2015/11/06 のログ
ご案内:「常世公園」に渡辺慧さんが現れました。
■渡辺慧 > 遠くから賑やかな音がする。
ふと、公園のベンチに座りながらそう思う。
ベンチの上には袋の中に容器に入ったイカ焼きとたこ焼き。
……まぁ、イカ焼き、と言っても姿焼きではなくたこ焼きのように丸まった生地にイカの身が入っている物と、たこ焼きと言っても丸まった生地にたこの身が入っているわけではなく……たこの姿焼き、というまた
ひねくれたものだけれど。
祭りはもう終盤だ。明日にも、この公園にまで届く賑やかさはどこかへ消えてしまうのかもしれない。
■渡辺慧 > 公園の中に見える人影はまばらだ。
最初の方にはこの公園の中にも異能を使った催し――それはある種大道芸の様相を呈していたのかもしれない。――も盛んだったのだけれど。
今は遠くにだけ見える、異能を使っているように見えない普通のジャグリング――いや、そう言ってしまうのも寂しいほど、それは見事なものなのだが。
それをぼんやりと眺めながら、祭りの間を振り返った。
誰かを誘う予定もなく、誘われる予定もなく。
あの人だかりの中で、見知った顔を見つけるでもなく――むしろ。
あの人だかりの中で、見知った顔と出会えるならそれは運命的、とも言えるのかもしれないが……生憎、自分は一人で回る運命がついて回っていたようだ。
苦笑しながら、これではまた州子に心配かけるかもしれないな、と少しばかり考えた。
遠くの賑やかな音。
どうやら祭りの渦中にいるより……こういった、対岸で祭りを眺めている方が自分は好きかもしれない。
家に帰ってから食べようと思っていたイカ焼きの容器を開けて、一つぱくつきながら、その理由を考えては見るが――まぁ、余り意味のない事だろう。
ご案内:「常世公園」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
■谷蜂 檻葉 > カァオ
木々の中で烏が鳴き出す。
青から黄、黄色から赤。やがて黒に空色が変わり、
それにつれて祭りの喧騒もまるで火のように消えようとしていく。
彼女も、その火の粉の一つとして祭りを盛り上げ、そして小さな終わりを迎えて寮へ戻る最中だった。
「……あ。」
その道すがら、最近は展示場の抽選落ちした大道芸人達が芸を披露している事が多かった公園にぶらりと立ち寄ると見知った顔を見かけて、手を振って、自分の服装―――【コスプレ喫茶】の手伝いをしていた時のドレスに気付いて、少し赤面しつつそのまま小さく手を振る。
そのまま大道芸を横目に、ぼうっとベンチに座る知り合いに近づいて
「……もう こんばんは、かな。 お祭りはもう全部見終わったの?」
お疲れ様、と声をかけて端に座る。
■渡辺慧 > まばらな拍手。
普通の――あぁ、うん。普通の――ジャグリングが終わったようだ。
そう見ていたわけでもなく、内容に感心したわけでもないが、どうせだから。
と、手を叩いておく。……むしろ失礼にあたるかもしれない。
そんなことをしていたせいか、それとも生来、元々ぼんやりしているせいか……幾分かかけられた声に反応するのが遅れた。
「…………ん、あぁ」
応えようとして、ふと眺めた姿に、少しだけ目を丸くし。
「……随分、楽しんでたみたい?」
そう言って微笑とも取れる風に口元をゆがめた。
■谷蜂 檻葉 > なるほど、随分と―――
「黄昏時、だったかしら?」
拍手を送る大道芸すら、見てるんだか見てないんだかわからないとぼけた表情の彼に苦笑しながら、
芸人に向かって手を振る。 相手もこちらに気づくと、少し手を振り返してくれた。
「この服は……まぁ、うん。忙しかったけど楽しかったわ。
その調子だともしかしてずっとこの辺りでぼうっとしてたの?」
勿体無い。と、返事を聞く前から不服そうに少し顔を覗き込む。
やがて、最後の芸人だった彼が道具をしまいだすと人が引波のように消えていく。
ここにも、また一つの終りが近づいていた。
■渡辺慧 > 「さてね」
そんな大層な物ではない。ただ……そう。歩き疲れただけ。
誰に言い訳をするわけでもなく、その言葉を発することもなく、ただとぼけた返事を返した。
おつかれさま。その芸人に向かって口だけの動きでそう言い。
「学園祭らしい恰好。ン、似合ってるよ」
続く言葉には、そんなことはないと手を振って。覗き込まれた顔に笑った。
「ほら」
と、自身の隣に置かれた容器を指さし、自分なりに楽しんでいた事を暗に示す。楽しかった、その言葉には少なくとも――嘘はない。
終りの近づきを見て、ふと。
ふと――先ほどの答えが、少しだけ分かった気もする。
「でもさ、遠くから聞こえる賑やかな声って、なんか……なんだろう。なんか好きなんだよね」
ここに居る理由、この言葉にもまた、嘘はなかった。
■谷蜂 檻葉 > 「まぁた、そういう……。」
―――世捨て人みたいなこと言って。
ただ、その形容はあまりにも似合いすぎて、言葉尻を飲み込んで溜息をつく。
「そ、そう? ありがと……あぁ、食べあるき。」
なら、良いか。と、他人事なのに保護者気取りにそう笑う。
この世捨て人みたいな後輩は、放っておけば霞と散ってしまいそうなぐらいに、
「寂しいこと言うのね。」
肩を竦めて、捨ててあげる。と容器を拾えば、遠く遠く。
向かいに見える古きよきデザイン、コップ状のゴミ箱へぽんと放る。
軽やかに放って、風に吹かれてくるくると回転しながら―――そして綺麗に着地してクズ籠を揺らした。
その消えた容器の分。僅かに詰めて座って伸びをする。
「言いたいことはわかるけど、もう少し聞こえやすい場所に行っても良いんじゃない?
ここは、ちょっと遠すぎるわ。」
■渡辺慧 > 「? どういう…………ま、いいや」
先に続く言葉がどうにも分からなかったが、それを態々続けてもらう意味もない。
それとも、似合う、の他にもう少し気の利いた事でも言えばよかったのか。
少しばかり的を外した――別に、意図したものでもないのだが。
「お姫様、とか、そういう方向のほうがよかったかな」
グッドシュート。意味もない呟き。
寂しいこと……。……つまりは、そういう事だろう。
「近すぎるよりはいいかな、って」
肩をすくめる。少し、近づいてきた彼女を意図する言葉ではないが――。
――以前の、それは、少しだけ入ってしまったかもしれない。
それを誤魔化すわけでもないが別の言葉に置き換える。
「このぐらいの方が、なんだか風情があるって。……タブンね」
祭りの後の静けさ。
それに真正面からぶつかる必要はない。
だから、最初から。静けさの漂うここで、楽しそうな音を聞いている方が、好きなのかもしれない、と。
それが先程の、考えた先に行きつく結論なのかもしれない。
――もちろん、それを声にすることはなく。
「ま……ほら。こういう雰囲気も、悪くないでしょ」
■谷蜂 檻葉 > 「30点……口説くつもりがないならしないほうが良いわよ、そういう言動。」
もう。と、先よりも大きなため息を付いて睨みつける。
「そんなに離れた場所から見るのが好きなら頭丸めて山に篭もる方が建設的なんじゃないかしら。」
じぃっと、薄れる気配もない頭髪を脳内でバリカンがけしていく。
うん、パーカーもあるし禿頭を隠すギミックは十分だろう。
「念仏の一つでも覚えれば、君の腰も落ち着くんじゃない?」
ついでに雑念も色々消えて一石二鳥……三、四鳥までいけるんじゃないだろうか。
就職先も見つかるだろうし。
■渡辺慧 > 「てきびしー」
軽口の一つでどうやら逃げさせてくれもしないようだ。
まるでいもしない姉を相手にしているかのような感覚に苦笑が漏れる。
「ため息ばかりついてると折角の衣装ももったいない、ということでここは」
視線を中空に漂わせ、あいもかわらない浮いた言葉。
しかしながらその実に“建設的な意見”に嫌そうな顔を浮かべる。
雑念があるから日々が楽しいのに、とまるですねるるような口調でそれに反論して。
自らの坊主頭を想像し………………そのおかしさに、笑ってしまった。
「勘弁願うよ。……まるで俺の方が説法を解かれてるみたいじゃないか、これじゃ」
■谷蜂 檻葉 > 「だ・か・ら! そういうのをやめなさいっていうの。 ほんと、軽いんだから……。」
髭がしっかり生えるまでは治りそうもないわね。
なんてつぶやくと夕日に視線を向けたまま、
パチン、と指を鳴らして水道の水を球状に寄せドロップを口に放るように飲む。
「口説かれるのがお好きなんでしょ?」
吹き出すように笑う彼にスイと指を向けると、
音もなく前髪が一本音もなく切られて檻葉の手の内に落ちる。
「そういえば最近、日本魔術学で古典的な呪い(まじない)についてレポート書いてるのよね。」
ふふ、と怪しげな笑みを浮かべて髪の毛を見せつけるように小さく振る。
「もう少し”人気”のあるようにってやってみましょうか?」
■渡辺慧 > 「さて、ね」
それはきっと今更なのかもしれない。
だが、しかし…………自分が口説かれたら、きっとそれはそれで。
戸惑い……いや、どちらかというと。
ありもしない想定だが……きっと、慌てふためく姿が目に浮かぶ。
「ふ、ぁ?」
器用な物、と呟こうとした矢先に、まるで先程の大道芸のように切り取られた前髪を撫でるように触る。
嫌な予感、いや。
それは戯れの範囲なのだろうが……少しだけひきつった声で。
「……勘弁してよ」
降参だ、とでも言うように、両手を上にあげた。
なんてものを試そうとしてるのだ、と。
もてあそばれるがごとく、その手に握られた髪の毛が、現実感と共に。
なんだか、からかわれているのかもしれないと。
少しだけ……それも悪くないのかもしれない。
■谷蜂 檻葉 > 「勿論。」
くつくつと喉で笑って、もう一度振れば風の鳴る音と共に千々に細切れになって風に巻かれる。
「効くかは兎も角、折角の風情を一つも残さず取り上げるなんてことはしないわよ。
ただ、そうね―――もう少し自主的に人に慣れないと、もしかしたらもしかする……かもね?」
野良猫にも、多少は躾がいるものでしょ?
そう笑ってベンチを立つ。
彼女が振っていたその手の反対。 キラリと夕日に反射して見えたのは誰の”毛”なのだろうか?
「少し伸び過ぎじゃないかしら? 床屋、早い内に行ったほうが良いわよ。」
なんて、何がどう彼女の琴線に触れたのか。
檻葉は来た時の静かな雰囲気も消えて、上機嫌に公園を後にする。
公園の時計台が、5時の区切りをベルで伝えた。
ご案内:「常世公園」から谷蜂 檻葉さんが去りました。