい」
通りすがりの母子と思しき2人の会話が、遠耳に聞こえてきます。
子供は、半透明のクラゲのような外套を無造作に脱ぐと、ゴミ箱に捨て、足早に去っていきます。
「いまのは……」
人目がなくなったのを観察すると、リヒットは静かに噴水池から上がり、水溜りの上を跳ねるようにゴミ箱の方へと駆けていきます。
そして取り出したのは、子供向けのサイズの、ビニール製のカッパ。しとどに濡れており、さらに脇のあたりが何かに引っ掛けられたのか破れています。
「……服だ!」
それを引っ掴むと、来た時と同じように速やかに池へと舞い戻っていくリヒット。
■リヒット > そして、浅い池に汚れた足を浸し、カッパを軽く洗うと、それを頭からスルリと被りました。
「……ごわごわ」
クラゲのような見た目とは裏腹に、肌ざわりは固く、くすぐったいです。
それに人間の子供向けとはいえ、小人であるリヒットにとっては十分に大きな衣服でした。袖から手先をなかなか出すことができず、袖を折るのにも苦労します。
……とはいえ、立派な服です。やったね!
半透明の生地の向こうに肌色の輪郭がぼやけて見えるのは、この際深く考えないことにしましょう。
「あたたかい……いや、ちょっとムシムシ……」
雨具です。脇に穴が開いてるとはいえ、通気性は最悪。まぁ、それがリヒットには心地よくもあるのですが。
とりあえず、これで人混みへ出る準備は整いました。もうじき夜なので、実際に向かうのは後日ですが。
「♪~~」
鼻歌を歌いながら、先ほどと同じように水没するリヒット。その聞いたことのない音色は、しばらくの間、水面を震わせていたそうな。
ご案内:「常世公園」からリヒットさんが去りました。
ご案内:「常世公園」にヨキさんが現れました。
■ヨキ > (公園の各所に設置された東屋の下。
コンビニエンスストアの袋を小脇に置いて、ベンチに腰掛けている。
季節柄、日の落ちるのが早くなった。
退勤後の公園は既に暗く、街灯が照らす木々の奥で秋の虫が鳴いている。
東屋を通り抜ける風は肌寒さを含み、乾いた夜気が流れてゆく)
「うーん……」
(ペットボトルの茶で喉を潤し、大きく伸びをする)
■ヨキ > 「……いやはや。調子がいいな」
(その顔は土気色なりに心なしかつやつやしていた。
依然として死人一歩手前の顔であることは変わらないにせよ)
「身体が軽い。生きているという実感がある。
講義という講義が冴えまくっていた」
(昨晩においては、それだけのことをした。
何をとは言わないが)
「いい充電になった」
(放電もした)
ご案内:「常世公園」に蒼穹さんが現れました。
■ヨキ > (やがて、徐にスマートフォンを開く。
スクリーンを見下ろして、メールやニュースに見入る。
手馴れたフリック入力で返信を済ませ、ブラウジングに興じる。
薄闇のなか、煌々と照る街灯の下に、淡い液晶の光)
■蒼穹 > (叢から不規則な周期でチリチリ、なんて音でもなっているのだろうか。
仄暗く、涼しい夜頃だろう公園。
ぶらりと落ち着かない足取りは、最近よく公園に向かう。
その理由は、この場では大抵気安く話が出来る人と会えるから、と言ったところか。)
…ん?
(さて、簡素な作りの屋根?の下に、何処かで見た様な髪型の人が。
…あれは確か、美術の先生で。凄く頭が切れる人、だった気がする。
その机の上で指を滑らせる様からすれば、端末を弄っているらしい。
東屋の、彼の座る側の対面側の入り口から、こちらに気付くまで視線を送ってみる。)
■ヨキ > (とあるパズルゲームのデイリーミッションを消化しようとして、気配に気付いて顔を上げる。
見知った女生徒の顔だ。指先がアプリを閉じる。同時に、頭に浮かべていた攻略の定石も)
「――やあ、蒼穹君。こんばんは」
(ヨキの手に収まるほどの、シャンパンゴールドの色をした最新型。
扱いに慣れた様子で懐へ仕舞い込み、蒼穹をベンチの隣へ誘う)
「久々だな。夜の散歩か」
■蒼穹 > (思いの外、早く此方に気付いてくれたようで。
端末で何をしていたかは、露と知らず。)
あ、どうも。こんばんは。
(小さく頭を下げながら、手を振って挨拶。
それから、彼の対面側から横側へ、くるんと回る筋道を辿って。
置き据えられたコンビニ袋の中身を一瞥。
長身と、何となく覚えやすい格好が特徴の人。)
そんなとこかな。
この頃暇したらここ来るようにしてるんだー。
あ、…ヨキさんは今帰り?
■ヨキ > (手にしたペットボトルのほか、袋の中身は缶詰や惣菜や、野菜の類。
特に袋の口を閉じるような素振りもなく、笑って蒼穹を迎える)
「暇になったら公園、か。
如何わしい歓楽街などに出張られるよりは、よほど健康的だ。
――そう、ヨキも先ごろ退勤してな。帰り道の途中だった。
だがもう少し帰宅は遅らせよう。君の顔が見られたからな」
(蓋を閉じたボトルを袋へ戻し、蒼穹の顔を見遣る)
「君と話したのは、先月辺りだったか。
元気そうで何よりだ。有意義な学生生活は送れているかね?」
■蒼穹 > (今日の晩御飯のおかずにでもするのだろう。
何となく、女性的な格好も相俟ってか野菜を切るという姿も普通に想像できる。
美術の教師の他、家庭科の教師も…いや、それはないだろう。)
いやはや、確かに歓楽街なんかはあんまり行かないね。
警邏とか適当な捜査の為にその奥に行くとき横切ることもあるけど。
…あ、でも歓楽街のゲーセンは好きだよ。
(さりげなく、サボりの匂いを薄くしつつも香らせる発言をしつつ。)
あっはは、たまーに時計塔行ったりするけどねー。
あそこも良いよ。登る人は皆酔狂でさ。
ああ、それとそれと、転移荒野なんかもうろつくかな。
ヨキさんはどう?暇になったらどの辺うろついてるの?
ありゃ、それは嬉しい、かな。
お互い暇してる感じなんだね、じゃあ今は。
丁度今思いついたけど、ヨキさんと、ちょっと話してみたい事もあるし…。
ま、ただの話のタネなんだけど。
(少々お行儀の悪い姿勢で東屋の椅子に座れば、横を向きながらいつもながらの上機嫌で元気な様を見せる。
その裏にて思い浮かべるのは、先日の怪異の一件、等。
善悪とか、正義とか。何をどうすればいいのだとか。
そう言った話には、きっと彼は乗ってくれるだろうし、こういう場合にこそ、生徒と教師の関係だろう。)
そうだね、どれくらいだったろう…。
確か美術室で倒れかけてたんだったっけ。
うーん…、まぁまぁ、かな。
夏休みも開けたけど、今のところは変わりないって感じだよ。
■ヨキ > 「ゲームセンターか。ふふ、女子があまり遅くならないようにしたまえよ。
夜になると、素行の悪い者も増えるであろうから」
(ふっと笑う。蒼穹の自制に任せて、諭すのは止しておくらしい。
が、時計塔と聞いてはわずかに苦い顔をして)
「……おいおい、全く。あすこには立ち入り禁止と書かれているだろう?
ヨキのような偏屈な教師に、あまり楽しげに話すでないよ」
(言いつつも、顔は笑っている。塔への侵入を許したというより、匙を投げた、の方が近い風情で)
「暇になったら、か。そうだな……
カフェへ行ったり、神社に足を伸ばすこともある。
ここは鉄道が便利だから、街の中ならどこへでも行ってしまうな。
特に出かけるでもないときは……制作をしている。自分の作業場とか、学園の美術室を借りたりしてな」
(蒼穹の話に相槌を打ちながら、隣に座った顔を見る。
横目で視線を流すと、暗闇の中で双眸が鈍い金色に光っている……ようにも見える)
「――ほう?ヨキと話したいこと、か。
それは光栄だな。何かあったかね?」
■蒼穹 > 程々に気を付けておくよ。御忠告感謝しまーっす。
(半笑いに左右逆の緩い敬礼を見せる。)
いやはや、偏屈なんて言う割には…ま、皆まで言うのはやめておくかな。
こればっかりはどうしようもないんだよ。
確かに危ないけど高度の問題だろうしさ?
高い所から落ちたくらいじゃビクともしないさ。
それにあそこから見える景色が綺麗で、色々面白い人に会えるし…ま、これくらいにしとこうかな。
(程々にして、話を切る。呆れられてしまっては元も子もない。)
学生や教職員の区域を歩いてるって感じかな。
ああ、あと…彫刻とかしてるんだろうね…如何にも美術の先生らしい。
神社にカフェなんかも、落ち着けそうな場所だし。
(見えた眼差しの色は、先程彼が持っていた携帯端末のような、
そんな色合いがキラリと見える…といって、注視するわけでもなく。)
ああー、それなんだけどさ。
先に言っとくけど、ヨキさんだけに話すってことでもないんだ。
他に…少なくとも、あと一人は話そうって…そう思ってる人はいるんだけど。
私ってさ、甘ちゃんなんだなぁって思って。
色々と理由付けてとある…うーん、なんて言えば良いのかな。
そうだね…"人殺し"を助けちゃったんだ。それも自分の意でね。あれでよかったのかなぁ、なんて。
(元気そうな表情は少し、仄暗く。
バツが悪そうで、つまりつまりの言葉は、
話す内容がありながら、自分の中でも固まっていない故。
これだけで、彼が理解してくれるとは思わないけれど、
話のタネになるのなら、加えてどうにも晴れないモヤモヤが晴れれば、と。)
…ああ、雰囲気を悪くしたらごめんね、この話はやめるよ。
(そう言って、仄暗さを霧散させてまた笑った。)
■ヨキ > (時計塔の話には苦笑いして、それでいて特に怒るでもない。
『ひとりで落ちるならいいが、下の誰かを巻き込むんじゃないぞ』とだけ忠告を添えた。
蒼穹の話に、気楽な様子で応じていて――
『話したいこと』に、唇を結んで耳を傾ける)
「ああ、相談ならばヨキのみならずとも、人の手を借りた方が好かろう。
何人に話したとて、ヨキの気にするところではないさ」
(茶を一口、喉を潤す。
低い声でゆっくりと答えながら、蒼穹の言葉が整理されてゆく様子を見ている)
「――『人殺し』。ふむ?
穏やかな話ではなさそうだな。……詳しく聞こう。
君が悩んでいる以上、多少なりとも気が晴れるなら」
■蒼穹 > …話したところで、どうしようもないんだろうけど。
あはは、ありがとうね。
気を晴らすのも一つだし、ただ、今後の為に意見を聞きたいってのもある。
(腕を組んで俯く。
さて、何から話したものかと。)
んー…言ってしまえば"人殺し"というより"人食い"の方が適切なのかな。
まぁ、何にしても穏やかじゃないんだけど。
それで、その人食いは少なくとも、人間と同じ知性と、人間と同じ言葉を持ってる。
それと、その危ない性質と裏腹に何か可愛らしい見た目してる。
ただ、あの体の性質と…詳しくは知らないけど、その食性も人間のものじゃないって思う。
…ううん。一応これでも風紀委員だし、いつもながらの警邏に当たってたら、話中の人食いと鉢合わせしてね。
憂さ晴らしにと私も殺されかけたんだ…生きてるけど。
(無表情に、何処まで話したものかと考えつつ。それでも冗談を交え己の五体満足を示しながら。)
それで、もう一回会ったら今度はその人食いが死にかけてて…。
紆余曲折あって、助けちゃったんだよね。
あそこで倒れてたら危ないからって、避難手伝ったり。…色々と。
甘ちゃんな自分がイヤになった、って、そんなところかな。
あ、あとこれは秘密ね。ヨキさんなら誰にも言わないだろうけどさ。